「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-6

【建築確認記載台帳証明(行政によって名称は多少異なる)】

建築確認や検査が行われた建築物であるかどうかについては、建築確認済証や検査済証により確認することができる。しかし建築物が建てられてから相当の年数が経過する中で建築確認済証や検査済証を紛失する場合もある。又不動産が流動化し図書・図面が承継しない場合もある。既存建物の図書・図面の保管が軽視されている場合も散見する。

 このため特定行政庁では、あらかじめ調べた建築確認済証や検査済証の交付年月日・番号が行政に現存する台帳に記載されていることを、台帳記載事項証明書として証明するサービスを行っている。(建築確認済証や検査済証を再発行するものではない)

a 検査済証交付年月日は、検査の状況によって台帳に記載がない場合がある。
b 台帳が現存していないため証明書が発行できない場合がある。


この建築確認記載台帳証明は確認申請副本等があり、確認年月日、確認番号、敷地の地名地番、建築主の住所・氏名が判る場合は取得がたやすいが、それらが判らない場合は取得が困難になる場合があるので、事前に次の事項について調べて行かないと成果を得られない。
・ 建築当時の地名地番(住居表示ではない。)
・ 建築当時の建築主名(現在の所有者と同一でない場合がある。)
・ 建築確認や検査済などの年月日・番号(区の受付年月日・番号ではない。)
・ 上記のほかに建築年月日、敷地・建築・延べ面積、階数(何階建てか)、工事種別、構造、用途を示せば、物件の特定がしやすくなる。

 台帳そのものの閲覧が可能なところ(大阪市・現在は未確認)、台帳証明の発行には現在所有者の委任状が必要なところ(愛知県内、岐阜県内、名古屋市、藤沢市等)、建築計画概要書の写しには情報公開請求が必要なところ(松山市、市川市等)様々。又記載台帳証明の発行そのものを行っていないところ(埼玉県内の特定行政庁等)もある。

 総じて昭和46年以前の台帳証明を取得するのは困難で、昭和20年代、昭和30年代の台帳証明は、さらに取得が困難であると思った方が良い。古い年代のものは、台帳そのものに記載されている事項が少なく、物件の特定が難しいですし、又行政によっては欠落している年度がある。

 又、昇降機や工作物がある場合には、建築とは別個に請求する事が必要。さらに中間検査が必要だった建物の場合、中間検査を受けているかどうか確認できる場合がある。

【串刺し的に台帳証明を取得するのは困難】

 仮に新築時の建築確認の台帳証明が取得できても、その建物が増築したり、用途変更した時の履歴が判るような台帳証明や建築計画概要書を取得するのには中々難しいのが現状です。

 行政は建築確認台帳を年度別に整理してあることが多いので、増築や用途変更の時期を想定しないと探し出すのは難しい。

 また行政の窓口職員の資質、請求時間帯なども影響して取得に相当な根気が必要となることがある。

 古い建築確認申請台帳を閲覧できる大阪市等(現在は未確認)の場合を除いて申請者は、直接台帳を調べられない。

 その中で、地図上の建物をクリックするだけで、その建物の新築、増築、用途変更などの申請履歴が「串刺し」でわかる神戸市の「建築確認情報セルフ検索システム」に10年程前に出会った時は感動した。最近ではこういうシステムが導入された行政も増えてきたが、予算の関係で中々整備が進まないようだ。

【神戸市建築確認情報検索システム】

【地番や所有者は変わっていても建物の位置は変わらない】

 町名地番の整理によって建築確認申請提出時と現在の地番とが異なっている場合がある。まず現在の地番を確認した後で、登記情報を取得するようにしている。

 又、不動産が流動化する現代では、建物の所有者が新築時からずっと変わらないとは限りない。現在の所有者と建築確認申請時の所有者は一緒なのか、登記情報を取得してみることも必要となる。場合によっては閉鎖謄本も取得するのが必要となる場合もある。

 尚、土地の地番は判明しても家屋番号が不明で登記情報を取得できない場合があるが、土地の登記情報を取得する時に「共同担保目録」も同時請求すると家屋番号が判明する。

【登記情報を取ってみる】

 今は、民事法務協会というところがインターネットで各種登記情報を取得できる有料登記情報提供サービスを行っている。他にゼンリン等の民間会社でブルーマップ(住宅地図に地番を重ね合わせたもの)のインターネット取得サービス(有料)をしているところもある。勿論当該地の法務局に足を延ばして登記情報を取得することもできる。

【民亊法務協会・登記情報提供サービス】

https://www1.touki.or.jp

 登記情報で建物の面積算定図を取得して新築時=登記時面積算定時を比較し新築時には屋上の増築部分が含まれておらず、後から無届で増築したことなど工事履歴がわかったことがある。

 こうしたことからガイドライン調査では、登記情報は任意書類の扱いになっているが、建物の工事履歴を調べる点や、住宅金融公庫の融資住宅であるかないかの確認、竣工時期を推定するうえでも登記情報を事前に取得することは必須だと思う。

 後に触れるが、既存建築物が住宅金融公庫融資住宅であったことが判明した場合、ガイドライン調査では、構造規定の調査は除外することが可能とな場合もある。(建て方時の中間検査に合格していないと融資実行されなかった。昔は特定行政庁で審査・検査代理)