検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-「契機」

「検査済証のない既存建築物は増築とか用途変更出来ないと思っていた」「検査済証がない建築物は工事中だと言われてた」「検査済証のない既存建築物の増築・用途変更が可能だという法的根拠は?」等、色々と質問を受ける。

私が思うに、「検査済証のない既存建築物の増築・用途変更」への手続き的な筋道が出来てきたのは、「全体計画認定に係るガイドライン」国土交通省住宅局長通知 (国住指第225号/平成17年6月1日当初制定、平成20年4月17日一部改正)からではないかと思う。

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/zentaikeikakunintei.pdf

 

 

全体計画認定に係るガイドライン

平成17年6月1日、「建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るための建築基準法等の一部を改正する法律」が施行され、既存不適格建築物に係る規制の合理化の観点から、建築基準法(以下「法」という。)第86条の8の規定により全体計画認定制度が創設されたところである。

全体計画認定制度の活用により、既存不適格建築物の安全性の向上を図るに当たっては、次の事項に留意するものとする。
第1 全体計画認定の対象等

1 全体計画認定の対象

全体計画認定制度は、法第3条第2項の規定により建築基準法令の規定の適用を受けない既存不適格建築物を、複数の工事に分けて段階的に建築基準法令の規定に適合させていく計画について、特定行政庁が認定を行う制度である。この認定制度は、当該計画が第2に示す全体計画認定の基準に適合する場合であれば、すべての既存不適格建築物について対象とすることができる。
2 既存不適格建築物であることの確認
特定行政庁は、建築物が既存不適格建築物であるかどうかについて判断する際には、当該建築物の確認済証(旧確認通知書)及び検査済証によることが望ましい。
確認済証又は検査済証がない場合は、定期調査報告書の内容等により当該建築物が着工当時の建築基準法令の規定に適合していたかどうかを判断し、既存不適格建築物であるかどうかについて確認することが望ましい。この場合において、当該建築物の新築時・増築等時の着工日については、登記書類、固定資産税の課税証明、航空写真、市町村の地図、電力会社等との契約等を参考にすることができる。
なお、特に疑義がある場合については、現地調査を行い判断することが望ましい。

もともと検査済証を取得していても、経年劣化があるし構造躯体の安全調査は必要だった。また、竣工後に構造躯体や防火区画などが改変されていることがある。

私は、業務で法適合性調査や遵法性調査の為に実際の既存建築物を見ることが多いが、検査済証があっても建物竣工後の改変はかなり多い。また構造劣化が激しい建物も目にする事がある。

検査済証がないからと言って、建築基準法の「手続き違反」であるが、即「実態的違反」とは言い切れないだろうと前々から思っていた。

ただ何らかの違反的要素があった為に、竣工時に工事完了検査をせず検査済証が未取得になった。実態的違反の確率が高いというのも事実である。

又役所の「計画通知」で建てられた既存建築物にも 検査済証未取得の既存建築物が一定程度あることが背景にあって、こういう救う道筋が必要だったのかもしない。役所の建物の場合は、事務処理が怠慢だったという要因が多いと聞いた事がある。

毎回、行政と沢山相談しながら業務にあたっている。

検査済証のない既存建築物の増築・用途変更の確認申請の道は、ようやく開き始めたといえるかもしれない。

 

「検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-「契機」」への2件のフィードバック

  1. はじめまして
    私は 不動産業者になりますが 実は質問があります。
    建築のことなので詳しく分からずスミマセンが

    検査済証がない物件でもやり方次第では検査済証が取れるという解釈でよろしいんでしょうか

    お返事お待ちしています。

    03-3718-3251   ㈲ウェーブセンチュリー 西川

  2. >西川様

    検査済証がない既存建築物でも、調査等を行い「法適合」が確認できれば、
    既存不適格建築物と扱われ、増築や用途変更が可能となります。

    ただ、増築や用途変更をするのではなく、
    あくまでも建物が竣工した時点に遡って検査済証の発行をしてもらいたい
    という希望ならば、調査しないとわかりませんが中々難しいと思います。

    行政に相談してみてください。

    寺田

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