工事の着手 -1

知人から電話が来て「工事の着手」についての建築基準法の定義はないかと言うので、日本建築行政会議編集の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年度版)の34頁を送ってあげた。

『「工事の着手」の時点とは、「杭打ち工事」「地盤改良工事」「山留工事」又は「根切り工事」に係る工事が開始された時点のことをいう』

工事の着手

今時、「工事の着手」時点は何時かと聞かれるのは珍しい。

法令が大きく変わる時には、改正前にとりあえず建築確認だけ降ろしてダミー施工会社に一部掘削なりさせておいて「工事着手」させ、その後確認申請は、大きく計画変更確認申請をして正式に実施図面を完成させ施工会社と契約して本当の工事着工。確認から正式着工まで1年以上という、手法が流行ったりした。

いわゆる「かけこみ着工」なのだが、工事の継続性があるのかないのか、偽装もできるし、中々わかりづらいものだ。

ところで、知人の相談には現場の写真が添付されてきた。

2014-07-01 17.26.43

敷地は道路より約1.6mほど高かった。

DSC_1828

掘削して山留のH鋼を設置している

現地2

道路より約1.6m高かった敷地の土砂を掘削し平坦にし、山留H鋼を打ち込み矢板も設置している。この時点でも工事施工会社と工事監理者は工事着工前の準備工事中と言い張っているらしい。

驚き、桃の木、山椒の木である。

不作為

古い建築審査請求の裁決書をながめていた。

中野区の「17中建審・請第1号審査請求事件」。

審査請求の内容は、「一低層地域にある○○会社が所有する建物は、法第48条が定める用途地域制限に違反しているから是正してほしい旨、繰り返し(5回も)特定行政庁に求めたにもかかわらず、法第9条第1項の規定に基づく違反の是正命令を発しないことは建築基準法に違反する不作為にあたる」という請求。

行政不服審査法第2条第2項の「不作為」とは、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これを発しないことをいう」

この裁決書では、「不作為の前提となるべき、法令に基づく申請」が存在しない「審査請求人(近隣住民)が不作為庁(中野区)に対して行った一連の要求(是正申出書)は、法令に基づく申請にはあたらない」とし「したがって、請求人の要求に対して不作為庁が違反の是正に必要な措置をとることを命じることその他の行政指導等を行わなかったとしても、これをもって行審法にいう「不作為」ということはできない。よって請求人の本件請求は、行審法にいう「不作為」に該当しない事項を対象として行われた不適当なものである」として住民からの不作為の審査請求を却下している。

この場合、具体的にどのような経過で住民が5回も行政指導をお願いしたのかわからないが、住民側が不作為の審査請求まで出すのは余程の事だと思う。不作為の審査請求があることを知っていて活用しているのはあまり多くない。

処分庁(中野区)が弁明の中で「住民の要望」は、「特定行政庁に対して職権の発動を求めたものに過ぎず、行審法第2条第2項に規定する「法令に基づく申請」にはあたらない」と主張している」

だとしたら建築基準法には規定されていても、条例や細則等に規定されていないような事柄。

例えば「工事現場の危害の防止」が建築基準法に明白に違反している場合でも、近隣住民などは、お上にお願いするだけで、職権の発動はすべて行政の裁量であるから黙っていろと言っているのに等しい。

施行者側に何らかの処分を求めて不作為の審査請求を出しても行審法第2条第2項に規定する「法令に基づく申請」には該当しない事となり 建築基準法に違反していても事実上免責されてしまう。

「することができる」と「しなければならない」

建築中の建物の山留工事について、安全上不安があると近隣住民が都内の特別区に要望書をもって陳情に行ったという。

「要望書」は、施工者が工事説明で配布した山留計算書に対して第三者の技術者が意見書を付けるという体裁のもので、私も見せてもらったが、施工者の計画は山留計算における背面側上載荷重が極めて少なく、非常に不安がある内容だった。

紹介議員(区議)を通じていたせいか部長と課長が対応してくれて、施工者なり工事監理者に何らかの指導をすると言ってくれたそうだ。

根切、山留については、建築基準法施行令第136条の3に規定されているが、この規定に違反していることが明白になった場合、建築基準法第9条第10項による職権の発動をしてもらわないといけない。

とはいっても条例や施行細則に記載がない限り 事前に施工計画書などを届け出る必要はなく、近隣住民側が不信に思い第三者に技術的検討でもしないかぎり事前の問題点を発見できたりすることはできない。

この行政の「職権の発動」は、中々腰が重い。法文の最後に「~することができる」とあるように、すべて行政の裁量にゆだねられている。

建築基準法は、行政側が対応するものは「~することができる」だが、建築主や設計者や施行者は「~しなければならない」と本当によくできているというか・・・

上記の陳情の際、行政側は「民間の指定確認検査機関を利用した場合、工法の変更は強制できない」という 発言をしたという。

これは、責任逃れの発言としか思えない。

第一 指定確認検査機関で確認処分をするとき、山留工事の施工計画は設計図書には含まれない。

行政は、2005年の最高裁判決を忘れてしまったのだろうか。

「建基法の規定から判断すると、建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについての確認 (建基法6条1項、6条の2)に関する事務を、地方公共団体の事務とする前提(同4条、地方自治法2条8項)に立 ったうえで、民間機関をして、上記の確認に関する事務を特定行政庁の監督下(報告、是正権限)において行わ せる(建基法6条の2第3項、同4項)こととした、と言うことができる。     
   そうすると、民間機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、 地方公共団体の事務である。 
  その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する 建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当だ。 
  したがって、民間機関の確認に係る建築物について、確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、民間機関の当該確認につき、 行訴法21条1項所定の「当該処分または裁決に係る事務の帰属する公共団体」に当たるというべきであって、 横浜市は本件確認に係る事務の帰属する公共団体に当たると言うことができる。 
 A社は本件確認を横浜市の長である特定行政庁の監督下において行ったものであること、 その他、本件の事情の下においては、本件確認の取消訴訟を横浜市に対する 損害賠償請求に変更することが相当であると認めることができる(最高裁2005年6月24日決定)」

 

 

山手通りの家 -3

知人「やあ あれ わかった?」

私 「ごめんごめん 五層竪穴区画無しの件だね」

知人 「仕事忙しかったの?」

私 「ちょっとね 盆前だから まとめなきゃならないことがあって」

知人「忙しくて何よりでした。それで どう?」

私 「う~ん あれは イルージョンだね」

知人「えっ そうなの?」

私 「最初、床面積が100㎡以下なので準耐火建築物ロ-1かと思ったんだけど、階段は鉄骨造だし、他の状況からみても耐火構造の建物。防火地域で階数が3以上だから、耐火建築物にしなければならないし、耐火構造だと階段部分の竪穴区画(令第112条第9項)は逃れられない」

私 「5階=ルーム5は、天井高さが2010mmなので居室として確認申請が通るわけがない。でもベットが設置され寝室としての利用なので居室だし・・・」

知人 「建築確認申請は許可になっているようだね」

私 「そう確認と中間検査はA指定確認検査機関、完了検査はB指定確認検査機関になっている」

知人「ロ準耐なら可能は可能?」

私 「そう、防火地域以外で主要構造部が実際にロ準耐の仕様なら・・」

知人「耐火構造でありえるとしたら?」

私 「1,2階の店舗部分と3階部分で区画して5階は非居室」

知人「ということは 確認申請図書と実際の建物は祖語があると」

私 「断定はできないけど 可能性は大いにある」

知人「これ以上調べられない?」

私  「役所に情報公開請求を出す。そうすると役所は指定確認検査機関に法第12条第5項の報告を求めるから、ある一定の確認図書は公開される。そうすると今よりははっきりするんじゃないかな。ただし内部は個人情報保護とかで黒塗りにされてくる可能性が大だから、どれだけわかるかは定かではないけどね。」

知人 「調べてくれる?」

私 「これ以上は、有償だよ。経費がかかるから」

知人 「検討します」

 *8/13、一部記載に不備があり修正しました。

防火地域内で階数が3以上あるに、床面積が100㎡未満だからロ準耐でも良いと誤解される表現がありました。この建物は耐火建築物である必要があります。

山手通りの家 -2

【建物概要】

建築場所 : 東京23区内、山手通り沿い

用途規制 : 近隣商業地域、防火地域、40m高度地区

容積率400%、建蔽率80%(基準)+10%(角地)(実際は耐火+防火100%で申請)

道路 :  前面道路幅員40m (山手通り)、側道路・幅員6.84m、角地

主要用途 :  店舗併用住宅(具体的用途不明・実際は1階物販店・駐車場、2階物販店、住宅として使用は、3階~5階)

敷地面積 : 24.32㎡

建築面積 : 17.92㎡

延べ床面積 : 89.60㎡

構造規模 :  鉄筋コンクリート 地上5階建て

建築確認・中間検査 :   A指定確認検査機関

完了検査 :  B指定確認検査機関

山手通りの家 -1

1週間ほど前、知人から電話がかかってきた。

知人「新建築7月号に掲載されいる住宅なんだけど、地上5階建てで五層も階段の竪穴区画がないんだ。うちも こういう竪穴区画の無い住宅を提案したいんだが どうやったらできる?」

私「五層竪穴区画無しなんて無理だっぺ・・」

知人「でも雑誌に掲載されているからには、建築確認降りてるだろうな~。資料送るから知恵貸してよ」

私「了解」

この知人は研究熱心で建築雑誌に掲載されている建物で、建築基準法的に面白そうな物があると私に振ってくる。そして、この住宅の概要・資料が送られてきた。

私「資料みたよ。この場所だいたいわかる。山手通りは結構行き来しているからね」

私「S区の場合、山手通リ沿いは防火地域だね。床面積が100㎡未満だけど階数が3以上だから耐火建築物。防火地域でなければロ準耐で設計する方法もある」

知人「鉄筋コンクリート造のロ準耐って主要構造部のどれかの部位の仕様を変えるだったよね」

私「そう。鉄筋コンクリート造りだと外壁・屋根・床がコンクリートで耐火構造仕様になっているから、階段を木造にしたりするんだよね」

知人「鉄骨階段じゃ駄目?」

私「鉄骨階段だと耐火構造になるでしょ。幾ら準耐火ロ-1とか記載しても実態上の仕様が耐火構造になるから」

知人「イ準耐と耐火構造は竪穴区画必要でロ準耐だと竪穴区画しなくていいっていうのも一般には説明しずらいところだ」

私「専門家でも 中々理解しずらいところ」

知人「でも この建物は耐火建築物である必要がある」

私「そうだね もう少し調べてみるよ。」

知人「全館避難安全検証法だったりして」

私「住宅は発熱量高いし、以前シュミレーションしてみた事あるけど この手のプランでは無理だと思うよ」

知人「そうなんだ・・」

私「では 調べてから電話するよ じゃあね」

ということで、知人から課題を与えられてしまった。

やれやれ

【法令メモ】

建築基準法施行令第112条第9項(9項区画・竪穴区画)は「主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地階又は3階以上の階に居室を有する建築物」が対象です。

準耐火構造というのは建築基準法第2条七号の2に規定されていて、45分準耐(面積区画は1時間準耐)、例示仕様は平成12年建告第1358号。

「主要構造部を準耐火構造とし」とは、準耐火建築物である場合は、準耐火(イ-1、2)が該当し、準耐火(ロ-1、2)は対象外。

法令上の用語として「上位の性能を有する材料・構造等は、下位の材料・構造等に含有されるものとして整理」(平成12年建住指第682号通知)されたから、主要構造部を耐火構造としたものも対象建築物となる。

わかった?

わからないしょ

でも法文上はこうなる 

 

 

「建築に係る行政訴訟判例カルテ」@建築学会

日本建築学会 建築法制本委員会の「建築専門家の行政訴訟参加に関する研究小委員会」が平成25年2月にまとめた「建築に係る行政訴訟判例カルテ」。

PDFで公開されているが、A4版で250頁のぶ厚い資料である。

「行政訴訟においては、建築基準法等の建築関係法の制定背景や基準の趣旨、その規定の果たしている役割と他の規定との関連性など建築に関する知識と経験を有する建築専門家の関与が重要と思われる。」とあり、このカルテは「行政訴訟を対象として、裁判判例を通じて、建築専門家の関与の必要性を明らかにすることを目的として判例の分析を行った。」と書かれている。

内容は、以下の項目が章立てて展開されている

  1. 訴訟要件
  2. 建築確認
  3. 建築物と敷地
  4. 建築物と道路
  5. 建築物の規模・配置
  6. 建築物の用途
  7. 既存不適格の発生ほか

その他

「ドイツの建築規制・建築許可・建築紛争に関するメモ」

「Land  Use Planning and development regulation lawの一部邦訳まで記載されているという。お得な情報が満載の資料。

まぁ こういう資料を読むのは、一部の研究者か建築審査請求に色々と思いがある人など限られているだろうが・・・。

建築法規も深みに入っていくと 底なし沼のように捕捉される。あるいは「オタク」的な世界だろうか。

建築審査請求 -2

弁護士を代理人とする場合、住民側代理人も建築主側代理人も建築審査請求は初めてという事も多く。結構、頓珍漢なやり取りが交わされたりする。

又、数々の建築審査請求の事例を見ていると、手練れの建築専門家が加われば・・・とか思うことも多い。

建築審査請求は、指定確認検査機関制度になってから増えたようにも思うが、以下に整理して記載しておこう。

****************

1.審査請求とは

• 建築基準法に基づく(建築確認)処分に不服がある場合やこれらによる申請を出したのに、処分が行われない(不作為)場合に、市町村や都道府県の建築審査会に不服を申し立てることができる。
•申し立てを受けると建築審査会で審理を行い、申立てに対する裁決を行います。処分又は不作為が違法又は不当と判断された場合は、裁決により処分が取消される。

2.審査請求の申立先
•物件所在地を所轄する建築審査会へ申し立てる。
•審査請求書の提出は、建築審査会の事務局。(最寄の特定行政庁へ相談)

まず、特定行政庁に建築確認申請図書の開示請求(情報公開請求)を行う事。その請求に基づいて特定行政庁は、処分庁等に対して建築基準法第12条第5項報告を求める。とにかく確認申請図書を入手して建築の専門家達が検証することが不可欠になる。まれにパフレットとか新聞折り込み広告、住民説明用計画図等で建築審査請求を提起する人がいるが、図面開示とその検証に基づき、法的な文書の作成が必要

3.審査請求ができる期間

審査請求は処分のあったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならない(行政不服審査法第14条第1項)。

また、処分があった日の翌日から1年が経過すると審査請求はできなくなる(行政不服審査法第14条第3項)。

上記の期間を過ぎた後になされた審査請求は、原則として不適法なものになり、却下裁決となる。

4.審査請求の流れ

審査請求は、原則として書面で審議を行う。
審査請求人、処分庁の双方から書面の提出を受け、口頭審査(口頭審理)を経て、裁決をする。
5.裁決の種類

•認容裁決
処分に違法又は不当が認められ、処分が取消される裁決です。取り消されると、処分は、処分をした日に遡って効力を否定される。

不作為についての審査請求では、不作為庁に対し、速やかに申請に対する何らかの行為をすべき旨を裁決する。

•棄却裁決
処分に違法又は不当が認められず、審査請求を退ける裁決です。

•却下裁決
審査請求が法定の期間を経過した場合や、処分を取消す利益がないときなど不適法であるとき、審査請求を退ける裁決です。審査請求の中身については審理されない。

6.その他

・執行停止申立て

審査請求をしても、処分は裁決で取消されるまでは有効として扱われるので、処分の執行を停止したいときは、執行停止申立てをする必要がある。処分の執行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認められたときは、執行が停止される。
(建築確認処分に対する審査請求をしても、建築確認処分の効力は裁決で取消されるまで継続する。この場合、建築確認処分の効力が存続しているので、工事は継続して行われる。工事が継続することにより何か重大な損害を受ける場合等は、執行停止申立てをする必要がある。

・審査請求と裁判の関係

建築基準法令に基づく建築確認処分や都市計画法令に基づく開発許可処分などについての取消しの訴えは、 原則として審査請求の裁決を経た後でないと、提起できない(行政事件訴訟法第8条第1項ただし書、建築基準法第96条、都市計画法第52条)。

【参考】用語解説
•不作為
 法令に基づく申請に対して、相当の期間内に何らかの処分をするべきにも関わらず、何の処分もしないこと

•裁決
 審査請求に対する審査会の決定。裁判の判決と同様なもの

•異議申立て
 審査請求と同様に処分等に対して不服を申し立てる制度。審査請求とは違い処分庁自身が、申立てに基づいて決定を下す制度
 

 

 

建築審査請求 -1

事務所を始めてから、世の中には建築主と設計者のトラブル。近隣とのトラブルが実に多いことを知った。

そうした相談が、知人や弁護士を通して持ち込まれる。

  • 設計者が建築主の希望を聞き入れて設計してくれない。
  • 外壁の材料の耐久性・防水性が不安として施工会社が降りたが、設計者が設計変更しない。
  • 設計を途中解約したが、まだ基本設計しか終わっていないので設計者に設計料の返還請求したい(契約12%、50%支払済み)
  • 隣地に幼稚園が計画されているが、子供の声はうるさいので中止させたい。(この相談には正直困った)
  • 擁壁下の隣地に地下2階の建物が計画されているが、擁壁が崩壊しないか不安
  • 設計が完了し工事見積りを取ったら工事費が予算の倍以上になった。設計変更しても予算内への減額は無理。設計を解約して設計料の返還請求ができるか。

等々

それらの相談から、あるものは民事訴訟となり、あるものは建築審査請求へとなっていく。

指定確認検査機関に勤務していた時は、処分庁として建築審査請求を受取る側で、徹夜して抗弁書を起案したり、公開口頭審査に出席した。現在は、住民側の専門家として建築審査請求に加わり、建築審査請求の提起、反論書の作成にも加わっている。

建築審査請求に両方の立場で関わった人は、そう多くないようだ。

どちらの立場になっても、建築審査請求に関わると結果が出るまでは胃がキリキリする。

簡易宿泊所@用途変更

このところ 既存建物を用途変更して外国人向け簡易宿泊所にしたいという相談が相次いでいる。

2020年東京オリンピック開催の観光客需要を見込んでか、あるいは、一部の人材不足を補うための外国人受け入れが今後増えていくことを見込んで、より収益性の高いビジネスへの転換だろうか。

古い賃貸共同住宅や古い事務所ビルで、空き家率が多くなっている収益性の低い建物が都内には多くなっている。

共同住宅と簡易宿泊所は、境界がグレーな部分も多いが、簡易宿泊所を無許可営業していたとして警視庁保安課が摘発していた事例も出てきているので、大っぴらに営業するためには旅館業法の許可が必要で、その為には建築基準法の用途変更は、不可欠という事になってきているのかもしれない。

簡易宿泊所を無許可経営、外国人観光客狙い 英国人を逮捕 警視庁

2014.5.16 14:47 [外国人犯罪]
 簡易宿泊所を無許可で営業したとして、警視庁保安課は旅館業法違反容疑で、英国籍で東京都足立区足立、無職、ジェームス・クリストファー・ウッド容疑者(28)を逮捕した。同課によると、「日本の外国人観光客が増え、東京五輪も開催されるため、低料金で宿泊所を提供したかった」と容疑を認めている。

 ウッド容疑者は昨年11月以降、3階建ての自宅の1~2階を簡易宿泊所「東京プレイスズ」として9人分のベッドを設置。1泊2500~6千円で提供し、これまでに約130万円を売り上げていた。都が昨年12月以降に10回、行政指導したが、「シェアハウスだから問題ない」などと応じなかったという。

 逮捕容疑は今年3~4月、自宅で簡易宿泊所を無許可のまま営業し、専門学校生のタイ人女性(21)ら男女7人を有料で宿泊させたとしている。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140516/crm14051614470014-n1.htm

 

 

山留め工事の施工計画書@横浜市

横浜市で2013年4月1日以降に工事着工する建物で、高さ3mを超える根切工事をする場合は、「山留め工事の施工計画書」等の提出における工事範囲が拡大されていた。

工事着工前に、「山留め工事の施工計画書」の提出が必要だったのは、私の知る限り横浜市、藤沢市、川崎市、渋谷区・・。いずれも起伏のある地形が多い場所。

東京の城南とか、北区なども起伏がありそうだが、擁壁や崖の脇に地階のある建物の工事現場を覗くと、根切や山留工事が適切に工事がされているのか、近隣住民でなくてもちょっと心配になる。

近隣住民などの当事者であれば尚更不安の種だろう。

万が一斜面や擁壁の崩落事故が起きた場合に、工事会社に保証能力が十分にあるのかも住民の不安の一要素になっている。

事故が起きた場合は、施工会社だけでなく工事監理者の責任も問われるので、しっかり工事監理は必要。

横浜市建築基準法施行細則の改正に伴い、平成25年4月1日以降に着工する工事からは、指定確認検査機関で確認を受けた物件についても「山留め工事の施工計画書」等の提出が必要です。
【制度改正の目的】

横浜市内では、斜面地における戸建住宅等の建設現場において、山留め仮設工事に十分な検討・準備が行われなかった結果、斜面の崩落事故や、これに伴い近隣敷地に危険な状況を生じる事例が発生しています。
こうした危険な状況の発生を防止するため、横浜市では、横浜市建築基準法施行細則を改正し、これまでも工事施工者又は工事監理者にお願いしていた山留め工事に関する報告について、提出対象となる工事範囲の拡大等を行うこととしました。
【制度改正の概要(横浜市建築基準法施行細則第17条の3 H25.4.1施行)】

1.横浜市建築主事に確認済証の交付を受けた物件に加え、指定確認検査機関で確認済証の交付を受けた物件についても提出の対象となります。
2.提出書類が変更になります。

◦高さが3メートルを超え5メートル以下の根切り工事を行う場合
⇒山留め工事の施工計画概要書等
◦高さが5メートルを超える根切り工事を行う場合
⇒山留め工事の施工計画書等

http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/shidou/anzen/tetsuzuki/yamadome.html

ゴルフ場のクラブハウス

ゴルフ場のクラブハウスに関わる建築基準法等の問題点を整理してみた。

【都市計画法】

ゴルフ場は第二種特定工作物であり、市街化調整区域の用途規制の対象外なので市街化調整区域に建設できる。第二種特定工作物の用途に包含される附属建築物(例えば、ゴルフコースのクラブハウス、陸上競技場のスタンド等)は、必要最小限のものに限り、第二種特定工作物の一部として建築が認められる。(とは言ってもコース数によって入場者数は変わるが、それなりの規模にはなる。)
一方、ゴルフコース等に併設される宿泊施設は第二種特定工作物に附属するものとはみなされず、開発審査会による許可が得られる場合しか建築できない。

【建築基準法上の用途】

ゴルフ場のクラブハウスの基準法上の用途(確認申請書第3面)は何になるか。

施設内容はカート置場、ロビー、レストラン、ロッカー室・大浴場、事務室、機械室等によって構成される。

こういう複合的な用途が含有されている建物の建築基準法上の用途判断が一番いやらしい。

  1. 集会場等類似用途として結婚式場のようなものとし判断する
  2. カート置き場が別棟の場合は飲食店。カート置き場は自動車車庫と判断
  3. ゴルフ場は、会員制であっても、実際上は会員利用は少なくビジターは自在に増やせるので不特定多数の人が利用する特殊建築物として判断(法第2条第二号の用途・その他これらに類する用途として)
  4. その他(具体的用途としてクラブハウス)

以上のような判断が考えられるが、建築主事判断となることが多い。通常は、指定確認検査機関より裁量権のある特定行政庁に聞いた方が良い。

私が近年関わった千葉県の物件の場合は、用途は「その他」(具体的用途として「クラブハウス」)だった。

消防法上は15項だった。

確認申請書第4面に記載する用途は、飲食店、公衆浴場、自動車車庫、サービス業を営む店舗等に仕分けする。

【個別許可】

浴場は、公衆浴場法の許可(保健所)が必要

レストランは、営業許可申請(保健所)が必要

【カート置き場】

・道路運送車両法では

第二条  この法律で「道路運送車両」とは、自動車、原動機付自転車及び軽車両をいう。
2  この法律で「自動車」とは、原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、次項に規定する原動機付自転車以外のものをいう。
3  この法律で「原動機付自転車」とは、国土交通省令で定める総排気量又は定格出力を有する原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具をいう。
4  この法律で「軽車両」とは、人力若しくは畜力により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であつて、政令で定めるものをいう。
5  この法律で「運行」とは、人又は物品を運送するとしないとにかかわらず、道路運送車両を当該装置の用い方に従い用いること(道路以外の場所のみにおいて用いることを除く。)をいう。
6  この法律で「道路」とは、道路法 (昭和二十七年法律第百八十号)による道路、道路運送法 (昭和二十六年法律第百八十三号)による自動車道及びその他の一般交通の用に供する場所をいう。

ゴルフ場のカートには、ガソリンと電動(バッテリー)があるが、ここは素直に、カート置き場は法律論ではなく実態上で判断し自動車車庫とするのが妥当。

消防法上は自動車車庫として判断される。

尚、

ゴルフカートは公道を走らない限り道路交通法の適用除外であるため、安全規格や整備基準が定められていないらしい。

ゴルフ場施設利用損害保険の保険金支払いデータによると、ゴルフ場施設の事故の約半数がゴルフカートの事故であり、その内容は対人衝突、カートの横転や転落などの自損、カーブを曲がるときなどに同乗者が振り落とされる転落、カート同士の衝突などが多いらしい。

完了検査済証の交付率

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H26年建築基準法改正にともなう国交省の資料を見ていたら、「検査済み証交付率の推移」というデーターがあった。

H10年には、完了検査済証の交付率が40%を切っていことがわかる。現在では、90%ぐらいまでになつてきているが、指定確認検査機関ができたからというより、世の中の法令遵守への気風が高まったからだと思っている。

ところでも再三指摘しているが、建築ストックの活用にとって、この工事完了検査済証未了・無しの建物を増築、用途変更する時、どうするかとというのは避けて通れない問題である。

国交省のデーターでは、H10年の完了検査済証の無い建物が60%強あるということだが、木造住宅や特殊建築物等、法第6条の各号ごとの交付率は公表されていない。

弊社のデーター(サンプル数500件)による特殊建築物の検査済証未了は30%強だから、木造住宅を始めとしたその他の建物の未交付率は、もっと多いのだろうと推察する。

先日、木造住宅のリフォームの話を担当設計者から聞いた。

建築確認済証はあるが、出来ている建物は全く違う建物で、建蔽率が5%ほどオーバーしているという違反建築物のリフォーム工事の経過だった。

リフォームだから建築確認申請は不要だが、建蔽率がオーバーしているので役所に相談に行ったら、ムニャムニャで終わってしまったらしい。

情けない話だ。

役所は違反建築物を放置しているとしか思えない。

設計者も申請は不要でも建築基準法に適合させる必要があるのだから減築は助言すべきだが、そんなことを言っていたら施主から「固いやつだ」と言われて仕事がなくなってしまうのかもしれない。

工事完了検査済証がない建物でも、用途変更や増築の際に法適合調査を行い法適合が証明できれば確認申請は提出できるが、その調査・診断・評価方法は定まっていない。

全ての構造方法に対応した建築病理学(ビルディング パッソロジー)の構築が必要なのかもしれない。

 

 

「建築・新しい仕事のかたち~箱の産業から場の産業へ」

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一般社団法人住宅医協会設立記念講演会「建築・新しい仕事のかたち~箱の産業から場の産業へ」東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授の松村秀一先生の講演を聞いてきた。

東京大学(農学部)弥生講堂アネックス/セイホクギャラリーという木造シェル構造でできている建物が会場だった。

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松村先生の話は刺激的だった。

日本の産業構造が「ハコの産業」から「場の産業」=「より望ましい生活を展開する『場』を構成するあるいは提供する産業」に一大転換している時代と位置づけられた。

「新しい仕事のかたち・七つの要素」として

  1. 生活する場から発想する
  2. 空間資源を発見する
  3. 空間資源の短所を補い長所を伸ばす
  4. 空間資源を「場」化する
  5. 人と場を出会わせる
  6. 経済活動の中に埋め込む
  7. 生活の場として評価する

をあげられ、具体的事例を紹介されていた。

私達が目指している仕事の方向が、あながち間違ってはいないのだなぁと思った。

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刺激的な空間で刺激的な話を聞けれて脳が活性化した一日だった。

「近畿建築行政会議 建築基準法 共通取扱い集」

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滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の行政と指定確認検査機関によって構成されている近畿建築行政会議の建築基準法の共通取扱い集の初版が発売された。

「住宅用エアコン等の室外機を設置した開放廊下、バルコニーの床面積」「飾り柱等がある場合のバルコニーの床面積」「敷地内に2棟ある場合及びドライエリアからの採光」「住宅等における納戸」「小規模な鋼製の置型倉庫(物置)」・・・

日本建築行政会議の「建築確認のための  基準総則・集団規定の適用事例」より一歩踏み込んだ内容が網羅されているが、まだ共通取扱い項目が少ない。今後協議を継続して共通取扱い項目が増えてくれると実務上大いに助かる。

東京、関東もこういう共通取扱い集ができてくれると助かるのだが・・・。

連続的空間領域における採光について -1

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無印良品の新シリーズ・縦の家をながめていた

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中央にシースルーの階段を配置し、最上部にトップライトを設置して採光をとっている。

三階建ての住宅としては、さほど新鮮味のある平面計画ではない。今までも多くの設計者が採用しているのではないだろうか。

まあ 1階の寝室は右側窓から採光(法的な)をとるのは難しいそうだ。敷地条件によっては2階のダイニングキッチンも採光(法的な)はOUTになるかもしれない。

このベースプラン(3.64m×8.19m)の場合、各階の床面積は

1階:23.18m2 / 2階:29.81m2 / 3階:29.81m2 / 計:82.80m2となっている。

現行法では、階をまたいでは採光をとることができないが、このように三層吹き抜けで階段部に間仕切りがない連続的な空間が構成されている場合で、階段最上部あるいは階段壁面部に採光に有効な開口部があるときは隣地境界線側に採光に有効な開口部を設けなくても実際のところ採光が得られるのではないだろうか。

試算してみると

1階必要採光面積(概略) 23.18m2×1/7=3.32m2

2階必要採光面積(概略) (29.81m2-13.24m2)×1/7=2.37m2

3階必要採光面積(概略) (29.81m2-13.24m2)×1/7=2.37m2

・2階リビング、3階サンルーム水回りを3.64m×3.64m=13.24m2として、道路側であろう開口部より採光が確保されるものと仮定した。

階段最上部のトップライトは、どの程度の開口面積があれば三層の有効採光を確保できるであろうか。

3階 2.37m2÷低減率=無 =必要採光面積 2.37m2

2階 2.37m2÷低減率=0.8 =必要採光面積 2.97m2

1階 3.32m2÷低減率=0.7     =必要採光面積 4.75m2

合計 10.09m2÷3(トップライト) = 必要採光面積 3.37m2

1間角強のトップライト面積が必要となるが、少し大きすぎるというか、暑くてたまらないかなぁ・・・ 階層による低減は必要ないのかもしれない。

低減無だと、

合計 8.06m2÷3=2.69m2

これで1.6m角程度だから低減しなくてもよいかもしれない

是非、無印良品さんにはモデルハウス等で実際の照度計測をしてもらいたいものだ。

【無印良品・縦の家】画像は下記のサイトから拝借しました。

http://www.muji.net/ie/tatenoie/

 

余剰空間

よ‐じょう【余剰】 必要分を除いた残り。剰余。余り。「人員に―が出る」「―価値」「―米」 大辞泉

建築基準法の取扱いで出てくる「余剰空間」は、例えば小屋裏物置等の取扱いについて見られる。 img060   上記のように床下・天井裏・屋根裏などの、もともと作ろうと意図したところの「形」の中で機能性を持たなかった部分として捉えられているようだ。

ようするに余剰空間という意味は、計画当初の機能を持つことが出来ない空間や、機能が明確に想定されない空間のことであり、不本意に余ってしまった対象と言える。

このような機能配置の計画外に残されてしまう余剰空間は、使用上の寸法や動線や機能などの様々な問題によって多かれ少なかれ発生するものであり、その余剰空間をどう扱うかは建築計画論的にも法的にも課題の一つであるように思う。

余剰空間は、上記の図のような建築基準法の概念として活用されているが、現代の建築空間は切妻や片流れような固定的形態だけでなく、様々な形態として現われる。従来の固定的「形」では判断さえつきずらくなっている。

都心では道路斜線・高度斜線・日影規制などの集団規制の制限を受け、そこに天空率や高さの緩和、平均地盤の調整等を駆使し複雑な、ときに異様な突出した建築が現われる。

前面道路が法第42条第2項(4m未満の道)等の細街路で、木造二階建てが地域の街並みを形成する建物のボリュームのところに、突如4階建てと錯覚するような木造3階建てが建築され、周囲があわてることもある。これは元々総合設計制度という大規模建築に適用されていた天空率という手法を、すべてに適用した為だ。

敷地には、幾つも建築基準法の規制による建築可能な空間領域があり、その見えない空間領域が、建築可能な形態の制限となる。

ある一定以上の面積や道路幅員をもつ場合は、その建築可能な空間領域を余剰空間として捉えることができないであろうか。

これは 仮説的提案である。

追記

上記記述は、若干 論旨不明確でした。

前面道路が法42条2項道路等の細街路には天空率の適用は止めるべきで、そうでない場合は、法的可能な空間領域内は余剰空間として突出型のロフト・小屋裏収納等は認めていいのではないかというものです。

 

防火フィルム

避難安全検証法を用いた場合、避難経路等に面するガラス等を用いた間仕切壁は防火設備としての性能が必要となる場合がある。 防火設備となると価格の高い耐熱ガラスや意匠性を損なう網入りガラスしか選択できないのが現状だ。 そこで、単板ガラスに張ることで防火性能を満足するフイルムを探した。 ネット検索でヒットしたのは、下記の清水建設の2011年ニュースリリースで、大臣認定を取得済みで2011年秋には外販を始めると書いてある。それに安価なようだし、もう時間が経過しているから外販しているはずと思い、記載してある栃木県の製造会社を探したが見つからない。 img129 https://www.shimz.co.jp/news_release/2011/826.html

そこで清水建設本社→清水建設技術研究所→三生技研→SVC(愛知県)へと電話をかけ、ようやく製造販売している会社にたどり着きカタログと見本を送ってもらった。 img127

商品名はファイヤーブロック

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製造会社に聞くところによると、中々量産化が難しかったらしい。製造ラインは幅1.5m×長3mらしいが、現在商品化しているのは1m角との事。

ところで、この材料は建築基準法第64条(外壁の開口部の防火戸)で施行令第136条の2の3(準遮炎性能に関する技術的基準)で告示例示がない為大臣認定が必要。準遮炎性能20分で屋内に面するものに限られている。

防火性能のある安価で透明なフイルムは、中々難しいのかもしれない。

既存建築物の法適合性の確認の取扱い@奈良県

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奈良県庁

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丹下健三の香川県庁舎を踏襲したような、戦後モダニズムを彷彿させる建物

 何となく懐かしいというか・・・。

今回は、建物の見学記録(後で建物の写真は掲載)ではなく、仕事の記事。

「遊んでばかりいるんじゃないの」と言われる事があるので

完了検査済証を取得していない建物について、奈良県庁建築課に御相談に行きました。

奈良県は「既存建築物の法適合性の確認の取扱い」というのを

平成25年6月に制定していたので、今回具体的プロジェクトについて打合せをしてきた次第

奈良

これから種々の調査・非破壊検査をすることになるが

法第12条5項報告の提出となりました。

添付する様式は、大阪府のものを参考にしたように思える

それにしても現行法上は12条5項で処理するのが最適と思うが

なかなか やってくれない行政が多いんだよね~

(愚痴)

http://www.pref.nara.jp/3916.htm

指定確認検査機関のサービスとは

先頃、某指定確認検査機関から立派な体裁のダイレクトメールが郵送されてきた。

千葉県に本拠地がある指定確認検査機関が新宿の超高層ビルに新たに事務所を開設したという営業案内で、御丁寧に「ご来店記念品引換券」が同封されていた。

千葉県から始まって 東京、埼玉、神奈川に支店網を築き上げ、社員は200余名という規模になったとある。

数日後

この指定確認検査機関の女性から電話がかかってきた。

ダイレクトメールを郵送したところには電話営業をしているようだが、住所や電話番号は、設計事務所登録のリストから抽出しているのだろうか。

ダイレクトメールの宛名は、弊社が法人にする前、一年余り個人で設計事務所登録していた時の名称で郵送されてきていた。

関東地方整備局指定で、戸建て中心だと聞いていたので これまであまり関わりのなかった指定確認検査機関だったが、新宿事務所は大規模推進事務所らしくマンションなどの特殊建築物を主体に審査していきたいらしい。

巷の話を聞くと、この会社だけでなく相変わらず指定確認検査機関の申請料の値引き、営業攻勢は活発らしい。

東北の震災復興の山は越えた。次は2020年東京オリンピックに向けた東京の民間投資に営業的活路を見出そうという動きなのかもしれない。今後、首都圏の指定確認検査機関の競争も一層激化していくのだろうか。

ところで、くだんのダイレクトメールには「建築プロジェクトの最上のサービスを目指す」とある。

指定確認検査機関の最大の顧客とは、デベロッパーや建設会社、ハウスメーカー、住宅会社、設計事務所等の「業者」であるから、「業者」へのサービスが顧客サービスとなるのだろう。

業者にとって指定確認検査機関から受けたいサービスとは何だろうか。

「審査期間を短く」「審査・検査料金を安く」「質疑はまとめて一回だけ」「計画段階からの適切なアドバイス」「法的取扱いの柔軟な対応」・・・

建築確認申請・諸々の審査・検査を扱う「建築基準法の番人」であるべき指定確認検査機関が、建物に住む人、利用する人ではなく、往々にして業者しか見ていないのはいかがなものだろうか。

業者へのサービスを重視すればするほど、諸刃の刃で指定確認検査機関の存在が危うくなる要素を秘めているのだが、ここでは あまり書くのは止めておこう。

日本建築行政会議の倫理憲章には下記のようにある。

(社会的責任の認識と信頼の確立)

1 指定確認検査機関等は、建築基準法の目的を十分に認識して、指定確認検査機関等のもつ社会的責任と公共的使命の重みを自覚し、常に厳正に確認検査業務等を行うものとする。

(法令やルールの厳格な遵守) 2 指定確認検査機関等は、建築基準関係規定の法令やルールへの違反が、確認検査制度全体の信頼を失墜させることを認識した上で、これらを遵守し、社会的規範にもとることのないよう、公正に業務を遂行する。

 

果たして業者の顔しか見ないで、社会的責任と公共的使命を達成できるだろうか。

“指定確認検査機関のサービスとは” の続きを読む

後出し確認申請

既存の建築物の「用途変更」は、ちまたに建築基準法違反の案件がゴロゴロしているなかで中々厄介な問題を秘めている。

あるビルの所有者からの相談

新たに中古で3階建ての飲食店ビルを買ったが、よくよく調べてみたら、そのビルの2階と3階の用途は「事務所」で建築確認申請を出してあり完了検査済証も取得している。2階、3階部分は現在「飲食店」で使用されており用途変更確認申請の手続きはしてなかったようだ。

消防の検査は受けているので、防災設備は法に適合している思うが、後出しで用途変更の確認申請が出せるかという内容だった。

オーナー曰く「法は遵守したい」と・・・よくよく聞くと、ビルを新たに飲食店として借りたいというチェーン店から用途変更が出ていないのはまずいと言われ動き出したとのこと。

用途変更申請そのものが忘れやすい(意図的に?)手続きらしく、店舗の内装が完成して消防に防火対象物設置届を提出しに行ったら、「用途変更は出したの?」「出さないと営業出来ないよ」と言われ慌てて相談に来られたことがあった。

行政や消防に連絡をとり状況を説明して「良いことをするのだから」と説得して「後出し用途変更申請」を受付けた事例は、指定確認検査機関に勤務していた時にあった。

今回の事例は、長い年月のあいだ「手続き違反」が放置されていた建物の「後出し申請」(実態違反は調査してみないと結論を出せないが)

たぶん行政に相談したら 以下のような回答があるのではないか。

  1. 確認申請完了時点の状態に復旧し、それを確認検査後、用途変更申請を受け付ける
  2. 次回の確認申請(増築・用途変更等)の時点で、既存が適合であることが証明できれば受け付ける

これはこれで至極ごもっともな見解ではある。

1,については、 今更、一旦事務所にもどすなど、無駄な工事費をかけるなんて非経済的と所有者は言うだろうし、中々納得はしないだろう。

2,については、当分新たな建築行為・用途変更の予定がない場合はどうするの? 違反建築物を放置していても良いと言うようにも聞こえる。実態違反が少なさそうだったら、当面は執行猶予状態だと行政は言うのだろうか。

関連の条文を調べたのだが、用途変更確認申請に関しては、いまひとつ申請時期が明確ではない。 用途変更確認申請は、法第6条等の「準用」だが、 用途変更においてはそもそも「建築等の工事を着手する前に」に該当する部分がないので、 後出しの確認申請が有効と考えることも出来なくはなさそう。

確認申請・完了届をせずに「使用」しているわけだから、 建築基準法違反で罰則に該当することは明白だ。 それでも罰則を覚悟した上で、確認申請を後出しするということは、見上げた心がけと言える。

手続き上も実態上も適合状態にする=「良いことをする」のであるから「後出し申請」に、行政が弾力的に対応してくれれば 世の中から違反建築物は少しは減ると思うのだが。

建築計画概要書・台帳証明@福岡市

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福岡市の庁舎は、繁華街である天神に近く とても立派

建築計画概要書の閲覧・建築確認記載台帳証明の発行窓口は、住宅都市局建築指導部建築指導課(本庁舎4階)

建築確認記載台帳は昭和25年から保管。建築計画概要書は平成11年度分から閲覧が可能。

台帳証明書の発行には,2~3日程度を要するが、申請者が遠隔地の場合は郵送もしてくれる(有料)

窓口の職員の人達が、とても親切

「特定住宅」は現実的な提案・・・小規模シェアハウス・グループホーム

先頃 国交省が出した「事業者が運営するシェアハウスは寄宿舎」という技術的助言を見直そうという動きが国交省内部にあるらしい。

確かに脱法ハウスや不健全なシェアハウスは問題だけど、戸建て住宅を利用した小規模のシェアハウス、グループホーム、グループリビングまで「寄宿舎」=特殊建築物にすると建築ストックの活用は難しくなる。

千葉大学の小林秀樹教授が「特定住宅」という住宅と特殊建築物の中間的な用途を提案をしている。

詳しくは下記のサイトを見てください

http://share-issue.org/archives/20131210-proposal-on-classification-of-housing/

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この「特定住宅」という用途は、地方自治体でも設定できるし 空き家の再利用にもつながる現実的提案だと思った。

 

 

 

不動産登記法の「床面積」

建築基準法の「床面積」と不動産登記簿の「床面積」(建物表示登記をする際の面積)では その基準が異なり同じ面積ではないと よく言われるけど どこがどのように違うのか。

まず、最初に不動産登記法という法律の準則では次のよう決められている。

 「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」

と規定されていて、「建物」として認められるためには、これらの要件全てを満たす必要がある。

  1. 外気分断性 : 屋根及び周壁などの外気を分断するものを有すること。
  2. 定着性 : 土地に定着したものであること。
  3. 用途性 : その目的とする用途に供し得る状態にあること。
  4. 取引性 : 不動産として独立して取引の対象となり得るものであること。

 

規則第115条

第三款 建物の表示に関する登記

(建物) 第百十一条  建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。

(家屋番号) 第百十二条  家屋番号は、地番区域ごとに建物の敷地の地番と同一の番号をもって定めるものとする。ただし、二個以上の建物が一筆の土地の上に存するとき、一個の建物が二筆以上の土地の上に存するとき、その他特別の事情があるときは、敷地の地番と同一の番号に支号を付す方法その他の方法により、これを定めるものとする。 2  附属建物には、符号を付すものとする。

(建物の種類) 第百十三条  建物の種類は、建物の主な用途により、居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所に区分して定め、これらの区分に該当しない建物については、これに準じて定めるものとする。 2  建物の主な用途が二以上の場合には、当該二以上の用途により建物の種類を定めるものとする。

(建物の構造) 第百十四条  建物の構造は、建物の主な部分の構成材料、屋根の種類及び階数により、次のように区分して定め、これらの区分に該当しない建物については、これに準じて定めるものとする。 一  構成材料による区分 イ 木造 ロ 土蔵造 ハ 石造 ニ れんが造 ホ コンクリートブロック造 ヘ 鉄骨造 ト 鉄筋コンクリート造 チ 鉄骨鉄筋コンクリート造 二  屋根の種類による区分 イ かわらぶき ロ スレートぶき ハ 亜鉛メッキ鋼板ぶき ニ 草ぶき ホ 陸屋根 三  階数による区分 イ 平家建 ロ 二階建(三階建以上の建物にあっては、これに準ずるものとする。)

(建物の床面積) 第百十五条  建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。

 

又、不動産登記事務取扱手続準則第82条には下記のように記載している。

 

不動産登記事務取扱手続準則第82条

(建物の床面積の定め方) 第82条

建物の床面積は,規則第115条に定めるところによるほか,次に掲げるところにより定めるものとする。

一 天井の高さ1.5メートル未満の地階及び屋階(特殊階)は,床面積に算入しない。ただし,1室の一部が天井の高さ1.5メートル未満であっても,その部分は,当該1室の面積に算入する。

二 停車場の上屋を有する乗降場及び荷物積卸場の床面積は,その上屋の占める部分の乗降場及び荷物積卸場の面積により計算する。

三 野球場,競馬場又はこれらに類する施設の観覧席は,屋根の設備のある部分の面積を床面積として計算する。

四 地下停車場,地下駐車場及び地下街の建物の床面積は,壁又は柱等により区画された部分の面積により定める。ただし,常時一般に開放されている通路及び階段の部分を除く。

五 停車場の地下道設備(地下停車場のものを含む。)は,床面積に算入しない。

六 階段室,エレベーター室又はこれに準ずるものは,床を有するものとみなして各階の床面積に算入する。

七 建物に附属する屋外の階段は,床面積に算入しない。

八 建物の一部が上階まで吹抜になっている場合には,その吹抜の部分は,上階の床面積に算入しない。

九 柱又は壁が傾斜している場合の床面積は,各階の床面の接着する壁その他の区画の中心線で囲まれた部分による。

十 建物の内部に煙突又はダストシュートがある場合(その一部が外側に及んでいるものを含む。)には,その部分は各階の床面積に算入し,外側にあるときは算入しない。

十一 出窓は,その高さ1.5メートル以上のものでその下部が床面と同一の高さにあるものに限り,床面積に算入する。

【外気分断性】

建物の内部に外気が自由に出入りすることを防止するための屋根及び周壁等の存在をいう。これは、建物の用途に見合った生活空間が屋根及び周壁等によって確保されていることを必要とするものだが、必ずしも物理的なものに限定する趣旨ではなく 用途に応じて判断することになる。

屋根と柱のみのカーポートは、周壁等が存在せず外気分断性が無いので建物として認められない。

【定着性】

建物は、土地の定着物だから、物理的に土地に固着している必要があり、かつ、 永続的に土地に定着して使用されることが必要。

基礎工事のされていない組み立て式の物置等は、簡単に動かすことができるので 定着性がなく建物として認められない。

【用途性】

建物は一定の用途の為に人工的に造られるものだから、その用途に見合った一定規模の生活空間が確保されている必要がある。このことを「人貨滞留性」というそうです。

【取引性】

不動産として売買ができるかどうか。

こうして不動産登記法の「床面積」について詳細に見てみると、建築基準法の「床面積」との差異が見えてくる。

 

 

坂の上の雲ミュージアム -2

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この吹き抜け空間を実現するために、

全館避難安全検証法(ルートC)が採用され

竪穴区画の規定を適用除外している。

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3階から5階までスロープでつながる

吹き抜けの展示エリアは避難経路でもある。

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各階の避難安全を確保するため

要所にガラススクリーンや防煙用スクリーンシャツターを設け

煙拡散防止を行っている。

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また、階段室に煙が流入しないように階段室加圧防煙システムを採用している。

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http://www.sakanouenokumomuseum.jp/

設計 : 安藤忠雄建築研究所

所在地  : 松山市一番町三丁目20番地

敷地面積 :  3384.64m²

建築面積 :  936.80m²

延床面積 : 3122.83m²

構造規模 : 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造 地下1階/地上4階