「建築ストックの再生・活用技術セミナー」IN 東京 終了

【講師の大貫さん】

4月22日(月)「建築ストックの再生・技術セミナー」IN 東京 会場いっぱいの参加者を得て無事終了しました。

とにかく楽しいですね。

他の講師や参加者、若い人達から刺激を受けて。

一人で仕事をしていると家族以外とはあまり喋らないので、そのうち言葉を忘れて認知症になってしまうのかなと思うことがありましたが、しばらくは大丈夫のような気がします。

さて昨日は、回収したアンケートを読んだり、修正点を講師間で忌憚なく指摘しあうなどしました。改善(リバイズ)にむけての取組みが開始されています。みんな真面目ですね。来月の大阪セミナーでは、よりバージョンアップしたものを提供できるかと思います。

東京セミナーの参加者を見渡した限りでは、木造系の設計者・技術者が多かったので「古民家」のほうが親しみやすかったかなあと思っています。

現役時代はパワーポイントを自分で作ったことが無く、若い人の作ったもの、発表したものに意見を言っているだけでした。

60歳過ぎてから自分でパワポを作るようになり、まだ数回なので技術も稚拙ですね。

講師の野上さんが原稿を作っており感心しましたが、他の人に聞いたら原稿は必要と言われました。ということで早速原稿づくりに着手。

また全体的に弁当箱にいっぱい詰め過ぎとも言われました。聞いている方が満腹になってしまうそうです。もっとゆっくり喋れ、原稿作らないで喋るから雑談みたいになるんだと・・・

この連休にプロジェクトチームが、私のパワーポイントを修正してくれるようなので大阪セミナーでは よりわかりやすい内容にしたいと思います。

写真を取り忘れ、また依頼するのを忘れて大貫さんの写真しかありません。

4月22日(月)「建築ストックの再生・活用技術セミナー」IN 東京

以前から告知していました「建築ストックの再生・活用技術セミナー」IN 東京は、4月22日(月)にいよいよ開催されます。東京会場は、関係者の皆様の御尽力で満席となりました。ありがとうございました。

セミナーというと、とかく一方的になりがちですが、公開カンファレンス(症例・事例研究)に近づけることができればと思って取り組んできました。あまり名前の知られていない建築事務所4社が共同開催なので、「上から目線」ではなく「事例研究」よって今後とも参加者と経験を交流していければと考えています。

カンファレンスは医療の世界のみならず、最近では弁護士事務所の中でも行われていると聞きます。しかし建築の世界では あまり事例がありません。上下の関係が強い企業の中では難しく、こうして設計者や工事関係者が経験を持ち寄って技術や意見を交換することが、技術的な課題も多く残っている「建築ストック再生・活用」の分野では とりわけ大事なのではないかと思っています。

準備は概ね出来てきましたが、私の担当分野については、お話しすることの推敲を未だ行っているところです。

「建築ストックの再生・活用技術セミナー」を開催します

このたび「都市×地方それぞれの建築ストック再生」を副題として「建築ストックの再生・活用技術セミナー」を開催する運びとなりました。

弊社で近年取り組んできた都市の多層階住宅のリノベーション・重量鉄骨造検査済無建物の増築改修と、野上氏・大貫氏が取り組んできた養蚕農家のホテルへのリノベーション・増築改修の二つのテーマで公開セミナーを行います。いずれも調査・申請・設計というプロセスに焦点をあてた実務者に役立つセミナーになっています。

講師陣・建築系事務所4社共同主催・共催 (一社)住宅医協会です。

是非 御参加いただけれは幸いです。

【東京会場】4月22日(月)13時~17時 連合会館401号室

<終了しました>

詳細及び参加申込書・PDF

ストック再生セミナー・東京

【大阪会場】5月15日(水)13時~17時 (株)ニチネン本社4階会議室

<終了しました>

詳細及び参加申込書・PDF

ストック再生セミナー・大阪

*新建ハウジング・WEBで紹介されました。新建ハウジング

*(一社)住宅医協会・WEBで紹介されました。住宅医協会


【3/26 講師陣打合せ】

4人の講師陣がセミナーで発表するパワーポイントを持ち寄り、それぞれの担当部分を説明し、みつちり4時間にわたり意見交換等を行いました。調査・申請・設計にわたるプロセスが詳細に語られ、経験やノウハウも語られるレベルの高いセミナーになりそうな予感がします。

リノベーションセミナーは最近多くなっていますが、どちらかというと「まちづくり系」で、実務者(建築設計者・建築技術者)の知りたいことに寄り添った「技術セミナー」は、あまりないと思います。今回のセミナーは、再生・活用技術を深化させたセミナーとなっています。

野上氏・大貫氏の養蚕農家を旅館にリノベーションした事例は、木造の一体増築にチャレンジした意欲的な作品です。用途変更した事例は数多いのですが一体増築は現行法の構造規定に遡及しなければならないので技術的にハードルが高く、それをひとつひとつクリアした経験が述べられています。プレゼン資料も美しく、説明も親切で感心しました。

私、寺田と構造設計担当の伊藤氏による「多層階住宅のリノベーション」は、数件の同様事例を比較する事で、法的な問題点、調査項目や行政の対応など分かってくる事が多いと思います。そして今のところ重量鉄骨造の多層階住宅がスケルトン・インフィルが実現できる最適な構造ではないかと考えています。

個々の説明時間を調整した結果、私の持ち時間が増えました。

また学生参加費を1,000円としてリノベーションに取り組んでいられる大学の研究室を通じて参加をお誘いすることにしました。


【4/10 東京セミナー満席】

おかげさまで東京セミナーは、満席となりました。

東京セミナーは秋田県、宮城県、群馬県、名古屋市、埼玉県各地等 遠方からも参加申し込みがあり、建築ストックの再生活用技術への関心が全国各地に広がっていることを新めて実感しました。

ありがとうごさいます。


 

 

「リフレクション」

「リフレクション」(省察・内省)という言葉がビジネス界や教育現場で注目されているようだ。

「リフレクション」とは実践を振り返り教訓を導き出すこと。「リフレクション」を「主要能力の核心」と位置付けているところもある。反省とはことなり実践して起きた事象を振り返り本源的なものに気付く事と本には書かれている。

現役の頃は、忙しさにかまけて振り返ることがなかった。今も現役と言えば現役で、たぶん今の方が仕事の時間は長いと思うが、毎週毎週作らされた業務報告書や会議に忙殺されていたころよりも何故か時間を作れる。現在は、年に一度程度セミナーをすることでようやくリフレクションすることができている。

今年東京と大阪で開催する「建築ストックの再生・活用技術セミナー」は、多層階住宅のリノベーションに対象を絞ってリフレクションした為に、色々な課題が明確になった。

ほとんど書下ろしみたいな内容になっているので、以前のセミナーで使ったパワーポイントのページはあまり使えなかった。現在も4月22日のセミナーに向かって推敲を続けているが、自分なりに面白いもの、若い技術者に役立つものに仕上がってきたと思っている。

このセミナーには東京会場では、宮城県・群馬県・名古屋市等の遠方の方々。大阪会場では福岡・金沢・兵庫・奈良等と全国各地の方々から参加申し込みがあった。

私なりのリフレクションを公開できると思う。

 

用途変更確認申請200㎡以内は不要・幾つかの危惧

2018年6月の建築基準法改正による施行日(現在未定だが2019年6月27日迄)が迫ってきた。

今まで4号建築の用途変更が少なかったのは、工事完了検査済証が無い建物が多かった事にも起因している。今でこそ全体の完了検査率は90%ぐらいになってきているが20年前の平成10年前までは、完了検査率は40%以下だった。多分4号建築物に限るともっと完了検査率は低いと思われる(国交省資料)。

工事完了検査済証が無い建物は、実態的に違反建築物が多いため違反部分の適法化工事や建築基準適合性調査に一定の費用がかかる。その為個人の費用負担が多額なる事が多く用途変更を断念する場合が多かった。

4号建築は工事完了検査済証が無くても使用開始出来た事。済証がなくても登記や融資を受けれた事。社会の遵法意識が低かった事。戦後の建築基準法等の弱点である「負の遺産」の集積を現在に引き継いでいる。そうして実態的に違反建築物を社会に広く存在させてしまつた。今回の用途変更確認申請対象面積の緩和は、これら負の遺産である「違反建築物を恩赦」しようとしているようにも思える。

何しろ既存住宅の30%は100㎡以下だが、200㎡以下だと既存住宅90%が恩赦の対象となる。そもそも、この法改正は空家住宅対策と言う事だったが、改正基準法では、法第6条第1項第一号の「100㎡」を「200㎡」に改正しただけなので4号建築だけでなく1~4号までの全ての建物に適用される。

200㎡以下は用途変更確認申請が不要になることによって建築設計事務所と指定確認検査機関の業務が一定量減じることは間違いない。

「確認申請は不要だけど遵法性は保つてね」というは、現実的には悩ましい。

最近の事例で、RC3階建てのリノベーションで用途変更変更確認申請等が不要と言う事でインテリアコーディネーターが「絵」を描いた。出来た「絵」はRCの耐力壁がきれいさっぱりなくなり、床に大きな開口があく、文字通り「自由な設計」だった。たまたま関係者が一級建築士が構造安全性を担保してくれないと工事できないと言ったので検証したら、床は補強すれば何とかなるが耐力壁の開口は駄目。

建築業界では、ともすれば「法の規制を受けない」「構造安全性からの解放」「避難安全性の制約を受けない」ことが設計の自由度が高まったと受け止められる。

「違反建築物に恩赦」を与えることで遵法性意識のある建築士、建設業登録をしているような施工者は「建築ストックの活用」に関与できる機会がかえって少なくなるのではないか。

「自己責任」「設計者責任」だけが重くのしかかりそうだ。

私が事業者なら、コンビニ、保育園、ディーサービス、共同住宅、ホテル等の特殊建築物で、その面積に近いものは全て200㎡以下で成立するように、基本設計の見直し用途変更確認申請は不要ととして諸費用の削減、工期の短縮を図るだろう。

建築ストックの活用が増えると手放しで喜んでもいられないのではないかと思った。

ボルトが無い・・・

【3/8 ING】

昨年の秋に着工した荒川区内の多層階住宅のリノベーション。住みながら工事をしていて3階部分と1階部分の内装が完了。これから2階部分と前面増築部分の工事を行うところで、全体をまとめている人、基礎工事、鉄骨工事の人達から施工上の要望を聞きながら打ち合わせをした。

基礎工事の会社の人からはコンクリート量が増えても良いから型枠を単純にして欲しい。鉄骨工事の人からはハイテンションボルトのM16がなく、M20なら少し在庫があるので変更して欲しい旨の要望が出された。M16の入荷を待つと鉄骨建て方が8月以降になるらしい。

ハイテンションボルトが無いということは聞いていたが、現実に自分の現場でも直面するとは思っていなかった。

ハイテンションボルトM16をM20にした場合は、軽微変更で良いのか ?

規則第3条の2を読む限りでは「軽微変更」で良さそうだが確認しておこう。

【BEFORE】

道路側に増築する為にバルコニーや屋上部分の跳ねだし部分を全て解体撤去した。既存サッシも幾つか変更したので外壁は全面再塗装。周囲の建物が「下町色」だから明るい色が良いかな。屋上防水も一部補修してトップコートを塗り替える。

「ならのきの家」構造見学会

3年ほど前に建物調査に参加した埼玉県川口市内にある築175年(棟札・天保14年)の古民家の構造見学会に参加して来た。

調査時点で床下や茅葺屋根の劣化が判明していたが、基礎は布基礎・土間コンクリートに、土台や柱の多くは新材に変更されていた。屋根は茅葺を止めてガリバリウム鋼板になるらしい。

豪快な小屋梁はそのままだ。

2018年12月に棟上げし、竣工後は、居宅+カフェになるとの事。

  • 調査、設計 : サンカクスケールLLP(木村慶一級建築士事務所・スピカ建築工房)
  • 施工 : 日沢建設(青森県三戸郡)

多層階住宅

【箱根で見つけたタイルを張ったベンチ・お尻が熱かった】

最近の仕事の依頼は「多層階住宅のリノベーション」しかも「検済無」が圧倒的。

恐らく弊社の事務所兼住宅が豊島区の密集市街地にあり、まわりにあるのは3階建て以上の多層階住宅で「職住近接」「店舗併用住宅」が多いからなのだとは思う。居住しているからこそ地縁・人縁も年月が経っにつれ広がっている。

新築で建てた建物も20年も経てば家族構成も変わるし、下階にあった事務所や作業所も不要になったりする。高齢化に伴いエレベ―ター設置の希望も多い。住宅が不要になって他の用途に変更したいという相談もある。

既存の多層階住宅のほとんどが重量鉄骨造で、これが意外とスケルトン・インフィルで内部間仕切りの可変性が高い。鉄骨造特有の内部結露を起こしている建物も多いが、これは断熱改修をすれば改善する。

何度か郊外に移ろうかとも考えたこともあるが、交通の利便性がよいのでこの地が捨てがたい。三多摩等と比べる生鮮食料品等の物価は高いし品質も悪いと感じるが・・・。

しばらく「多層階住宅」の可能性を探ってみようと思う。

検済無・横増築・多層階住宅のリノベーション・荒川区町屋PJ

築21年、鉄骨造3階建て既存延床面積182㎡の建物の前面道路側・横に増築するプロジェクトです。既存建物の工事完了検査済み証がなかったので建築基準適合性状況調査を行い、荒川区に法第12条第5項報告と建築確認申請を提出しました。

建築主からの最初の希望は、屋上に増築して4階をつくりたい。新築する時に施工会社に依頼したし、上増築が出来るようになっていると言われていた。と言う事でした。

既存建物の構造計算書が残っていたので検討した結果。確かに屋上の積載荷重を多く見ていましたが、逆日影で検討したところ屋根裏部屋のようなものしか出来ない事。直通階段の設置が難しい事。既存建物全体の補強工事や法適合工事がかかる割には要望する空間が得られない事。つまり投資対効果が悪い事から4階増築は断念し横増築に変更しました。

既存建物が建てられた頃は建ぺい率が60%でしたが、その後の都市計画の変更で建蔽率が80%に変更されていましたので、横増築が可能となりました。

この物件は、法第12条第5項報告が比較的短期間にスムーズに終了しました。一番の理由は、荒川区が検査済証の無い建物の調査について調査報告書の指針・書式等を完備しているからだと思います。都内で自前の書式等を整備しているのは荒川区だけです。イレギュラーな部分は打合せ協議をし、物理的調査について調査者の判断で良いのかあるいは第三者機関の証明が必要なのか個々に打合せしておけば良く、後から追加調査が必要となるような追加指示がありませんでした。勿論弊社の調査報告書の完成度が高かったと言う事もありますが、行政側の方針がゆるぎなかったと言う事が一番の要因です。

既存延床面積182㎡+増築面積33㎡ 合計215㎡で1階から3階までが多層階住宅(二世代住宅)となっています。また新たに3層用ホームエレベーターを設置しています。建築確認申請上の工事種別は増築となっております。

【建築場所】東京都荒川区町屋
【法的規制】準工業地域・準防火地域・容積率300%・建蔽率80%
【既存書類・図書】意匠図・有/設備図・有/構造図・有/構造計算書・有/各種施工報告書・無/工事中写真・一部有
【調査・設計・許認可申請】株式会社 寺田建築事務所
【構造設計】一級建築士事務所 ビオス
【法12条5項・建築確認】荒川区

古民家の宿・川の音

群馬県神流町の古民家の宿「川の音」

6/26 OPEN

先日、設計者の野上恵子さんと大貫修二さんから、この古民家の調査から設計でぶつかった諸問題についてお話を聞いてきました。調査から竣工まで約2年間この案件に関われてたと聞きました。同じような案件があった場合を想定して色々と意見を述べさせてもらいました。

調査資料や設計図書を見せていただき群馬県神流町のサイトから古民家の宿「川の音」の写真を見て中々の労作だと思いました。

「建築ストックの再生と活用」と言っても 関係者の汗が滴る献身があってこそ こうして世の中に出ていくのです。

地図で見たところ あの御巣鷹山の麓である上野村の下流にあります。

遠いけど、ちょっと行ってみたいなと思っていますが、まる一日のんびりできるのは秋までお預け状態が続いています。

それにしても野上さんから頂いたジャンヌトロワのオレンジピールは、大人の味で美味しかった。

群馬県神流町・古民家の宿「川の音」

 

「リファイン建築が社会を変える」青木茂著

青木茂さんが首都大学東京を退官するに際して、青木さんの仕事を支えてくれた10人の方々と対談し、10年間を振り返るという内容の対談集。

中々示唆に富む指摘が散りばめられていた。

私が、建築法規の分野から建築ストックの再生と活用に関わりだし始めたのは、随分と前からなのだが、本格的にはリタイアしてからの この5年。

今でも、建築ストック活用プロジェクトの建築法規の領域だけに関わることが多いが、最近では直接 建築主から依頼され調査・申請・設計監理まですることも多くなった。

久しぶりに設計に直接かかわりだすと、やはり設計というのは法規や施工、構造・設備に目を配らないとうまくできないことを実感する。設計こそが鍛錬の近道なのではないかと 今更ながら思う。

建築ストックの再生と活用には法的調査が必須だが、新築と異なり現代法のみ勉強していれば良いというわけではなく、それに加えて現代法の改正履歴を学ぶこと、さらに明治から昭和25年建築基準法成立までの近代建築法制史(市街地建築物法だけでも)を学んでおく必要があると思っている。

いつまで経っても勉強することは山ほどある。

現地詳細調査 -4

荒川区町屋の鉄骨3階建て外壁・屋根ALC版t=100の建物・築27年

外壁劣化・屋上防水に際立つた損傷がなかったので、内部結露であろう。3階天井裏すなわち陸屋根屋上の下の鉄骨部に発錆が見られた。鉄骨造の建物では、鉄骨部の発錆は比較的よくある事象である。

恐らく天井裏に敷き込んだグラスウールt=50に保水し結露したものと思われる。鉄骨部材・材質調査を担当していた調査員が 簡単な温湿度測定を実施してくれたが、外気温と3階室内、3階天井裏では温度はほとんど変化がなかったが、3階天井裏の湿度は外気に比べて15%程高かった。

言われたことだけ自分の担当部分だけ調査するのではなく、常に建物全体を総合的に目を配る調査員になってくれれば調査員としては一流だ。

1階の西側外壁面の内壁の石膏ボードにカビが発生していた。これも壁体内結露だろうと推測できる。

こうした詳細調査を通じて既存建物の問題点が浮かび上がる。既存建物の温熱計算をして、断熱改修を検討する必要がありそうだ。

鉄骨の部材や材質の調査の為に天井点検口を設置し天井裏を覗いたのだが、鉄部の発錆から、その場で総合的に考えるのが大事だと思っている。調査が外注だと温湿度計で測る事などしてくれないだろう。調査員達で事象から意見交換を行い方向性を見出すことができた。

現場調査準備工事・荒川区町屋

昨晩 新千歳夜9時発の飛行機で東京に戻り、自宅に着いたのは少しばかり日が変わっていた。ちょっと疲れた。

今朝は、荒川区町屋の鉄骨造3階建ての検査済みの無い建物に、エレベーター等を増築するのと二世帯住宅にするために全面的に改装する計画の詳細現場調査の準備の立会。

都市住宅は、一方向だけ道路に接している場合が多く、他は建物と敷地境界との離隔距離が無い為、地面下の調査には苦労する。

予想通りではあるが、排水管と建物との間にはガス管が敷設されており、下部には水道管等が敷設されていた。この隙間でコンクリートコアを抜くことができるだろうか。コアが抜けなければシュミットハンマーで調査するしかないかなと思案する。

コアを抜く予定の他の二カ所は、スラブ配筋でコンクリートが厚かったので斫るのに苦労した。配筋はD13@200縦横だった。

地盤が悪い為に耐圧版なのだがコンクリートガラを粉砕した再生砂で埋め戻しし、よく転圧してからコンクリートスラブを打設していた。地中梁の施工状態も良好で、最初に施工された基礎工事会社はいい仕事をされている。

明日の、現場詳細調査の準備はできた。

現地詳細調査 -3

鉄骨の材質調査の為にサムスチールチェッカーを使ってみた。

物事は全て準備が必要で検査部分の錆止め塗装と黒皮をサンダーで除去した。

調査部分に測定用プローブを押し当てる。

メーターの針が赤い表示部分(SS400)を示している。

梁・柱・ダイヤフラムを検査する。

この建物の建設時期はSS材とSM材しか使っていなかった頃だからサムスチールチェッカーでも事足りるだろう。

最後に調査チーム全員に、サムスチールチェッカーを体験してもらった。

鉄骨の材質調査をしてくれる会社はそう多くない。まだビジネスにならないからだろうか。今回も弊社で測定器具をレンタルし、天井裏の狭い個所でサンダー掛けをしてから測定を行った。

時々、一級建築士だか職人だか わからなくなってくることがある。

塗装を落とすのに、紙やすりではかったるいので、サンダーと替え用品を購入した。ついでに電源コードのドラムを買い。脚立も買い。安全保護メガネや高性能防塵マスクも買ってしまった。それに養生関係の諸品や掃除用具も用意しなければならなくなった。

調査に来ている姿かたちからは、ただの職人にしか絶対見えないだろうな。

現地詳細調査 -2

現地詳細調査も物件の規模等に応じて調査チームを編成しないとならない。今回の八王子の場合は、重量鉄骨造2階建て200㎡以下と規模は小さいので、以下のように調査チームを編成した。規模が大きくなるとそれぞれの調査パートに補助員を付け研修する事もあるが今回は内部も狭いので調査員だけとした。

  • 内部実測調査 1人
  • 外部実測調査 1人
  • 外部劣化調査+傾斜測定+床高低差調査 1人
  • 鉄骨部材及び材質調査 1人
  • 統括(私)

以上5人の調査チームである。その他に非破壊・微破壊検査の方々

外部の実測調査を担当した人は 某会社の社長夫人で一級建築士。普段は主に住宅関係のリフォームの図面を書いているとか。今回が調査参加4回目なので補助員から調査員に昇格。

実測調査4回目ともなれば、こちらが調べて欲しいことをきちんと見ている。

Q  電気の分電盤の写真撮った?

A     撮りました。12回路です

Q    契約アンペアは?

A    45Aです。

Q    電柱の番号調べた?

A    写真撮りました

ふむふむ 成長著しい !(^^)!

建築ストックの業務では、既存の「調査」はかなり重要な要素。

いざ仕事が決まったから学生を集めるとか、他社の所員を借りるとか、調査に不慣れな人を人海戦術で というのでは いい調査にはならない。また一級建築士を持つていれば正確な調査ができるというものでもない。

調査をする人を常日頃 自社で養成しておくことが必要。ただし社員を増やせという意味ではない。どうやって優れた調査員を養成していくのかは課題でもある。

そんなことは調査会社に頼めばよいのだと言う人もいるだろうが、そう気にいる手頃な価格の調査会社は中々見つかるものではない。

それにアウトソーシングしていると、どうしても自分達で考える力が低下してしまう。

しかも特殊建築物の調査が出来る人はそう多くない。規模が大きくなると法令の知識が必要不可欠になる。しかも建築基準法に限れば現行法、改正の履歴、そして戦前の市街地建築物法についての知識も必要になるが、この事については又書く機会があると思う。

現地詳細調査 -1

4/18に掘削して露出した地中梁の配筋探査。白いチョークで書かれた線が鉄筋の位置で数字はかぶり厚さを示している。

下の方の穴が圧縮強度試験にかけるコンクリートコアを採取した穴で、上の方の穴は鉄筋の交差部で鉄筋の径を調べるために開けた穴。主筋D-22であることが確認できた。

無収縮モルタルで穴を埋めた。

埋め戻しは、私が行った。久しぶりに汗をかいた。今日の身体を使った労働はこの埋め戻しだけ。砕石とコンクリートの復旧は、増築工事をするときに一緒にしてもらおう。

自分で埋め戻しをしたので多少外注費を減ずることができた。家族で焼肉ぐらい食べれるかな。

日本建築センター・技術セミナー「欧州各都市のリノベーション等(改修・用途変更)の事例を紹介しながら、既存建築物の活用術を学ぶ」(団地再生、産業遺産(工場等)、駅舎・港湾まで)

4/18午後から、日本建築センターの技術セミナー「欧州各都市のリノベーション等(改修・用途変更)の事例を紹介しながら、既存建築物の活用術を学ぶ」(団地再生、産業遺産(工場等)、駅舎・港湾まで)に行ってきた。

ほとんどが欧州のリノベーション事例の紹介だった。既に雑誌や出版物で紹介されているもので「技術セミナー」と銘打っているにもかかわらず、意匠的観点に終始しテクニカルな分析はなかった。

例えば、欧州の共同住宅で上に一層ないしは二層増築する事例が幾つか紹介されていたが、欧州の法規制には明るくないが、日本で上増築しようと思ったら基礎耐力の問題だけでなく建築基準法が遡及するために全て現行法に適合させなければならない。非常に難関のプロジェクトになってしまう。

新耐震の建物であろうと地震力が増大するから補強が必要だし、現行法に適合させなければならないので様々な部位を構造的に検証し補強しなければならない。審査機関からも構造適判機関からも矢が束になるような指摘が降ってくる。

日本建築センターが主催している技術セミナーなんだから、法的な問題点を挿入してくれると良かったのにと思った。

「建築ストックの再生・活用には、柔軟な法規制が必要だ」とは、色々なところからよく聞く話だが、具体的な改正試案は見たことが無い。

欧州と異なり、20世紀後半の建築ストックを再生・活用することになる日本では、RC・S造の耐震診断や補強技術は比較的体系化していると聞く。建築病理学・耐震診断・補強技術を集大成すれば、世界を牽引する技術力を持つ事になると思う。

「建築ストックの再生と活用」を担う建築家は、デザイン至上主義ではまとめ上げれないのではないかと思う。かなりテクニカルな面も詳しい「ドクター・ゼネラル」でないとプロジェクを牽引できないだろう。

ともあれ、欧州特にオランダには行きたいと思い少しずつ調べていたので参考になったセミナーだった。

現場調査準備工事・八王子高尾町

今日は、現場調査の準備工事の立ち合いの為 朝から八王子へ行った。

またしても検査済証の無い建物の用途変更+増築 調査・申請・設計業務の為の現場詳細調査。

明日のコンクリートコア採取の為に土間を掘削した。立水栓があったので水道管に注意しながらコンクリートカッターを入れたのだが、あまりにも浅い位置に敷設してあったので、給水管も排水管もカッターで切ってしまった。

あとからの工事だったんだろうな~。あまりに浅すぎる敷設。まあよくあることだ。

配筋探査とコア抜きの為に掘削の位置を少し拡大した。

鉄骨の調査の為に天井点検口を設置した。

ハイテンションボルトは、トルシア型を使用しているようだ。鉄骨の溶接の状態は良さそう。ダイヤフラムも図面どうりで一安心。

明日は、詳細調査だ。

木材の材質調査

以前 鉄骨造の既存建築物調査で鉄骨の材質調査方法について書いたことがあるが、では木造では樹種の特定はどうしているのか、古民家等で限界耐力計算をするときに樹種の特定や木材の強度がどの程度あるのか、どうやって判断しているのかと疑問に思った。

そこで分かったことは、通常は樹種の特定は目視だそうだ。匂いでわかるという人もいたし、適当と言い放す人もいた。木材の割れの比率で強度を低減するという人もいた。ようするにまちまちで 木造病理学と言っても材料強度についてはあまり深く研究されていないようだった。

しかし 世の中には、そういうことを研究する人がいることが分かった。またそういう計測器があるそうだ。

上の写真は、木材試験機ファコップ / FAKOPPというハンガリー製の測定器。一台税込定価842,400円という高価な測定器だ。商品説明書にはこう書いてある。

「打ち込みセンサーに衝撃を与え、発生するエネルギー(応力波)が受信用センサーに到達するまでの時間(μs)を測定します。物質に振動を与えるとその振動(衝撃)は地震の波のように伝達します。 ファコップはその原理を応用した高性能な伝播時間測定器です。 木材の片側から衝撃波を発生させ、反対側の受信センサーに到達するまでの時間から、木材内部の腐食、空洞や密度などの推測が可能です。」とある。

岐阜県の建築アカデミーで1台所有しているそうで、「微小な時間(マイクロ秒)単位を 測る”ストップウォッチ”のイメージ」のような測定器と吉野先生からは教えられた。

「ヤング係数=伝播速度の2乗÷密度
(Pa)  (m/秒)  (kg/立米)

という関係があり、柱、梁、桁のヤング係数の 推定に使われています(まだ実験段階?)。

1)パラメーターに密度があるので、密度がわからないと正確に推定できない。
⇒密度を統計学的に扱うことで、この問題点の解決を名古屋大学農学部
の山崎真理子先生らが研究されています。

2)測定値が相当ばらつくたたき方によって、数値がかなり変わるので
たくさんたたくとか、たたき方を一定にするとかの工夫が必要です。」

ということで名古屋大学農学部 の山崎真理子先生が研究されていることが分かった。別ルートでも山崎先生に辿りついたので この分野では山崎先生が権威なのだろう。

古民家をコンバージョンする相談がきており、その時に木材強度の推定をやってみたいと思っている。

 

林マンションリファイニング工事・完成見学会

青木茂建築工房が設計した(仮称)林マンションリファイニング工事の完成見学会に行ってきた。環七沿いに位置する昭和41年に建てられた築52年の検査済証が無い共同住宅兼店舗をリファイニングした。

既存バルコニーの手摺壁はRCだったが、それを撤去し軽量化を図るため有孔折版に変更している。周辺の建物と比較しても今風に軽やかな感じに仕上がっている。

エントランス部分

この建物の特殊性は、工事完了検査済証がないことに加えて旧耐震の建物で、かつ昭和41年建築確認申請取得ということで都市計画法の容積率の定めがなかった時代の建物で、現行法では容積率300%となっているので既存不適格。第三種高度地区なので既存不適格。住居地域から現行は準住居地域で日影規制にかかるので既存不適格ということ。

ようするに建築基準法の「増築」に抵触すると現行法に適合させる必要があるために、既存建物を減築しなければならない。

そこで耐震改修法に基づく認定及び工事種別大規模の修繕による建築確認取得を行っている。

法第12条5項報告(大田区)と耐震診断+耐震補強+耐震促進法認定+耐震第三者評定という面倒な仕事の合わせ技を行っている。

手続き的には 悪知恵を発揮した建築と言えるかも知れない。

個人的意見としては、都市計画法や建築基準法の集団規定に既存不適格な建物を青木流外科手術を施して(リファイニング建築)延命させることが、果たして世のため人のためになることなのだろうかと思った。

鉄骨材質調査 -2

従来、現場における鋼材種別の調査には、サムスチールチェッカーで行われることが多かった。現在でもサムスチールチェッカーで調査しても良いというところもある。

【鋼材判別機 サムスチールチェッカー M-100型】

アナログ、現在は製造中止。しかし現在でも機器をレンタルしている会社もある。

【鋼材判別機 サムスチールチェッカー D-200型 立花エレテック】

デジタル、M-100型の後継機

サムスチールチェッカーはSM490とSS400の区分を行う装置。SN材等の種々の鋼材が用いられている現状に対応しない面がある。サムスチールチェッカーは、シリコン、マンガン量を電気抵抗率で評価し鋼材の種別を判別しているためその条件に当てはまらない場合があると言われている。

サムスチールチェッカーは、SS材とSM材しか使っていなかった時代の鋼材判別には向いているのかも知れない。

レンタル機器としても広く普及しているし第三者機関の検査は特に必要ないという時は、諸注意に留意して操作すれば専門家でなくても扱えれる機器である

いずれにしても鉄骨材質調査をする場合は、相手先とよく打合せして調査方法を決める必要がある。

 

鉄骨材質調査 -1

3/18(土)は、午前中はお客様立ち合いのもと既存建物の調査下見をして、電車で移動し別現場の鉄骨材質調査の立会。

既存建物の鉄骨材質調査の方法は幾つかある。弊社は化学成分分析を依頼することにしているので、今回はその化学成分分析のための検体を採取をするのが主目的。

柱は、不純物が混入しないようにサンダーで研磨し錆止め塗装や黒皮をとりドリルで切削して切削片を採取する。

切削片等10gを袋に入れ計量する(1gは袋の重さ)で封をする。

梁は アトラーで穴あけをしてもらい切削片(円形)を採取してもらう。こちらは材質分析の試験方法が異なる。

一般的に「鉄骨材質調査をしてください」と言われてもどのような調査方法をするべきか示されないことがほとんど。既存建物の鉄骨材質調査にはサムスチールチェッカーやハンドルヘルド型蛍光X線分析、硬度計によるものなどあるが、どれも一長一短があり、非破壊検査系は計測器そのものが高額な事もあり意外と高額になる。弊社は、一番確実で結局は低価格で済む化学成分分析を採用している。

それにしても午前と午後のダブルヘッダーは少し疲れる。この日昼食が摂れたのは午後5時近くで結局は立ち食い蕎麦。結構動き回っているのに何故か体重が減らない。思い切ってライザップに行くか ?

御堂の調査

お寺の15㎡程の御堂の調査をした。

境内の別棟なのだが、検査済証がなかったので調査をすることになった。

御堂のコンクリート基礎の、わずかな立ち上がりからコンクリートコアを採取し圧縮強度試験にかける。問題は濡れ縁下に潜り この狭い個所からコアを採取できるかどうか。

縦に白いチョークで書かれているのは、鉄筋探査機で鉄筋が確認できたところで「100」という数字は鉄筋のかぶり厚を示している。コア抜き機械を取り付ける為にアンカーを打ち当て板を取り付けているところ。上端筋が配筋されていることが予想されるが狭い為に鉄筋探査機で探査出来なかった。

コンクリートコアを採取しているところ

タイル面を汚したくなかったので養生シートでプールをつくりバキュームしながらコア採取を続ける。

コア採取完了

採取した試験体

最後は無収縮モルタルで穴埋め

この日は、4本採取して3本を圧縮試験に回すことになった

 

日経アーキテクチュア 専門セミナー「改修で失敗しない素材&技術講義」

今日は、昼から日経アーキテクチュア 専門セミナー「改修で失敗しない素材&技術講義」と題した青木茂建築工房の話を聞いてきました。

青木茂さんといえば建築ストックの再生・活用である「リファイン建築」の生みの親であり再生・活用分野の先駆者でもあります。

青木茂建築工房の皆さんの講義で、調査からデザイン・工事監理までされ、ファイナンスも業務提携していると聞いて セット・メーカーだと感じました。

それに比べて弊社は調査と手続きを主として行うデバイス・メーカーです。何しろ2人だけの事務所ですから・・・。

段々 青木茂建築工房の扱うリファイン建築は規模が大きくなっていますね。

業務の進め方は、弊社とさほど変わらないようで安心しました。

「調査なくして設計なし」という事で調査業務を大事にしているところは、同じベクトルなのでとても共感を持てました。

また アイソメによるわかりやすいプレゼンテーションで大変参考になりました。これからは、弊社もアイソメで説明図を作成しようと思います。

平成29年度 国立研究開発法人 建築研究所講演会

今日は、朝から平成29年度 国立研究開発法人 建築研究所講演会に行ってきました。

と言っても、理事長挨拶と「既存住宅の躯体の生物劣化発生確率に関する分析~100棟超の既存木造住宅劣化状況データーベースの分析から」材料研究グループ 上席研究員 槌本敬大氏の研究成果報告を聞いただけで退席し、有楽町で知人と昼食をとりながら打合せをしてから帰宅しました。

万年寝不足のせいか、講演会場の居心地がよかったせいか、槌本氏の発表の途中で多少うたたねをしてしまいましたので、もう一度講習会のテキストを読み返していたところです。

この研究は、2011年~2014年にかけて全国103件の解体直前や大規模な改修を行う既存住宅の劣化状況等を調査したものですが、実は、私も数件この調査に参加させてもらいました。

1件当たり4人ぐらいが調査にあたり、木造躯体を現す前と、時期をあけて木造躯体が現れてからの二回調査をしました。木造住宅の規模(30~40坪)のフィールド調査に8人工をかける。しかも調査員は、ほとんど一級建築士という非常に綿密な学術調査でした。

その結果出来上がったデーターベースに含まれる劣化と変状に関する情報は多岐にわたります。この研究は、本邦の木造建築病理学の体系化に寄与する優れた業績だと思います。

是非、一次資料である一軒一軒の調査報告書を見たいものだと思いました。