建築関連法規の変遷・明治から昭和25年まで

「空間デザインと建築法令」1-(1)-c

  • 1873年(明治6年) 神奈川県「家作建方条目」公布
  • 1886年(明治19年) 大阪府「長屋建築規則」公布
  • 1886年(明治19年) 滋賀県「家屋建築規則」公布
  • 1886年(明治20年) 群馬県「長屋建築規則」公布
  • 1905年(明治38年) 佐野利器 : 台湾地震震害報告会講演
  • 1906年(明治39年) サンフランシスコ地震(推定M7.8)
  • 1906年(明治39年)   東京市長尾崎行雄が建築学会に東京市建築條令作成を依頼し起草委員会ができる
  • 1907年(明治40年)   東京市建築條令第一回草案、これ以降1913年(大正2年)終結まで5回起案

佐野利器:明治44年2月より大正3年4月までドイツ留学

  • 1909年(明治42年) 大阪府建築取締規則公布
  • 1912年(明治45年) 兵庫県建築取締規則公布
  • 1913年(大正2年) 東京市建築条令成案
  • 1915年(大正4年) 佐野利器「家屋耐震構造論」博士学位論文
  • 1918年(大正7年) 東京府建築取締規則案(警視庁)
  • 1919年(大正8年) 大連市建築規則
  • 1919年(大正8年) 市街地建築物法公布
  • 1919年(大正8年) 都市計画法(旧法)公布(用途地域3種)
  • 1920年(大正9年) 市街地建築物法施行令・施行規則改正
  • 1923年(大正12年) 関東大震災
  • 1924年(大正13年)  市街地建築物法施行規則改正(構造規則の改正、耐震計算義務化、震度法による水平震度k=0.1明記)
  • 1946年(昭和21年)  特別都市計画法公布
  • 1946年(昭和21年) 建築法草案(戦災復興院建築局)
  • 1947年(昭和22年)  消防法公布
  • 1949年(昭和24年)  建設業法公布
  • 1950年(昭和25年)  建築基準法公布

1950年(昭和25年)の建築基準法の公布まで、大地震の視察や経験、研究の成果を反映して明治以降様々な建築法や案が作られ、ひとつの法律として収斂されてきたことがわかる。

現行法の原形ともいえる構造規定が東京市建築條令(学会案)に生まれている。例えば柱の小径規定、煉瓦造の壁長制限、算出式、材料強度や荷重等の数値規定がすでに盛り込まれている。

人物として佐野利器さんの業績は偉大だと思った。

今年3月に築85年の文化住宅を調査したが、筋違・ボルトがあり大正期の近代法規(案)の影響があったことを知った。

また現行法令の根拠を考えていると、結局その源泉は、古い法律やその案に見出すことができる。近代以前は、近世・江戸時代の建築規制の影響を見過ごすわけにはいかない思う。

昨年、京町屋について学ぶ機会があったが、京町屋の定義として「昭和25年に建築基準法が制定される以前の京都の木造住宅」あるいは「京都の町屋だから京町屋」という考えには違和感を覚えた。

江戸時代の規制がなくなった後の影響、大正期の近代法規の影響もあるし、全国的にみても際立った特徴があるわけでもなく、ただただ空襲が少なく古い木造住宅が残っているだけではないかと思っている。

戦時統制下の住宅 : 旧前川圀男邸

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東京小金井の江戸東京たてもの園にある、建築家・故前川圀男氏の「自邸」。 旧所在地は、東京都品川区上大崎(現在のJR目黒駅に近い閑静な住宅地)、敷地面積は149.82坪で北側が4mの道路、南側は崖であったと記録されている。 この「自邸」の竣工は、1942年(昭和17年)で、すでに太平洋戦争中であり、昭和14年には「木造建物建築統制規則」が施行されていた。

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現在、私達が江戸東京たてもの園で見ることができるのは、竣工時の昭和17年のものではなく、昭和30年頃のものと「前川圀男邸復元工事報告書」に記載されている。1973年(昭和48年)に解体され部材の状態で保存され、復元工事を経て1997年(平成8年)に公開された。

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復元工事による現在の建物概要は 木造二階建て、切妻造、桟瓦葺き、外壁竪羽目板張り、 建築面積 : 94.21㎡ 、1階床面積 : 94.21㎡ 、2階床面積 : 14.46㎡、 延床面積 : 108.67㎡

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【北側】

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【居間】

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【2階をのぞむ】

昭和14年の「木造建物建築統制規則」では、第一条に

木造建物(以下建物と称す)にして次の各号の一に該当するものを新築せんとするものは地方長官(東京府にありては警視総監以下同じ)の許可を受くべし

一、農業(養蚕業を含む)、林業、畜産業、又は漁業を営む者の業務及居住の用に併せ供する建物にして総床面積160㎡(48.4坪)を超ゆるもの。

二、前号に掲ぐる用に供せざる建物にして総床面積100㎡(30.25坪)を超ゆもの

とあり、規則上は100㎡以上は警視総監の許可が必要だったとあるがその書類は残っていないようだ 。

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【寝室(2)】

復元図に基づいて単体規定(採光・換気等の計算)について演習を行い実際に見学し、数値と感覚を確認する。

【この記事は「空間デザインと建築法令」講義のダイジェスト版です】

「空間デザインと建築法令」-2

【目次】

1、 総論

(1) 建築関係法の遍歴
・近世から現代へ建築法制の遍歴を江戸東京たてもの園、博物館明治村等に移築復元され実際観に行くことができるものを中心に論究する。
(a)江戸の防火規制、屋根、蔵は耐火建築物について
(b)「普請申請」(現在の建築確認申請)、「作事検分」あるいは単に「検分」(現在の竣工検査・工事完了検査)について
(c)市街地建築物法・東京市建築条令案(学会)、東京市建築条例案(妻木案)等
*実例案*
(d)明治: デ・ラランデ邸(江戸東京たてもの園)
(e)大正: 田園調布の家(大川邸/江戸東京たてもの園)
(f)昭和: 旧高田邸(国立市・2015年解体)
(g)戦時統制下: 前川圀男邸(江戸東京たてもの園)

(2) 法令の構成・建築基準法の目的と内容
(3) 基礎知識(用語の定義、面積、高さ等の算定方法を学ぶ)~法を正しく理解するために

2、 建築基準法

(1) 制度規定~建築計画の段階から着工、完了、維持管理に至るまでの各種の手続き及び制度の運用に関する規定を学ぶ

(a)建築確認
(b)建築確認を要する建築物
(c)行政不服審査法・建築審査会
(d)違反建築物に対する措置・罰則

(2) 集団規定~戸建て住宅と特殊建築物

(a)建築物と道路
(b)用途制限に関する規定
(c)規模制限(建蔽率・容積率)
(d)形態制限(道路斜線・隣地斜線・北側斜線・高度斜線・天空率)
(e)防火、準防火地域内の規定(条令:新防火地区)

(3) 単体規定

(a)採光、換気等の居住環境に係る一般構造
(b)排煙、内装制限等の特殊建築物に係る規定
(避難安全検証法・耐火性能検証法等)
「木材会館」「富広美術館」「坂の上の雲ミュージアム」
(c)構造設計と構造計算に係る規定
(d)構造種別毎の構造仕様に係る規定
(e)建築物の防火に係る規定
(f)建築物の避難等に係る規定
(g)建築設備に関する規定

3、 建築関係法規~実在の建築プロジェクトを通して関連法について学ぶ

(1)郊外型店舗(コンビニエンスストア、飲食店)
・都市計画法(開発行為)/農地法/道路法/屋外広告物/工作物
(2)伝統的建築物保存地区等
・景観法(条令:金沢市、今井町等、都区内の景観条例比較)

(3)バリアフリー法
(4)消防法(老人ホーム、保育園)
(5)建築士法
(6)環境建築・省エネ法(「ソニーシテイ大崎」「木材会館」)
(7)契約、訴訟、トラブル対処
(8)東京都総合設計許可制度(超高層ビル予定)
(9)一団地申請(集合住宅団地、「蔦屋代官山」等)

4、 建築再生~リノベーション・耐震診断・耐震補強等、既存建物の設計と法令について学ぶ
(1) 既存建物の事前調査の方法(登記簿謄本・台帳記載証明等)

(2)実地調査の方法

(3) 実例解説
・「千葉県大多喜町役場」
・「三菱一号館」
・「紀尾井町パークビル」(アウトフレーム耐震補強)
・その他
*実例解説で取り上げた建物は「案」であり、講義時期に合わせて話題の事例を取り上げていきたいと考えています。

「空間デザインと建築法令」-1

「空間デザインと建築法令」・「建築法規」カリキュラムの提案

【はじめに】

空間デザインに関連する建築法令は、都市や環境、建築の形態、性能に大きくかかわっています。

建築計画や設計を行う際に必要となる建築関係の法令について、建築基準法を中心に解説するほか、実在の建築プロジェクトにおいて都市計画法、バリアフリー法、景観法、消防法等の他の関係法令と、どのような関わりがあるのかについても解説します。

建築の実例等を紹介しながら建築関連法規を法文解説することで、建築法令のリアルな把握を促し、建築法令を止揚することでデザインの自由度や空間の新しい可能性を生み出すことができることを知ってもらいます。そういう実例を通して若い人達に建築法令の必要性を理解してもらう事を主眼としています。

建築実例は、現に存在し見ることが可能な建物を中心に、江戸東京博物館、江戸深川資料館等の資料、江戸東京たてもの園等に移築復元した近代の建物や市中にある著名な現代建築等を中心にすえて法令の解説をします。

建築基準法をはじめとする建築法令は、建築物を計画、設計する上で必須の法令です。また建築関係法令は、木造建築士、二級建築士、一級建築士等の資格試験の試験科目となっています。

このように建築法令は、実務上必須であり、年々複雑かつ多様な関係法令が出来ているにも関わらず、今も昔も多くの大学では、2単位というところが多く選択科目にすぎないところや、授業の内容が二級建築士受験対策講座のようなところもあります。

実務現場からは、学生時代にもっと多くの時間を割いて、建築基準法や建築関連法について学んでおくことが、切望されています。

主として都内の大学で4単位としてカリキュラムを編成する場合を想定して提案します。

告示H12第1436号・一部改正(2015.03.18)

先頃、平成12年建設省告示第1436号の一部が改正された。

第四号中「ニ」が「ホ」に、「ハ」が「ニ」なった。

詳細は官報参照20150318h064940005

新規追加された「ロ」について記載する

ロ 避難階又は避難階の直上階で、次に掲げる基準に適合する部分
【当該基準に適合する当該階の部分(以下「適合部分」という。)以外の建築物の部分のすべてが令第126条の2第1項第1号から第3号までのいずれかに該当する場合 又は適合部分と適合部分以外の建築物の部分とが準耐火構造の床若しくは壁若しくは同条第2項に規定する防火設備で区画されている場合に限る。】

(1) 建築基準法別表第1(い)欄に掲げる用途以外の用途 又は児童福祉施設等(入所する者の使用するものを除く。)、 博物、 美術館 若しくは図書館の用途に供するものであること。

(2) (1)に規定する用途に供する部分における主たる用途に供する各居室に屋外への出口等(屋外への出口、バルコニー又は屋外への出口に近接した出口をいう。以下同じ。) (当該各居室の各部分から当該屋外への出口等まで及び当該屋外への出口等から道までの避難上支障がないものに限る。) その他の当該各居室に存する者が容易に道に避難することができる出口が設けられていること。

これは、「子ども・子育て支援法等施行に伴う幼保連携型認定こども園」の建築基準法の取扱いを定めたことによる関連改正。

公布即日から施行されたので、設計図書への記載方法が変わる。

従来 H12告示第1436号四-ハー■ → H12告示第1436号四 – ニ-■となる。

 

沖縄県×防衛省@行政不服審査法

報道によると、沖縄県の翁長雄志知事が名護市辺野古の米軍新基地作業を停止するよう求め、従わない場合は岩礁破砕許可を取り消すことがあるとした指示(3月23日付)に対して、防衛省沖縄防衛局は24日、林芳正農水相に行政不服審査法に基づく審査請求書と執行停止申立書を提出した。

これを聞いて、役所対役所で行政不服審査法に基づく審査請求や執行停止申立をするのか?

そもそも行政不服審査法の目的は、行政庁の違法、不当な処分など公権力の行使について「国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くこと」で「国民の権利利益の救済を図る」(第1条)とある。

行政間での話し合いができないのかと思った。

今の政府は、沖縄の民意を代表する翁長雄志知事と面談しなかつたりと、名護市辺野古基地問題での強権的な対応が目に余る。

通常、行政不服審査法に基づく審査請求は、国や地方自治体といった行政機関による処分に不服がある個人や組織が、処分取り消しを求めるために行うもので、行政間の審査請求などあるのかと驚いた。

さて、農水省の審査委員会は、どう対応するのだろうか。政府の圧力が加わるから裁決までのスピードも速いのだろうな。

建築審査請求では、昨年東京都内の特別区建築審査会で建築審査請求が棄却された案件に対して近隣住民が2014年11月に国土交通省に再審査請求と工事の執行停止をもとめているが、4カ月余りたっても何の進展もみられないと聞く。

建築基準法第94条第2項には、「建築審査請求を受理した場合は、1月以内に裁決しなければならない」あるが、これは訓示規定だからと、まったく無視されている。

民間人が審査請求するとチンタラしているとしか思えない審査請求。さてどうなるのか興味津々。

【覚書】避難安全検証法でできないこと

【避難安全検証法で適用除外できると勘違いされやすい項目】

■面積区画

面積区画は、施行令第112条第1項に規定され、1500m2以下(自動消火設備設置で3000m2以下)で区画しなければならない。

全館避難検証法では、高層区画、竪穴区画及び異種用途区画は除外できるが、面積区画は適用できないため1500m2または3000m2ごとの区画は確保しないといけない。

面積区画を拡大するには防火区画検証による。

■重複距離

重複距離は施行令第121条第3項に規定され、施行令第120条の歩行距離の数値の1/2を超えないことになっている。この規定は避難安全検証法では除外できない。

■特別避難階段の付室

階避難安全検証法では施行令第123条第3項第一号の規定が除外できる。

この規定は付室の排煙設備の設置に関するものなので、付室の設置については避難安全検証法では除外できない。

■非常用エレベータ乗降ロビーの排煙

非常用エレベータ乗降ロビーの排煙は施行令第129条の13の3第3項第二号に規定されているため避難安全検証法では除外できない。

したがって乗降ロビー兼用付室の場合の排煙設備は、仕様規定に準処しなければならない。

■避難階段の幅員

避難階段の幅員は施行令23条、施行令24条に規定されているため避難安全検証法では除外できない。

ただし、物販店舗の合計幅員については全館避難安全検証法で適用除外が可能となる。

■防煙区画面積

階避難安全検証法では、防煙区画面積は1500m2まで拡大できる。

■排煙口までの距離

30mを超えた位置にある排煙開口の排煙は有効開口部の排煙には加えない。

ルートCでは30mを超える事が可能な場合もある。

多世帯住宅について考えた

このところ多世帯住宅について考える機会があった。

ひとつは知人からの質問で、都内に計画中の三階建ての建物で親夫婦、子供夫婦、子供奥様の親という血縁関係が住む住宅が共同住宅だと言われたとのこと。外部階段を共有していて、家族構成が変化すれば第三者に賃貸することも容易な形態。

私も以前 横浜市でそういう多世帯住宅の設計に携わった経験があり、その時は、共用の外部階段を内部階段にして多世帯住宅で申請した経験があり、そういうことを話しておいた。

ところで横浜市は昨年、平成26年9月に「横浜市建築基準法取扱基準法」を一部改正し「多世帯住宅の取扱い」を加えた。image-0002

 

日本建築行政会議編の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年版)を受けて、「世帯ごとに分離した台所、食堂等の部分が2までのものとし、3以上の住宅については、原則として共同住宅として扱う」というもの。

まあ「形態」で考える建築基準法の取扱いとしては妥当なんだろうなぁと思うけど、いまひとつ すっきりしない。

二世帯住宅を計画する場合、例えば親夫婦のいずれか、若しくは両方が無くなったり、片親の介護が必要になったときでスペースの転用を考える場合、子供が独立して生計を営むようになり、不要な部屋の転用を考えた場合とか、将来の家族構成の変化なども見込んで計画のバリエーションも考えておかないとならない。

三階建ての1階部分を他人に貸したら住宅から(特殊建築物)共同住宅で違反になるというのも建築ストックの活用上は、制限つけすぎかと思う。200㎡以下の住宅は「特定住宅」として緩和するとか必要。

「家族」といっても血縁関係でつながっているのが「家族」というわけでもなく、現代では多様化してきている。難しいね~。

告示建築線

築基準法の末尾にある「附則」に注意を払ったことがありますか。

(この法律施行前に指定された建築線)

5 市街地建築物法第七条但書の規定によつて指定された建築線で、その間の距離が四メートル以上のものは、その建築線の位置にこの法律第四十二条第一項第五号の規定による道路の位置の指定があつたものとみなす。

建築基準法は、昭和25年11月23日から施行されたが、それ以前には「旧市街地建築物法(大正8年4月法律第37号)」が施行されていた。というのは先日、文化住宅=旧高田邸の時に書きました。

それで市街地建築物法から建築基準法の附則を思い出した次第で、古い法律が現代でも生きているという事例。
告示建築線とは、「旧市街地建築物法第7条但書」に基き、行政官庁(東京府では警視総監)が告示により指定した指定建築線。

建築物を建築線より突出して建築することはできないとされていた。また全く道路のないところに指定されることも少なくなかったようです。

かつて警視総監の名前で告示されたその間の距離が4メートル以上の指定建築線は、現在は、建築基準法第42条第1項第五号の規定による道路(いわゆる位置指定道路)として扱われており、たとえ道路状に整備されていなくても、その上に建築物を建築することはできないと定められています。

東京では中野区等、大阪では船場建築線というのが有名です。

この告示建築線、法律的には中々面白いというか、味わい深いしろものです。

 

弥生・・・

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昨年来の仕事がひと段落ついて、久しぶりに本屋に行った。

商売道具の法令集を買いに行ったのだが、これだけは毎年買い替えている。そして何十年井上書院の法令集=青本を使い続けていることだろう。

池袋淳久堂の建築関係の書棚をながめて歩いたが、何だか触手が伸びる本が無かった。アンテナが弱くなったのだろうか。

「本屋に行ったけど結局法令集しか買わなかった。面白そうな本がなくて」と話したら「面白い建築を造れる人が少ないんだから面白い本なんか書けないよ」と言われた。名言だ。いたく感心。

先日、名古屋の知人から電話が来て「今、どこにいるの」と聞かれた。最近 古い海外の建物写真しかアップしていなかったが、私がヨーロッパに行っていると思っていたらしい。

仕事で缶詰め状態だったのさ。1月2月と電車に乗って外出したのは5回もない。完全なる引きこもり状態だった。

最近 ボケてきたと言われることが多い。一週間に一度程度外出するような事を探しているのだが・・・

建築の本は法令集しか買わなかったが、こんな本を買ってみた。

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ちきりんさんは、著名な社会派ブロガーだけど中々面白い視点の持ち主で勉強にさせていただいている。

ベッドで寝ながら読めるところが良い。

とても面白くて二晩で読んでしまった。

「建築物」の定義

民家園に移築する茅葺民家(文化財保護法による建築物、保存建築物ではない)を内部空間を利用せず、修景物として利用する場合、この茅葺民家は「建築物」に該当するか否かという質問があった。

法第2条第1項第一号の「建築物」は、

「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これら類する構造のものを含む)」と規定されている。

この括弧内の「これに類する構造のものを含む」は、平成4年改正で加えられた部分。

これによると用途が発生するか否かではなく、物理的な「定着」「屋根」「柱」「壁」で判断しているものと思う。用途は変化する相対的なものだけど、形態は変わりずらい。

だから、質問の茅葺古民家は、「建築物」として扱うのが原則的であると私は判断すると答えた。

修景物として工作物・施行令第138条第1項第三号「高さが4mを超える広告塔、広告版、装飾塔、 記念塔その他これらに類するもの」として 言い張ることも可能かもしれない。

映画のセットのような外観だけならば工作物でもよいと思う。

この茅葺古民家は、とりあえず修景物だとしても内部空間があり、色々な転用、用途発生も将来可能であるならば「建築物」として定義し確認申請が必要かと思う。

建築確認申請のための改正建築基準法(H26.6)講習会@東京

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昨年6月4日に公布された改正建築基準法の大部分が今年の6月1日に施行される。

その約8年振りとなる建築基準法改正の説明会が、東京ビッグサイトで開催された。

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エレベーター昇降路部分の床面積の容積率不算入は、昨年7月1日に施行された。定期調査・検査の報告制度は2年以内に施行される予定で、従来の検査系資格「特殊建築物等調査資格者」「昇降機検査資格者」「建築設備検査資格者」が「建築物調査員」「昇降機検査員(仮称)」「建築設備検査員(仮称)」となり、新たに防火戸、防火シャッターなどの駆動装置の点検、感知器と連動させた動作確認を行う「防火設備検査員(仮称)」を創設するとの事。

さて今回の建築基準法の改正で建築主が構造計算適合性判定を直接申請できるようになる訳だが、構造計算適合判定機関の指定確認検査機関からの事業部化、分社化が進み営業活動も活発になるのではないだろうか。

又事実上ルート3物件だけが対象となるので、業務を続けれる構造適判機関は限られ、収斂されていくかもしれない。

構造適判機関が単独で収益力を保持し会社を維持できるのかわからないが、積極的な営業活動と適切な構造審査という両義性を内包し自己矛盾に一層苛まれるのかもしれない。

改正により構造適判機関の確認も「処分」となり、審査請求等の直接的対象となる。矢面に立たされる構造適判機関の行く末は、どうなるのであろうか。

会場から質問が出ていたが、現在は構造に係る軽微な変更は、指定確認検査機関から構造適判機関には送付されていない。実際には一つの物件で階ごとなど頻繁に軽微変更を繰り返しているようなものもあり、これらの軽微変更を適判機関がまったく知らないで良いものだろうか。完了検査をする建築主事、建築検査員が知っていれば良いと判断されるのだろうか。事務処理上どうなるのかQ&Aが待たれるところだ。

住宅医スクール2014(東京)修了

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1月22日に「住宅医スクール2014(東京)」の全講義を受講して修了書をいただいた。

2014年6月から、ほぼ毎月1回の全8回×3コマ=24講座と特別講義8講座という、今時珍しい長期間の講座を受講しなければならない。そして検定会で事例発表をして「資格あり」と認められないと「住宅医」という称号は与えられない「住宅医スクール」。

これは、半日講習で資格を授与するという粗製濫造の民間資格が多い中で異彩を放っているといえる。

修了会の後のパーティーで「骨のある講習会」と評してきた。

岐阜県立森林文化アカデミーと同様に、木造建築病理学を体系化して改修調査・設計の人材育成を図っている。

住宅医協会の皆さんの熱意には頭が下がる。

木造・住宅には、業務として関わりが薄いが、木造は中々奥が深い。

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建築基準法改正履歴

この正月に建築基準法の改正履歴を自分なりに整理してみた。

もともと一枚に年次別(施行順)になっていたのだが、全般総則・集団規定・一般構造規定・設備関係規定・防火避難規定・構造・エレベーター・エスカレーター等に分割して、少し改正内容を詳しく記載したものにした。

建築基準法の改正履歴などは、増改修設計、用途変更、遵法性調査等の業務に関わらないと必要ない事かもしれないが、建築基準法65年の歴史を振り返ると中々面白い。

その中で、最近遭遇した事をひとつ紹介する。

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上図は、自然排煙口の排煙上有効な開口部についての取扱いで、「建築物の防火避難規定の解説(2012)」79頁に説明されている事項だが、もともとは昭和46年12月4日住指発第905号で大阪府建築士会からの照会に対する回答「建築基準法の疑点について」がもとになっている。

排煙設備が新設されたのは昭和46年1月1日施行の建築基準法改正によるが、最近調査した建物は昭和46年7月確認許可なのだが、回転窓の開閉角度が15度ぐらいしか開かない。現在では常識的な上図の取扱いから有効開口面積を計算すると面積が足りなくなり不適合となる。

しかし取扱いが示されたのが昭和46年12月4日住指発第905号の時期で建築確認許可日の後なので適合・不適合・既存不適格についてのジャッジは既存不適格とした。

この回転角度の少ない窓をそのまま利用するとなると自然排煙設備が足りなくなるので、例の告示第1436号というのが活躍することになるだろう。

古い建物は、工事完了検査済証があっても、階段竪穴区画が完結していない。令第128条の敷地内避難通路が確保されていない。自動車車庫との異種用途区画が成立していない等、何で?、何で?という事に遭遇したりする。当時の確認・完了検査は当然、特定行政庁だから充分な打合せが必要となる。

知人は、私がやっているストック活用に関する業務は「妖怪ウオッチ」のようだねと評していたが、建築ストックの活用に関する業務には、可愛いのから悪いのまで様々な「妖怪」が潜んでいる。

違反建築物と既存不適格建築物

「違反建築物」とは、建築基準法等の関係法規に適合していない(違反している)建築物のことで、建物自体が法に適合していない場合(実体違反)と、法で定められている手続き(確認申請や完了検査など)を行っていない場合(手続き違反)がある。

工事完了検査済み証の無い建物は、「手続き違反」の建物と捉え、「実態違反」かどうかは、建物が使用開始した当時に工事完了検査をしていないので「そもそも実態違反か否か」わからないのだから、その建物が建築された時点の法令に適合していたかどうか「建築基準法適合状況調査」をすることによって判断される。

とはいっても、工事完了検査済み証の無い建物のほとんどが建築確認済を取得した図面とは異なっていたり、違反箇所があり、無届出で用途変更や増築、変更が行われている。

新たに増築や用途変更をする場合、それらも直して法適合させるのだが、違反箇所は直して確認申請を取得した状態に一旦戻して、それらを確認してから 新たな増築なり用途変更確認申請を受付するという「手続き」論が障害になり、結局 新たに増築や用途変更をして法適合させるのはしないでおこう=確認申請出すのは止めた! という建築主もいる。

まあ この「手続き論」の話しは、又の機会にすることにして

建築された時点で法令に適合していたが、法改正等により現行の法令に適合しなくなった状態の建物は「既存不適格建築物」と呼び、違反建築物とは区別される。

例えば、竪穴区画の規定は昭和44年5月1日施行だが、昭和44年5月1日より前に建築確認済証が交付された建物は、竪穴区画の規定を満たしていなくても違反ではなく、既存不適格扱いとなる。

ただし、既存不適格建築物の増築や用途変更などを行う場合は、一定の規模・範囲内である場合を除き、既存不適格扱いになっていた規定についても法令に適合させなければ違反建築物となる(遡及適用)

「違反建築物と既存不適格建築物」意外とわかっていない設計者が多い。

地下室マンションと平均地盤面

平均地盤の定義は、建築基準法施行令第2条第1 項第6号で「建築物の高さは地盤面からの高さによる」と定義されており,同条第2 項で「地盤面」とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が3mを越える場合においては、その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。と規定されており、建築物における高さの基準となる地盤面を「平均地盤面」と呼んでいる。

(高さの基準のひとつである,道路斜線制限における地盤面については別の扱いで「道路中心の高さ」)

平均地盤面の算定方法は、建物が地盤に接する部分のいずれかの位置における高さを基準として、建物が接する外周の各辺ごとに基準の高さとの高低差によって生ずる面積を算出し、その面積の合計を各辺の合計の長さで割ることによって基準からの平均地盤面の高さが算出される。(平均GL=土に接している面積/外周長さ)

ここまでは法文のおさらい=教科書どおり

しかしその算定において法等の中に周囲の地面と接する位置を、どの位置でどの高さを用いるのか等の規定がなく設計者等の判断により異なっているのが現状。

特定行政庁は、からぼり等の取扱いなどの基準を定めて指導をしているが、それでも細部については、設計者等が判断をして計画をしている。

平均地盤面の算定にあたって、建物の接する位置をどこで見るのか、からぼり(ドライエリア)の扱いをどうするのか、接する地盤面が盛り土している等の扱いについてはケースバイケース。

設計者なら平均地盤高の算定は自由自在に操れるだろう。わずかな高さの調整を盛土、犬走、階段等で行えば良いのだから。

地下室マンションにするのもしないのも、平均地盤の調整で充分可能だ。

それ故か、地下室マンションと平均地盤高にまつわる係争・建築審査請求は多い。設計者が住民説明、調停、確認申請と幾度も計画を変更し平均地盤高を調整し、しかも住民側等に図面を見せている場合は、尚更だ。

指定確認検査機関は、建築確認申請に出された平均地盤高しかみてないが、実際は紆余曲折のすえ申請図ができることの方が多い。条例で定めている場合以外は、盛土に対する法的な制限はないから、平均地盤は自由自在に調整できる。

平均地盤高を調整する為に、盛土・犬走・階段等を設定して平均地盤高を操作している事が事実関係を示す図書から推察できるなら、それらを制限させなければならないのではないかと最近思う。

 

建築面積哀歌(エレジー)

 

 

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建築面積にまつわる話し

一番上は、三方が壁に囲まれている(両袖壁)バルコニーの場合は、建築面積に算入する。日本建築行政会議編の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年度版・49頁)等で示されている取扱い基準。この場合袖壁の長さに関係なく「黄色」部分は建築面積に算入する。

中段は、片袖壁で構造的に片持ちスラブとなっており、はね出しで「軒、ひさし、はねだし縁その他これらに類するもの」として取り扱えれるので、建築面積には算入しない。

上二段については、昨今ではかなり一般的な取扱いかと思う。

さて問題は下段。

両袖壁があるバルコニーだが、右側袖壁との間に数センチの床スリットをもうけているので、「物理的にはねだしとなっているので、建築面積には算入しない」「否、水平投影面積が基本なのだから算入するべき」と意見が分かれているケース。

とある指定確認検査機関が「建築面積には算入しない」として「確認」した案件で とある都内の建築審査会が「認容」した取扱いなのだが、私が都内の他の指定確認検査機関や特別区建築指導課にヒアリングしてみたところ意見が分かれた。結局のところ「建築主事判断」ということになるようだ。

この案件の建築審査請求は、下段の判断等を含めて特別区の建築審査請求で棄却され、現在国交省に再審査請求を提出中と聞く。

上記(下段)のバルコニーを建築面積非算入にすると、1割ぐらい 建ぺい率は稼げるのだが、これでは都市計画による規制そのものがなしくずしになる恐れもある。

もともと「建ぺい率」とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合のことで、その上限を定めることにより敷地内に適当な空地を確保し、採光・通風等を満足させ、防災上の安全を確保しようとするもの。ちなみに「容積率」とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合のことで、その上限を用途地域毎に定めることにより、街全体の環境や土地の高度利用を図ろうとするもの。

そして建築面積は、「建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」(建築基準法施行令第2条第1項第ニ号)であり「建築物が敷地をどの程度覆っているか」かの規定である。

「自分さえよければいい」は現代の風潮だが、建築主・建築業界の「私権」の為だけに、建築はあるわけでなく常に社会的存在であり、環境に配慮したものでなければならないのだと思う。

こんな脱法的で姑息な手法で建築基準法の精神が侵されているのを聞くと なんだか哀しくなる。

注記: 上記建物には屋根があります。

桜×鯰3 構造見学会

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桜設計集団と鯰組の設計施工標準化プロジェクトによる木造住宅の構造見学会に行ってきた。

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奈良県吉野で天然乾燥した杉の柱・梁とパネル床(国産杉直交三層・Jパネル)の現し

この床のJパネルは、準耐火構造の床に現しで使えるということで以前カタログと見本を(協)レングスさんからいただいていた。

吉野杉もJパネルも実際施工された現場を見ると きれいだなぁ 良いなあと思った。

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聞くところによると準防火地域だそうだが、外壁は落とし込み板壁で(杉板30厚+24厚)ガリバリウム鋼板壁で、ガルバリウム下地に石膏ボードを用いない防火構造となっているとのこと。

軒裏は、垂木・面戸板・野地板12厚現しで準耐火構造軒裏になっているそうだ。

所用の途中に しかも路駐して見学をさせてもらったので、ほんのわずかな時間しか滞在できなかった。

後で知ったが鯰組の岸本さんは、私が学生時代から幾度か叱咤激励をいただいていた真木建設の故田中文雄さんの御弟子さんらしい。挨拶してくればよかった。

 

合成の誤謬

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日影被害の話し

赤い部分が今回の被害宅で木造平屋建て築50年近く経過している建物

西側に7階建てのマンション、南側に5階建てのマンションが次々と建った。

それぞれの建物は圧迫感はあるし午後の陽ざしはほとんど入らなくなったが日影時間は適法。午後は陽がささなくなったが、それでも東側隣地は2階建てのアパートだったので、朝から昼近くまで陽はさしていた。

ところが東側隣地に、新しく建替えで5階建てのマンションが計画された。説明を受けると一日中太陽が差し込まないようなのだ。

しかし東側の計画建物は、提出された日影時間図等を見ると適法のようだ。

「日影被害を訴えられるか」と聞かれたので「難しいだろう」と答えた。三つの所有者の異なる建物からの複合被害だから、「建築基準法を作った国を訴えるしかないかも」と

『合成の誤謬(ごうせいのごびゅう、fallacy of composition)とは、ミクロの視点では正しいことでも、それが合成されたマクロ(集計量)の世界では、かならずしも意図しない結果が生じることを指す経済学の用語』(Wikipedia)

最近の建築基準法の改正は、私権の拡大が目立つが環境に配慮した項目は少ないようにも思う。

「合成の誤謬」そんな言葉を思い出した事例だった。

「環境時代のビルディングエンベロープを考えるシンポジウム」IN 東大

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環境時代のビルディングエンベロープを考えるシンポジウム~省エネ・健康リフォームをいかにして普及させるか~in  東大に11月20日参加して来た。

ビルディングエンベロープすなわち外皮を多面的・複眼的に捉え環境時代の外皮に相応しいものを見つけ出すヒントを得るというのがシンポジウム開催の趣旨とのこと(坂本雄三・建築研究所理事長)

第三回目となる今回のシンポジウムでは「住宅の省エネリフォーム」について集中的に議論しようとした企画となっていた。

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【会場の伊藤謝恩ホール】

三人の講演と五人の異なる分野からのパネラーの参加によるパネルディスカッションでみっちり4時間

この分野で、現在どういう取り組みがなされているのか解った。

小規模マンションの受電方法

小規模マンションの計画では、もともと敷地が狭く、そこに建蔽率いっぱいで建物が計画され、緑地やゴミ置場も必要ということで集合住宅用変圧器(パットマウント)の設置場所に苦慮する。

過密都市東京ならではの設計上の悩みでもある。

小規模マンション(20戸~30戸程度)の電気容量は、電灯が50KVAを超え、動力は10KVA以下(ELV、増圧ポンプ等)という特徴がある。

事務所・店舗等の動力が多い傾向の建物とは異なる特徴を持っている。

ところでこの集合住宅用変圧器(パットマウント)は、建築設備であり、高さが1.2mを超えているので建築基準法施行令第130条の12の後退距離の算定の特例を受けられない。

つまりパットマウントの道路側の位置が、道路斜線制限の最小後退距離となる。

2013年度の国交省による指定確認検査機関の処分で、「建築物の各部の高さの制限に係る建築物の後退距離の算定において、建築基準法施行令(以下「令」という。)第 130 条の 12 に定める特例の対象とはならない変圧器の存在を見落としたまま令第 135 条の 6 に定める基準を適用したため、結果として高さ制限に適合しない計画となっていたこと)を看過し、建築基準法第 53 条及び第 56 条の規定に適合していない建築計画に対し確認済証を交付した。」事などが処分理由とされた事案があり、パットマウントの位置が注目を浴びた。

単身者用マンション(1K・1LDK)などでは、一住戸が30A程度でもよい時代があったが、昨今の電気器具の消費傾向が反映してか1Kでも東京電力は40A(契約容量ではない)と言うし、同時使用率を考慮してもすぐ50KVAを超えてしまう。IHコンロを使う場合は、もっと受電容量が増える。

とういうように高圧受電となった場合の対応は、建物内に東電借室 (電気室)、集合住宅用変圧器(パットマウント)方式、施設柱方式となるが、初めに書いたように設置場所や最少後退距離の問題があり、色々と苦慮する。

店舗・事務所等の事業用「低圧弾力供給」は、電灯が50KVAが超えると適用できない。そこで出てくるのが共同住宅用の「低圧架空2条引き込み」である。

東電に建築場所を確認してもらい、「低圧架空2条引き込み」(電灯線を二条、動力を一条)でOKが出れば、敷地内に立つのは引き込み柱だけとなる。

もっとも「低圧架空2条引き込み協議・事前確認票」という書類に必要事項を記載し、図面などを添付してFAXして、東電が現地調査をして約4週間程度の時間が経たないと可能性の可否が判明しない。

意匠設計者のプロデュース力が低下している・・・

「知らない・書けない・解らない」というのは困ったものだ。

「法令に基づく申請」@行政不服審査法

「法令に基づく申請」は、行政不服審査法第2条で不服審査の対象となる「不作為」についての定義として 規定されている用語だが、「法令に基づく申請」についての明確な定義はない。

「申請」については、行政手続法第2条で以下のように定義されている。

「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を 付与する処分(以下「許認可等」という。)を
求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされ  ているものをいう」

ここから「法令に基づいて行政庁に諾否の応答義務がある場合に、 行政庁にその応答を求める行為」と考えられる。

ここで法令、条例や細則等に基づく各種の届出が「法令に基づく申請」にあたるかどうかは議論が分かれるところ。

建築確認申請で言えば、例えば「中高層予防条例」。

これは建築関係規定ではないが、お知らせ看板=標識と報告書を提出する。条例によって規模で期間を規定しているが、例えば確認申請受付の30日前に提出するとか、何月何日に確認申請を提出してくださいと副本に記載される。またその日付を確認して指定確認検査機関は受付するようにしている。

建築関係規定ではないが行政と指定確認検査機関の紳士協定で、さも関係規定のように運用されているのが実態だ。

行政は、中高層予防条例は関係規定ではないと言う一方。実際には関係規定と同様な運用を建築主、設計者、指定確認検査機関に強いている。

これをダブルスタンダードという。

シロアリの生態@住宅医スクール2014

「防蟻対策の実務~シロアリ駆除と予防法の事例」と題する阪神ターマライトラボ代表の水谷隆明氏の話を聞いてきた。

住宅医スクール2014の一講座

シロアリの生態から始まり駆除や予防法について、まとまって専門家から話を聞くのは初めてだった。

ヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリとそれぞれ生態が異なり、それぞれに応じた駆除方法や予防法があるとの事。

「シロアリは多数の個体によって集団(コロニー)を形成していますが、各々の個体が各々の役割担いながら高度な社会生活を営んでいます。
この各々の個体を階級(カースト)といいます。
シロアリは集団生活を行い、親が子を育て、成長しても共同生活を行い大きな集団となっていきます。
 生態学的にみると『真社会性』と言われる状態です。これは下記の3つの特徴を有しています。
 (1) 同じ種類の複数個体が協同して子供を育てています。
 (2) 生殖を行う個体と生殖を行わない個体がいます。
 (3) 親世代と子世代が共存しています。」(阪神ターマライトラボのサイトより)

 

駆除にしても予防法にしても、ただ薬剤を散布すればいいというものではなく、シロアリの家屋への浸入パターンを読み、適切な方法で対応するということをパワーポイント100枚ぐらいで丁寧に説明してもらい、シロアリに対する認識が変わった。

点検できる高さの床下を確保して定期的な点検ができるようにする等、薬剤に頼らないシロアリ対策・設計上の工夫が必要とのこと。

アカデミックな視点を持つ実務者の話しは面白い。阪神ターマライトラボでは、シロアリを飼育し生態や薬剤効果を今も実験中との事、詳細は、以下の阪神ターマライトラボのサイトに詳しく掲載されている。

http://homepage2.nifty.com/hanshin-termiteslabo/index.htm

訓示規定

法令などで定められた規定のうち、もっぱら裁判所または行政庁の職務行為に対する命令の性質をもち、規定を遵守しなかったとしても処罰の対象にはならず、また、違反行為そのものの効力も否定されない性質の規定のこと。

訓示規定に対して、規定に違反した場合に処罰の対象とされる規定を「取締規定」という。取締規定は行為そのものの有効性は否定されない。行為そのものが無効であると見なされる性質の規定は、「効力規定」と呼ばれる。

訓示規定は当事者に対して努力すべき内容を指示する規定であり、それ自体に直接的な法的効力はないと言える。訓示規定の具体例として、労働基準法第1条第1項「労働条件の原則」などが挙げられている。

さて、建築基準法では 例えばこういうのが訓示規定である。

建築基準法94条2項には、「審査請求を受理した場合においては、審査請求を受理した日から一月以内に裁決をしなければならない」とある。

実際のところ1ヶ月で採決したケース少ないのではないだろうか。受理してから概ね二ヶ月以上はかかっているように思う。各特定行政庁の建築審査会事務局に聞いたら、「それは裁量権の範囲」と軽くあしらわれるだろう。

建築法規の試験で建築基準法94条2項に関する出題があっても、試験と現実は違うということ。

 

工事の着手 -2

「工事着手の時期」は、既存不適格の適用の有り無しと絡んでくる。

「工事の着手」は、建築基準法では定義化されていない。

建築基準法第3条第2項には、改正された法の施行又は適用の際、

  1. 現に存する建築物若しくはその敷地
  2. 現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地

「1」は、工事完了検査済証を取得していて使用が開始されている場合。「2」工事中の場合で、ここで「工事の着手」時期が問題になることがある。あるいは工事着手時期の操作が発生する場合がある。 「法改正の施行日が建築確認の受付後か、あるいは確認許可後の日でも既存不適格扱いとなるか」という質問を受けたことがあるが、改正法令の適用を受けない場合の基準時は、既存建物の場合は、一般的には建築確認申請許可日が基準時となるだろうか。

尚、「基準時」は、令第137条に規定されており「法第3条第2項の適用を受けない期間の始期をいう」のだが、令第137条に掲げる規定ごとに抽出しないといけないので、中々厄介なのだ。