開放廊下・バルコニーの取扱い・・・1

床面積の算定において、外気に有効に開放されている部分であれば非算入という事になっている。

下図は、「建築確認のための・基準総則集団規定の適用事例(2009年版)」日本建築行政会議編の中の全国的かつ一般的な取扱いを示している「吹きさらしの廊下」=いわゆる外部廊下についての解説である。

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又、同書では、「ベランダ、バルコニー」についても取扱い基準を示している。

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ただ、実際の設計においては、竪ルーバー・横ルーバー・意匠的なマリオン・玄関出入口部分の防風スクリーン・パンチングメタル・近隣を覗き見ない目隠しパネル・壁面緑化等 様々な付属物の設置が必要となる場合が多く、どこまでが「外気に有効に開放されている」と考えるか取扱いに迷う時がある。

また、この建築行政会議がまとめた本では、「開放部分の判断における隣地境界線からの離隔距離や同一敷地内の他の建築物又は当該建築物の他の部分からの離隔距離については、建築主事等への確認が必要である。」という記載が重要。この部分は全国的な統一的寸法が明記できなかった。

隣地境界線からの離隔距離は、首都圏では概ね50cm、地方では1m

建物間の離隔距離は、神奈川県では2m。都内は、行政では2mが多いが指定確認検査機関では1mでも認めてくれるところがある。

当然 離隔距離が多いのにはこしたことがない。

ここは、開放廊下・バルコニーだけでなく屋外階段などにも影響してくる取扱いで、個人的には東京都心部では建物間の離隔距離2mは、ちょつと厳しいというか。あまりに高密度なな地域環境では2mでなく1mでも良いのではと思う。

そんなところが、この本の編集にあたり、統一的な寸法はまとまらず主事判断になった理由かとも思う。

以下、全国の特定行政庁の特徴的な取扱いを参考にしながら考えてみる。

 

【覚書】A級ガス圧接継手

A級継手とは、元々はカプラーなどを用いた機械式継手の性能分類(SA級、A級、B級、C級の4種類) の一つ。

機械式継手の場合は、応力の伝達機構がガス圧接継手や溶接継手と異なり、引張強度は母材破断であるが、すべりが生じる工法、繰返し試験を行うとすべりが増加する工法、降伏点を過ぎると抜け出す工法などがあるため、SA級、A級、B級、C級の4段階に分類されています。

A級継手は、「強度と剛性に関しては母材並であるが、その他に関しては母材よりもやや劣る継手」と定義されています。

一方、ガス圧接継手については、強度、剛性はもちろん、付着生状に関してもほぼ母材と同等で、また、一方向繰返し試験に加えて塑性域正負繰返し試験を行い、継手単体としてはSA級継手の性能を有することを確認しています。
しかし、SA級継手はどの位置でも無条件で使用できる継手と規定されているため、使用規定上、ガス圧接継手はA級継手としました。

なお、A級継手の規定はガス圧接継手、溶接継手、機械式継手などすべての継手に対する共通の規定です。溶接継手や機械式継手も現在開発されている継手の大半がA級継手です。

A級ガス圧接継手の施工範囲について
(社)日本圧接協会では、前述の「ガス圧接継手性能判定基準」に基づき、ガス圧接継手について各種の加力実験(弾塑性域一方向繰返し実験、曲げ試験、断面マクロ試験)を行い、A級継手の性能を有することを確認しました。その結果、実験的に確認を行った範囲についてA級継手の施工が可能と規定しました。


img062圧接方法 :手動ガス圧接、熱間押抜ガス圧接、自動ガス圧接
鋼種及び径 : SD345(D25~D51)、SD390(D29~D41)、SD490(D29~D41)
異鋼種継手  : SD345とSD390の継手及びSD390とSD490の継手
異径継手: 鉄筋径の差4mm以下の継手ただし、高強度細径と低強度太径の継手は除く。
節の形状 :竹節十竹節、竹節十ねじ節、ねじ節十ねじ節
圧接施工会社: (社)日本圧接協会が認定したA級継手圧接施工会社
技量資格者: 手動ガス圧接3種・4種、熱間押抜ガス圧接3種・4種、自動ガス圧接3種・4種
施工要領 :A級継手圧接施工会社が作成したA級継手圧接施工要領書に拠る。

(出典:公益社団法人 日本鉄筋継手協会)

 

平成12年建設省告示第1463号によって鉄筋継手の構造方法が定められた。

本告示のただし書きに従い、(社)日本圧接協会(現:公益社団法人 日本鉄筋継手協会)では鉄筋のガス圧接継手を対象に、溶接継手や機械式継手など特殊継手を対象とした継手性能判定基準に準じた性能評価試験を実施し、継手性能の確認を行った。

これにより、これまで鉄筋のガス圧接継手は応力の最も小さい部分にのみ適用されていたが、以後は、応力の最も小さい部分以外にも使用できる法的な道筋が拓かれた。

 

H12建告1463 建築基準法に基づく告示
鉄筋の継手の構造方法を定める件
(平成12年5月31日建設省告示第1463号)

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第73条第2項ただし書(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定に基づき、鉄筋の継手の構造方法を次のように定める。

1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第73条第2項本文(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定を適用しない鉄筋の継手は、構造部材における引張力の最も小さい部分に設ける圧接継手、溶接継手及び機械式継手で、それぞれ次項から第4項までの規定による構造方法を用いるものとする。ただし、一方向及び繰り返し加力実験によって耐力、靭(じん)性及び付着に関する性能が継手を行う鉄筋と同等以上であることが確認された場合においては、次項から第4項までの規定による構造方法によらないことができる。

2 圧接継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 圧接部の膨らみの直径は主筋等の径の1.4倍以上とし、かつ、その長さを主筋等の径の1.1倍以上とすること。

二 圧接部の膨らみにおける圧接面のずれは主筋等の径の1/4以下とし、かつ、鉄筋中心軸の偏心量は、主筋等の径の1/5以下とすること。

三 圧接部は、強度に影響を及ぼす折れ曲がり、焼き割れ、へこみ、垂れ下がり及び内部欠陥がないものとすること。

3 溶接継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 溶接継手は突合せ溶接とし、裏当て材として鋼材又は鋼管等を用いた溶接とすること。ただし、径が25mm以下の主筋等の場合にあっては、重ねアーク溶接継手とすることができる。

二 溶接継手の溶接部は、割れ、内部欠陥等の構造耐力上支障のある欠陥がないものとすること。

三 主筋等を溶接する場合にあっては、溶接される棒鋼の降伏点及び引張強さの性能以上の性能を有する溶接材料を使用すること。

4 機械式継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 カップラー等の接合部分は、構造耐力上支障のある滑りを生じないように固定したものとし、継手を設ける主筋等の降伏点に基づき求めた耐力以上の耐力を有するものとすること。ただし、引張力の最も小さな位置に設けられない場合にあっては、当該耐力の1.35倍以上の耐力又は主筋等の引張強さに基づき求めた耐力以上の耐力を有するものとしなければならない。

二 モルタル、グラウト材その他これに類するものを用いて接合部分を固定する場合にあっては、当該材料の強度を1mm2につき50N以上とすること。

三 ナットを用いたトルクの導入によって接合部分を固定する場合にあっては、次の式によって計算した数値以上のトルクの数値とすること。この場合において、単位面積当たりの導入軸力は、1mm2につき30Nを下回ってはならない。

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エレベーターピット下の利用

エレベーターのピット下を居室、物置などとして使用することは原則として禁じられている。

やむを得ず使用する場合には、特定行政庁に事前相談し承認が必要。

また、つり合いおもりに非常止め装置を設けなければならないので昇降路および機械室を広げ、かつ、ピットスラブを2重スラブとする必要がある。

この二点は最低条件。

以下、「昇降機技術基準の解説」に措置方法が記されている。

  • ピット床を二重スラブとし、つり合おもり側にも非常止め装置を設ける
  • ピット床を二重スラブとし、つり合おもり側直下部を厚壁とする
  • エレベーター1基分のみのピツト下を人の出入りのきわめて少ない物置、ポンプ室等に使用するもので、そのポンプ室等の出入口側と反対側につり合おもりを設ける場合は、一重スラブとすることができる。なお出入口の戸は施錠装置を有する鋼製、その他の金属製とする。

「昇降機技術基準の解説 2009年版」付 昇降機耐震設計・施工指針

税込価格8,000円 送料500円

体裁:A4判 約450頁,A4判 約200頁

監修:国土交通省住宅局建築指導課
編集:財団法人 日本建築設備・昇降機センター/社団法人 日本エレベータ協会

スノコ状バルコニーの建築面積・・神奈川県内

下記の記事は、2013年1月に記載した内容ですが、その後 東京都内特定行政庁の建築審査会において、スノコ状バルコニーは建築物であり、建築面積の算定の対象となる旨の裁決(22板建審請第2号審査請求事件)があり ました。また各地でスノコ状バルコニー等を敷地境界まで拡大して築造するような、良好な市街地の環境の保全上好ましくない事例が散見されていました。

現在はスノコ状バルコニー、グレーチングバルコニー等の取扱いは、建築基準法第2条第1号 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するものだけでなく「これに類する構造のもの」も建築物に含まれるとされています。

よって屋根に類する構造のものに該当し、同法施行令第2条第1項第2号に基づき建築面積に算定されるとする特定行政庁が多くなっているようです。

例えば神奈川県藤沢市では2016年に取扱いを変更して建築面積算定対象としています。【2021.02.18】

【下記は2013年1月記載・現在は取扱いが変わっている特定行政庁も多いと思いますが記録として残しておきますので閲覧した方は御注意ください】


H22年9月の「神奈川県建築基準法取扱集」や「横浜市建築基準法取扱集」に「スノコ状バルコニーの取扱」は盛り込まれてない事から見て、現在のところ統一的な取扱基準はなさそうである。

H20年神奈川県指定確認検査機関連絡会・拡大小委員会+横浜市まちづくり調整局指定機関指導課をもつて組織された「横浜プロジェクト」において、H21に「スノコ状バルコニーの取り扱い」が決められた事がある。

  • 以下の条件にあてはまるものは、建築面積・床面積の対象としないこと
  • *注 告示等により除かれるものは該当しない。1建築物において1箇所のみ(上下の重なりは無いもの)。その他の形状については個別判断とする。
  • 小規模な専用住宅におけるもの(図面添付)
  • スノコ状バルコニーの水平投影面積の合計が15㎡以下のもの(15㎡を超えるものについては、超えた部分の下部を利用しないと判断できるもの)
  • スノコ状の定義として、下部より見上げたときに隙間より空が見えること

【藤沢市】

  1. ・建築物ではないと判断できる場合は、建築面積・床面積には算入しない
  2. ・スノコ状バルコニーの下部が屋内的用途に供さない事、屋根がないこと、袖壁等がない事など個別に判断する。

【横浜市】

  1. 木製スノコの場合は、柱があっても下部に屋内的用途が発生しない限り建築面積不算入
  2. 金属製のグレーチングは建築面積算入

【川崎市】

  1. 基本的にはスノコ状バルコニーは建築面積不算入
  2. 個別に判断・・下部に庇があり雨が落ちない場合、下部に用途がある場合建築面積算入

【茅ヶ崎市】

  1. 建築面積不算入
  2. ただし屋内的な用途に利用する場合は、建築面積算入かつ屋根としての性能を満たす事

【相模原市】

  1. 基本的にはスノコ状バルコニーは建築面積不算入
  2. 個別に判断・・下部に庇があり雨が落ちない場合、下部に用途がある場合建築面積算入

*その他の特定行政庁については随時ヒアリング後に追記します。

 

スノコ状バルコニーの建築面積・・東京都内

下記の記事は、2013年1月に記載した内容ですが、その後 都内特定行政庁の建築審査会において、スノコ状バルコニーは建築物であり、建築面積の算定の対象となる旨の裁決(22板建審請第2号審査請求事件)があり ました。また各地でスノコ状バルコニー等を敷地境界まで拡大して築造するような、良好な市街地の環境の保全上好ましくない事例が散見されていました。

現在はスノコ状バルコニー、グレーチングバルコニー等の取扱いは、建築基準法第2条第1号 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するものだけでなく「これに類する構造のもの」も建築物に含まれるとされています。

よって屋根に類する構造のものに該当し、同法施行令第2条第1項第2号に基づき建築面積に算定されるとする特定行政庁が多くなっているようです。

全てヒアリングしたわけではありませんが、杉並区では2013年に、藤沢市では2016年に取扱いを変更して建築面積算定対象としています。【2021.02.18】


【下記は2013年1月記載・現在は取扱いが変わっている特定行政庁も多いと思いますが記録として残しておきますので閲覧した方は御注意ください】

「スノコ状バルコニーの取り扱い」は、東京都内で統一的な取り扱い基準があるわけでなく、まったく認めない特別区や建築主事もいるので計画の時点で確認が必要な事項です。

許容建築面積いっぱいだと、このスノコ状バルコニーの取扱い次第で建築面積が変わるし、審査請求の裁決で指定確認検査機関の建築確認申請処分が取消しになつた事もあります。

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検査済証のない既存建築物の増築・用途変更

既存建築物の増築・用途変更の建築確認申請においては、既存建築物が建築当時の法令に適合している必要があり、工事完了検査済証があることが原則となっています。

ところが日本の建築業界の負の遺産といいましょうか、建築確認申請は取得したが工事完了検査済証がないという建築基準法の手続き違反の建物が街のなかに沢山溢れているというのが現状です。

そうした検査済証の無い建物を増築とか用途変更をしたい時、以前は行政でも門前払いされていたことも多かったのですが、最近は行政でも相談を受けとめてくれて確認申請を受け付けてくれて建築確認済証を公布してくれる事例が増えてきました。

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クリアランス・安全率

道路斜線、高度斜線、日影図や天空率の施工上のクリアランス・安全率(余裕)は、設計上あるいは確認申請上どの程度みておく必要があるか。

確認申請を提出したら、行政や指定確認検査機関から道路斜線や高度斜線は5cm余裕をみろとか、日影は1分、天空率は0.02%などと言われたことがないだろうか。

東京・荒川区の取り扱い基準を見ていたら「ゼロクリアランスで行なうことを可とする」という項目があった。その代わり巻尺の許容差や施工精度を考慮した工事施工が必要となると釘をさしている。

行政なら中間検査・工事完了検査できつちり測定するように思えるが、民間の指定確認検査機関ではどうだろう。

民間の指定検査機関の中間検査・工事完了検査は形骸化している。

だからゼロクリアランスなんて検査で手間がかかるから出来ない。審査で余裕を持たしておかないと危ない危ない。

確認申請書正本も副本も現場にない状態で検査する。建物の高さや位置関係をを全然計りもしない確認検査員がいる。申請段階で木材が集成材になっているのに施工者に図面が流れていなくグリーン材で施工されていないのに発見もできない。地番の高さを施工段階で道路より上げているのに見つけれない。

「厳しく指摘すると文句が来る」「営業的配慮が必要だ」・・・

採光規定は どう変わってきたか @ 法第28条の履歴

昭和25年制定時

(居室の採光及び換気)
 居室の窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、学校、病院、診療所、寄宿舎又は下宿にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上、その他の建築物にあつては10分の1以上でなければならない。但し、映画館、地下工作物内に設ける事務所、店舗その他これらに類するものの居室については、この限りでない。
(昭和25年11月23日-昭和34年12月22日) 

+ 建築基準法施行令 第19条 学校、病院、寄宿舎等の居室の採光
第20条 有効面積の算定方法

2 居室の窓その他の開口部で換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上でなければならない。但し、適当な換気装置があつて衛生上支障がない場合においては、この限りでない。
(昭和25年11月23日-昭和34年12月22日)
3 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前二項の規定の適用については、1室とみなす。
(昭和25年11月23日-昭和45年12月31日) 

*****

■昭和34年の改正

(居室の採光及び換気)
 居室には採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、学校、病院、診療所、寄宿舎又は下宿にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上、その他の建築物にあつては10分の1以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は映画館の客席、温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
(昭和34年12月23日-昭和45年12月31日) 

+ 建築基準法施行令 第19条 学校、病院、寄宿舎等の居室の採光
第117条 適用の範囲
第128条の4第2項第2号

2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。ただし、適当な換気装置があつて衛生上支障がない場合においては、この限りでない。
(昭和34年12月23日-昭和45年12月31日) 
3 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前二項の規定の適用については、1室とみなす。
(昭和25年11月23日-昭和45年12月31日) 

*****

■昭和46年の改正

(居室の採光及び換気)

 住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室には採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、その他の建築物にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行なう作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りではない。

(昭和46年1月1日-平成12年5月31日) 

+ 建築基準法施行令 第19条 学校、病院、児童福祉施設等の居室の採光
第19条第2項
第20条 有効面積の算定方法
第20条第2項
第20条第3項
第128条の3の2第2号

2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
(昭和46年1月1日-現在有効)

+ 建築基準法施行令 第20条の2 換気設備の技術的基準

3 別表第1(い)欄(1)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。
(昭和46年1月1日-現在有効) 

+ 建築基準法施行令 第20条の3 集会場、火を使用する室等に設けなければならない換気設備等
第20条の4

4 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前三項の規定の適用については、1室とみなす。
(昭和46年1月1日-現在有効)

 

昭和46年の建築基準法第28条第1項の改正後の基準と改正前の基準の違いが判るだろうか。

ちょっと見には変わっていないように見える。

この違いがわかった人は、相当法律を読む力がある。

昭和46年の改正前は、住宅、学校、病院、寄宿舎等に類する建物の居室もそれ以外の用途の建築物に対しても、ただし書きに該当する居室以外、全ての居室に採光のための窓をとることを義務付けている。

昭和46年の改正後は住宅、学校、病院、診療所、下宿その他これらに類する建築物の居室には採光のための窓両者とも採光が義務付けられている。それ以外の建築物 例えば、店舗、事務所、工場等の建物については、法的には採光のための窓を設ける必要がなくなつた。

建築基準法の採光基準のこのような改正は、大型物販店舗等の大規模建築物がつくられ始め、大型物販店舗のような広がりの大きいスペースでは、採光のために設けた窓が無用の長物化し、実際の売場の明るさは照明器具設備で充分確保できるようになっていたこと、そして、それを支える照明器具設備の発達がその背景にあった。

最終的に、採光が義務付けられたのは、住居系の建物で、居室規模が小さく、昼間なら照明器具を点灯しなくても窓からの採光で充分明るさが確保できる用途の建物だった。

そして平成12年に煩雑な採光補正係数が導入された。

そのときより人工照明は更に発達している。

都心部では木造三階建て等では1階部分の自然採光を確保する事は、中々難しくなった。

この辺で もう一度 法第28条を見直してはどうだろうか。

 

面積の算出方法・端数処理 -3

下記の図は、福岡県建築確認申請の手引き(2010年版)の中の「面積算定の取り扱いについて」

今、建築基準法の取り扱いとして全国的な基準となっている「建築確認のための・基準総則集団規定の適用事例」(日本建築行政会議編)が出版される前の原案には、この福岡県の取り扱いが提案されていた。

が、み~んなこれまでバラバラな対応をしてきたので、今更全国一律の取り扱いにするのは異論が出て同意が得られず出版される際に外された項目のひとつ。

 

 

面積の算出方法・端数処理 -2

ちょうど東京・荒川区の「建築基準法関係の解説及び運用基準」を読んでいたので、荒川区の取り扱い基準をベースにして考えてみる。

 

1.面積の算出の仕方、端数処理について


                           作成日 平成22 年4 月1 日

(1)敷地面積の求積方法は、原則として三斜法、ヘロン三斜法によるものとする。やむを得ず、座標法により求積する場合は、土地家屋調査士法に基づく土地家屋調査士又は測量法に基づく測量士若しくは測量士補の作成とし、作成者が氏名及び資格を記載の上押印するものとする。
( 2 ) 三斜法により求積した場合は面積求積線及びその距離並びに面積計算表、座標法により求積した場合は測点及び測点間の距離並びに座標面積計算表を記載するものとする。
( 3 ) 求積の単位は、距離についてはメートル、面積については平方メートルとする。
( 4 ) 端数処理について、敷地面積、建築面積は小数点以下2位まで有効とし、3位以下は切り捨て、床面積は各階ごとに小数点以下2位まで有効とし、3位以下は切り捨てる。( 計算過程段階では端数処理を行わない。)
( 5 ) 延べ面積は、各階ごとに算出された端数処理後の面積を合計する。

( 6 ) 建ぺい率、容積率の算出は、原則として小数点以下2位まで有効とし、3位以下は切り捨てる。

http://www.city.arakawa.tokyo.jp/kurashi/sumai/kenchiku/kakunin_kensa/shinsei.files/unnyoukijyunn.pdf

 

よく整理された取り扱い基準だと思う。

 

1)敷地面積の求積方法

荒川区の取り扱いては「原則として三斜法、へロン三斜法」とあるが、昨今は座標法が主流になりつつあるのではないだろうか。

ここは「座標法により求積する場合は、土地家屋調査士法に基づく土地家屋調査士又は測量法に基づく測量士若しくは測量士補の作成とし、作成者が氏名及び資格を記載の上押印するものとする。」敷地求積図を添付するというのが実情にあっていると思う。

建築士の作成した三斜法の敷地求積図は怪しいし・・・失礼。

2)床面積の端数処理

ここで重要なのは「計算過程段階では端数処理を行なわない」ということである。「 延べ面積は、各階ごとに算出された端数処理後の面積を合計する。」というのは、もつと設計者、審査者に徹底する必要があるのではないかと思う。

最近目にした確認申請図書で、共同住宅の各戸の小数点三位以下を切り捨てた専有面積と共用部面積という部位別に端数処理したものを合計して各階の延べ面積を算出しているものがあった。

容積率に余裕があれば良いのだが、分譲マンションのことだから容積対象面積は限度いっぱいで、部位別には端数処理をしないで各階で集計していくと全体で1m2程 容積対象面積が増加した。

計画は容積対象面積の余裕が0.3m2しかなかつたので容積率オーバーになってしまった。

3)建蔽率・容積率の端数処理

「建ぺい率、容積率の算出は、原則として小数点以下2位まで有効とし、3位以下は切り捨てる。」とあるが、ここは異論がある。

建蔽率、容積率については小数点第三位を四捨五入し小数点第二位で表記した方が不利側なので良いのではないか。

面積の算出方法・端数処理 -1

指定確認検査機関に勤め 様々な設計者・設計図書に出会うと 面積の算出方法や端数処理が バラバラであることを知った。

最近も遵法性調査の中で様々な指定確認検査機関・行政で決済した確認申請図書に出会ってると こんなに根本的なことが 今でも全国一律でなくて良いのかと思つてしまう。

確かに面積算定時の小数点以下の取り扱い(端数処理)は、建築基準法に規定はないが、昭和41年住指発87号が取り扱い上の目安となっていたはずだし、下に示すように国交省のサイトには今もQ&Aとして掲載されている。

 

Q: 面積の端数処理について    (1997/09/08   建設省 住宅局 建築指導課)
A: 御質問の端数処理については,メートル法が導入された昭和41年の建築指導課長からの通達(住指発第87号)に規定されています。

(抜粋)
なお、不動産登記法施行令第4条及び8条に,地積及び建物の床面積の単位と端数処理の方法が別記の参考のように定められているので,確認その他の事務についても,これに準じて行うよう念のため申し添える。

{参考}
○不動産登記法施行令第4条
「地積は、水平投影法により,平方メートルを単位として定め,1平方メートルの100分の1(宅地及び鉱泉地以外の土地で10平方メートルをこえるものについては,1平方メートル)未満の端数は,切り捨てる。」

○同施行令第8条
「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影法により,平方メートルを単位として定め,1平方メートルの100分の1未満の端数は切り捨てる。」
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/q&a/sg_arepm.htm

 以下に住指発第87号を掲載する。

 昭和41年3月25日住指発第87号

メートル法の完全実施について

昭和41年3月25日 住指発第87号
建設省住宅局建築指導課長

標記については、計量法施行法第3条によって、経過措置として昭和41年3月31日までは、土地又は建物に関する計量単位として、尺貫法の使用が特例として認められていた。従って、昭和41年4月1日以後は、メートル法以外の単位を用いてはならないことになるので、建築物の確認、報告、統計その他及び公営住宅建設等の実施に当たってはこれらの標示をすべてメートル法によるよう、その徹底を図られたい。
なお、不動産登記法施行令第4条及び第8条に、地積及び建物の床面積の単位と端数処理の方法が別記参考のように定められているので、確認その他の事務についても、これに準じて行なうよう念のため申し添える。

——————————————————————————

〔参考〕
○不動産登記法施行令第4条
「地積は、水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、1平方メートルの100分の1(宅地及び鉱泉地以外の土地で10平方メートルをこえるものについては、1平方メートル)未満の端数は、切り捨てる。」
○同施行令第8条
「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、1平方メートルの100分の1未満の端数は、切り捨てる。」

 

さて端数処理については、住指発第87号に従うとして敷地面積・建築面積・床面積・建蔽率・容積率について別々に考える。

建築基準法第8条(維持保全)

建築基準法第8条は、「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。」と規定しています。

普段は、ほとんど見ない条文です。

10/31にアパホテル(金沢駅前)エレベーターにおける戸開走行事故で、また死亡者が出ました。

下記は、国交省のコメントですが、マスコミではシンドラー社の責任を問う報道が目立ちます。勿論、製造物責任がありますし2006年の竹芝の場合と似た様な事故に思えますので(現時点で)責任を問われるのは当然だと思います。

でも、専門家から見たら「建物の所有者、管理者」の責任は?

毎年1回の昇降機の定期検査はしていたの? 指摘事項はなかつたの? というところに最初に関心が向きます。

それと既存不適格・法律不遡及の原則がさかんに持ち出されていますが、EVとかエスカレーター、特別な建物の構造規定には既存不適格は適用除外にする必要があるのではないかと思います。

原発も耐震補強は既存不適格なので法律的には耐震補強義務はなく、電力会社の任意であり保安院しだいでしたから・・・

 

アパホテル(金沢駅前)エレベーターにおける戸開走行事故について
                               平成24年10月31日
 石川県金沢市のアパホテル(金沢駅前)において、従業員がエレベーターのかごと三方枠に挟まれた事故が発生したことについて
特定行政庁から報告がありましたので公表いたします。
1.概要
 発 生 日 時:平成24年10月31日(水)14時55分頃
 発 生 場 所:アパホテル(金沢駅前)
 被  害  者:1名(心肺停止で病院に搬送)
 概     要:人荷用エレベーターにおいて、従業員(女性)が4階からエレベーターに乗り込もうとしたところ、戸が開いている状態でかごが上昇し、かごと乗り場に挟まれ、心肺停止の状態で病院に搬送された。

2.エレベーターの概要
 事故機の概要:人荷用エレベーター
 エレベーター製造業者:シンドラーエレベーター(株)
 エレベーターの保守業者:確認中
 ※確認済証・検査済証の交付状況、定期検査の状況は確認中

3.国土交通省の対応
○ 10月31日(水)、特定行政庁(金沢市)による現地調査を実施
○ 11月1日(木)、特定行政庁(金沢市)による現地調査に合わせ、昇降機等事故調査部会の委員と国土交通省職員が調査を実施予定。
○ 今回の事故原因については、引き続き社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会において調査を行う。

http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000356.html

 

建築基準法第8条(維持保全)
第8条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。

小屋裏物置等 -4・・・東京江戸川区の取扱い

下図は、東京・江戸川区の小屋裏物置等についての取扱い

「建物用途については特定しない」として戸建住宅だけでなく、共同住宅、店舗等 建物用途を限定しないと明文化している。

私が、指定確認検査機関に勤めていたとき小屋裏物置等の取扱いは戸建住宅だけだと断言している役所OBの確認検査員がいてびっくりした事があった。

江戸川区の取扱いの特徴の他の点としては、木造2階建てで筋交い計算の各階面積に小屋裏面積をそれぞれ加算して計算すると記載してある事。

梯子などの設置方法は特定しないが、手摺などを設置することとある。

開口部の大きさを小屋裏面積の1/20以下、0.6m2以下と規定している。

江戸川区の取扱いにも軒高から上を束立てする構造は認められないと記載してある。

東京ゆえの採光規定・・・東京江戸川区の取扱い

東京で木造三階建ての住宅の設計や審査をしていると、角地でもない限り庶民の住宅では1階部分の採光が取れない。

ゆえに居室をとることがほとんど不可能に近く、納戸とか書庫とかにすることが多い。2階でも採光がとれない部屋があると、1階の納戸とで1軒の住宅に二室納戸が出来たりする。

下図の東京・江戸川区の「建築基準法における取扱い基準」(平成20年7月)では、住宅のビルトイン車庫の後ろにある居室は、車庫部分が3m以下でバルコニーからの長さが4m以下なら採光補正係数を0.7にしても良いですよという取扱い基準である。

実際のところビルトイン車庫で車が入っていたら、道路からの採光は期待できないだろう。

家族が車で外出すると車庫の後ろの居室に一定の採光が得られるという、人がいない時に部屋の採光を得る事が出来るという皮肉な現象が生じる。

まぁ 高密度の東京ならではの緩和的取扱いだ。

しっかたなかんべ~

という気がする。

この際

人工照明が発達した現代では、室内で一定の照度が確保できれば建築基準法の採光規定(法第28条)を適用しないとかしたらどうだろうか。

採光補正係数の算出だって煩雑だし。

小屋裏物置等 -3・・・東京世田谷区の取扱い

東京・世田谷区が「建築基準取扱い」の第4章雑則規定92-6「小屋裏物置等の取扱い」を改正した。平成24年4月1日より3ヶ月間を周知期間とし行政指導を行い、平成24年7月1日以降に申請する建築物より運用を開始している。

http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/102/119/337/340/d00015327.html

下記は、該当する部分のPDF

http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/102/119/337/340/d00017927_d/fil/17927_6.pdf

世田谷区内では、平成22年12月7日「22世建審請第3号、第4号の17」の審査請求の中で、小屋裏等の取扱い基準について適合かどうか争われ、処分庁である日本ERIは確認処分を取り消されている。

現在の世田谷区の取扱い基準の改正は、そうした審査請求の内容を踏まえたものになっている。

小屋裏物置等の取扱い【第2版】 (平成24年7月1日 施行)
□ 内 容
小屋裏、天井裏、その他これらに類する部分に物置がある場合における階及び床面積の取扱いはどうなるか。
□ 取 扱
小屋裏、天井裏、床下等の余剰空間を利用して設ける物置(以下「小屋裏物置等」という。)は、【建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 編集:日本建築行政会議 小屋裏物置等(P79)】を基準とし、かつ、下記の各号に該当する場合のみ、階とみなさず床面積に算入しない。
(1) 1の階に存する小屋裏物置等の部分の水平投影面積の合計が、当該、小屋裏物置等が存する階の床面積の1/2未満であること(固定階段を設置する場合は、その部分の面積を含む)。
なお、階の中間に設ける小屋裏物置等の部分の水平投影面積の合計が、その接する上下それぞれの階の床面積の1/2未満であること。

(2) 小屋裏物置等の最高の内法高さが1.4m以下であること。なお、上下に連続する小屋裏物置等にあっては、内法高さの合計が1.4m以下であること。

(3) 階の中間に設ける床(ロフト状に設けるもの)については、当該部分の直下の天井高さが2.1m以上であること。

(1)(2)(3)建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 小屋裏物置等(P79)準用

(4) 原則、小屋裏物置等の外壁の開口部の設置は認めない。但し、換気を行う目的で開口部を設ける場合、開口部の大きさの合計は小屋裏物置等の部分の水平投影面積の1/20かつ0.45㎡以下であること。

(5) 小屋裏物置等の内部に、収納は造作しないこと。

(6) 小屋裏物置等の内部に、電話、テレビやインターネット等のジャックの設置はしないこと。

(7) 小屋裏物置等の床の仕上げは、畳、絨毯、タイルカーペット等にはしないこと。

(8) 小屋裏物置等にはエアコン等の空調設備は設置しないこと。

(9) 上記以外にも居室等に使用される可能性がある仕様にはしないこと。

(10) 共同住宅・長屋等は、各住戸ごとに上記各号の規定を満たすこと。

(11) 確認申請等の図面には、「物置であり居室には使用しない」と記載すること。

□ 関連資料 建築基準法の一部を改正する法律の施行について(H.12 住指発第682 号)建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 編集:日本建築行政会議 小屋裏物置等(P79)」
□ 参考 22 世建審請第3号、第4号審査請求事件
※22 世建審請第3号、第4号審査請求事件において、小屋裏収納等の仕様について考えが出されたことにより、小屋裏物置等の取扱いを大幅に改正する事とした。
この取扱いは、主たる空間ではない余剰空間を利用した形態のみを対象とし、用途は収納目的で設ける物置に限る。

 

本来、収納目的の物置に限ってだったのが、最近はベッドルームとか書斎とかに利用されている。それが、どうどうとテレビなんかで放映されたり、パンフレットとか広告に掲載されて、自らの違法を晒す、宣言する者も目立つようになり無秩序的な状態も生まれていた。

世田谷区の取扱いの改正は、仕様に重点を置いた改正となっているが、こうした取扱いを明文化し公表する事はとても大事で、混乱する建築審査・建築業界に一石を投じてくれている。

他の行政地域の案件についても 小屋裏物置等の仕様に関しては世田谷区の取扱いに近いものになるのではないだろうか。

 

小屋裏物置等 -2・・・神奈川県の取扱い

神奈川県は、H22年に県内の建築基準法の取扱基準を統一した「神奈川県建築基準法取扱基準-面積、高さ、階数等の算定方法-」を発表したが、その中の「6-1-1 小屋裏物置等」で 全国や他県と異なる踏み込んだ取扱いを示した。

それは下図である。

階段の踊り場から利用する1階小屋裏物置で横入りを認めたことである。

ただし上下に小屋裏物置等が連続する場合は、制限を加えている。

この取扱いが発表されてH23年頃から、神奈川県内の注文住宅の申請案件にスキップフロア型住宅、スキップフロアを利用した階段横入れ収納の申請が目立つようになった。

その結果 神奈川方式ともいえる断面形状の戸建住宅のデザインが生まれた。

と私は思っている。

 

以上は一般的な取扱いを示している。

もうひとつ神奈川県の場合、小屋裏物置等を利用するためのはしご等の設置方法は特定していない。つまり梯子でも固定階段でも良いとして、固定階段の場合の設置基準を明確にしている。

 

「神奈川県建築基準法取扱基準― 面積、高さ、階数等の算定方法 ―」 [PDFファイル/1.16MB]平成23年11月24日版

http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/390829.pdf

 

小屋裏物置等 -1・・・大阪府の取扱い

小屋裏物置については、軒桁と床の位置の関係、小屋束のピッチ、スパン、四方束の可否など、判断が難しい事例があつた。

それらに対して「断面図に軒から上は小屋組みと書く」とかして対応していたと思った。

2×4の住宅で四方束立てして在来工法で小屋をつくり、2×4の構造構面から上部なのだから四方束立てしても小屋組みであるというような議論もあったが、私は反対だった。

最近 大阪府の取扱いを見ていたら

「大阪府条例質疑応答集(Q&A改訂6版)講習会における質問と回答」(H24.3.30)における「Q&A4-30 小屋裏物置の取扱いについて」では、四方束立てをしたものは認められないとしている。(下図)

四方束立ては、軒高が過小となること、意図的な余剰空間となるので法の主旨に反する。

これには自分も賛成である。

これまで特定行政庁の明文化した取扱事例が見当たらなかった。

適時、統一的な取扱いの見解を明文化し発表するのは行政としての必要な職務だ。

小屋裏物置の床の高さの位置と軒レベルは議論があるだろうが、少なくてもロフトの床レベルは軒レベルより下にあつても一向に構わないと思う。

スキップフロアを利用した収納は、上下から利用するなら認めるというのは順当な取扱いだと思う。

上記の資料は

大阪府内建築行政連絡協議会

http://www.cac-osaka.jp/legal_standard/index.php?s_category=1

 

 

 

 

「用途変更時の建築関連法規の抵触事項に対する設計者の意識調査に基ずく規制緩和の可能性に関する考察」を読んで

『「用途変更時の建築関連法規の抵触事項に対する設計者の意識調査に基ずく規制緩和の可能性に関する考察」・・建物の長寿命化を目的とした用途変更促進のための研究』

CONSIDERATION ON THE POSSIBILITY OF DEREGULATION BASED ON SURVEYS OF DESIGNERS’ CONSCIOUSNESS FOR THE MATTERS AGAINST BUILDING CODES

は、2008年4月に日本建築学会計画系論文集 第73巻 第626号に掲載された、大阪工業大学・吉村英佑教授グループの論文で 以前に読んだのだが、感想を整理しておこうと思う。

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006657341

現在の建築基準法は、新築が前提の規定や法体系となっており、増改築や用途変更などの既存建築物の活用を叫ばれている現在においては、充分適用できていない法律となっている。(他にも複合用途の建築に対する対応)

本稿は、1993年~2006年までの13年間の建築雑誌から用途変更事例を抽出し、設計担当者に用途変更の妨げとなった建築関連法規の規定とその程度をアンケートで尋ねている。

その項目は、床荷重・居室の採光・廊下の幅員・階段の寸法・避難階段・排煙・その他であり、実際プロジェクトの企画段階で これら関係法規のチェツクをし改修コストがかかるものは取り壊される。

用途変更の確認審査・設計申請の両方の経験をして感じるのは、条例関係の制限が多いことだ。とりわけ用途変更の場合におけるバリアフリー条例の適用に困難を伴う時がある。バリアフリー条例の用途変更への対応は、高齢者・子供・障害者・妊婦が多く利用する施設に限定して適用しても良いのではないかと思う。

避難関係・防火に対する規定の緩和は好ましくない。

完了検査済証が無い建物、確認申請(副本)がない建物、そうした既存建築物が世の中に沢山あり、無届出で用途変更がなされているのが多いのが実情だ。そうした建物への対応をどうするのか?

用途変更は「建築行為では無い」(法第3条)が、完了検査が必要ないのは「ザル法」的でいだけない。現状では、行政の監察と特殊建築物定期報告でしかチェツクできない。

ちょつと羅列的な感想だけど・・・

たまに研究者の論文を読むのは、問題が整理されて参考になる。

 

 

階数と階を巡って・・・

大阪の遵法性調査の関係で、「大阪府内建築行政連絡会議Q&A」、「大阪府内特定行政庁・建築基準法に関する取扱集」などを眺めていたら、下記のような項目が目に入った。

「大阪府内建築行政連絡会議Q&A・・・4-37 階数の算定」で

Q :  図のように塔屋部分に屋上駐車場のためのエレベーターホールを設けた場合、階数に算入されるか。ただし、塔屋部分の床面積は建築面積の1/8以内とする。

A :  エレベーターホールの広さがエレベーターシャフトの広さと同程度で、塔屋部分の床面積が建築面積の1/8以内であれば階に算入しない。しかし、エレベーターホールの広さがこれより広くなる場合には、特定行政庁と事前に打合せが必要である。

指定確認検査機関に勤務していた頃、エレベーターが着床する場合の塔屋の取扱い、階数について議論したことがあつたことを思い出した。

たしか木造3階建ての屋上部分がルーフバルコニーとなつている箱型の専用住宅だったと思う。屋上に出るための階段・EVの塔屋がちょこんと付いている。その部分の面積は当然建築面積の1/8

もともとエレベーターシャフトは階の一部であり、着床する部分は当該階の他の部分と一体的な用途に供するものであるため床面積に算入する。(昭和61年4月30日住指発第115号)。

施行令第二条で定義している「階数」での昇降機塔は、エレベーター機械室を含む塔屋のこと、あえて適用すると「その他これに類する」もの。

木造準耐火建築物で階数が増え、4階建てなら耐火建築物で 大きく変わる。中高層建築物の掲示も必要だし、構造適合判定も必要になるかもしれない。

そんなことで、国交省、東京都、特定行政庁(この場合は区)と電話で照会したが、結局は「主事判断」だったことを思い出した。

法文は下記のとおり

建築基準法施行令

(面積、高さ等の算定方法)
第二条  次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

八  階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の八分の一以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなつている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によつて階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。

「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」75頁で「高さに算入しない屋上部分」で「階段室、昇降機塔、物見塔、装飾塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の例」として「昇降機の乗降ロビー(通常の乗降に必要な規模程度のものに限る)」とあるのは「高さ」に関しての取扱いであり「階数」とはことなる。

もともと

「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」の原案であつた「(仮称)総則・集団規定運用指針集(H20.12.24)では、「階数の取扱い100・・・屋上部分の階数の算定」で「高さ」と「階数」は同一的に扱っていたが、「適用事例」で出版されたときは「高さに算入しない屋上部分」として分けられ、法文と同じように別になっている。

ただ、一般用の中高層用エレベーターは機械室が不要なものがほとんどであり、法令制定後の技術的進歩がある。また屋上緑化、ソーラーパネルの設置など屋上利用も進んでいる。屋上利用は木造住宅などの専用住宅でも事例が増え、それに木3に道を開いた事によりホームエレベーターの設置、屋上への着床も必要となってきたのであろう。

必要性は理解できる。

が、法文上どこに準拠するのか「その他これらに類するもの」の解釈・取扱いは、「裁量権はない」と言われる指定確認検査機関でどこまでできるのか・・・

そんな中、「神奈川県建築基準法取扱基準-面積、高さ、階数等の算定方法」67頁で「(2)用途上、機能上及び構造上、屋上に設けることが適当であるものの例」として「昇降路と同程度の規模の昇降ロビー」とあったので、「エレベーターが屋上に着床していても昇降路と同程度の規模の昇降ロビー」を持つ塔屋なら階数に算入しないとした。

 

 

用途変更と構造

用途変更における構造耐力規定(法第20条)については準用される規定となっていない。

これは用途変更の性格上、当初の荷重条件を満たす範囲での適用を前提としているからであり、用途変更確認申請に際しては 荷重条件が変わらない事の検討報告書を確認申請書に添付する。

荷重条件が変わる場合や構造耐力上主要な柱、梁、耐力壁、床など一部を変更する場合は、設計者により検証が必要となり、用途変更確認申請時に検討報告書を添付する。

用途変更により設計条件が変わる場合(主に荷重増となる場合)は、当該建築物を建築した当時の法令によって再検討を行なう。

用途変更部分のみに準用される規定

3) 用途変更部分のみに準用される規定

既存不適格建築物で適用除外となっている以下の規定については、用途変更部分のみに適用される。

イ , 用途変更する独立部分のみに適用される規定

・廊下、階段、排煙設備、非常用照明、非常用進入口、敷地内通路等(法第35条)

ロ , 用途変更する部分のみに適用される規定

・ 居室の採光及び換気(法第28条)
・ 地階の住宅等の居室(法第29条)
・ 長屋、共同住宅の各戸の界壁(法第30条・遮音構造)
・ 内装制限(法第35条の2)
・ 無窓居室の主要構造部の制限(法第35条の3)

 

第八十七条

4  第八十六条の七第二項(第三十五条に係る部分に限る。)及び第八十六条の七第三項(第二十八条第一項若しくは第三項、第二十九条、第三十条、第三十五条の三又は第三十六条(居室の採光面積に係る部分に限る。以下この項において同じ。)に係る部分に限る。)の規定は、第三条第二項の規定により第二十八条第一項若しくは第三項、第二十九条、第三十条、第三十五条、第三十五条の三又は第三十六条の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合について準用する。この場合において、第八十六条の七第二項及び第三項中「増築等」とあるのは「用途の変更」と、「第三条第三項第三号及び第四号」とあるのは「第八十七条第三項」と読み替えるものとする。

 

用途変更における建築基準法の適用の緩和

1 ) 類似の用途変更の緩和-1(「用途地域制限」以外の場合)

令第137条の18第1項に掲げる類似用途相互間の用途変更であり、大規模な修繕・模様替えでないものは、法第87条3項の準用規定は適用されず既存遡及はない。確認申請が不要な類似の用途とは異なるので注意する。

例えば、病院を老人ホーム(児童福祉施設等)に用途変更する場合、確認申請を要するが(令第137条の17であげる類似の用途ではない)、既存不適格部分の適合規定は準用されない。

(建築物の用途を変更する場合に法第二十四条 等の規定を準用しない類似の用途等)

第百三十七条の十八  法第八十七条第三項第二号 の規定により政令で指定する類似の用途は、当該建築物が前条第八号から第十一号まで及び次の各号のいずれかに掲げる用途である場合において、それぞれ当該各号に掲げる他の用途とする。ただし、法第四十八条第一項 から第十三項 までの規定の準用に関しては、この限りでない。

一  劇場、映画館、演芸場、公会堂、集会場
二  病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等
三  ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎
四  博物館、美術館、図書館

2) 類似の用途変更の緩和-2(「用途地域制限」の場合)

令第137条の18第2項に掲げる類似用途相互間の用途変更で、以下に該当する範囲の場合は 用途地域制限はかからない。

イ , 用途変更後の不適格部分の床面積の合計は、基準時の1.2倍以内であること
ロ , 用途変更後の原動力の出力、機械の台数、容器等の容量は基準時の1.2倍以内である。
ハ , 法別表第二のイからホのそれぞれの用途間での用途の変更であるもの。

令第137条の18

2  法第八十七条第三項第三号 の規定により政令で定める範囲は、次に定めるものとする。
一  次のイからホまでのいずれかに掲げる用途である場合において、それぞれ当該イからホまでに掲げる用途相互間におけるものであること。
イ 法別表第二(に)項第三号から第六号までに掲げる用途
ロ 法別表第二(ほ)項第二号若しくは第三号、同表(へ)項第四号若しくは第五号又は同表(と)項第三号(一)から(十六)までに掲げる用途
ハ 法別表第二(ち)項第二号又は同表(り)項第三号(一)から(二十)までに掲げる用途

ニ 法別表第二(ぬ)項第一号(一)から(三十一)までに掲げる用途(この場合において、同号(一)から(三)まで、(十一)及び(十二)中「製造」とあるのは、「製造、貯蔵又は処理」とする。)
ホ 法別表第二(る)項第五号若しくは第六号又は同表(を)項第二号から第六号までに掲げる用途

二  法第四十八条第一項 から第十三項 までの規定に適合しない事由が原動機の出力、機械の台数又は容器等の容量による場合においては、用途変更後のそれらの出力、台数又は容量の合計は、基準時におけるそれらの出力、台数又は容量の合計の一・二倍を超えないこと。

三  用途変更後の法第四十八条第一項 から第十三項 までの規定に適合しない用途に供する建築物の部分の床面積の合計は、基準時におけるその部分の床面積の合計の一・二倍を超えないこと。

用途変更における建築基準法の準用範囲

既存不適格建築物で適用除外となっている以下の規定も用途変更することにより適用される

・法第22条指定区域内の木造の特殊建築物の構造制限(法第24条)
・特殊建築物の構造制限(法第27条)
・居室の採光及び換気等(法第28条第1項若しくは第3項)
・地階の住宅等の居室(法第29条)
・長屋、共同住宅の各戸の界壁(法第30条・遮音構造)
・廊下、階段、排煙設備、非常用照明、非常用進入口、敷地内通路(法第35条)
・特殊建築物の内装(法第35条の2)
・無窓居室の主要構造部の制限(法第35条の3)
・法第2章実施、補足の技術的基準(法第36条)・・法第28条1項、法第35条
・用途地域における用途制限(法第48条)
・卸売市場等の特殊建築物の位置の制限(法第51条)
・都市再生特別地区内の用途制限(法第60条の2第3項 及び 第68条の3 第7項)
・法に基づく条例による規制
・災害危険区域(法第39条第2項)
・地方公共団体の条例による制限の附加(法第40条)
・その道路が4m未満の道路にのみ接する建築物に対する制限の附加(法第43条の2)
・特別用途地域(法第49条)
・特定用途制限区域(法第49条の2)
・用途地域等における建築物の敷地、構造又は建築設備に対する制限(法第50条)
・市町村の条例に基づく制限(法第68条の2の1項)
・都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内の建築物に係る制限(法第68条の9)

*法第28条の2(シックハウス関係)の準用はされていない為、原則既存遡及の適用はない。

容積率が不適格の建築物における駐車場部分の用途変更

法第87条第3項には、法第52条の準用の規定はないが、不適格部分を増加させることは法の主旨に適合しないので認められない。

建物に付設した駐車場を用途変更して別の用途にする場合、建物全体の容積率の緩和を使っているかどうかを確認する必要がある。

又 駐車場が駐車場条例などの条例の付置義務により設置している場合は、建物内での位置変更等は可能だが、台数を減らしたり、隔地駐車場への変更が難しいので注意が必要である。

 

既存不適格建築物と遡及

第3項・・用途変更に際しても既存不適格の規定が継続される場合についての規定

第3項については、第1号から第3号までに掲げる場合を除き、既存不適格である規定であっても、当該規定を遡及的に適用するものと定めているが、これらの各号に掲げる場合が除かれる理由は下記の通りである。

第1号
増築・改築・大規模の修繕又は模様替を伴う用途変更の場合、法第3条第3項第3号の規定により、既存不適格の適用が解除され、全ての規定について遡及適用が必要となるため。

第2号
令第137条の17に規定する類似の用途相互間の用途変更については、従前の既存不適格の効果を維持しても差し支えないため。

第3号
用途規制上、令第137条の18に規定する範囲内の用途変更については、従前の既存不適格の効果を維持しても差し支えないため。

 

第八十七条

 第三条第二項の規定により第二十四条、第二十七条、第二十八条第一項若しくは第三項、第二十九条、第三十条、第三十五条から第三十五条の三まで、第三十六条中第二十八条第一項若しくは第三十五条に関する部分、第四十八条第一項から第十三項まで若しくは第五十一条の規定又は第三十九条第二項、第四十条、第四十三条第二項、第四十三条の二、第四十九条から第五十条まで、第六十八条の二第一項若しくは第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の規定の適用を受けない建築物の用途を変更する場合においては、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、これらの規定を準用する。
一  増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合
二  当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものであつて、かつ、建築物の修繕若しくは模様替をしない場合又はその修繕若しくは模様替が大規模でない場合
三  第四十八条第一項から第十三項までの規定に関しては、用途の変更が政令で定める範囲内である場合