既存建築物の増築・用途変更の建築確認申請においては、既存建築物が建築当時の法令に適合している必要があり、工事完了検査済証があることが原則となっています。
ところが日本の建築業界の負の遺産といいましょうか、建築確認申請は取得したが工事完了検査済証がないという建築基準法の手続き違反の建物が街のなかに沢山溢れているというのが現状です。
そうした検査済証の無い建物を増築とか用途変更をしたい時、以前は行政でも門前払いされていたことも多かったのですが、最近は行政でも相談を受けとめてくれて確認申請を受け付けてくれて建築確認済証を公布してくれる事例が増えてきました。
下記は、大阪府内建築行政連絡協議会の「既存建築物の増築等における法適合性の確認取扱要領及び同解説」の中の一文です。
既存建築物の増築等の確認申請の際に必要となる「検査済証の写し」については、「既存建築物状況報告書」などの提出により特定行政庁の確認を受けたときとしています。そうしてから建築確認申請を建築主事や指定確認検査機関に提出することができるとあります。
上の図は、大阪府内建築行政連絡協議会の「既存建築物の増築等における法適合性の確認取扱要領及び同解説」の中の「一棟増築の既存建築物の法適合性チェツクフロー」ですが、黄色で囲まれた範囲は特定行政庁または建築主事のみ可能な事務範囲としています。
東京都や首都圏ではこうした統一的な取扱いはありません。
以前、東京都建築行政連絡協議会では「検査済証のない建物の増築案件は、指定確認検査機関では取り扱わない」という申し合わせがありましたが、現在では決済をしている指定確認検査機関もあると聞いています。
ただ、法適合性という事務処理を考えると建築基準法に対する裁量権がないとされる指定確認検査機関で決済するのは問題があり、大阪府内建築行政連絡協議会のように事務範囲を考えたほうが良いと思います。
横浜市では検査済証がない場合は、既存建築物が建築当時の法令に適合する事を説明できる資料や現場調査による安全確認が必要となるとしています。【横浜市建築局構造審査・検査(S造・RC造等)のQ&A】参照
ただ、ここでの「安全の確認」というのが 結構大変で、たとえば既存建築物の杭基礎で施工記録が残っていれば別ですが、その径や長さ、支持力をどのように検証するかとか、鉄骨部の溶接検査をした場合、現在の建築学会の超音波探傷試験の基準では、昔の溶接部分は不適合となる場合が多く、基準時(既存建物が建てられた時期)において法的適合性があつたかどうかの判断は、裁量権のある特定行政庁・建築主事に都度相談する必要があるなど、大阪府内建築行政連絡協議会のような事務範囲が実際的であり、指定確認検査機関に相談したり申請しても判断がつかず及び腰になる局面や二重(行政と確認検査機関)に相談しなければならないというのが現状です。
最近 某大手の指定確認検査機関の幹部の方との打合せの中でも、検査済証のない建物の増築・用途変更は、裁量権のある特定行政庁に申請を提出するのが、現在では賢明だろうという結論に至りました。
用途変更確認申請の場合は、増築の場合と異なり用途変更は建築基準法上では「建築行為」ではないとされているので、若干扱いは変わってきます。
この安全確認=法的適合調査を、当事務所では「建築基準法適合性調査」という名称にしています。
実は、許認可手続きとソリューション業務を結合した「建築基準法適合性調査」は、当事務所の最も得意な分野であり、他の建築事務所にはない特徴的な業務です。
この「建築基準法適合性調査」は、建築主が保有している建築確認申請図書(副本)、設計図面、竣工図、構造計算書や各種の書類、施工記録などの有無、増築方法などによつて申請の難易度や、調査にかかる経費が変わってきますので調査費用は物件毎算出となります。
調査をしても法適合性が確保されず、建築確認申請が提出できない時もあります。ですから、この調査は建築主は経費はかかるが申請は出せない場合もあるというリスクを伴います。
当事務所は、この分野の業務実績も豊富であり、特定行政庁や指定確認検査機関とのやりとりも様々なケースの経験を積んでいるので、幾つかの段階を設定して建築主の費用負担が極力少なくなるように考えています。
まずは、メール又は電話で ご相談いただければ迅速に対応いたします。
いずれにしても「ストックの時代」と言われつつ、既存建築物の活用を考えるにしても既存建築物の法的取扱いについてきちんと整理していかないと、無法状態や違反建築物は増え続けるだけと思います。