文部科学省において、「学校施設の教育環境向上を図る改修等に関する課題解決事例集」がまとめられ、5月23日にホームページに公開されました。
問題点が整理されていて学校施設の改修設計等の参考になりますし、民間の建物の長寿命化計画を検討するうえでも大いに役立つ内容になっています。
「学校施設の教育環境向上を図る改修等に関する課題解決事例集の公表について(概要)」文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/seibi/1372577_00003.htm
「学校施設の教育環境向上を図る改修等に関する課題解決事例集(全体版)」
https://www.mext.go.jp/content/20230524-mxt_sisetuki-000029813_02.pdf
この中に「2改修・活用の促進」として「(1)メリットの見極め・課題解決の見通し」について記載されている部分を紹介します。
「学校施設において、長寿命化改修を進めていくことにより、改築に比べ工事費の縮減を見込むことができ、廃棄物や二酸化炭素の排出量が少ないなど、コストや環境面にメリットがあることに加え、限られた予算の中で域内の多くの学校施設の安全性を確保し機能向上を図ることができる。
公立小中学校施設については、構造体の耐震化率が99.7%、体育館等の吊り天井等の落下防止対策実施率が99.5%と概ね完了しており、一定の耐震性が確保されている。また、個別施設計画の策定時に個々の施設の実態を調査しているところが多いことから、当時の調査結果や経年の近い類似施設の比較などにより 、QCD(品質・コスト・工期)のバランスを確認しながら、改修のメリットを大まかに整理することが可能である。
また、各施設の長寿命化改修を行う際には、当該施設の資料や現地調査により、既存建物の施工当時の状況や現在の劣化状況の把握に合わせて、構造・法令上の観点から改修範囲の見極めや課題解決の見通しを立てておくことで、新しい時代の学びを実現する計画・設計の可能性を広げ、教育環境向上による品質向上につなげていくことができる。工事段階では、内外装を撤去した際に、事前の調査等では分からなかった追加工事が必要となる場合もあるため、調整できる工程をあらかじめ見込んでおくとともに、それらに対応するための費用についても考慮しておくことが有効である」
整理すると
・教育環境向上の手法(民間の施設だと、より収益を生む為の活用計画、省エネを含めた総合的な検討)
・構造体の改修範囲の見極め(民間の施設だと、耐用年数評価や耐震診断・耐震補強が必要なる場合がある)
・法的制約や法解釈(民間の施設だと建築確認等が必要な場合の既存遡及の適用に係るコストの把握、居ながら改修における安全計画・仮設計画とそのコスト)
・施設の有効利用(民間の施設だと、クライアントの理解は勿論、銀行融資先の理解を得る必要がある)