「境界確認の困難要因と実務対応」鈴木泰介・内野篤 共編

 建築物と敷地・敷地境界にまつわる問題は多い。

 既存建築物の敷地面積に関わることで こんな事が以前あつた。新築時の建築確認済証では建蔽率は適合していた。土地の登記簿謄本を取り寄せてみたところ確認済証に記載されている敷地面積より少なかった。謄本上の敷地面積なら建蔽率は不適合。

 そこで、とりあえず敷地の四辺をテープで実測してみたところ、新築時の確認申請副本の配置図に記載されている辺の数値と、ほぼ同じだった。既存建物があったので斜辺は実測できなかった。計画の初期段階で測量士や土地家屋調査士に依頼する以前の段階だったので、自分で実測。

 なんで敷地面積が違うんだろうと思案して、作図をしてみたところ 何という事はない、新築時の配置図の三斜法の底辺と高さを書き換えていることが分かった。多分 建蔽率がオーバーするので、敷地面積を増やして建築確認済証を取得したものであろう。つまり虚偽の建築確認申請である。

 増築時の建築確認申請の際に配置図の数値を修正した。建蔽率はどうしたのというと、準防火地域+準耐火構造で10%加算を利用し法適合化した。

 建築物の敷地は、不動産登記法上の筆に制約されることはなく、一筆の土地の一部を建物の敷地とすることもできるし、複数の筆を建物の敷地とすることもできる。

 また敷地境界線は、厳密に境界や所有権等の範囲を明示しているものではない。判例でも、隣地と境界不明などの紛争が生じていない場合、設計の受任者は一般的な範囲で敷地の調査・確定をする義務を負っていると考えられている。(東京地判昭50・2・20判時794・89)

 建築確認申請上の敷地面積は、依頼者からの指示等により敷地の現状を調査すれば足りるので、境界確定や厳密な測量をしていなくても良いのだが、悪意のある虚偽の図面に出くわすことは多々ある。

 敷地境界に関わることは土地家屋調査士に相談するば事足りるのだが、設計者も基本的な事は知っていた方が良い。

 別な事例で、敷地境界に関する問題が生じたので読んだ本。