「母とわたしの3日間」

 娘に会いたくて天国から帰ってきた母と母が恋しくて故郷に帰ってきた娘が織りなす物語。

 母と娘の愛という普遍的なテーマを感性豊かに、愛らしく描いている。この映画を見た人は、きっと大切な誰かに思いを馳せること間違いない。

 料理の果たす役割は偉大だ。韓国料理が食べたくなる。

 母娘の情愛のすれ違いが次第に通い合い、心温まる。観た後の気持ちがとても良い。

 良い映画を見つけた。

 死んだ父、母、兄、ペット達。話したい事、伝えておきたいことが沢山あるから3日間だけ戻ってきてほしい。と思ってしまう映画です。

 あっ。一人ずつ、一匹ずつ、あの世から訪ねてきてね。お願い。

「ソウルの春」

 1979年12月12日、韓国・ソウルで発生した粛軍クーデター(12.12 軍事反乱)を題材としており、全斗煥の反乱軍と鎮圧軍の9時間の攻防が一部フィクションを交えながら描かれている。

 あれから、まだ46年なので この頃の記憶は新しい。

 1979年10月26日、大韓民国(韓国)の朴正煕大統領が暗殺された10・26事件の直後から翌1980年5月17日の非常戒厳令拡大措置までの民主化ムードが漂った政治的過度期を「ソウルの春」と指す。チェコスロバキアの「プラハの春」に由来する言葉である。全斗煥の粛軍クーデターと光州事件の武力鎮圧で多くの血が流され挫折したが、1987年の6月民主抗争で民主化がすすみ現在に至っている。

 粛軍クーデター(12.12 軍事反乱)の実情は、その後 徹底的に隠蔽され続けたらしいが、映画は緊迫の場面の繰り返しで、画面に吸い込まれてしまう。

 昨今の韓国の政治状況を半世紀の時代の中で俯瞰すると、まだ民主化闘争は途上にあることが理解できる。

 

「九十歳。何がめでたい」

 昨年、映画館で封切中に見逃したので、DVD発売とともに購入し、深夜に一人で見た。

 最近は、一人で深夜に動画を見るのが日課みたいになっている。DVDだと気になる場面や、セリフを何度も見直したりも聞き直すことができて良い。

 さて、この映画は歯に衣着せぬ物言いで人気の直木賞作家・佐藤愛子のベストセラー・エッセイ集『九十歳。何がめでたい』『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』を原作に、90歳の草笛光子が、エネルギッシュかつチャーミングに等身大の佐藤愛子を熱演している。彼女を支える時代遅れの編集者・吉川真也役に唐沢寿明、愛子の娘・響子役に真矢ミキ、さらに豪華キャストとゲストが多数登場しているのが興味深い。

 映画『老後の資金がありません!』で老若男女の共感を呼んだ前田哲監督がメガホンをとり、笑いと共感の痛快エンターテイメントに仕上げている。

 浦和の埼玉会館・前川圀男設計の魅力的な空間 エスペラナード、共通ロビーがロケ地の一部としてて使われていた。

 とても楽しくて、じんわりくる映画。

「十一人の賊軍」

また映画を観てしまった。本を読むより映画館で映像を見ている方が目に負担が少ないように思う。もっとも音が少しうるさい。

戊辰戦争時、東北諸藩は奥羽越列藩同盟を結んで新政府軍に対抗したが、新発田藩(現在の新潟県新発田市)が新政府側に付く裏切り事件があった。新発田藩の日和見的対応がベースのチャンバラ集団抗争劇。

壊すための映画のセット。実にお金かかっているなと思う。

この映画の脚本は「日本侠客伝」「仁義なき戦い」両シリーズで、東映の黄金期を築いた脚本家の故・笠原和夫が残した原案を、60年後によみがえらせたものだという。

子供の頃、テレビが我が家に来る前は、家族みんなで夜に映画館に繰り出すのが行楽だった。よく見たな東映やくざ映画。懐かしい。その脚本を書いていた笠原和夫さんの本が原本ということで面白いかもと思っていた。

監督は白石和彌。映画は長く感じたと思ったら2時間35分だった。

それぞれの正義と組織の利害がぶつかり、葛藤が生まれるさまが見どころで自分の道理が通らない中で、各自が選択を迫られる。

長岡藩のように戦場にはならず、新発田城下は無傷で、城下と領民を守ったと言われるのだけど・・・。

人は何のために生き戦うのかが、今問われているのかも知れない。

「八犬伝」

仕事が忙しい忙しいと言いつつ映画館に行ってしまう。シニア割引だから安いしね。

月予定表に、見たい映画の封切り日を書いておくので、この映画も見に行く日を微調整中だった。そのせいで深夜や早朝に仕事をしなければならなくなるのだが・・・。

小学校高学年の頃、夢中になって読んでいた「南総里見八犬伝」(なんそうさとみはっけんでん)が、よもや映画化されるなんて思っていなかった。

何となく素人的には、映像化は難しいんではないかと思っていた。また今時、中世が舞台の怨霊退治ものなんて、どうなのかなと思っていた。けど期待はしていた。

「南総里見八犬伝」は、江戸時代後期に曲亭馬琴によって著わされた長編小説で後期読本となった。

文化11年(1814年)に刊行が開始され、28年をかけて天保13年(1842年)に完結した、全98巻、106冊の大作である。上田秋成の『雨月物語』などと並んで江戸時代の戯作文芸の代表作とされ、日本の長編伝奇小説の古典の一つである。この映画では、晩年は、ほとんど目が見えなかったという馬琴が描かれているのは良かった。

感想は、良くも無く、悪くも無く。というのが正直な感想。

豪華俳優陣だし、映像はきれいなんだけど、いまひとつ掘り下げて欲しいような。脚本に物足りなさを感じた。

「CIVIL WAR」

 たまたま魔がさして映画を観てしまった。外出先が映画館の近くで夜の18時過ぎ、この映画の上映時間が19時30分からというので、夕食を取り本屋に寄り、いざ映画館へ。

 前半は単調な滑り出しだった。

 正直、何を描きたかったのが良くわからん映画だった。戦場カメラマンの成長を描きたかったというのか。

 アメリカの風景がきれいだということはわかったが、戦火によって燃え盛る林の中を車が進む時、炎が宙に舞う情景を さも美しいと描き出す感覚が理解できない。

 連邦政府から離脱したテキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西武勢力」の勝利で、連邦政府に対する反乱を扇動したいのか。

 アメリカの政情は、国内を二分しており、もしかしたら内乱勃発の危険性を孕んでいるのかもしれないが、映画の中では特段の説明もないので何だかピンとこない。

ただただ人を殺しまくるアメリカ映画らしいといえばアメリカ映画らしい映画だった。

 お金をかけてるだろうなということは映像からもよくわかるが、場面場面に流される音楽がピンとこない。人が殺されている場面なのに、何となく陽気な曲に聞こえた。

 個人的には、稀に見る駄作。見るだけ時間の無駄。予告に惑わされてはいけない。

 平日の夜とはいえ観客はパラパラだった。

「拳銃と目玉焼」

2017年に公開された「ごはん」のDVDも探しているのだが、今のところ見つからない。

さて、この映画は現代的な犯罪に立ち向かう昭和のテレビヒーロー(仮面ライダー)を想起させる主人公が、見る者に懐かしくも熱い興奮を呼び起こさせる。見返りを求めない無償の愛。ロマンチックやな。

低予算だと思うけどクォリティーは高い。

安田純一監督は、京都市内で結婚式などのビデオ撮影業を営なんでいたが、中年になって「やりたい事をやらんとあかん」と一念発起して、自ら脚本や衣装の用意までを手がけ、3年間かけて本作品を低予算、少人数で作り上げた。完成後は宣伝配給を行う未来映画社も自ら立ち上げたというのだから、その心意気に感銘した。

「食うための仕事」だけでなく「本当にやりたい仕事」をしたい。人生の終焉が近づいてきた年齢になると余計そう思う。

市井の人々がモデルだ。気弱だけど心優しい中年の新聞配達人(主人公)。零細町工場の社長。喫茶店のママ。喫茶店のウェイトレス。タクシー運転手。だから親近感がわく。

出演している俳優さん達は、一般的には知られていないけど、それぞれベテランの俳優さんなのではないかと思う。

中々の秀作だ。

侍タイムスリッパ―

 この映画の存在をネットで知り、上映映画館を調べてたら、近くの映画館では17日、18日、19日の三日間だけ上映と知り、仕事も色々と押しているけど急遽チケットを予約して18日夜に観に行ってきた。

 朝から出かけ池袋で打合せ後に法務局新宿出張所、新宿区役所と行き戻って来た。何だか慌ただしい一日だった。昼は駅の立ち食い蕎麦。夜は神田しのだ寿司の折詰。夜は映画と充実しすぎる一日。

 この映画は、インディーズ映画(自主製作映画)であり、現在もネット上でしか宣伝されていないと思うけど、平日夜でも結構観客が入っていた。

 落雷によって幕末から現代にタイムスリップしてしまった会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)が、自らの剣の腕を頼りに、時代劇撮影所で斬られ役として第二の人生に向き合って歩む姿を描いている。

 この映画、わずか10名足らずのスタッフで製作したと書かれている。安田純一監督が私財(米農家でもある)を投げうって、自身も監督・脚本・編集はもちろん、1人11役以上をこなしながらの撮影という映画。脚本に共鳴した人達や東映京都撮影所等の協力を得て、お金のかかる時代劇を作ってしまったというのがすごいと思う。安田純一監督が自作映画の配給のために作ったという未来映画社。なんか生産から販売まで担う六次産業的、町工場的な感じがあって共感を覚える。

 そんなに有名ではないけれどベテラン揃いの俳優陣。会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)なんか、本当の「侍」って こんな感じだったんではないかと思えるぐらいだった。

 とにかく関与した人達の映画への愛。時代劇への愛。ものづくりへの愛が詰まった映画だ。

 自分も、もっともっと建築に愛をこめて向き合わなければならないと思った。

 公開劇場も1館から全国120館以上公開が決まり、メディアでも報道されるにつれ、映画の評判も上昇している。さらに口コミが広がり多くの人達に見てもらえると日本中に勇気が溢れるだろう。

 もう一回観に行ってもいいな。

「不思議の国の数学者」

 「オールド・ボーイ」「新しき世界」というハードな役が多かったチェ・ミンシクが主演を務め、脱北した天才数学者と挫折寸前の男子学生の心の交流を描いた人間ドラマ。

 学問と思想の自由を求めて脱北した天才数学者ハクソンは自分の正体を隠したまま、名門私立高校の夜間警備員として働いていた。無愛想なハクソンは「人民軍」と呼ばれ学生たちから避けられていたが、ある日、数学が苦手なジウから数学を教えてほしいと頼まれる。正解だけが全ての世の中に疑問を感じていたジウに問題を解く過程の大切さを教える中で、ハクソンの人生に思わぬ転機が訪れる。


 そんな異なる生い立ちを持つ師匠と弟子の触れ合いを通じて、学問の本来あるべき姿や学ぶことの意義とは何なのかが描かれていく。

 韓国も日本も受験戦争は異常だ。娘に聞いた話しだと、中高一貫の学校で「受験少年院」と揶揄されている学校もあるらしい。試験点数による徹底したクラス分け、男女共学なのに「恋愛禁止」とか、有名大学に進学し卒業すれば人生バラ色というような甘いものではない。コミュ力無し。好奇心無し。報連相無し。という俗にいう高学歴者は沢山いる。

ともかく、この映画。久しぶりに胸の熱くなるストーリーと爽やかな結末で後味がとても気持ち良い映画だった。

 音楽は、バッハの無伴奏チェロ組曲。この古典的な曲がチェロとピアノで交互に奏でられる。美しい数学と美しい音楽と人の触れ合いのハーモニー。

 あまり知られていない映画だけど秀作だと思う。