「転落の歴史に何を見るか」齋藤健著

現在、ポスト岸田の一人として名前があがっている経済産業大臣・齋藤健氏の著作である。氏の官僚時代2002年3月にちくま新書として出版され、2011年に増補版として出版された。

齋藤健氏は、現在の自民党では数少なくなった「文人」である。いわゆる二世議員でもないし、東京生まれの東京育ちだから選挙区の衆議院千葉7区は出身地でもない。官僚から落下傘候補として政界入りし、今や経産大臣であり首相への道を歩んでいる。

首相になるぐらいの人は、このぐらいの本を自筆できるぐらいの「教養」は、あってしかるべきだが、「文人」は「首相にはなれない」というようなジンクスが自民党にはあるとも聞く。

1905年日露戦争で、奉天会戦でロシアを破った日本陸軍が、1939年のノモンハン事件では、ソ連軍により壊滅的な敗北を喫した。その間30数年の「転落」の軌跡を分析し、その原因を突き止めようとした労作である。

戦後瓦礫の中から再出発して30数年経過した1980年代前半には、日本の貿易黒字が世界の脅威となるほどの経済成長を成し遂げた日本。それから失われた30年を経て、日本は、今 転落の瀬戸際に立っているように思える。

政権の中心にいる齋藤健氏が「転落」の主人公にならない事を願っている。