「工手学校・日本の近代建築を支えた建築家の系譜・工学院大学」

明治、帝国大学総長であった渡邊洪基は、建築家の辰野金吾や土木を専門とする古市公威と共に、8つの学科を擁する「工手学校」を設立し日本の建築界に多くの卒業生を輩出しました。

 本書は、工学院大学建築学部同窓会誌『NICHE』に掲載された「輝かしき先輩たち」と題された連載を基に再編集したもので日本の近代建築を支えた工手学校の歩みを、13人の建築家の歩みを通して描かれています。
同窓生だからこの本を持ち上げるわけではなく、日本の近代建築史を学ぶ上での貴重な資料です。とりわけ私が興味深く読んだのは戦前の台湾の活動でした。「戦前期工手学校卒業生の台湾における活動-八坂志賀助を事例として」「工手学校卒業生と台湾総督府の土地調査事業」「飯田豊二と日本統治時代初期の台湾鉄道」「進藤熊之助と日本統治時代初期の台湾鉄道」の四編は、今は資料が少ない戦前の台湾について多くの教示を得ました。
それと 今亡き建築家・内井昭蔵さんの御父さん・内井進さんが同窓だ初めて知りました。
とても面白い本です。