2、住宅・建築物の耐震化の現状と課題
(2)これまで講じてきた施策の現状と課題
⑤耐震改修工事の円滑化方策
なお、検査済証のない住宅・建築物については、既存不適格建築物であるのか、違反建築物であるのかの判断が困難であり、調査に多大な時間と費用を要する場合があり、耐震化に支障を来しているという指摘があることから、耐震改修工事の円滑化を検討する上で留意が必要である。
3.住宅・建築物の耐震化促進方策のあり方
(2)住宅・建築物の耐震化の促進のために講ずべき施策
⑤居住・使用状況に大きな支障を来さない新たな耐震改修工法の活用促進
なお、国は、検査済証のない住宅・建築物の取扱い等について方針を示すなど、耐震診断・耐震改修の手続きが円滑に進むように、過重な負担とならない環境整備に努めるべきである。
【参考】「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会(座長 中城康彦 明海大学不動産学部 教授)」報告書(平成25 年6月26 日)
2 市場プレイヤーの行動に働きかけ、中古住宅流通市場を改善する方策
②耐震性や省エネ性等に関するラベリング制度の充実
ⅱ)検査済証のない中古住宅に係る法適合確認手続きの検討
中古住宅の流通段階で、金融機関が融資の可否を判断するに当たり、検査済証が求められる場合が多いことから、検査済証のない中古住宅が、新築や増改築当時の建築基準関係規定に適合していたかどうかを民間機関等が証明する仕組みの創設を検討する。
これまで、検査済証のない建築物は違反建築物なのか、既存不適格建築物なのか判断が難しく、調査に多大な時間と費用を要する場合があることから、結果として増改築や用途変更を実現できないケースが見受けられた。
また、国土交通省に設けられた「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」による報告書(H25年6月)において、「検査済証のない中古住宅に係る法適合確認手続きの検討」として、検査済証のない中古住宅が、建築や増改築当時の建築基準関係規定に適合していたかどうかを民間機関等が証明する仕組みの創設の検討が指摘されていた。
本ガイドラインにおいて用いる用語について、以下のように定義する。
1-2 用語の定義
・ガイドライン
:「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を指す。本ガイドラインは、建築基準法の枠組みの中で活用されることを前提として作成したものである。
・法適合状況調査
:調査者が依頼者より提出された依頼書や図書に基づき、建築当時の建築基準関係規定の全部又は一部※1(以下「建築基準法等」という。)への適合状況を調査すること。
調査内容は、提出図書を用いて建築当時の建築基準法等への適合状況を調査する「図上調査」と、提出図書と現地を照合する「現地調査」に分類され、その結果について法適合状況を確認する。※2
なお、本調査では、確認済証を取得している又は取得したことが特定行政庁の台帳等により確認できるもので検査済証のない建築物を主な対象とする。
※1 対象となる法令は建築基準法が基本となるが、法適合状況調査の使用目的に応じ、令第9条に規定する建築基準関係規定の全部又は一部、あるいはその他関係法令を含めた調査をすることも想定される。
※2 本ガイドラインは、検査済証のない建築物における法適合状況を調査するための方法を示すものであり、本ガイドラインの使用は強制されるものではない。したがって、例えば増築時に、建築主(所有者)が建築士に依頼し必要な図書等を用意した上で特定行政庁(建築主事を含む)や指定確認検査機関に相談すること、あるいは確認申請を行うことを否定するものではない。
・依頼者
:建築物の所有者又はその承諾を得た建築物の購入予定者、これらの代理者で調査者に法適合状況調査を依頼する者。なお、代理者としては、依頼者に代わって図面等の調査資料を準備する建築士が含まれる。
・調査者
:調査を実施する者(7ページのフロー図の下段に掲げる調査者)。増改築や用途変更といった建築基準法の枠組みの中で活用するために本調査を受託・実施する法人としては、『「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」について』(平成26 年7 月2 日付け国住指第1137号)に基づき、届出を行った指定確認検査機関が挙げられる。具体的な調査実務としては、図上調査や現地調査は建築士※3又は建築基準適合判定資格者が実施し、その結果について建築基準適合判定資格者が法適合状況を確認する。
※3 一級建築士、二級建築士又は木造建築士は、それぞれ建築士法(昭和25 年法律第202 号)第3 条から第3 条の3 までに定める構造・規模の建築物についてのみ関与することとする。
・図上調査
:調査者が、依頼者より提出された図書に基づき、建築当時の建築基準法等への適合状況などについて図面上の調査を行うこと。
・現地調査
:調査者が依頼者より提出された図書と現地の照合を行うこと。
・報告書
:調査者が本ガイドラインに基づく法適合状況調査を実施し、調査に用いた根拠資料などとともに、その結果をとりまとめたもの。
・著しい劣化
:法第 12 条第1 項及び第3 項の規定に基づく定期調査・検査報告により、「要是正」と判定されるものを指す。判定基準は以下の告示によるものとする。
・建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法並びに結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20 年国土交通省告示第282 号)
・昇降機の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法並びに結果の判定基準並びに検査結果表を定める件(平成20 年国土交通省告示第283 号)
・建築設備等(昇降機及び遊戯施設を除く。)の定期検査報告における検査及び定期点検における点検の項目、事項、方法並びに結果の判定基準並びに検査結果表を定める件(平成20 年国土交通省告示第285 号)
・本ガイドラインでは法令名を以下のように略記する。
<正式名称> <略記>
・建築基準法 : 法
・建築基準法施行令 : 令
・建築基準法施行規則 : 規則