地方巡業の旅 -10

今回は、地方巡業の旅の番外編・スピンアウト的な事を書いておく。

それは「兵站」(へいたん)について。

兵站は軍事用語で英語でMilitary Logisticsというのだが、戦闘地帯から見て後方の軍の諸活動・機関・諸施設を総称したもので戦争において作戦を行う部隊の移動と支援を計画し、また、実施する活動を指す用語。兵站には物資の配給や整備、兵員の展開や衛生、施設の構築や維持などが含まれるとされる。

既存建物調査も単体ならば、さほど頭を使う事はないが、地域が分散し複数の施設を調査し報告書を作成していく場合は、その移動方法、宿泊先、日帰り入浴先、食事、持参する調査道具や着替えなど、結構頭を使う。

以前は車の利用度合いが多かったが、最近は歳ともに公共交通機関+車という移動手段に変更した。

弊社の場合は「兵站」を総括しているのは妻で、公共交通機関で調査地点近くまで移動して車をレンタルする時間から、宿泊先となるホテルの選定、調査箇所への道筋、食事をする場所(出来るだけホテル)と詳細な実施要領が事前に提出される。しかも金銭の精算も一元化している。おかげで私は調査の事前調査と報告書作成に専念できる。

この「兵站」は、あまり重視されないかも知れないが、弊社が現在行っているエンジニアリングレポートの一部を支援する既存建物の劣化調査と遵法性調査においては、地域が分散した多数の調査対象を計画的に実行していくには欠かせないものとなっている。

仕事には思いがけない副産物もある。

ひとつの県でも、行った事がなかったところが圧倒的に多いし、その地域の雰囲気を垣間見ることができた。宿浜施設や日帰り入浴施設にも詳しくなった。こうして記録を残しておくと後々役に立つ事もある。

VBJ「事例から学ぶガイドライン調査~成功事例と失敗事例~」

 7月20日に開催されたビューロベリタスジャパン(VBJ)のオンラインセミナー「事例から学ぶガイドライン調査~成功事例と失敗事例~」を拝聴した。

 東京都建築士事務所協会で準備している書籍のなかで、ガイドライン調査すなわち「検査済証がない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」について執筆を担当していたので、機会があればこういうセミナーを受講している。

 VBJは以前から課題別のセミナーを多数開催しており、このガイドライン調査についてのセミナーも幾度か開催しているようでした。1時間のセミナーの中で説明事項もよくまとめられて手慣れた感じを受けました。

 国交省に届出をしたガイドライン調査をする指定確認検査機関は全国で38社(2022.4.1現在、但し実質業務をしていない会社が数社)あるが、ヒアリングをしてみると同じガイドライン調査でもアプローチの異なる会社も散見します。

 VBJは、国交省が2014年(平成26年)に発表した このガイドライン調査の内容を忠実に履行していると感じていました。

 セミナーで説明していた「Q&A」は、実例を通じて良くまとめられており、こういう「Q&A」も作成してみようかなと思いました。

 さて このガイドライン調査が発表されてから8年経過して、全国での実施事例も概略1,000件を超えているようです。(公表数字ではなく私のヒアリングによる概数)このあたりで日本建築行政会議あたりが音頭を取って事例研究をおこない、ガイドライン調査のバージョンアップを図ってはいかかがでしょうか。

 

 

空調服

【画像は参考例】

真夏の調査は、熱中症対策がかかせない。

兵隊・士官・司令官とその時々で位置を切り替えるが、

やっぱり現場は面白い。

この夏、職人さんたちが着ている「空調服」を用意した。

腰のあたりに換気扇をつけるタイプの半袖の作業着

妻に、ペアルックにしようと言ったら断られた。

彼女はベストタイプのものを選択した。

中々快適である。

バッテリーが3時間ぐらいしか持たないので、

スペアバッテリーが必要かもしれない。

外目には、服が膨れ上がってハイパーおデブさんになる。

安藤忠雄の建物のコンクリートコアを抜いてみたい。

専門業者に依頼しているコンクリートのコア採取。部位別に鉄筋探査を行い、鉄筋の無い部分からコンクリートコアを採取し、検体を指定検査機関に送付し、コンクリートの圧縮強度試験、中性化試験をしてもらうのだが、最近は専門業者さんの現場調査に付いて写真を撮影するのは、妻の任務にしている。

妻は建築の専門教育を受けてきたわけではないが、私のほとんどの既存建物の調査や視察に同行しているので、そんじょそこらの建築士よりは建築に詳しく、感覚的に感想を語る。

この日も、今日のコンクリートは「あまりよくない」と言う。確かにそうだ。

以前調査した、あそこの現場のコンクリートはきれいだったと言う。その現場のコンクリートは築28年だけど37N/mm2あった。確かに、きれいなコンクリートコアは強度がある。

以前視察した安藤忠雄の建築について語りあう。

私「安藤さんの大きな建物は、やたらと歩かされて方向感覚がなくなることがあるから、そこは僕は嫌い」と言う。

妻「でも安藤さんのコンクリート打ち放しはきれいだったね、安藤さんの建物のコンクリートコアを抜いたら、とっても美しいコアが採取できるのではないか」と言う。

妻「一度コアを抜かせてもらいたい」と。

飾っておきたいようなコンクリートコアが採取できて、もしかしたら商品化できるかも知れない。「住吉の長屋45」とか。まるでスコッチウイスキーみたいだねと笑った。

この日、コンクリートコアを抜きに来てくれた専門業者の若い職人さん達と一緒に昼食の弁当を食べる。若い職人さんたちの話が聞けて楽しかった。

若い職人さんからスマホの「電子小黒板アプリ」の存在を教えてもらった。

責任者の人が、まだ新入社員の人に鉄筋探査機の使い方やコア採取後の無収縮モルタル(今はすでに配合された商品がある)の水分量、固さの確認方法等を口伝で教えていた。まだ30代だという責任者の人は、左官屋さんを見て自分の感覚でモルタルの固さを覚えたという。穴埋めと言っても結構難しい。素人がやると水分量が多すぎたり、埋めた後に凹んだりする。技術の継承と言うのは、やっぱり口伝なんだろうなと思った。

混構造-1

1階が鉄筋コンクリート造、2階・3階が木造の建築物は、平成19年5月18日に国交省告示第593号第4号(最終改正・令和元年6月25日告示第203号)により、RC部分も木造部分も許容応力度計算が必要となった。

【H19国交省告示第593号第4号の概要】

・地階を除く階数が2又は3であり、かつ、1階部分を鉄筋コンクリート造とし、2階以上の部分を木造としたもの

・高さが13メートル以下で、かつ、軒の高さが9メートル以下であるもの

・延べ面積が500平方メートル以内であるもの

【構造計算の概要】

・RC部分は壁量の確認が必要となり木造部分、RC(WRC)造部分ともにルート2-1相当の構造計算が必要となる

・木造部分の軸組計算

・木造部分の許容応力度計算(2階以上の剛性率6/10以上、2・3階の偏心率15/100以下の確認)

・RC部分の許容応力度計算(1階の偏心率15/100以下の確認)

以上をすべて満たさない場合は、構造適判対象となる。

まあ、新築ならばこの基準で構わない。これから建築するのだから。

H19年の告示以前は、このような混構造の建物はどう扱ってきたかというと、RC部分は許容応力度計算だが、2階・3階は、法6条第4号建物とし軸組計算による筋違を配置して来た。

こうした都心ではどこにもあるような建物が、増築をしたいと思った時、混構造は法第6条第3項建物となり、一体増築の場合は、上記のように全体を許容応力度計算を行い安全性を確認しなければならい。

RC部分が地階だからと安心する事なかれ、建築基準法施行令第1条ニ号の「地階」と構造上の地階は異なるのだ。構造上の地階・地上階の判定は、地盤面かの外周囲が地階全周囲の75%以上かどうかを計算し確認しなければならず、結構地上階扱いとなることが多い。

こうした混構造の建物を増築する場合、大概は内部スケルトンリフォームとなる場合が多い。耐力壁が不足していることが多いので筋違や構造用面材で耐力壁を増やす。2階床の剛性を高めるために床を張りかえる必要がある ということは壁も天井も壊さざるをえなくなり、結果として内部スケルトンリフォーム。場合によっては外壁もということになり既存部分に改修工事が波及するので 改修工事費が嵩んでくる。

もともと長い事 混構造の取扱いはRCと木造は別物としてきたのだし、構造性状は異なるのだから、せめて既存建築物は告示第593号の適用は再検討して欲しい。既存ストックの活用というのなら、こうした細部の規定も見直し緩和をして欲しいと思う。

相続税の小規模宅地等特例

2020年のコロナ僻の頃から、住宅系の相談が増えた。
親と同居する、子供の家族と同居するので古い建物を増改築したい。ついては検査済み証が無いので調査して、申請後に検査済み証を取得したい。そうした相談が多くなった。

検査済証のない既存建物の活用には、三つのハードルがある。ひとつは法律のハードル、二つ目は技術のハードル、三つ目は資金のハードルがあり、それらを乗り超えて成就できる案件は 必ずしも多くはない。

戸建て住宅の中で、既存建物の活用が増えているのは、コロナ僻で在宅勤務が増えたという事だけでもなさそうで、詳しく聞いてみると相続税の小規模宅地特例というのがあって、不動産の評価額を80%下げることができ、その分相続税を下げることができるそうだ。この特例を活用するには、相続する人が配偶者か、同居していた親族か、持ち家のない親族である必要があり、同居については結構厳しく判断されるとの事だ。

同居していた。というのは下記の4つの観点から判断されるとあります。
1.日常の生活がどんな状況だったか
2.相続人が家に同居した理由
3.家の構造や設備の状況
4.相続人が、ほかに生活の拠点となる場所があるかどうか

普通に親と子供が1つの家で、一緒に暮らしていた場合は同居として見なされます。

二世帯住宅で一緒に暮らしていた場合は、同居として見なされる場合と、見なされない場合があります。その違いは、住宅の構造ではなく、登記の仕方にあります。登記には2種類あり、共有登記と区分所有登記があります。共有登記は一棟の建物の中で割合を決めて複数人が一緒に住む形態の登記です。区分所有登記は、一棟の建物の中で区分を分けて複数人が一緒に住む形態の登記です。このうち、共有登記は同居と見なされますが、区分所有登記は同居と見なされないのだそうだ。

検査済証の無い建物を子供に相続させたくない。そうした親心が大きく働いているのだなぁ~と思った。





ボッシュ電動工具 総合カタログ2021

ボッシュの電動工具・総合カタログ2021を貰って来た。最近は、こういう生産に直接関わるパンフレットやカタログを見るのが楽しい。

レーザー距離計・電動ドリル・オートレベル・下地探査機等 いつのまにか調査用の機器が揃ってきた。たぶんちょっとしたDIYもできる道具達。

とにかくボッシュの電動工具。沢山種類があって悩む。販売員に聞いても要領を得ないし。工具を実際に使っている職人さんに色々聞くんだが、お店にもそういうコンシェルジュを配置してもらいたいものだ。

その昔 東急ハンズには、分野ごとのスペシャルリストのような詳しい販売員がいて感心したし、品ぞろえもオタクぼっかったが、今は特徴が無くなった。

セミナー「建築ストックの再生と活用・リノベーションの肝と心」

10月7日、中野区内で日本建築家協会関東甲信越支部・中野地域会と東京都建築士事務所協会中野支部共催のセミナーで講師をしてきました。

今年の新型コロナウイルス感染拡大で伸び伸びとなっていた企画でしたが、ようやくオフラインの集まりが開催出来るようになりました。大きな会議室に定員の半数以下の人数で参加者を絞った集まりにしたそうです。それでも雨の中20人程の参加者がありました。

私は、2019年に同様なテーマでセミナー講師をしていますので、今回はそれらに加筆して検査済証の無い建物の増築4件、用途変更2件の事例報告を行いました。

参加者は、習熟した実務者がほとんどで、セミナー後の質問も沢山ありました。

参加者と同じ実務者ですから、セミナーと言うよりは、公開カンファレンスのようなものかもしれません。20人程度というのは規模としては 意外と適正で質問も多くでやすい規模かもしれません。

住宅医の改修事例 No,102 (重量)鉄骨3階の住宅改修~検査済証無しの建築法規対応方法

8月3日、一般社団法人 住宅医協会のサイトに弊社の事例報告が掲載されました。

2020年1月の住宅医検定会で発表した荒川区内住宅の改修事例報告(増築+スケルトンリノベ―ション)の中から「工事完了検査済み証が無い建物の増築に係る建築法規の対応方法、申請手続き」にテーマを絞って原稿を書きました。

下記URLに掲載されています。

御一読いただければ幸いです。

【建築主から】

『ご紹介ありがとうございます。事例紹介確認させていただきました。

改修前後 、建物性能の比較等どの箇所がどの程度改善されたかがクリアに分かってよかったです。

また何より、寺田さんのお仕事の内容として発表したくなるお仕事を完遂頂いたことを嬉しく感じております。

我々のように困っていた方々がこのHPを見て皆が幸せになっていけると嬉しく思います。』

鉄筋探査

鉄筋探査は、コンクリート構造物の鉄筋の配筋状態・かぶり厚などの調査を、構造物を破壊せずに行います。施工管理状態の品質確認や改修工事・耐震補強工事などの際に鉄筋切断や埋設物の損傷事故を防ぐために事前調査として使用されます。

測定原理としては「電磁誘導法」と「電磁波レーダー法」によるものが主流です。

既存住宅状況調査技術者 講習テキスト等でもさらっと紹介されていますが、RC造やS造等の特殊建築物の調査の場合は、もう少し詳しく特徴を把握しておいた方が良いと思います。

「電磁誘導法」とは
試験コイルに交流電流を流してできる磁界内に、試験対象物を配置する試験方法によりコンクリート構造物内の鉄筋位置やかぶり測定ができます。
また、機器の種類によっては鉄筋径の推定も可能です。特徴としては、コンクリートの湿潤状態や品質等による影響を受けないため、かぶりが比較的浅い場所では非常に有効で、浅ければ浅いほうが分解能も良く確実な探査が可能です。

橋梁上部工の鉄筋探査・建築物のかぶり厚検査・コア抜き・耐震補強のアンカーを打つ位置の確認等に適していると言われています。

「電磁波レーダー法」とは
電磁波をアンテナからコンクリート表面に向けて放射することにより、コンクリートと電気的性質の異なる物質である鉄筋や空洞等との境界面で反射され、機器の受信アンテナの受信に到るまでの時間から、反射物体までの距離を知ることができます。
平面的な位置は、機器を移動させることにより、位置情報を得ることができます。

特徴としてはコンクリートの湿潤状態や品質等に影響を受けやすいため、比誘電率をキャリブレートすることで鉄筋かぶり厚の精度を高めることができます。電磁誘導法より精度面は落ちますが、かぶりが厚い場合には有効な手段です。

コンクリート橋脚・大型コンクリート建造物等の耐震補強工事・改修工事のあと施工アンカー工事等に適していると言われています。

以上のように建築物では鉄筋の位置、かぶり深さを非破壊で調査することは可能ですが、鉄筋の太さを確認するのは 一部コンクリートを破壊しないとなりません。

既存の地中梁とかフーチングを丸ごと探査して位置・かぶり深さ・鉄筋径を3Dで結果表示してくれる機械があればなぁ~といつも思っています。

デジタル検知器

RC造やS造の配筋状態を調査する場合には、高精度の機器がある専門業者に依頼しているのだが、配筋の有無だけを調べたいときはデジタル検知器を使用している。

このデジタル検知器は、壁うらの鉄筋、非鉄金属、通電線、間柱、同縁を探知可能で
最大測定深度:金属:120mm、非鉄金属:80mm、通電線:50mm、木材38㎜なのでまあまあ使える。

上の写真は、ブロック塀の配筋状態を探査している。テープを張っているところが鉄筋が探査できたところ。

上2枚の写真は、軽量鉄骨造の鉄筋ブレースの有無を調べている処

このデジタル検知器は、住宅関係では布基礎の鉄筋の有無などの調査や壁筋違の有無などを調査する時に使われていると聞きますが、特殊建築物の基礎的な調査でも結構使えます。昨今は、簡易的な調査用機器が手頃な価格になってきて助かります。

調査現場での衛生管理

多数の人間が集中して調査を行う現場には、業務調査責任者とは別に衛生全体を指導する衛生管理者を配置している。コロナ感染リスクは長期間継続すると思われるので、こうした衛生管理の徹底を図っていきたい。

上の写真は、さる調査現場で説明した厚生省手洗いの手指の2回洗いの推奨。手洗い前と手洗い後の細菌数の調査では、1回洗いだと50%程度しか減じないが、2回洗いで90%程度まで減じる調査データがあるそうです。

手洗いには、ミューズ石鹸、消毒液、手拭き用ぺーパー、アルコール綿、専用ゴミ袋等を配置した。

トイレ使用時の説明、人-物感染防止の徹底。共用トイレでの人-物感染リスクが高いらしいが、あまり重視されていないとのこと。

弊社では、所有していた無水エタノールに精製水を加え消毒用エタノールを作っている。無水エタノールも現在では価格が高騰。平時の5倍ぐらいになっている。

ゴムラテックス手袋の装着を推奨、使用済みマスクや手袋などは専用のゴミ袋を用意。マスクは一日に何度か取り換えるように推奨している。マスクの価格は落ち着いてきており、市場に出回りつつある。

ゴミは分別

鉄筋検査(監査)

久しぶりに鉄筋の検査をしました。配筋検査ではなく、工事現場事務所で書類上の検査(監査)です。

鉄筋の場外加工の場合、問屋から出荷された鉄筋は加工場に搬入されます。そして加工場で加工された鉄筋が、後日工事現場に搬入されます。

通常受入検査時に工事管理者(現場監督)は、下記の点を確認します。
・メタルタグに記載の製造番号とミルシートに記載の製造番号が一致しているか。
・ミルシート記載の鉄筋の規格、径、長さ、本数などが設計図書と整合し間違いなく搬入されているか。
・ロールマークより鉄筋の規格、径、メーカーなどを設計図書と確認する。

ようするに、頼んだ鉄筋が間違いなく納品されているかの確認・検品作業です。

検査員は、これらが書類として整理されているのを確認するのですが、鉄筋検査は久しぶりだったので写真で整理されていた書類のロールマークの見方を忘れていました。でも写真を見ているうちに思い出してきました。検査予習は常に必要です。

上記の写真の見方は、D25、東京鉄鋼、SD345です。

住宅医に認定されました。

1月23日、一般社団法人 住宅医協会の住宅医検定会に臨みましたが、本日2月5日認定通知が届きました。

これから正会員登録をして正式に住宅医となります。

検定会の講評等で寄せられた意見・質問には、この場で回答したいと思います。

たぶん住宅医検定会に参加した人にしか、解りづらいものとなるかも知れませんが御容赦ください。


【Q :  リノベーション物件の不動産としての資産価値については どのように考えていますか】

【A :  既存建築物の検査済証の無い建築物は、建築基準法の集団規定が違反していなければ現在のところ購入の際に銀行融資は可能のようですが、既存建築物を売却したい場合「検査済証」が無いと買い手が中々つかないようです。買い手がついても売却希望価格よりかなり低減されると聞いています。本件のように検査済証の無い既存建築物を増築し全体として工事完了検査済証を取得して適合化することは、資産価値(価格)の下落を防ぐことができます。】


【Q  : 既存との一体増築ではなくEXP.Jにより構造的に分離することにした理由を、もう少し詳しく説明してください。】

【A : これは「増築等に係る制限緩和の主な条件(令第137条の2関係)・出典 東京都荒川区」PDFを見てください。kanwa-joken

本件は「増改築部分の床面積が既存部分の1/2以下」ですが → 「増改築部分の床面積が既存部分の延べ面積の1/20以下かつ50㎡以下又は大規模の修繕・模様替」ではありません。50㎡以下ですが1/20を超えています。 → 「増改築後に法第20条第四号となる建築物」とはなりません。軒高が9mを超えています。 → 「増改築部分と既存部分が構造上分離」ここで一体増築と分離増築の分岐点となります。一体増築なら既存部分は、現行法の「耐久性関係規定」に適合させなければなりません。分離増築ならば既存部分は「地震に対する耐震診断+暴風積雪に対する許容応力度計算」となります。

本件は、平成9年に確認済証取得で今回実施した建築基準適合性状況調査により適合しており新耐震建築物なので、既存部分の暴風積雪に対する許容応力度計算を実施しました。

一方、一体増築の場合は既存部分と増築部分を現行の耐久性等関係規定に適合させ地震+地震以外の構造計算を行わなければならない規定になっています。また既存は構造計算ルート2の建物ですから全体として構造適判の対象となることを避けました。増築部分は軒高を9m以下にしてXY方向ともルート1で構造計算を行いました。】


【Q  : 検査済み証の無い建物の増築にあたって「ガイドライン調査」ではなく「法12条5項報告」で行った理由をもう少し詳しく説明してください。】

【A :  平成26年7月に国土交通省は、既存建築物の建築当時の法適合状況を調査するためのガイドラインを公表しました。調査者は、国土交通省に登録した指定確認検査機関のみに限定しています。この通称「ガイドライン調査」は、法的根拠がない任意の制度です。そもそも指定確認検査機関は、特定行政庁の確認事務をおこなっているにすぎません。法第6条の2第8項に規定されているように特定行政庁が法に適合してないと認めたときは、民間指定確認検査機関の確認済証は効力を失います。その結果、指定確認検査機関、確認検査員、設計者は処分を受けることがあります。

既存建築物の現場では、調査方法や調査結果の判断も含めて建築主事の法的判断が必要となることが多く、決してマニュアルだけでは解決できない問題に直面します。

何故弊社が多くを「ガイドライン調査(民間指定確認検査機関)」ではなく「法12条5項報告(役所)」を選択しているかというと、危機管理意識の問題だと思います。その他具体的には様々な相違がありますが、それは個別に回答します。】

2019年度 第1回住宅医検定会・東京会場

1月23日 一般社団法人・住宅医協会の認定資格「住宅医」の認定をいただくために検定会に臨みました。私は2014年住宅医スクールを修了しているので受験資格がありました。

何歳になっても試験を受けるのは緊張するものです。

事例を15分で発表し10分質疑を受けるのですが、15分で納めるために説明を削りに削ったので中身のない発表になってしまったのではないかと不安でした。

住宅医協会は木造建築病理学を軸としているので、私が事例発表した重量鉄骨造3階建住宅の増築+スケルトンリノベーションは場違いかと思いましたが、都市住宅は非木造も多いので、参考にして貰えるのではないかと思い発表しました。

発表に向けて、竣工した仕事を省み、整理し発表資料にまとめることができたので良い経験となりました。

東京での検定会に臨んだのは7人でしたが、参加者は、それぞれの審査講評を各自書くことになっており、私も深夜書いて事務局に送付しました。

私自身は、40代の前半から今まで5回の入院経験があり、医療や医療施設については実体験が豊富です。それで私なりに考えた「医療」「医者」に置き換えて、参加者に配布された各自A3×3枚の資料と、発表を聞いていた時に書いたメモを基に読みなおし講評を書きました。

医者は、大学で学び医師国家試験に合格したあと研修医(インターン)となり各科で研修を積み医者として自立します。多くは臨床医に一部は研究医になります。

では「住宅医」とは、どういう認定基準で資格を与えるべきなのか勝手な解釈をしました。受験者は建築士資格者がほとんどで、住宅医スクールや木造建築病理学の修了者ですから、一定の知識は身についているものと思います。

しかし知識があれば良い建築ができるとは限らないように、知識や技術があっても既存建築物を扱う住宅医(臨床医)には、プラスアルファした能力が必要なのではないかと思いました。それはクライアントに寄り添う資質、そしてコミュニケーション能力こそが必要不可欠だろうと思うのです。診察・検査・診断・治療という診療行為をひとりで責任を持つて行える人なのかどうかというのも判断の基準となりました。

そして「住宅・正看護師」「住宅・臨床検査技師」「住宅・研修医」「住宅・研究医」「住宅・臨床医」という称号をそれぞれ付け加えました。上から目線ですいません。

では「あんたはどうなのよ」と言われそうですが、検定会の結果は1週間から2週間後に来るそうです。

「テセウスの船」

同名の漫画やテレビドラマで有名になった「テセウスの船」

ギリシャ神話を源とする逆説(パラドックス)のひとつで「ある物体の全ての構成要素が置き替えられたとき、基本的に同じといえるのか」という問題です。

私の学生時代・1970年代半ば、もう40数年前に議論したテーマなので、とても懐かしく感じました。恩師・伊藤ていじの研究室では、伝統建造物保存地区の保存修景や古民家に関わることが多かったのですが、夜更かししたり研究室に泊まり込んでおしゃべりしていたことのひとつでした。その他に「カルネアデスの舟板」(緊急避難)などもテーマにあげられたことがありました。

歴史的建築物の保存修景(当時は静的保存が主流でした)において、どこまで歴史的な構成要素を残すのが保存修景と言えるのか、実態が違っても価値は同じと言えるのか、そういうものを保存修景して歴史的建築物として残すことに意味はあるのか。そんな答えの出ないような議論をしていた記憶がよみがえってきます。

ここ数年、古民家をリノベーションした建物を幾つか見せてもらったり、聞いたりしました。その中には、基礎・土台・柱等をほとんど新規のものにし、歴史的構成要素は、全体のフォルムと一部の梁材等だけという事例を見うけることがありました。又用途が異なる動的保存が増えていますが、それらは改修した後も「古民家」と言えるのでしようか。中には解体して新たに建て直す、全ての構成要素を現代のものにし、古民家風に見せた方が良いではなかったのではないかと思うものもありました。

歴史的建築物の動的保存が増えている現代において、建築設計者達は「テセウスの船」について語り合ったりしないのかなと思ったりしています。

用途変更の設計者資格と工事監理者

先般 用途変更の確認申請書類を役所に受理しに行った時の事。

副本に、「着工前に工事施工者届、工事監理者届を提出してください。それが提出されていないと工事完了届は受理できません」とメモしてあった。

「用途変更は工事監理者不要では?」「(法第87条の)準用規定から除外されているはずだよ」役所担当者「ちょつと調べてみます」

用途変更については、建築基準法第87条の準用規定に於いて、200㎡超の特殊建築物の用途に変更する場合に建築確認申請が必要とされています。
しかし、法第87条の用途変更の確認に対する準用規定に於いては、法第6条3項は除外されています。
即ち、用途変更については建築士法第3条の建築士の業務範囲が確認申請を受理を拒否する理由にはなりません。
つまり、用途変更確認申請・設計は、資格に関係なく誰でも行うことが出来るという事になります。ただし これは申請上のことで、業務として報酬を伴うものは建築士事務所登録が必要となります。

建築士法第3条の、資格による業務範囲についても、新築、増築、改築、大規模修繕、大規模模様替えについては、可能な設計・工事監理の範囲を定めていますが、用途変更については記載がありません。用途変更をするに当たり、増築・改築・大規模修繕・模様替えが伴わないのなら、工事監理者の資格もその存在も問われません。

しばらくして役所担当者「工事監理者届は不要です」との回答。


2019年10月22日追記

*横浜市では、横浜市建築基準条令第56条の6、第1項、第2項で、用途変更でも工事施工者、工事監理者の選任届が必要と規定している。


現在では、この用途変更に関わる部分の建築基準法・建築士法の規定は問題ありだと思います。

例えば床面積10,000㎡の用途変更や10階建てのビル全体の用途変更(フルコンバージョン)でも工事監理者が不要という事になります。設計者の資格も問われない。工事完了検査は不要で工事完了届(ただし監察対象となる場合がある)のみというのは、いかがなものでしょうか。これで遵法性を保持できるでしょうか。

用途変更の確認申請料が民間でも役所でも低価格すぎないか? 少し申し訳なささもありますので、料金についてもここに記しておきます。

又、用途変更は建築確認申請に際して「建築工事届」の提出が不要な為、国交省の統計データーから除外されてしまいます。どのぐらい用途変更の確認申請があるのか、実態は消防の統計データーで把握しなくてはならず、総務省のデーターに依存しているような状態です。ちなみに東京消防局では、この数年 年間600件前後の同意数があり過去から見ると飛躍的に用途変更の件数が増加しています。

不動産の再構築

日本は、少子高齢化や建築物の老齢化、経済活動の低迷の影響を受け、従来のスクラップアンドビルドから、環境面にもやさしいストック活用型に移行しつつあり、今後もその傾向は一層拡大していくことでしょう。

高度経済成長時代(1965年~1973年)に作られた、企業や官庁の施設・インフラ等は、これから軒並み耐用年数を迎え、所有する不動産の再構築が必要となります。

補修して使い続けるのか、解体するのか、別の用途に変更するのか、新しく建て直すのか、色々な選択肢があります。

民間はCRE戦略、公的不動産はPRE戦略といいますが。各自治体では公的不動産の活用についての検討が進んでいます。

豊島区では、区議会の中に「公共施設・公共用地有効活用対策調査特別委員会」が設けられており「学校跡地、公共施設及び公共用地のあり方に関する調査」を行っています。調査項目としては 1.公共施設の再構築等に関する諸課題、 2.施設・用地の有効活用に関する諸課題について検討をしています。

公共施設の再構築を図るためには、すなわち「公共施設等総合管理計画」を具現化するためには、施設の現状把握が不可欠です。

その為には、各種調査診断(遵法性調査・劣化調査・耐震診断・省エネ診断等)を行い、施設の状態を正確に分析・評価することから始めなければなりません。

弊社の不動産の再構築のための建物調査診断は、

  1. 設計会社・施工会社とは立場の異なる専門建築事務所として建物を調査診断します。
  2. 目視だけでなく専門機器による科学的調査分析により建物の健康状態を正確に診断します。
  3. 補修箇所や補修方法を適切に判断し工事の優先順位付けを実施します。
  4. 耐震診断から補強設計、耐震化工事までを提案し実施します
  5. 長年の経験をもとに建築・設備等の総合的な調査を実施します。
  6. 建築基準法、消防法等、建物関係法令が遵守されているか法的な調査検証を実施します。
  7. リノベーション(増築・用途変更)等を想定した調査診断を実施します。

「世界コンバージョン建築巡り第16回・ヘルシンキ」

東京都建築士事務所協会のコア東京に連載されている首都大学東京教授の小林克弘先生の「世界コンバージョン建築巡り・第16回・ヘルシンキ」が、とても参考になった。

ヘルシンキのサブタイトルが「コンパクト・シティにおけるコンバージョンの有用性」。

フィンランドの首都・ヘルシンキは、人口60万人強のコンパクトシテイ。中心部から東西南の三方向の港湾地区まで徒歩圏という規模の街。小林先生は、それぞれの地区の性格が変化した場合は、建築コンバージョンによる都市整備が有効に機能する実例としてヘルシンキを挙げている。

ヘルシンキといえば昔・アアルトだが、現代建築でもスティーブン・ホールの「ヘルシンキ現代美術館」や、2018年12月にオープンしたヘルシンキ中央図書館「Oodi」等と興味深い建築があるのだが、コンバージョン建築も中々面白そうだ。

ヘルシンキは、地理的に都市拡張が限定されているので、コンバージョンが活用されているようだ。

サウスハーバーの「スカンディック・ホテル・グランド・マリナ」は、1928年のRC造倉庫を1992年に高級ホテルに転用した事例。「ワンハ・サタマ」は1900年頃竣工した平屋の税関倉庫を、1984年のコンペをへて8つの貸ホールとレストラン施設に転用した事例等 豊富な事例が紹介されている。

小林先生は「ヘルシンキ自体、都市化の歴史が浅いため、過去の建築を尊重するという姿勢が強い」。その姿勢がヘルシンキのコンバージョンを盛んに推し進める原動力と記す。

自分にとってヘルシンキは、にわかに興味深い対象になった。

民泊がやってくる -2

民泊事業者の説明会の翌日 地元の区議会議員に連絡を取った。

そこで目白5丁目の住民から「違法民泊から住民の生活を守る陳情」が今年の6月に提出されており7月の区議会で継続審査になっているという情報を得たので、区議会事務局で その陳情書を見せてもらった。

そこには民泊が周辺住民の生活権を著しく侵害しているという実態が写真付きで生々しく報告されていた。

民泊で発生したゴミは、全て事業系廃棄物として業者が搬出することになっているが、ペットボトル(中国語)、弁当、空き缶等の廃棄物がゴミ収集日以外の日に不法投棄されている。民泊施設管理者に注意喚起しても一向に改善されない。

クリーニング業者が狭い私道を塞ぐ形で1時間ほど駐車するので、通行が困難になる。

夜間 民泊利用者の室内の窓が常時開放され話声や騒ぐ声が大きい。

民泊利用者が路上喫煙を行い、煙草の吸殻をゴミ集積場所に投げ捨てるために危険である。

民泊利用者が私道を無断利用する。等々

幾ら事業者が民泊利用者に注意喚起の文書を配布したところで、あまり効果はなく、我々の危惧している事がそのまま発生しているのが実態である。

続く

民泊がやってくる -1

自宅兼事務所の道路を挟んだ向い側の家が民泊の届出の準備をしている。

先週、町会長から聞いて驚いた。

民泊予定建物は、以前木造2階建てだったが、売却され平成24年4月に現在の建物、鉄骨造2階建て105.25㎡(31.8坪)が新築された。敷地面積は99.17㎡(30坪)。家の間取りは見たことがないが、たぶん3LDKぐらいだと思う。築年数は7年。あまり近所付き合いのない人だったが、6月末に売却し転居していた。新しい所有者は豊島区内の不動産会社。

町会の要望で7月20日(土)の夜に集会場で事業者から説明を聞いた。

周辺住民が30人ぐらい集まった。

仕事として全国のホテル・ゲストハウスに関わってきたが、民泊には関わってこなかった。とりわけ民泊新法になってからは民泊からプチホテルへの変更には関係していたが、関係者から民泊はビジネスにならないと聞いていたので 手続き関係等について詳しく調べたことが無かった。

そこで豊島区の民泊条例について「手引き」等を読んでみた。

豊島区の民泊条例では、周辺住民の説明会を開催する義務がなく、届出の7日前に事業者が説明資料をポスティング等により周知すればよい。

事業者からの説明では、概ね20mの範囲の居住者には すでにポスティングしたと名簿と配布地図を示されたが、我が家には事前に配布されていなかった。その事を強く言うと「配布した」と強弁した。

しかし他者から、既に建物を取り壊して更地になっている所も配布したと名簿と地図に記載されているが、郵便ポストも無い所にどうやって配布したのかと問われて事業者は黙ってしまった。

事業者側は三名の出席があったが、チェックイン時間や喫煙の有無など説明の食い違いが目立ち、周辺住民からの意見・要望に対し事業者側から回答することを確約した。

続く

超音波厚さ計

中国の計測器メーカー品の「超音波厚さ計」

あまり薄いものは測れませんが、安価だったので買ってみました

取説が英語版のみ

息子に訳してもらい操作方法を教えてもらいました

たぶん測定器の価格よりアルバイト代の方が高くつきそう

錆止め塗装を落としカップリング材を塗っているところ

鉄骨埋込柱脚部からコラムの板厚を計測してみました

作業をしているのは、今年21歳になるインターンシップのI君

UT検査でもコラムの板厚は計測できていたので

板厚は、12mmというところでしょうか

「建築ストック再生・活用技術セミナー」 IN 大阪 終了しました。

【講師の伊藤さん】

5月15日、「建築ストックの再生・活用技術セミナー」IN  大阪は、会場一杯の参加者を得て終了しました。住宅医スクール関係・MOKスクール関係の人達の参加が多かったので、どうしても木造関係の話の方が馴染みやすかったようです。

これで企画・構想から始まった6ヶ月間の独自セミナーは終了しました。シナリオライターとしては、朝ドラが一本 ようやく終わったと言う感じです。

セミナー事務局長兼講師で、しかも 講師の中で一番長い90分という時間に変更したので、両方の準備が重なり 講師の方の準備が疎かになりがちでした。

それでも、この5年程の仕事をリフレクションでき、形にすることができたことは、大きな成果だったと考えています。

また、次の展開に向けての 足掛かりができました。

どこかへ行きたい

もともとゴールデンウィークにはどこにも行かないことにしている。かわいい孫達も遊びに来ることだし、天候も不順だけど、何だかどこかに行きたい。

頭を空っぽにする時間が欲しい。

キャンプにも行きたいが 時々ギアを買い集めるのとアウトドア関係の本を買うだけで済ましているものだから、余計ストレスが溜まってきて噴火寸前。

さて5月セミナーの為の原稿をようやく書き下ろした。

A4で30頁にもなった。

4月の東京セミナーでは原稿を作らなかったので言い忘れた事が沢山あった。

果たして90分で収まるだろうか。

配布資料を増やしてポイントだけ説明するようにした方が良いかもしれない。

原稿をパワポ修正チームに渡して作業に着手してもらわないとならない。

終わらしても終わらしても仕事が積みあがっていく。