歴史的価値か経済的合理性か・・九州大学箱崎キャンパスの場合

9DAI-HOZON

福岡市東区箱崎6丁目にある九州大学箱崎キャンパスは、九州帝国大学・同工科大学の設置に伴い1911(明治44)年に開設された。同キャンパス内には長い歴史を物語り、大正から昭和戦前・戦中にかけて建てられた近代建築が数多く残っている。今では同時期の建物が多く現存していない日本では、九州大学箱崎キャンパスの建築群は、歴史的建造物として大きな価値を有している。

箱崎キャンパスは福岡市西区と糸島市に跨る伊都キャンパスへの2019(平成31)年までの移転が予定されており、これらの建築群の将来が危ぶまれている。

そうしたなか2012年、移転後の取扱いについて方向性を探るべく、主要な近代建築を対象として有識者による調査が行われた。(九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループ)

これによって保存活用への道が開けたものもあれば、逆にその後解体撤去されたものもあり、建築群の将来は移転計画が進むにつれて明暗が分かれ始めている。

「九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループの評価報告」(2012年、H24.12.25、第5回九州大学跡地利用将来ビジョン検討委員会参考資料より)によると、近代建築物の客観的評価として以下の4つの大項目、7つの中項目を設定している。
■歴史的評価

1、大学の歴史的経過と結びついた価値評価
2、 社会、時代の歴史的経過と結びついた価値評価、産業遺産など

■建築学的評価

1、建築の意匠史的側面からの価値評価、様式、近代建築、モダニズム建築、インテリアデザイン、営繕の制度的評価

2、 建築の技術史的側面からの評価、構法、素材、建築設備、環境配慮など
■文化的評価

1、社会全般に対する文化的資産、芸術性、社会性、シンボル性
2、地域の文化資産、地域景観資産としての評価、地域への貢献

■再活用度評価

1、街づくりとしてのランドマークなどの利用価値評価、敷地、敷地建物としての再利用のしやすさ

各建物の評点の他に、耐震性能(Is値)、コンクリート中性化深さの平均、コンクリート圧縮強度が示されている。

この中で「安全性に問題有りと認められる近代建築物」として、「コンクリート圧縮強度が13.5N/m㎡以下もしくはコンクリート中性化深さ(平均)が40mm以上の建築物もしくは施設の特殊性から再活用困難とされる建築物」と位置付けている。

古い建物の再生に関わると歴史的価値か経済的合理性か悩む日々が続く。