
今年、2025年7月に出版された安宅和人さんの著書「『風の谷』という希望・残すに値する未来をつくる」をずっと読んでいました。
7年にわたる検討を重ねたうえで書き下ろしたという1000頁を超える大作で、何度か読み返しているので、いまだ机の上にある本です。
本書で語られる「風の谷」とは、自然豊かな疎な空間を、都市に頼らずとも人が住み続けられる「もう一つの未来」として再構築する構想の呼び名です。都市を否定するものではなく、都市と自然、両方を生かす空間デザインの試みとして提案されます。
もともとは、宮崎駿監督による映画「風の谷のナウシカ」に描かれる心の原風景のような集落です。ナウシカの世界では、大半の土地が人間にとって有毒な「腐海」に覆われ、風の谷はその風上にあって常に新鮮な風が吹き込むため、わずかに人が住める場所として描かれています。
日本には恐らく1000以上ある「風の谷」をつくるポテンシャルを持っている「疎空間」があると考えられますが、疎空間を再構築するためのロングスパンの構想が描かれています。