既存コンクリートの構造体に新たに開口を作りたい場合。鉄筋を切断する為に開口補強が必要な場合が多々ある。今回、開口寸法・厚み等が同一条件で幾つかの工法を比較した。耐震壁で開口両面施工を前提にしている。
1、鋼板接着工法
鋼板接着工法は、構造物に鋼板をアンカーボルトで固定し、空隙にエポキシ樹脂を注入し、鋼板をコンクリートに接着する工法で、鋼板とコンクリート躯体の間にエポキシ樹脂を注入することで一体化を図り、構造物の耐力及び剛性の向上を指向している。
本件で検討した場合、必要な鋼板は割と大きく、1枚の鋼板の重量も重くなるため現場での取り扱いに難がある。又アンカーボルトを数多く穿孔させないとならない。しかも壁の両面に施行しなければならないので、他のテナントが可動中の建物で施工するには振動、騒音の発生があり採用が難しい。
2、CFラミネート工法
CFラミネート工法は、構造部材のコンクリート表面に、CFラミネートを粘性の高いエポキシ樹脂系接着剤を用いて貼り付ける補強方法です。
アンカーボルトを使用しないため振動、騒音は少なく。ラミネートが50mm幅の帯状の素材の為に施工現場での取り扱いは容易です。
ただし、欠損した鉄筋の剛性をラミネートの接着力で置換する為に、補強範囲が広く必要になり、開口部の周囲にそれだけの施工スペースが必要となるが、そのスペースが確保できるかが課題。
3、リダブル工法
この工法は、鋼板接着工法とCFラミネート工法を組み合わせた工法です。炭素繊維シート、炭素繊維プレート及び端部専用定着金物を用いて補強するものです。
アンカーボルト穿孔の騒音、前述の補強工法に比べて振動は少なくなり、補強範囲も狭いものとなります。
ただ、メーカーが炭素シート50m巻、接着剤18kg缶のみでしか販売しない為に、施工箇所が少ない場合は、少量の材料と短時間の施工時間で済む場合でも高上りのものとなります。
既存コンクリートの開口補強は、比較的大きな場合、例えばエレベーターシャフトの床開口の場合は、スラブをカットして鉄骨梁など補強するなどすればよいのだが、梁、壁、床で空調ダクトとか換気ダクトとかの新設スリーブを抜く場合の補強方法は、色々と検討の余地がある。