「不思議の国の数学者」

 「オールド・ボーイ」「新しき世界」というハードな役が多かったチェ・ミンシクが主演を務め、脱北した天才数学者と挫折寸前の男子学生の心の交流を描いた人間ドラマ。

 学問と思想の自由を求めて脱北した天才数学者ハクソンは自分の正体を隠したまま、名門私立高校の夜間警備員として働いていた。無愛想なハクソンは「人民軍」と呼ばれ学生たちから避けられていたが、ある日、数学が苦手なジウから数学を教えてほしいと頼まれる。正解だけが全ての世の中に疑問を感じていたジウに問題を解く過程の大切さを教える中で、ハクソンの人生に思わぬ転機が訪れる。


 そんな異なる生い立ちを持つ師匠と弟子の触れ合いを通じて、学問の本来あるべき姿や学ぶことの意義とは何なのかが描かれていく。

 韓国も日本も受験戦争は異常だ。娘に聞いた話しだと、中高一貫の学校で「受験少年院」と揶揄されている学校もあるらしい。試験点数による徹底したクラス分け、男女共学なのに「恋愛禁止」とか、有名大学に進学し卒業すれば人生バラ色というような甘いものではない。コミュ力無し。好奇心無し。報連相無し。という俗にいう高学歴者は沢山いる。

ともかく、この映画。久しぶりに胸の熱くなるストーリーと爽やかな結末で後味がとても気持ち良い映画だった。

 音楽は、バッハの無伴奏チェロ組曲。この古典的な曲がチェロとピアノで交互に奏でられる。美しい数学と美しい音楽と人の触れ合いのハーモニー。

 あまり知られていない映画だけど秀作だと思う。