「縁食論・孤食と共食のあいだ」藤原辰史著

著者の藤原辰史さんは、「ナチスのキツチン」、「ナチスドイツの有機農業」、「分解の哲学」等を書かれており現在は京都大学で農業史、食の思想史を教えている。1976年生まれとあるから自分の子供達の世代だが、私が個人的に期待する将来有望の研究者。

どちらかと言うと最近は農業・食・地域経済に興味があって、藤原さんの本も先に読み始めたのは「【決定版】ナチスのキツチン」なのだが、藤原さんの本は分厚い上に考える事が多すぎて、まだ読み切った本が多くない。何しろこちらも好奇心が旺盛なので、あっちの本、こっちの本と積読が増えていく。

ひとりで食べることを望まないのに、ひとりで食べるのは寂しい。連れ合いに先立たれたら独りの食事は「エサ」になってしまうだろう。独居老人はどう生きていくべきなのだろうか。そんなことを考える今日この頃

今では「子ども食堂」が全国で急速に広がっていると聞く。「NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」によると2016年5月の段階で全国に319カ所あった子ども食堂は、2019年6月には3718カ所にまで急激に増えている。3年間で11倍を超える。これは全国の児童館数4000件にほぼ近いというのは驚きだ。

子ども食堂は貧困家庭の子どものためという目的だけでなく地域の交流活性化という二本足で立つ実践だという。

子どもを取り巻く環境は悪化の一方だ。日本の15歳未満人口比率は世界194か国中193位と世界ワースト2位(2020年)。更に昨年2021年の出生数は過去最少。子育て公的支援はイギリスやフランスの半分。教育への公的支出は世界181か国中135位(2019年)。OECDで賃下げは日本だけ、非正規雇用4割弱で子育てが困難になっている。親が貧しくなっていき、そのしわ寄せが子供達に押し寄せている。爺婆が子供世代を助けてやろうと思うのだが、老人を巡る経済的環境も段々と悪化しており その余裕は少なくなってきている。

自己責任論が強まりすぎると、みんな自分を守るのに必死になるから、結果他人に気が遣えなくなる。そうやって殺伐とした社会となり、色々なモラルが崩壊する。大事なのは「お互い様」の精神なのだがと思うのだが。

現代社会は貧困を拡大し、人を孤独にした。現在は無縁社会。人間と人間のつながり、人間と生命・自然、環境のつながりがブチブチ切れている。この無縁社会を再び結ぶには食が第一。食は両方をつなげることができる。それが「縁食」だ。「孤食」のように孤独ではなく、家族等とともに食べる「共食」でもなく、家族のだんらんほど押し付けがましくもない緩やかな連帯、食堂でふと隣り合った人との縁や、「こども食堂」で生まれた縁を大切にする「縁食」を広げ、無縁社会をなくしていきたいと私も思う。

消防水利

都市計画法の開発許可の場合、消防との都計法32条協議で所轄消防署・警防課と事前の打ち合せが必要となります。建築の設計者は建物が防火対象物でも共同住宅等の一般的な案件は消防署に打合わせに行かない。ちょつと特殊な建物とか複合的な建物とか、法令集などでは取扱いに迷う時に消防署の予防課に行きます。しかし消防水利は担当が警防課です。

消防水利とは消防活動を行う際の水利施設の事です。万が一開発箇所で火災が発生した時に有効な消火活動ができるかどうか。これは消火栓からの位置と消防用活動空地があるかどうかで判断されます。

消火栓の位置から120m(場所によっては100m)の範囲以内に開発する場所が入っているかで判断されます。消火栓の位置は、水道局で取得できる水道の配管図に記載されているものを見るか、現地で実際に見て確認します。また消防署の警防課に行けば確認できます。

消火栓は口径によつては消防水利上有効ではないと判断される場合も有り、こればかりは警防課に出向かないとわからない事項です。

既設の消火栓がない場合は、新たに消火栓か防火水槽を開発者負担で設置しなければなりません。

とある開発行為(都内特別区まちづくり条例)をともなう建物の設計で、開発行為も建物の設計監理契約に含めているのに関わらず、こうした役所との打合せは基本設計に含まれておらず、協議は実施設計段階の業務であると主張した建築士がいました。

通常の建築士の感覚では建物の基本設計と同時並行的に開発行為に係る関係役所との打合せ協議をするものです。そうでないと「与条件の整理」にあたる基本設計の業務が完結できません。あとから防火水槽必要です。費用は開発者(建築主)負担ですなどと言ったら建築主から怒られますもの。建物地下に防火水槽を設置する場合は構造にも関わってきますし、基本設計段階で潰しておかなければ事項のひとつです。

まあ世の中 色々な建築士がいて驚きます。

尚、開発敷地が20,000㎡以上かつ、建物が1階建て又は2階建てでその他の建物で5,000㎡以上、準耐火で10,000㎡、耐火で15,000㎡以上の場合には、消防用水の設置が必要となります。

消防用水と消防水利は いずれも消防隊の活動に供するものですが、消防用用水が当該防火対象物に義務付けられているのに対して、消防水利は周辺地区における消火活動を目的としています。消防水利と消防用水の兼用は可能です。

ファミコン

実に30数年振りに自分用のゲームを買った「パワフルプロ野球2022」。小学生の孫娘がこれなら爺ちゃんと遊んでくれるという。そういえばゴルフゲームも持つていた気がする。確か孫娘が幼稚園児だった頃やって、ほとんどスコアがイーブンだったので戦意喪失して放置してある。まあ目は疲れるが、たまにゲームをするのはボケ防止には効果がありそうだ。

小学校低学年の孫娘だからといって油断は出来ない。何しろ歩き始めてまもなくタブレットに触っていた世代であり、ゲームで分からない事があったらユーチューブで検索して次にはレベルアップしてくる。少し先行して練習していても追いつかれて負かされれるのは時間の問題。

思い起こせばファミコンが出始めた頃は野球ゲーム、カーレースゲーム、サッカーゲームにはまり、深夜遅くまでゲームをしていたが、やがて全てのゲームで息子に負けるようになりファミンコンから撤退した。

我が家はスイッチが2台。1台はメモリが一杯で新規ソフトは使用禁止。もう一台はゲームオタクの婆ちゃんか、誰かが使っていて私になかなか順番が来ない。孫娘に負けないように密かに練習しておかないとならないのだが、三台目の自分専用のスイッチを買おうか買うまいか思案中。

「開発許可申請手続きのことがよくわかる本」中園雅彦著

福岡で開発許可・農地転用許可を得意分野として活動されている行政書士の中園雅彦さんが書かれ2021年に出版された本。

開発許可は都市計画法によって規定されているが、その申請の為には農地法、建築基準法、道路法、河川法、文化財保護法、消防法、国土利用計画法、景観法等多種多様な法律が関わってきます。これら多種多様の法律を網羅して開発許可との関係をわかりやすい解説した本は中々無かった。

各都道府県で出している「開発行為の手引き」という本があるのだが、専門的でどちらかと言うと土木技術者向けであり、関連法についてはあまり詳しく書かれていない。

1ha未満の開発許可は、設計技術者の資格を問われないので、土木設計・測量事務所、開発許可を専門とする行政書士、一部の建築士事務所等が業務としている。

かくいう私も若い時、ロードサイド店舗の開発許可申請をやっていた事があった。最初は手探りだったが、慣れてくると測量や登記関係は地元の測量事務所や土地家屋調査士に依頼するが、あとの手続き、擁壁の設計、流量計算等も含めて全て行っていた。市街化調整区域に沿道サービス業としてコンビニの開発許可を取得する業務も数多かった。こうしてみると昔から他の人が面倒くさがる仕事を生業としてきたのかも知れない。昨今では、こうした手続き関係まで自分で行ったことがある建築士はあまりいないのか、この半年余り、市街地化調整区域、敷地面積30,000㎡、新設工場計画延べ面積10,000㎡のプロジェクトに法務支援で関わってきた。

市街化調整区域だが自治体が誘致した土地なのと、土地購入を取りまとめている会社が業務実績の豊富な土木設計・測量会社に開発許可を依頼していたので開発許可申請そのものは心配なかった。ただ建築工事が設計・施工一括発注プロポーザルになり、設計者不在のまま行政の事前協議を進めなければならなかったので、建築主側で建築と開発許可との調整を主業務としていた。

開発許可と建築設計との間で調整しなければならない事は、ひとつは排水。公共下水道が前面道路に敷設されているが敷地は流域外なので開発負担金が発生する。また県の許可が必要だつた。一方合併浄化槽も可能で工場・作業場なので浄化槽の処理対象人員は意外と少ない。その他敷地の排水勾配等の関係もあり中々判断が難しい。

また雨水貯留施設も都心では建物の地下に基礎を利用して設置する事が多いが、敷地に余裕があるので貯留池を作った方が良いのか、常にコストと他の法令を見越して選択していく必要があり、中々難しい判断を要した。

この著者は、主として住宅宅地造成の開発許可が多い様だし、行政書士という職種柄どちらかと言うと事務手続き紹介的なガイドブックになっていて、私からすると市街地調整区域の農地転用や派生して工場立地法、土壌汚染防止法等にも触れて欲しかったが、そういうことは自分で書くしかないかなとも思った。

ともかく多種多様の法律を網羅して開発許可との関係をわかりやすい解説した本は見当たらなかったので、開発許可を総合的に把握したい方にはお勧めの本である。

「建築構造設計指針2019」東京都建築構造行政連絡会監修

「建築構造設計指針2019」(通称オレンジ本)は、2010年以来9年振りの改定本。

 構造専門事務所ではないと普通はあまり購入しない本です。(高価だし・・)

 この本の第11章「構造審査要領」や第12章「東京の地域特性を考慮したは建築構造における建築審査の要領」は都内行政庁や指定確認検査機関が構造審査をする上での法解釈及び運用の統一性を確保し、建築審査の業務円滑化の為に、東京都建築構造行政連絡会で執筆を担当しています。私はとりわけ第11章の「構造審査要領」は既存建築物を扱う設計者(構造設計者のみならず意匠系ゼネラリスト)は必読の部分だと思います。

 一般社団法人 東京都建築士事務所協会では「既存建築物活用に係る建築基準法令とその解説(案)」の発行に向けて以前より準備を進めていましたが、2021年度法制委員会の下にワーキンググループとして「リノベーション専門委員会(法規集編纂)」を立ち上げ、私は誘われてその委員の末席に加わっており、2023年出版に向けて毎月1回2時間~2時間半の委員会で熱い議論が交わされています。

 私は「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(以下「ガイドライン調査」)の章の執筆をしています。

 現在、ほぼ全部の章の初稿が出稿されており、ブラッシュアップ中です。私もこの本を参考にしているところがあるので読み直しているところです。

 ガイドライン調査は一様ではなく国交省届出機関は、その方法論で幾つかに類型化することができます。又各社色々な制限事項を設定していますので調査機関を選択する時には注意が必要です。まだ詳しい執筆内容は書けませんが、色々と新しい取り組みを交えながら、設計者の視点で解説しています。

 

大垣の水辺空間 -2

途中で見つけた桝屋さん

まだ営業前だった

水門川沿いを南下する

美登鯉橋

アニメ「聲の形」では、「いつもの場所」として物語全体を通して何度も登場するとても重要な場所です。将也や硝子が鯉にエサをあげているシーン、仲間たちとの集合場所以外にもさまざまなシーンで登場します。

まあ、ミニ聖地巡礼をしてきたのでありました。

美登鯉橋の西側水路

虹の橋方面を見る

「手づくりのアジール・「土着の知」が生まれるところ」青木真兵著

奈良県の東吉野村で自宅兼・人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」を主宰する著者が、志を同じくする若手研究者との対談を通じて「土着の知性」の可能性を考察した記録。

この本の副題に「手づくり」と「アジール」という2つのキーワードが記されている。

「手づくり」現代ではあらゆるものが商品化され、我々は選択肢の中から探し求めているだけ。「手づくり」は選択肢の檻からの脱出方法につながると書く。

「アジール」とは古来より世界各地に存在した「時の権力が適用しない場」。「聖域」「自由領域」「避難所」「無縁所」などとも呼ばれる特殊なエリアのことを意味する。ギリシア語の「ἄσυλον(侵すことのできない、神聖な場所の意)」を語源とするとの事。

日本の民俗学では、アジールの定義を「世俗の権力から独立して、社会的な避難所としての特権を確保あるいは保証される場所」(日本民俗学辞典)とある。

著者は「地に足をつけることの」ことの必要性を問い続ける。現代が「先行きの見えない時代」だからと。

民俗学者の柳田國男は「都市と農村」の中で、都市と農村の原理の違いを生産者と消費者の違いに求めている。柳田圀男が生きていた明治から昭和前期には、まだ都市と農村という二つの原理が機能していたが、現代はどうなんだろう。

ウイーン生まれの思想家 イヴァン・イリイチは「都市と農村」という二つの原理は、独立したものではなく「両義的な対照的補完性をなすもの」(「ジェンダー 女と男の世界」)と、互いに独立したものではなく互いに補完しあって、どっちが欠けても世界は成り立たないと書く。

二つの原理がある世界を成立させるために不可欠だったのが、お互いをつなぐ「回路」で、その存在のひとつを「異人」と称す。つまり都市と農村をつなぐ異人は「共同体が外部に向けて開いた窓であり、扉」(赤坂憲雄)であると。

著者は、自分にとっては年齢的には子供の世代なのだが、よく勉強され行動されている。期待の土着人類学研究者。

今、自分は都市と地方(農魚山村)を心と身体が行き来する漂泊の民状態。

「巡礼ビジネス」岡本健著

現在近畿大学で教えている岡本健さんが書かれ2018年に出版された本。岡本さんと言えばアニメやマンガ、ゲーム、映画、小説などを動機とした旅行や観光・地域振興(コンテンツツーリズム)、ゾンビ関連 、サブカルチャー、ポップカルチャーが研究分野というオタクの中のオタク。

この本は2018年に出版されたこともありインバウンド真っ盛りに出された本。インバウンドは2019年に3100万人を超えたが、コロナで2020年に400万人まで減り、-84%という状態になった。多分2021年のデーターは不明だが2022年と続いて低調なのは確かだろう。

書棚から出してきて再読してみると、やっぱりコンテンツツーリズムは重要な地域振興の要素だなと思う。インバウンドに期待できない今後の観光・地域振興においては、コンテンツ・ツーリズムについて今一度再考しなければならないと思った。

出張等で地方を訪れると思いがけなくアニメなどの聖地に出会う事がある。昨年訪れた茨城県の大洗は「ガールズパンツアー」の聖地ということだった。岐阜県大垣市もアニメ「聲の形」の聖地だったりする。

日常生活の中での「いつもの場所」がアニメ化等で観光資産に化けてしまう事は驚きだ。

「見ようとしなければ見ない風景」の中に歴史があり、地域の資産を再評価する機会になる。建築の寿命はあまりにも短いけれども、それでも少しは貢献できる。

大垣八幡神社 -3

大垣市は「水の都」だという。しかし日本全国に「水の都」というのは沢山ある。国交省の水の郷百選に選ばれている都市は中部地方だけでも岐阜県の郡上八幡、静岡県の三島市、天竜市等がある。

大垣で水辺空間として興味深かったのは大垣八幡神社東側の水路だけだった。

そういえば東京だって水都だな。

それで思い出したのが陣内秀信さんの「東京の空間人類学」(1985年刊)。東京の山の手と下町の「水の都市」の考察が新鮮だった。昔からデザインというより建築史への関心が強かった。

今度はフッ素樹脂鋼板がない。

これまで普及していた「フッ素塗膜の屋根」と「フッ素塗膜の金属サイディング」は、将来にわたり供給されなくなる恐れがあるそうです。フッ素塗膜は順次、ポリエステル塗膜へ切り替わる見通しとか。フッ素系塗膜に比べてポリエステル塗膜は対候性が大夫落ちると聞いていたが・・・。

供給事情は、昨今の木材(ウッドショック)や住設の問題と全く異なり、フッ素を生産する過程で温室効果ガスのフロンが発生しますが、地球温暖化抑制のため、元々、フッ素の生産量は世界的に制限されていたようです。

一方、フッ素は鋼板だけではなく、半導体関連部材にも用いられています。

コロナワクチンの普及による経済が活性化されたこと、電気自動車(EV車)などで用いる半導体の需要が急激に高まったことで、フッ素の奪い合いが発生しています。

半導体の需要はコロナ感染症とは関係がなく、さらに高まり続けます。

また、フッ素の原材料が採掘できる主な生産国は中国であり、中国のEV車の普及に伴い、フッ素の入手がわが国では困難な状況になります。

そのため、建築業界で用いられているフッ素は今後、ほぼ供給されなくなる見通しだとの事。

金属サイディングとしては有名なイソバンド・表面が鋼板で新材がポリイソシアヌレートフォームとかロックウールで外壁耐火30分(非耐力壁・延焼外)で、工場とか倉庫の外壁材として重宝していたのが、そのうちフッ素系塗装のものは受注中止になってポリエステル塗装のみになるとの事。高層ビルに使用していたフッ素樹脂鋼板等も今後は使えないようだ。

首都圏は 大型物流施設の建設ばかり目立つ昨今。買占めかと思っていたらそういう事でもなさそうだ。

養老天命反転地 -1

大垣から養老鉄道に乗って養老で降車

写真は2021年11月中旬ですが晴れ渡ってとても気持ちの良い日でした

養老天命反転地記念館

十二単の羽衣を着た天女が空から舞い降りたかのような色鮮やかなイメージなんだそうだ。ともかく平らな床がない。トイレも傾いたまましなければならない。

荒川修作+マドリン・ギンズ

全身でアートを感じる体験型アート空間らしいが爺婆には、ちと大変だった