超高層マンションの外壁タイルが落下

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先月中旬、豊島区東池袋の超高層マンション・エアライズタワーのタイルが地上に落下していたのが発見された。その後の調査で24階の外壁タイル2枚が剥がれ落下したものと判明した。

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1ヶ月以上経つ現在も地上部分は、立ち入り禁止部分を設けている。

エアライズタワーは、池袋四丁目市街地再開発組合事業でデベロッパーは住友商事、東京建物、伊藤忠都市開発。設計は日本設計。施工は大成・フジタ建設工事共同企業体で2007年(平成19年)1月31日 に竣工した。

地上42階地下2階で、住戸数555戸(計画時)、メトロ東池袋駅に直結し豊島区新庁舎に近接しているうえに、業務棟には豊島区図書館等が入居している。

築9年が経過しているので瑕疵補修期間外なのだろうが、他にも付着力が低い個所がないかどうか、果たして自然経年劣化と言えるかどうかは全面的に調査をしてみないと詳しくはわからないだろう。

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なにしろ42階建ての超高層マンション、どこまで調査するか、足場はどうするのか興味津々である。風聞によると調査点検費用は5億円と聞く。通常の修繕積立金では賄いきれないだろうし、大規模修繕費用が足りなくだろう。仮に住民側が全て負担すると一世帯あたり約10万円となる。

入居者住民・管理会社・設計監理者・施工会社で責任の所在を巡って議論沸騰していることであろうと推測される。

2011年7月の最高裁判決では、欠陥マンションをめぐる損害賠償訴訟で、設計者や施工者が負うべき不法行為の責任範囲を具体的に示している。判決文では、「建物の構造耐力に関係しない瑕疵であっても、外壁が落下して通行人に危害を与える恐れがあるような場合には、基本的な安全性を損なう瑕疵に当たると明示した」

マンションの瑕疵が見つかった場合、住民は売り主の瑕疵担保責任を問うことが多かったが、この最高裁判決以後は原則20年間、設計者や施工者の不法行為責任を直接問うことができる。

外壁タイルの落下は、しばしばあるだけに設計監理・施工は悩ましい問題だ。

ツリーハウスって何なの?

TREE-HOUSE

ツリーハウスは建築確認申請が必要か否か聞かれた。
そもそもツリーハウスの用途は一体何なんでしょうかね? 「樹の家」という名称だけど住宅ではない。居室か非居室かと言われると「継続性」はないので非居室ということになるだろうか。
法文に沿って考えると
 1、屋根・壁があるので建築物
 「法2条第1項第一号 建築物:土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)。これに付随する門扉若しくは塀、・・・<中略>・・・観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗・・・<中略>・・・をいい、建築設備を含むものとする。」
 ということで、ツリーハウスは建築物にあたり建築基準法が適用されると考えるのが一般的。
 ちなみに「随時かつ任意に移動できない状態で設置」され「継続的に使用」する場合は、土地への定着性が確認できるものとして建築物として取り扱われる。
 2、確認申請が必要か
 法6条第1項:建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築すしようとする場合・・・<中略>・・・確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証交付を受けなければならない。」
  法6条第2項:前項の規定は、防火地域及び準防火地域において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10㎡以内であるときについては適用しない。」
 10㎡以内の増築の場合には確認申請なしで建築が可能だが、新築の場合は必要となる。
 ゆえに あとから増築なら確認申請は不要とも考えられるが、申請が不要なだけで遵法性は求められるのでツリーハウスで事故があった場合は、設計者の責任が問われることになる。
3、写真のようなツリーハウスで確認申請が可能か
・・・極めて困難。令第40条の木造の構造規定は、適用除外とならないのではないか。写真のように自然木に抱かせる形で、自然木を含めた総体の構造検証が困難に思える。
4、用途を物見塔と考えることもできる
・・・ただし工作物申請は必要だが、高さが8mを超えなければ工作物申請は不要。これも又申請が不要というだけで遵法性は担保しておく必要がある。
5、グランピング施設(宿泊)や喫茶・飲食として使用する場合は当然建築物
・・・どこかで見たことあるけどね
6、世の中に存在するツリーハウスは、確認申請は出していないのでは
・・・だと思うが確認申請を提出した事例があれば御教示いただきたい。

「アメリカ先住民のすまい」L.H.モーガン著

無題

今、戸建て3階建ての建物に住んでいる。1,2階がほぼ事務所、3階が寝室なのだが夏場は猛烈に暑い。エアコンを1時間後ぐらいに切るようにタイマーを設定して寝ると夜中に汗びっしょりになつて目を覚ましてしまう。それで1階事務所の床で寝るようにしたら、上階の冷気が階段を通じ降りてきて快適に寝れるようになった。

自分が設計した家ではないが、木造3階建ては階段竪穴区画が免除されている為か、あるいは断熱性能が低いせいか冬は1階が寒く、夏は3階が猛烈に暑い。

あれやこれやと木造3階建て住宅の断熱改修について考えているうちに、俺って、なんか季節ごとに住まいを変える遊牧民? と思った。

季節住居の一般的な形態は、周りの気候と共に変化する。

ステップ気候では、冬は猛烈に冷たい風が激しく吹き、夏は長くて暑い日中と短くて涼しい夜がある。冬の住居は熱容量の大きい壁や屋根のしっかりしたものを必要とし、一時的な夏の住まいは、熱容量の小さい壁や屋根で事足りる。冬は寒さや風から最大限守ってくれる土で覆われた半地下の住居が多く、夏の住まいは単なる日除けや風除けが多い。

亜熱帯のサバンナ気候では、季節の変化はほとんどない。一年中日中は暑くて夜は涼しく、湿度は低く雨はほとんど降らない。そこで必要とされる住居は、熱容量の大きい壁と屋根を持つものである。建物の熱容量の大きさのため、日中に蓄えられた熱が夜間に解き放たれ、逆に夜間に冷えた壁は少なくとも昼のある時間帯には住居の内部を涼しくするのである。

昔 アメリカインディアンの住まいの本にも、そんなことが書いてあったぞと思い読み始めたのがこの本「アメリカ先住民のすまい」L.H.モーガン著、古代社会研究会訳、上田篤監修、岩波文庫である。

しかし読み始めて気がついたが、この本は住居建築様式の起源について肉薄する内容となつている。

現代では住居は必ずしも家族の専用の場ではなくっている。家族という血縁的な器だけでなく、様々な人間関係からなる多様な器になってきている。

人間関係も「血縁」「地縁」があり、会社や組織が取りもつ「社縁」、シェアハウスやグループホーム、老人ホームが取りもつ「住縁」もある。そしてネット時代のSNSなどがとりもつ「サイバー空間縁」もある。

多様化する住まいと人間関係の原点となる生活共同体のあり方について今一度考えさせてくれる本である。

省エネ適合に対応して設計は二段階ロケットに?

建築物エネルギー消費基準への 適合性判定の制度が平成29年4月に迫ってきた。2000㎡以上の建築物は、建築確認申請時に構造適合と同じように省エネ適合を受けなければならなくなる。

その省エネ適合機関となる登録建築物エネルギー消費性能判定機関の登録要件として適合性判定員の選任が必要とされ、この制度の円滑な開始のために、施行前に一定数の適合性判定員の資格要件者確保する必要から、一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構で国土交通省補助事業として事前講習「省エネ適合性判定に関する講習」の開催計画が発表された。

これまでは施工着手日21日前までに省エネ設置届を特定行政庁に届出すれば良かったが、来年4月からは指定確認検査機関に確認申請を提出する場合(2000㎡以上)、事前審査段階に省エネ適合計算書を間に合わせ省エネ適合性判定を受けなければならない。

設計事務所・設計施工の建築会社にとつて建築確認済証を取得する日時は、契約上とても重要であり、工事着手日に影響することから、申請スケジュールは厳守である。

意匠・構造・省エネと同時並行的に審査が進められている中、かつ建築主側からの変更の要望を組み入れながらで、事前審査段階での省エネの修正対応が忙しくなることが予想される。

また非住宅の場合、これまで確認申請図書には不要だった一般照明図、空調図、(建具表)なども省エネ計算をするには必須となるため設計スケジュールは、これまでと大幅に変わることとなる。

それゆえにある規模以上のプロジェクトでは、確認申請段階ではとりあえずの設計図書を作成し確認済証を取得後、基礎工事段階でVE等に伴う空調機器や一般照明器具の変更等を反映して計画変更確認申請を提出するようにならざるを得ないのではないかと思われる。すなわち設計・確認二段階ロケットである。

ところで省エネ適判となった場合、確認検査員は工事完了検査において設置されている空調機の機器、照明器具の機種、個数等は確認するのであろうか。あるいは工事監理者からの報告書類のみで適合判定をすることになるのだろうか。

弊社はH25年基準以降、比較的複雑な形態(外皮計算が面倒な)の建築物の省エネ設置届の作成を業務として行ってきた。

最近はプロジェクトの基本設計段階で参画し省エネ計算でシュミレーションし必要な断熱性能・断熱材の種別などを意匠設計者側にフィードバックしている。こうした参画ができる場合は、設計者にコストコントロール意識があるときである。

リノベーション案件でも基本設計段階で既存図を基に省エネシュミレーションを行い施工性や大規模模様替えにならないよう配慮し断熱改修を提案し意匠設計者側にフィードバックしている。標準入力法で計算しているので、予算が限定されたリノベーションの場合、例えば北側だけ壁面断熱改修をするとか細かなシュミレーションが可能となる。

来年は、省エネ適判導入によつて忙しく振り回されそうな予感がする。

かくして違反建築は放置される

「検査済証のない建築物のリノベーション(増築・用途変更)」のセミナーの為の資料を整理してて、調査を経て完成した物件の紹介より、調査に至らなかった未成約案件の事例を紹介した方が実務者には、意外と役に立つのではないか思い、そうした未成約案件の資料を見直してみた。

この分野は成約物件より未成約案件(相談のみ)の方がはるかに多い。

弊社は基本的に「調査」に一定の報酬をいただいているが、設計事務所や不動産関係の会社は中々調査費を計上できない気風があるらしく リノベーション物件の調査や計画に深入りしたが報酬請求ができず「営業活動」とされることが多いと聞く。

数多くの案件の相談を受けているうちに、初期の資料提供と現状の把握で、このプロジェクトは進展するか否か、成約にいたるかどうか容易に判断できるようになってきた。

極論すると建築確認済み証を取得した後に無届増築、無届用途変更等の違反箇所が多く その是正に工事費用が多額になるものは、ほとんど実施にいたらない。

未成約案件を振り返ってみると他にも理由はあげられるのだが、それはセミナーなり出版物で紹介しょうと考えている。

住宅は、確認済み証の時点の設計図書と全く異なる建物が完成している場合が特殊建築物などより多くみられ、建ぺい率・容積率オーバー、斜線制限等に抵触しているものは減築及び屋根の是正を行わないとならない。

容積率・建ぺい率をオーバーしている違反建築物は、銀行融資はしてもらえないと聞く。一部高利のファイナンス系だと60%~70%程度融資してくれるらしいが、かなりの自己資金を持つていないと取得は無理だろう。

それゆえに違反中古住宅は売れず、空き家のまま、違反建築物のまま放置されることが多い。