「イギリス人アナリストだからわかった日本の『強み』『弱み』」デービッド・アトキンソン著

日本文化を愛し、日本社会と日本経済の歪を鋭くシニカルに撃ってきた著者が四半世紀見続けた日本社会の「強み」と「弱み」を指摘している。

この本の第1刷が2015年6月なので、もう9年経つている。そこで、この本で使われているデータを幾つか調べてみた。

「購買力平価で見た一人当たりのGDP」だが、一人当たりの生産最終財やサービスの価値を購買力平価(PPP)を用いて算出したもので、簡単に言うと、国民一人当たりの生産性がどれだけ高いのか比較したもの。

この本で取り上げられた「IMF 2014年単位USドル」では、世界ランキング28位。2023年(最新)では世界ランキング37位とランクを下げている。

世界の一人当たりの購買力平価GDP(USドル)ランキング – 世界経済のネタ帳 (ecodb.net)

アウトバンド(海外旅行者)の消費額は、2014年で世界ランキング7位、2020年(最新)で世界ランキング14位。2000年には世界ランキング3位だったのだから、日本人は間違いなく貧しくなっているように思う。インバウンド・インバウンドと騒ぐけど、日本人が世界に旅立ち、色々なところで顰蹙(ひんしゅく)をかっていた時代を思い出す。

 著者は、日本人が生産性の低い民族だと指摘しているわけではなく、職人とエンジニアに見られる技術力と勤勉さを「強み」として評価しており「潜在能力に比べて低い」と指摘している。

 「強み」と「弱み」は、表裏一体。「能力があるにもかかわらず、生産性という結果が出ていないことは、まず考えられるのは、組織や働き方に何か重大なシステムエラーがあるという可能性です。」と指摘する。小西美術工芸社では、プロセスを重視しすぎていたことから数字という結果に重きを置くようにして経営改善が出来たという。

 私も数字という結果には、かなり重きを置いていて、建築の技術的な本より経済とか経営の本をこの10年多く読んできた。プロジェクト毎の原価管理、毎週経理ソフトへの入力を自分でやるようになって、弊社の適正な粗利率、諸物価の上昇率をリアルタイムで把握できるようになった。

 もっとも弊社はコアスタッフが少人数なので、毎日が株主総会。毎日が役員会議みたいなものだから、軌道修正も早い。

 まあ、オーナー社長は、なんでも勉強して、何でも自分でやらないとならない。