「科学でツッコむ日本の歴史~だから教科書にのらなかった」平林純

 著者曰く科学の視点で歴史を調べ上げズバッと斬った本。気楽に読めたが、後から考えると深い内容が散りばめられいる。

 日本では歴史は文系、科学は理系で選別され「別物」扱いされがちで、歴史=暗記だと勘違いされている。この科目別教育と若年のときから理系・文系コース分けの弊害は、今の日本に如実に表れているように思う。

 フィンランドは科目別教育を廃止し、領域横断型で現象やイベントを総合的に学ぶ教育システムを導入したと聞いた。見直しが始まつているところがあるのは興味深い。

「科学・・起きる現象には必ず理由があって、それを解き明かすことができる。」と著者が書く通り。全て科学で解明できるかどうかは一旦置いといて。

 最初に豊臣秀吉の「中国大お返し」を取り上げている。織田信長が本能寺で明智光秀に殺されたとき、秀吉は京都から200km以上離れた備中(現在の岡山市北区)にいた。「信長死す!」との知らせを聞いた秀吉は、毛利方と和解し京都に向かい山崎の決戦となる。

 秀吉軍2万人が一週間から10日ぐらいで移動する。これを伝説の「中国大返し」というのですが、よく考えると一日20kmから30kmの移動なので、1日8時間歩くとしても時速3km程度なので、普通に歩く程度。もっとも歴史の本によると備中高松城の陣から姫路までの移動は大変だったらしい。

 この本の著者が注目したのは「食料」。2万人が200km移動するのに必要なエネルギー、食糧を用意した石田三成の実務官僚としての能力の高さ。石田三成は若い時から兵站部門に能力を発揮していたらしい。石田三成再発見という気がした。

他にも考えることがあった。それは労働時間のことだけど、別の機会に書くとしよう。

「少年と犬」馳星周著

 直木賞を受賞した馳星周さんの「少年と犬」。出先の駅の本屋に平積みされていたので買って帰り、一気に読んでしまった。

 それなりに仕事に追われているのに・・・。

 一気読みした本は久しぶり、いつもは途中までしか読まなかったり、数ページずつしか読めない。大概は読んでいるうちに眠くなるから。でもこの本には引き込まれてしまった。読み進めると、ときおり以前飼っていた犬達のことが脳裏に浮かんでくる。ついつい「ありがとう」と呟いていた。

 さてこの本は、東日本大震災で被災し飼い主を亡くした犬・多聞(たもん)の数奇な運命をたどる物語。

 帯にも書かれているように「(犬は)人という愚かな種のために、神が遣わした贈り物」という著者の言葉に、うなずいてしまう。

人は「無償の愛」に包まれた時、しあわせを感じる。

 「犬を愛するすべての人に捧げる感涙作」といのは間違いなし。

「建築バイリンガルノート」堀池秀人著

かれこれ20年ぐらい前に買った本。その頃外資の仕事に関わっていて専門用語の英語表現を確認したくて買ったのだと思う。ところどころの単語に赤線が引いてある。

その頃と比べても グローバル化は進み、個人事務所の我社でも英語が必須な仕事に関わることが増えている。特に今年は多い。

この「建築バイリンガルノート」は、単なる建築系技術英単語辞書でないところが良い。4部構成になっており、「国境なき世界を横断する」というコラム集と3つのカテゴリーで分類した用語集からなる。3つのカテゴリーとは、企画から設計、工事といった実務の流れに沿った「建築のベーシックとしてのヴォキャブラリー」、文化施設や商業系、住宅系といった建物タイプごとの「形式の解体、そして再構築へ」、哲学や物理学、心理学といったイディオムにかかわる言葉を集めた「概念の構築」。実務用語の章では、海外の建築許可証の例や図面の種類について図入りで解説されているのがユニーク。

この本を書いた堀池秀人さんは 5年ほど前に65歳で亡くなられた。まだまだ活躍できたのに惜しい。

外資の仕事も 昔と比べると随分と楽になった。何しろ愛用するポケトークがあるし、幾つもの翻訳ソフトで表現を確認することができる。読み書きは。しかし相変わらず会話は、一向に進歩しない。活舌が悪いせいかポケトークでさえ正確に認識してくれない事がある。

まあ歳をとっても 英語に触れると頭が活性化するように思えるのはありがたい。

「記者失格」柳澤秀夫

NHKの「あさイチ」で一躍有名になり、その後NHKを退局し現在は各種テレビ番組でコメンテーターとして活躍されている柳澤秀夫さんの本。

戦争報道記者、癌との戦い、組織ジャーナリズムの矛盾が赤裸々に語られている。「へぇ そうだったんだ」と今になって知ることが多かった。

「第5章 現実は、ひとことではくくれない」に書かれていた「0か、1かのデジタル思考は、グラデーションを捨象する。だけど、ものごとの本質は、アナログ的なグラデーションのなかにこそあるのではないのだろうか」 に強く同感した。

「キャッチ商法化するメディア」での「人間は、頭で考えるより先に、単純化されたものや扇情的なものに感性で飛びつく。テレビはもともと、見てもらってなんぼのものだ。キャッチすることは必要だと思う。だけど、キャッチすることばかりに長けて、店の暖簾をくぐらせてたあとに食べさせるものがまずいのでは仕方ない。」

「ジャーナリズムの元々の意味は日記であり、記録だ。記録するものは事実でなければならない」「あくまでもファクト、事実を丁寧に積み重ねる。対象に近づかなければ事実はなかなか見えてこない。だからこそ、何があっても現場に行かなければいけない。それが我々の仕事だ。」生涯、記者としてあり続けようとする柳澤さんの思いが伝わってくる。

今、メディアだけでなく日本全体が「キャッチ商法化」している。この本を読んでそう思った。

『あわいの力・「心の時代」の次を生きる』安田登

能の主人公の「シテ」に対して「ワキ」はワキ役ではなく「横(の部部)」を指すそうです。着物の脇の縫い目の部分を「ワキ」と言い、着物の前の部分と後ろの部分を「分ける」からで、古語でいえば「分く」その運用形が「ワキ」。体の横で前と後ろを「分ける」と同時に、前と後ろをつなぐ「媒介」にもなっている。この「媒介」という意味をあらわす古語が「あわい・あはひ(間)」と書かれています。

世阿弥は「心(しん)より心(しん)に伝ふる花」という言葉を残しています。能という芸能を端的に表現した言葉だそうですが、「心(しん)」という言葉の意味を押さえて置く必要があると言います。

日本的な心(しん)というのは三層構造からなっている。いちばん上、表層にあるのが「こころ」で、その下に「こころ」を生む「おもひ」というものがあり、さらにその下、もっとも深い層に「心(しん)」が存在する。

安田登さんは「心(こころ)」だけで物事を理解し考えようとするのではなく、身体という外の世界とつながる「媒介」を通じて身体感覚で思考する。それが「心(こころ)」の副作用が蔓延する現代から次の時代にかけて、生きるために必要な力となっていくと私たちを導いてくれます。

「かんがえる」の語源は「か身交(みか)ふ」で、「か」は接頭辞なので、もともとの意味は「身」が「交ふ」、つまり身体が「交わる」状態を指す。身体が「交わる」ときに、すなわち思考が生まれると古代の人は、この言葉をつくつたのではないかと書かれています。

「かんがえる」のにいちばん適しているのは、自然の中を歩くこと。鳥のさえずりや葉のそよぎ、川のせせらぎの音を聞きながら歩いていると、いつしか「外」の自然と「内」の自己が「交わ」って、自分が普段おもいつかないようなことが引き出される。身体が「か身交(みか)ふ」のは、自然とだけではなく、思考する対象と自分が「か身交(みか)ふ」ことも大事。思考する対象と身体的にも交わる、そのとき思考する対象と身体的に交わる、そのとき思考する対象と自己の境界はあいまいになり、そこに思考が生まれると書かれています。

能楽師ならではの視点なのでしょう。凡人には中々すんなりとは理解できない事が多いのですが、身体感覚に基づいて思考する安田登さんの指摘は示唆的です。

「司馬遷・史記 歩むべき道は歴史に学べ」安田登

能楽師の安田登さんが、開成高校の生徒に司馬遷の中国歴史書「史記」について解説した本。「NHK100分de名著」による2019年11月の特別授業。

「シンギュラリティ」(特異点) 少しづつ変化して来たことが、ある地点を境に劇的に変化する、その変化する一点のことを言うとのこと。かつて人類は、こうしたシンギャラティを何度も体験して来た。紀元前1300年頃の古代中国では「文字」が発明された。

何故「史記」を読むのか、「史記」は伝説を含めた古代中国の非常に長い歴史(2500年以上)を扱っている為、文字の誕生をはじめ人類にとっての大きな変化が幾つも記されている事。そして「史記」の叙述スタイルに注目している。それまでの歴史書が出来事を時系列に沿って書く「編年体」であったのを人物を中心に書く「紀伝体」という新しいスタイルを作り出した。

古代中国の各時代では、次のような大きな変化があったと指摘する

殷・文字の誕生

周・心と論理の誕生

秦・法の完成

漢・中華文化の成立

その変化を時代ごとに解説されていて とてもわかりやすかった。

司馬遷が投げかけた問い「天道是か非か」は、答えの出ない永遠の問い。「良い事をすればよい事が起きる」「天道というものがあると言われたが、本当にあるのか」。司馬遷が問い続けた「天道是か非か」は現代の私達に突きつけている問いでもある。

「写真でわかる世界の防犯-遺跡・デザイン・まちづくり」小宮信夫著

「犯罪機械論」の立正大学・小宮信夫教授が半生をかけた犯罪学研究の集大成と自ら言われている本です。

人類の歴史は、戦争の歴史ともいえる。戦争という名の強盗殺人を防ぐ手立てが「犯罪機会論」の原点であり、それが万里長城や客家の福建土楼等の城壁都市になった。しかし日本では城壁都市をつくるまでもなかった。四方の海が城壁の役割を演じ、しかも台風などが日本への侵入を一層困難にしていた。

中庭を囲んで四方に部屋を配した漢族の伝統的住居は「四合院」だが、これこそ防犯に配慮した家の形式だ。外壁を壁で囲み、壁には窓を設けない。出入口も南面に設けられた一箇所のみ。壁をよじ登ったとしても降りる先は中庭なので、侵入者は四方から丸見えとなる。その住空間は、現代都市住宅のコートハウスに通ずるものがある。

学生時代に、坂倉建築研究所の西澤文隆さんの「コートハウス」論は、愛読書だった。1970年代に都市住宅の新しい可能性を感じたものだった。

現代は、グローバリゼーションの只中にある。

社会的あるいは経済的な関連が、旧来の国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大して様々な変化を引き起こしている。感染症によるパンデミック、犯罪の増加、環境汚染等、今まさに時代の転換期にいるのだとつくづく思う。

古来より「名医は既病を治すのではなく未病を治す」と言われている。予防に勝る治療無し。

リスク・マネジメントで最も重要なことは「予測」である。

犯罪機会論では、景色を解読する事によって「予測」できると書かれている。領域性(入りにくさ)と監視性(見えやすさ)を物差しにして景色を測る事が必要だ。絶体絶命の窮地に追い込まれる前に、景色解読力を高めて未知の危険を予測し、被害の予防が可能になると言う。

全ての分野において現代社会に欠落しているものは「予測」だと思うのだが・・・。

「正しく怖がる感染症」岡田晴恵著

時の人、岡田晴恵さんの「正しく怖がる感染症」(ちくまフリマ―新書)を妻から借りて読んだ。感染症とか公衆衛生学の分野は門外漢だったのだが、2017年に書かれたこの本を読んでみてとても良く分かった。

「新型インフルエンザ、ジカ熱、エボラ出血熱、結核、梅毒。多種多様な感染症をその経路別に整理して正しい知識を持ち、いたずらに怖がり過ぎず来たるべき脅威に備えよう。」という本で、章建てが下記のようになっている。

1章 昆虫が運んでくる感染症
2章 接触することでうつる感染症
3章 吸い込んでうつる感染症
4章 母子感染で重篤化する感染症
5章 飲み込んでうつる感染症
6章 傷からうつる感染症
7章 動物からうつる感染症

岡田さんは、21世紀は感染症との闘いの時代と指摘しているが、新コロナウイルスによるパンデミックスの真っただ中にいる現在。岡田さんが2017年にこの本に書いている危惧のとおりになっている。

エボラ出血熱のような、まだまだ怖い感染症も、未知の感染症もある。

新型感染症の流行時には、感染機会を減らし生き残るためには、水や食料、生活必需品の1ヶ月程度の備蓄は必要と指摘している。

我が家も防災対策として1週間分ぐらいの備蓄はしていたが、あらためて備蓄リストを作成し、そのぞれの品の数を調べた。表にしてみると少ないもの足りないものが良くわかる。

犯罪機会論

妻の愛読書「ニュートン(2020.04)」の中に、面白い記事があると勧められて読んでみたのが立正大学・小宮信夫教授の『「犯罪機会論」で犯罪を防げ!』。

『犯罪学では、人に注目する立場を「犯罪原因論」、場所に注目する立場を「犯罪機会論」と呼んでいる。欧米諸国では、犯罪原因論が、犯罪者の改善更生の分野を担当し、犯罪機会論が、予防の分野を担当している。
犯罪機会論とは、犯罪の機会を与えないことによって犯罪を未然に防止しようとする考え方である。ここで言う犯罪の機会とは、犯罪が成功しそうな状況のことである。つまり、犯罪を行いたい者も、手当たりしだいに犯行に及ぶのではなく、犯罪が成功しそうな場合にのみ犯行に及ぶ、と考えるのである。
とすれば、犯罪者は場所を選んでくるはずである。なぜなら、場所には、犯罪が成功しそうな場所と失敗しそうな場所があるからである。犯罪が成功しそうな場所とは、目的が達成できて、しかも、捕まりそうにない場所である。そんな場所では、犯罪をしたくなるかもしれない。逆に、犯罪が失敗しそうな場所とは、目的が達成できそうにないか、あるいは、目的が達成できても捕まりそうな場所である。そんな場所では、普通は、犯罪をあきらめるだろう。』

小宮信夫の犯罪学の部屋

犯罪学者の小宮教授が提唱する世界標準の「犯罪機会論」は、「犯罪は犯行の動機があるだけでは起こらず、動機を抱えた人が犯罪の機会(チャンス)に出合ったときに初めて起こる」というもの。

そこで、機会をうかがう犯罪者が「心理的・物理的に犯罪をやりにくい条件とは」という目線で、世界遺産、住宅や道路、学校や公園、駅やトイレなどを調査した小宮教授の「写真でわかる世界の防犯 遺跡・デザイン・まちづくり」という本を早速注文した。

一つ例を取り上げると、トイレの設計で通常行われているのは「A」だが、防犯機会論から言うと危険なのは「A」で、男女のトイレの入口が近く、そのそばに多目的トイレがあると、異性を尾行して多目的トイレにすぐ連れ込める。確かに多目的トイレは密室空間。「B」の平面だと男女の入口がはなれ、かつそれぞれのトイレの中に多目的トイレがあれば連れ込みにくいそうだ。

目から鱗。

是非「ニュートン」を買うか「小宮信夫の犯罪学の部屋」をみて欲しい。視点が変わると、建築のあり方も大きく変わる事に気づく。

「欲望の時代の哲学2020」マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント

既にNHK「欲望の資本主義」シリーズでメディアの寵児となり哲学界のロックスターとも呼ばれるマルクス・カブリエル。

2020年3月25日からNHK ・Eテレで放送が始まる「欲望の時代の哲学2020 マルクス・ガブリエル NY思索ドキュメント」を楽しみにしている。

「SNS社会の中、増幅する欲望、怨恨、そして分断。コミュニケーションツールとして期待を集めたデジタルメディアこそが私たちの社会を壊しているとガブリエルは指摘する。なにゆえに人々の心をむしばんでいるのか?カント、ヘーゲルを引きつつその本質を明らかにしていく。カントが考えた「自由意志」という概念、その先にある「目的の王国」とは?ドイツ伝統の哲学に新たな生命を吹き込むことで、現代人の心の問題を解き明かす。」

NHK ドキュメンタリー

先行して読んだのが「資本主義の終わりか、人間の終焉か?  未来への大分岐」

斉藤幸平氏とマルクス・カブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソンとの対談集。この新書5万部を突破した。

とっても刺激的な内容だった。哲学・経済の専門的な言葉が多いので、若干ついていけないところもあるが、今のシステムが限界を迎えつつあることは一人の社会人として肌で感じるし、どうにかして乗り越えないといけない時期がそこまでやってきてる感覚もある。

建築の技術や知識を学ぶことも大事だろうけど、基盤となる教養を広げることはもつとも大事。

「後藤新平・日本の羅針盤となった男」山岡純一郎著

昨今の新型肺炎の拡大で、以前読んだ この本を思い出し書棚から探してきた。

この本は、付箋紙だらけになっているから実に学ぶことが多かつた本なのだが、後藤新平が陸軍次官だった児玉源太郎の命を受けて担当した日清戦争後の検疫事業について書き出してみる。

日清戦争の戦地では伝染病が流行した。広島は、日清戦争の大本営(臨時首都)が置かれた。1895年(明治28年)3月から同年11月つまり戦争末期から終戦後兵士が凱旋して以降にかけて広島県内で3,910人(死者2,957人)うち広島市内1,308人のコレラ患者が発生したとある。
また当時大本営参謀総長である有栖川宮熾仁親王が広島で発症した腸チフスで1895年1月薨去し指揮にも影響した。

明治28年(1895年)4月1日、日清戦争の帰還兵に対する検疫業務を行う臨時陸軍検疫部事務官長として官界に復帰した後藤新平は広島沖の「似島(にのしま)」検疫所を作った。その他に彦島検疫所(下関市彦島)・桜島検疫所(大阪市桜島)も整備指揮を行った。

似島検疫所は、敷地面積2万3千坪、消毒部14棟、停留者舎24棟、避病院16棟、さらに事務所、兵舎、倉庫、炊事場、トイレ等、棟者以外に火葬場と汚物焼却場を造り機能させた。病院と消毒工場が合体したような世界最大級の検疫施設だったと書かれている。似島では最高1日4千人の検疫がされた。

検疫所開設までに与えられた時間は当初は3ヶ月間だったが、2ヶ月の不眠不休の突貫工事で完成させた。後藤新平の凄さは施設建設のハード面だけでなく、その運用ソフト面でもイニシアチブを発揮したことである。

検疫業務は凱旋兵を載せた輸送船が沖合に見えたところから始まる。沖に停めた船に検査官が乗り込み、伝染病患者や死者の有無を臨検する。患者は運搬船で避病院、遺体は屍室に送り船内の消毒を行う。健康な兵員は検疫所で20分間の淋浴し消毒する。衣類や携行品は熱気消毒、薬物消毒される。停留の日数は5日、その間に発病者出れば隔離し、さらに4日停留日数が延長される。

検疫を通過した人数は23万2346人。検疫船舶数687隻、そのうち患者を乗せてきた船は258隻。真性コレラ患者369人。疑似コレラ313人。腸チフス126人。赤痢179人。痘瘡9人と記録されている。

明治28年(1895年)は、全国でコレラ患者5万5144人。4万154人が死亡している。やはり日清戦争がコレラを流行させたといえる。ただ その5年前は平時でありながら3万5227人がコレラで死亡している事から、後藤新平が指導力を発揮した大検疫事業が行われなかったら、どれだけ死亡者が拡大したことか。翌年からコレラ死者数は数百人台に激減しているところから、入国する外国船の検疫を徹底的に行えるようになったことが要因だと指摘されている。似島・彦島・桜島の検疫事業は その後の成功モデルになった。

後藤新平は、行政手腕の巧みさから、臨時陸軍検疫部長だった児玉に評価され、児玉が第4代台湾総督になると台湾民政局長に抜擢されるのであった。

さて120数年前に世界から絶賛された検疫事業に学ぶことなく、迷走する日本の防疫対策のもとで新型肺炎は市中感染の段階に移った。あらためて日本の政治家や官僚には「人」がいなくなったのかなと思う。

「そして日本国憲法は作られた」

このところ幾つか同時並行で難しい症状の建物に取り組んでいるせいか、頭が悶々していた。気分転換に漫画でも読むかと 娘から借りていたこの本を読んだ。

最近は弁護士・司法書士・行政書士の法律家の皆さんとお付き合いが増えているので、常日頃一般的な法律知識の習得は欠かせない。

憲法改正の動きがあるが、現在の日本国憲法がどのような経過で作られたのか、そしてどういうものなのか正しく判断する必要があるのだろう。

マッカーサーが日本国政府に憲法改正を指示した時、政府案とは別に民間でも沢山の草案が作られた。その中でも有名なのが憲法研究会の「憲法草案要綱」。

この「要綱」は、
・「日本国の統治権は、日本国民より発する」
・「天皇は、国民の委任により専ら国家的儀礼を司る」
・「国民の言論・学術・芸術・宗教の自由を妨げる如何なる法令をも発布することはできない」
・「国民は、健康にして文化的水準の生活を営む権利を有する」
・「男女は、公的並びに私的に完全に平等の権利を享有する」
など現行日本国憲法と少なからぬ点で共通する部分を有している。一方、軍に関する規定を設けておらず平和思想の確立と国際協調の義務を定めるものの、戦力や交戦権の放棄についての記述はない。

GHQの原案は、国内の草案も参考にしながら1週間で作られたのは確かだが、その後の交渉経過で日本側の意見も十分に取り入れられ、3カ月半にわたる国会審議でも、国内の第一線の憲法学者や学識経験者が加わっている。「押しつけ憲法」と断じるのは、歴史を学ばないものの決めつけでしかない。

建築とは、まったく異なる本を読んでリフレッシュできた ! ?

「こども六法」

もらった図書券があったので孫娘の絵本でも買いなと娘に渡したら、この本を買ったと連絡がありました。小学生でも読めるように工夫された身近な法律の本だと言う事です。私はまだ中身を読んでいませんが、今話題の本(アマゾン・ベストセラー1位)だそうです。

著者は、教育研究者の山崎総一郎さん。まだ20歳代ということですがエネルギッシュな活動をされています。

この本の価格を抑えるためにクラウドファンディングでお金を集めたそうです。

こどものときから身近な法律知識を学び、基本的知識を得ることは大事だと思います。今も昔も学校教育の中で身近な法律知識は組み込まれてこなかつた。

今でも時々いますね「建築基準法? なんでそんなもの守らなければならないんですか?」若い設計者に聞かれるとガッカリします。

この本は、保護者である娘自身が読むために買ったのかな。だって孫娘は、まだ幼稚園生だもんね。

以下 アマゾンに掲載されていた本の紹介文です。

こども六法

山崎総一郎


いじめや虐待は犯罪です。
人を殴ったり蹴ったり、お金や持ち物を奪ったり、SNSにひどい悪口を書き込んだりすれば、大人であれば警察に捕まって罰を受けます。
それは法律という社会のルールによって決められていることです。

けれど、子どもは法律を知りません。
誰か大人が気づいて助けてくれるまで、たった一人で犯罪被害に苦しんでいます。
もし法律という強い味方がいることを知っていたら、もっと多くの子どもが勇気を出して助けを求めることができ、救われるかもしれません。

そのためには、子ども、友だち、保護者、先生、誰でも読めて、法律とはどんなものかを知ることができる本が必要、そう考えて作ったのが本書です。
小学生でも読めるように漢字にはすべてルビをふり、法律のむずかしい用語もできるだけわかりやすくして、イラスト付きで解説しています。

大人でも知らないことがたくさんある法律の世界、ぜひ子どもと一緒に読んで、社会のルールについて話し合ってみてください。

【目次】
第1章 刑法
第2章 刑事訴訟法
第3章 少年法
第4章 民法
第5章 民事訴訟法
第6章 日本国憲法
第7章 いじめ防止対策推進法
いじめで悩んでいるきみに


 

「CMガイドブック第3版」

本書は、本邦唯一のコンストラクション・マネジメント教本で最近の多様な発注方式に対応して改訂された。

コンストラクション・マネジメント(CM)における標準的な啓蒙書をめざして2004年に発刊、2010年に「 改訂版」がだされ、この本は第3版。

昨今の建設分野を取り巻く社会環境はますます変化し、随分CMも浸透・普及してきた。

また公共工事品確法改正(2014)に伴い、官公庁でも多様な発注方式が可能になってきました。また地方公共団体が保有・管理する公的不動産(PRE)についても各地で見直しが進んでいます。

建築プロジェクトの事前協議である各種許認可は、設計スケジュール、建設コスト、全体計画に関わっているのでコンストラクション・マネージャー(CMr)がモニタリングする必要があります。新築だけでなく増改築・用途変更を含むリノベーションプロジェクト等も増えてきて、その一部をお手伝いすることが増えてきました。

ということでCMを体系的に勉強し直すために読みました。

「施設参謀」

山下PMCの代表取締役社長である川原秀仁さんの本。

PM(プロジェクトマネジメント)、CM(コンストラクションマネジメント)の基本は、品質・コスト・納期をコントロールしながら、施設建設プロジェクト全体をマネジメントすることです。

昔は、CMと言えばコストカツター。分離発注で各専門工事会社からキックバックさせ建築主に隠れて儲ける怪しい人達というイメージもありましたが、昨今は第三者性を担保した健全なイメージが強くなりました。

2000年代の頃から日本の不動産ビジネスが開花しはじめデューデリジェンスの必要性が強調され、不動産証券化とともに設計図や各種施工結果報告書・竣工図の完備が必要となりました。

そしてデューデリジェンス業務(資産の適正評価のための調査・診断)やエンジアリング・リポート(建物状況調査報告書)といった新しい業務が生まれました。

とりわけ不動産投資や不動産管理において遵法性(建築関係法令)の遵守が前提となり、こうした調査業務も新しい業務として仲間入りしました。

昨今では、民間でも官庁でも発注方式が「設計・施工分離」から「設計施工一括発注」、設計の段階で施工者が関与する「ECI方式」などと多様になりつつあります。

そうした中でPMやCMは、これまで以上に重要な役割と責任を負うことになることが予想されます。

この本が出版されたのが2015年ですので、川原さんの書かれている「日本の未来をつくる7つの戦略」には、ちょつとどうかなと思うところもあります。

しかし川原さんは、この分野のトップランナーだけあって、この本に書かれている内容は、刺激的で多くの示唆に富むことが書かれていました。

「事業戦略と施設戦略を高度に融合した領域」は、私にとっては目指すべき高見かも知れません。

「日本の近代・現代を支えた建築・建築技術100選」

日本建築センターと建築技術普及センターから発行されたこの本は、建築基準法の前身である「市街地建築物法」が制定されてから100年の今年、百周年記念として出版された。

建築技術の100のキーワードを「住宅」「一般建築」「各種構造」「建築生産・設備」「政策・地域計画」の5分野に分けて掲載されている。

年寄りが読んでもなかなか読み応えがあるのだが、本書で「日本の100年間における建築・建築技術の全体像や日本の独自性を、これから建築を学ぶ若い人に伝える」と書かれているように、多いに若い人たちに読んでもらうのが良いと思う。

私見としては、調理人(学者)の視点ばかりではなく生産者の視点で建築技術の要素である塗装、防水、溶接、左官、タイル、外壁材等部位別に100年の歴史を振り返ってもらつたら もっと奥行きがある本になったのではないだろうかと思った。

「市街地建築物法から建築基準法まで・日本近代建築法制の100年」

1919年に市街地建築物法及び都市計画法が制定されてから 100年を迎えるのを記念して行われる都市計画法・建築基準法制定 100周年記念事業の一環として、我が国の近代建築法制の 100年間の歩みをまとめられた書籍。

永久保存版の資料集です。

まだパラパラとしか見ていませんが・・・

「建築と都市の保存再生デザイン・近代文化遺産の豊かな継承のために」

この本は、京都工芸繊維大学大学院建築学専攻建築都市保存再生学コースの、研究教育活動を踏まえて、歴史的建築物の保存再生デザインのあり方、理論と方法について論じている。

弊社も概ね築80年から築20年前の近現代建築の再生・活用に関わってきたが、それらは「生活の器」あるいは「経済の器」であった。それでも本書が指摘しているように「何を変え、何を守るのか」は、建築再生・活用の最も重要な視点であったと思う。

弊社の建築再生・活用のアプローチは、多くは建築法(手続き・遵法性)からのものだが、最近は小規模なものは設計監理もするので、多少なりともデザインに関心が広がっている。また地方の歴史的な建築物のプロジェクトへの関与も増えつつある。

2015年から始まった工繊大の保存再生学コースの研究活動は、以前から関心を持っていた。建築保存・再生・活用は常に特殊解で体系的な本も見当たらない。そうした現在の状況下で基礎的な理論や情報を共有するための本となっている。

辰野金吾の代表的な煉瓦造建築の化粧煉瓦のディティールの変遷等は、始めて知り得た。何歳になっても勉強になる事は多い。

「台北・歴史建築探訪 日本が遺した建築遺産を歩く」

片倉佳史の台湾特捜ブログ

台北市内に残る日本統治時代の建築物 すなわち「老建築」「歴史的遺産」を15年の歳月をかけ丹念に探し出し記録した本書は、「永久保存版」に値する本。

この本を読んで「台北には随分と歴史的建築物が残っているなぁ」と思った。

私が台湾の日本統治時代の歴史的建築物に興味を持つのは、日本本土の全国的建築法である「市街地建築物法」より台湾や大連の法制化が先んじていた事。近代日本の建築法制史の研究上、台湾の建築は、外すことができない。

台湾に残る建築遺産を見ることは、台湾を知るばかりか「日本」を知ることにつながる。

実際 台湾という土地の歴史、日本との関わりを学んでいく中で、台湾初代民生長官・後藤新平」に関心が移ってしまった。すぐ脇道に進んでしまうのは悪い癖だ。

このところ随分と台湾の本を読んだが、中々まとまった日数を取って台湾を訪問する時間が取れないでいる。日本では購入できない図書も欲しいし。

この本に紹介されている建物の位置をマッピングしたサイトもあるので、ゆっくり台北だけ訪れるのも良いなと思っている。

こういう一次資料が集積された本が、私にとっては本当の価値ある本と言える。

「MIES」

たまたまCASAのサイトを眺めていて知ったスペイン発の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの半生を描いた漫画『MIES』。

バルセロナ・パビリオンの完成から、ナチスによるバウハウス閉鎖の悲劇、そして亡命先アメリカでの活躍を辿っているらしい。

なにしろスペイン語だから良くはわからない。

だがCASAの紹介記事を見ていると読んでみたくなる漫画だ。

日本語版、早く出版されないかなぁ~

CASA

MISA公式サイト

「建築関連法規の解説・設計実務編」熊谷組設計本部編著

世に多くの法令解説本はあるが、この本はあまり知られていない。

第一線の設計実務者の為の法令解説本として、これほど適切な本はないだろう。

1990年に初版が発行されているのだが、当時勤めていた会社にあったこの本を参考にしていた。その後1996年に一部改訂され、2017年に全訂改正版が発行されていたことを最近知り購入した。

この本の他にない特徴と言えば、まず第一に多くの図や表が組み込まれて視覚的だと言う事。平均地盤面の図や日影の発散方式と閉鎖方式の図等々 とにかく親切。

第二にあれこれの本をめくることなく一冊で間に合う法令解説本だと言う事。例えば消防法の「防火対象物の主たる用途と機能的に従属する用途」東京消防庁の消防同意事務審査要領なども表として挿入されていて、いちいち事務審査要領の本を引っ張り出さないで良い事。

第三に建物用途別チェックポイントがとても便利だと言う事。東京都の駐車場附置義務条例などについても記載されている。

第四に営業企画から工事竣工までを取り上げているので、工事施工に関わる法令解説にも触れている事。

第五として行政独特の取扱い事例や日本建築行政会議の適用事例等も幅広く記載されている事。

総じて大型の特殊建築物に関わる設計実務者向けと言えるだろうか。

欲を言えば総合設計制度、一団地申請、景観法、都市計画法、道路法等にも触れ、購読者をもっと絞り込み徹底してプロフェッショナル向けの法令解説本にして欲しかった。

それにしても第一線の設計実務者の編著というのは、大変なエネルギーが費やされたことと思う。熊さんには恐れ入った。脱帽。

第一線の設計実務者は、初学者向け本や建築士受験用法令解説本に依存せず、こういうプロフェッショナル向けの本を参考にしたほうが良いと思います。

「リノベーションの教科書 企画・デザイン・プロジェクト」

最近の大学の卒業設計において、既存建築ストック再生の提案が多くなっていると聞く。一種のブームなんだろうけど、それでも若い人達は、時代を読む力が鋭いところがある。建築ストック再生・活用は これからの日本では避けることができない分野であることは、ほぼ間違いないだろう。

さて この本は近畿の大学で教鞭をとっている6人の先生たちの共著である。「はじめてリノベを学び、取り組むための入門書」とあるように「さまざまな教育機関での講義や実習のテキスト」としての役割を持つている。

いままでテキストとして使えそうなリノベ本が中々無かったが、この本は「理論と実践の座標軸」「建築からまちや地域までという座標軸」そして「新築から改修までを時間軸でとらえる」という立体的で体系だった構成になっていて実務者でも再発見する箇所があり面白い。

とりわけ関西方面の事例については、知らなかったものもあり興味深かった。

また弊社が2014年から2015年にかけて、その業務の一部を担当した「THE SHARE HOTEL HACHi 金沢」が事例として掲載されていた。

弊社は、この建物が工事完了検査済証が無かったために金沢市と交渉し、建築基準適合性状況調査や耐震診断・耐震補強設計を行い、法12条5項報告提出する業務までを担当した。その頃は、国交省ガイドラインも発表される前だったので「検査済証の無い建物のコンバージョンなんかできるのか」と事業者も心配していた。たしか法12条5項報告で「検査済証の無い建物の用途変更」を行うのは金沢市で始めてと言われた記憶がある。リノベの裏には、我々のようなデバイスメーカーがいることも知って欲しい。

これからは、簡単なリノベばかりでなく高度の専門知識を要する建築設計者・技術者を育ていく必要があるように思う。たぶん大学教育もこれから変わっていかなければならないのだろうと予感する。

「よくわかる コンクリートの基本と仕組み」岩瀬泰己・岩瀬文夫著

鉄筋コンクリート造の既存建築物の調査をしていると疑問に思うことが沢山あった。

例えば「コンクリートコア採取」。JIS規格では「一般に粗骨材の3倍以内としてはならない」としており、粗骨材の最大寸法は2cmが一般的だから コアの直径は7cm~10cmとされている。しかし行政の担当者によっては直径10cmにこだわる人もいる。コア採取の技術者や試験所に聞くと3.5cmや5cmでも問題ないと聞いていた。既存の構造体の事を考えたら小さい直径が良い。この本の著者も直径3.5cmでも品質推定できると書く。

またコア採取の位置は、高さ方向のどの位置が適切なのかとか、コンクリートについて知りたかったことが沢山書かれていた。実務経験者が書いた本は、経験に裏付けられていて知恵が溢れている。

以前、両面コンクリート打放しの建物で外壁が孕んだり、垂直方向に壁が傾斜したり、外壁から雨漏りや結露するというので弁護士に依頼され現場を見に行ったことがあった。両面全面コンクリート打放しなのに施工計画書も作らないで施工しており、設計・工事監理者も何一つコミットメントしていない状態だった。協力業者という名の下請けに全面的に依存した施工だった。

遠目にはインスタ映えする建物だが、近くでみるとがっかりするような施工状態だった。

両面コンクリート打放しが難しい施工という認識は工事施工者も設計・工事監理者にも欠落しているような現場だった。もっと関係者は。コンクリートについて勉強して欲しいなと思ったものだ。

この本には、初学者にも読みやすいが学術書にはない楽しみが溢れている。コンクリートが好きになるような本。実務に役立つ本です。

「NICHE mook02 台湾建築探訪!」

台湾建築の情報収集をかねて読んだ本

特集1の「台湾のフジモリ建築」では藤森照信が台湾と日本に作った茶室を網羅して紹介している。宣蘭の「羅東文化工場」にも藤森さんの茶室があるのを知り、行く楽しみが増えた。

特集2の「知られざる梅澤捨次郎の仕事」では、工手学校(工学院大学の前身)を1911年に卒業し台湾に渡り日本統治時代の警察や病院、百貨店を建てた建築家の生涯に迫っている。

彼の仕事の足跡を追うなかで台湾の現代建築も紹介している。丹下健三の聖心女子高級中学や、伊東豊雄のオペラハウスなども掲載されている。ただし2015年3月に出版された本なので最新の現代建築というわけではない。

また特別企画の「アントニン&ノエミ・レーモンドのトータルデザイン」では、1961年に北澤興一が譲りうけた「軽井沢新スタジオ」を題材に、日本のモダニズムに迫っている。