「すべての、白いものたちの」ハン・ガン

ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏(韓江)の「すべての、白いものたちの」を読んでみた。

名前さえ知らなかった韓国の文学者。

驚きの本だった。

まるで詩のように美しい言葉。

訳文がすぐれているからかもしれない。

余白がたまらない。

まるでフォトエッセーのようでもあるが、文庫版ではその良さは出ないのではないかと思った。

おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯。生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。

65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈りの物語。

この本を読んでいると、自分の境遇、過去の体験と自然に重ね合わせていた。

文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」が収録されている。