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投稿者: tera
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博多出張 ING
建築士事務所登録数は減少の一途
先日届いた日事連(一般社団法人・日本建築士事務所協会連合会)の2017・2月を読んでいたら、国土交通省から発表された建築士・建築士事務所の登録数が掲載されていました。
平成28年度上半期末一級建築士の登録数は、363,530人という総数のみ公表されています。一級建築士は年々総数は増えていくのですが、現在65歳以上で概ね15万台の登録番号ですから、現役の実数は20万人程度であまり変化はないのかもしれません。都道府県別、年齢別の登録状況が発表されれば、もっと詳しく動向がわかるのですが。
一方、一級建築士事務所の登録数は、平成28年度上半期末で個人・法人合計で78,334事務所で、平成27年度上半期の79,062事務所から728事務所の減少と記載されています。
建築士事務所の登録数は平成12年度をピークに減少の一途をたどっています。
この傾向をどう考えるかというのは諸論あるのですが、建築経済が縮小している。独立開業が難しくなっている・・・・というところが一般的でしょうか。
日事連加盟数が14,861事務所で、全登録事務所の14.1%しか加入していない。東京は加入率10.1%だそうです。
他の「士」業とは異なり任意加入だからか、あるいは存在意義が低いのか。
そう言えば建築士事務所協会に入ってから営業電話とカタログ、郵便物が多くなった。名簿が独り歩きするのは困ったものです。
都市計画法と建築基準法
都市計画法と建築基準法との関係で問題になることが多いのが、都市計画法第29条(開発行為の許可)、都市計画法第37条(建築制限)、と建築基準法の建築確認申請の本受付時期、確認決済時期、工事完了済証交付時期(使用開始時期)等についてです。
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■都市計画法第37条 通称:制限解除、公告前申請
A 建築確認申請は可能ですが、確認済証の交付を受けても都市計画法上は建築工事に着手できません。なお、建築工事を同時に行わなければ開発行為が適切に行えない正当な理由がある場合には、建築制限の解除願を承認しています。
都市計画法第29条による開発行為をする必要がある場合、安易に都市計画法第37条第1項による制限解除ができるものとして工程を組んではいけません。
制限解除の詳細規定は、行政庁による「開発行為の手引き」「開発許可制度の解説」等の中に詳細に記載されています。
例えば埼玉県の「開発許可制度の解説」では「審査基準」を下記のように記載しています。
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審査基準
開発許可を受けた開発区域内の土地において、法第36条第3項に規定する工事完了の公告前に建築物の建築又は特定工作物の建設を支障ないと認めるのは、次の各号の全てに該当するときとする。
1 建築等しようとする建築物等は、当該開発許可に係る予定建築物等であること。
2 工事工程上、開発行為に関する工事の完了前に予定建築物等の建築等を行う必要があると認められること。
3 開発区域が現地において明確にされていること。
4 開発行為又は開発行為に関する工事により設置される公共施設の工事がほぼ完了していること。
5 建築等工事の完了に先行して開発行為に関する工事が完了する見込みであること。
6 造成の規模や地盤の性質に鑑み、開発行為と建築行為を同時に施工しても開発区域及びその周辺の安全性に支障をきたさないこと。
〈承認に付する条件〉
本条の承認は開発工事の工程上、開発行為と建築行為を同時に行うことが合理的と認められるときに、やむを得ないものとして例外的に認められるものです。完了検査を受けずに当該区域を建築物等の敷地として使用することを認めるものではあり
ませんから、原則として工事完了公告前に建築物等を使用することは認められません。このため、法第37条第1号の承認に際しては、原則として次の条件を付します。
条件 工事完了公告前に承認に係る建築物等を使用しないこと。
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また、制限解除を承認すると都市計画法の工事完了検査を飛ばす業者も多い為、あまり建築制限解除を積極的に承認しない傾向の行政もあります。
一方小規模の場合は申請を不要としている場合もあります。つくば市では、開発面積が1000㎡未満の小規模開発行為で自己の用に供する開発行為は、一括で建築制限解除したものとみなし個別の申請は不要としています。
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■建築基準法の接道基準は満たしているか
次に問題になることが多いのは、建築基準法第43条の「建築物の敷地が道路に2m以上接しなければならない」の規定です。特殊建築物の場合は、条例で定めれた接道長さの規定によります。
一敷地の開発区域で既存の道路に接道しているような場合には問題になりません。
開発区域を幾つかの区画に分け、開発行為による道路をこれから造成する場合は、開発行為による道路(建築基準法第42条第1項第ニ号道路)が実態としては存在していないので、建築基準法第43条は満たしていないことになります。よって建築制限解除の承認を受けていても建築確認申請を本受付することができないことになります。
いくら開発許可申請で「道路」が設計上担保されていても、設計通り工事されているか検査してみないとわかりませんから、実態として接道を満たしているかは大事だと思います。
これを解決するために建築基準法第43条第1項ただし書を活用すべきと指導するところもありますが、住宅ならば包括同意基準がありますが、一般的には建築審査会の同意が必要となりますので、時間も経費もかかり屋上屋を重ねるがごときのようにも思えます。
以上のように都市計画法では良くても建築基準法では不都合な場合もありますから、開発行為が絡むプロジェクトでは調整が必要となります。
自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」-2
自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」に参加してきました。
現在、耐震対策工事が進められている重要文化財・自由学園明日館・講堂の修理現場の見学ということで以前から楽しみにしていました。
「講堂」は、1927年(昭和2年)に建てられ、昭和25年頃屋根葺替、昭和37年に部分修理、平成元年に屋根葺替・部分修理、平成13年に設備改修が行われ、平成26年11月から平成29年7月にかけて屋根葺替、耐震補強工事等が行われています。
築90年の建物が今まで比較的良好な状態で利用されてきたのは、この屋根の葺替を始めとした幾たびかの修繕工事がなされてきたからだと思います。
修理工事中の写真は撮影させていただきましたが、インターネットでは公表しないという約束になっていますので、工事看板だけ掲載しておきます。
設計監理は文建協、施工は大成建設東京支店で、見学では文建協の田村さん、大成建設の方から詳細な説明を受けました。
設計者の遠藤新は、自分が設計する講堂の構造の特徴・空間デザインの特徴を「三枚おろし」に例えて論じています。従来の講堂建築は、構造を梁行(輪切り)で設計されていたが、風や地震で倒壊することが多く椀木や控柱で補強するよう法規で決められていたそうです。
この明日館講堂は、市街地建築物法第14条による「特殊建築物」だった思われますが、その第14条は、「主務大臣ハ學校、集會場、劇場、旅館、工場、倉庫、病院、市場、屠場、火葬場 其ノ他命令ヲ以テ指定スル特殊建築物ノ位置、構造、設備又ハ敷地に關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得 」とあり「必要な規定を設けることができる」とありますが、勉強不足で まだその規定は探し出せていません。
明日館講堂は、平面を桁行方向に三分割し、さらに前後に空間を設けて合わせて九つのゾーンを連続的でありながら、それぞれのゾーンにふさわしい機能を持たせています。遠藤新の空間デザイン論は、中々優れてると思いました。
この講堂は、耐震診断の結果「大規模な地震の際には倒壊の危険がある建物」であること、解体調査の結果、講堂の外壁が外側に倒れ、屋根の棟は中央を最大に垂れ下がっている状態だったそうです。その事は、既存の構造体が屋根の重量を完全には支え切っていなかった事を表しています。
補強工事に際しては、遠藤新の思想を残しつつ「基礎と軸組の健全化」「内在骨格の強化」「壁面・床面・屋根面の補強」の三点を軸に行われたと説明を受けました。
すでに屋根の葺き替えは完了し、新しい銅板屋根が黄金色に輝いていました。
川越
行政との打合せの為に川越市に行きました。
終わった後、少し時間があったので川越駅西口から巡回バスに乗ってみました。今日からまた寒くなるという予報でしたが、今日も日中の陽射しは暖かったですね。
氷川神社で下車しお参りしてきました。当然ながら御朱印をいただいてきました。
御朱印も少しスタンプラリー化してきていますが、そのうちまとめて聖地巡礼をしてきたいと考えています。
バスの中から川越市立美術館。
久しぶりに川越に来ましたが、なんか活気がありました。駅ビルに星乃珈琲店があり、池袋でも東武ホープセンターにしかないのにと思ったりして軽い嫉妬(笑)。随分と商業施設が充実してきたように思います。
西武・東武・JRと三路線の準ターミナル駅で、新宿・池袋・大宮等に近いということで近年住宅価格が上がっていると聞きました。
道が平坦で自転車で移動するには便利、意外とバス路線が充実しているように思えました。
しかし ここ川越でも、蔵の街には騒がしい中国人観光客が押しかけていました。
合間の時間で街を歩くのでなく、もっと ゆつたりと街を歩きたいものです。
エキスパンションジョイントのクリアランス
既存建物にエキスパンションジョイントを設置して増築する建物で、エキスパンションジョイントのクリアランス(有効な隙間)が問題になりました。
隙間(クリアランス)は設計者が変位量の大きさにより決定します。
参考文献としては、ちょっと古いですが日本建築センター発行の「構造計算指針・同解説1991年版」(現在は、「2015年建築物の構造関係技術基準解説書」に統合)に「相互の建築物の一次設計用地震力(建築基準法施行令第88条第1項に規定する地震力)による変形量の和の2倍程度以上を推奨」と記載されています。
また1995年10月「阪神・淡路大震災における建築物の被害状況を踏まえた建築物耐震基準・設計の解説」では、エキスパンションジョイントのクリアランスは、大地震時にも建物相互が衝突しないように、構造計算により算出し設定することが望ましい」と記載されています。
施行令第82条の2【層間変形角】には、「建築物の地上部分については、第88条第1項に規定する地震力によって各階の高さに対する割合が1/200(地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって特定建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合にあっては、1/120)以内であることを確かめなければならない」とあります。
なので上記による略算式としては、クリアランス=エキスパンションジョイントの地上高さ×1/200×2(双方の建物が地震で変形する為)×2倍となります。
10mだと 10000/100×2=200mm
20mだと 20000/100×2=400mm
30mだと 30000/100×2=600mm
という結果になります。略算式だと3階建て程度で200mmのクリアランスが必要ということになります。
問題になった案件は構造計算ルート1-1で、軒高9m以下鉄骨造3階の増築です。
層間変形角の計算は不要なのですが、X・Y方向の層間変形角を算出したところX方向で1/500、Y方向で1/1400でした。パラペット高さを9600mmとしてX方向の変位量は19.2mm、Y方向の変位量は6.9mmとなります。以上により一般的なクリアランスである50mmに設定しました。
既存建物に増築する場合のエキスパンションジョイントのクリアランスは、低層の建物は略算式によらず 実際の変位量、層間変形角から判断して決定した方が良いと思います。
「聖地巡礼 リターンズ 長崎、隠れキリシタンの里へ」内田樹×釈徹宗
この正月に読んだ、内田樹×釈徹宗の「聖地巡礼 リターンズ~長崎、隠れキリシタンの里へ」聖地巡礼シリーズの第三弾です。
「聖地」は、幾つかの類型に分けることができると書かれています。
1、その場が本来的に持つ特性による聖地
2、物語(ストーリー)による聖地
3、個人の経験や思い入れで成り立つ聖地
この第三弾の聖地巡礼で取り上げているキリシタンの足跡は、どちらかというと「物語による聖地」の傾向にあります。この地で繰りひろがれたキリシタンの関係の事件や逸話は、強い宗教性を帯びていて、とても重く心にのしかかります。
「信徒発見」(禁教後250年間信徒が潜伏)や「二十六聖人殉教」は、世界のカトリック教会でも歴史上名高い事件です。日本国内での評価以上にカトリックの中では評価が高いと聞いています。
私にとって長崎は どちらかと言うと避けていた土地です。
それは、いま映画が放映されている「沈黙-サイレンス-」の原作である遠藤周作の「沈黙」を若い時に読んだことに起因するかもしれません。読後は気がめいって、出来れば避けていたかったと思ったものでした。
1/21から放映された映画も、多分クオリティーが高くて良い作品だとは思いますが、面白いという性格の映画ではないのではないかと予想しています。
東京都建築士事務所協会のコア東京2017.1月号に、研修旅行「世界遺産と長崎の教会群を見る」の記事が掲載されていました。
長崎の教会建築は、様式は多様で、構造も木造、石造、鉄筋コンクリート造等多種にわたっていますが、建築の要素だけ取り出しても深く理解できない土地かと思います。
釈徹宗さんが、聖地を訪ね場合は、ロゴス、パトス、エトス(信仰や宗教体系が生み出した土地の生活様式や習慣)、トポス(場が持つ力)のこの四つをバランスよく感じ取ることが聖地巡礼の基本姿勢と書かれています。
他の事象から切り離し、建築・建築技術だけみることは 避けなければならないと再認識した次第です。
1/26 テレビ東京・カンブリア宮殿 村上龍×やまと診療所 安井佑
1月26日にテレビ東京「カンブリア宮殿 村上龍×経済人」に、弊社が昨年 新規診療所プロジェクトに携わった医療法人社団 焔 やまと診療所の安井佑院長が出演されます。
「自宅で安心して最期を…板橋発!若き在宅医の挑戦」
「土浦亀城と白い家」田中厚子著
この正月から「土浦亀城と白い家」田中厚子著、鹿島出版会刊を読んでいました。
「白い家」に代表されるているのは、現存する昭和10年竣工の土浦亀城と信子の建築家夫妻の自邸です。
土浦亀城邸は東京都有形文化財、docomomo20に選ばれていますが、傑作ですね、今見ても見劣りしない とても美しいデザインの住宅です。
戦前の木造住宅の構法、使用材料等もわかり、建築病理学的にも一級品の資料と言えます。
この本では、この土浦亀城邸と、土浦夫妻の生涯を丹念な文献調査や関係者からの聞き取りをもとに描き切っています。
歴史的な本を書くなら、縦糸は関係文献を余すことなく読み込み、横糸は出来るだけその時代の関係者から聞き取り調査をする。縦糸と横糸が折り重なって布となる。ちょつと中島みゆきの歌「糸」のようでもありますが、それが歴史的な本に厚みを持たせるのだと思います。
土浦夫妻はライトのもとで夫妻で師事し、日本で国際様式のデザインで建築を数多く作っていますが、その個人の歴史を描く中で、戦前のエリート知識人の暮らしぶりや、タリアセンで出会ったヴェルナー・モーザー、アントン・フェラー、リチャード・ノイトラ等の交流や戦前戦後の歴史が浮かび上がってきます。
近代建築史を学ぶ上では、必読的な本だと思います。
法第77条の32第1項
建築基準法に対する解釈等に疑義が生じた場合、一部の指定確認検査機関では、特定行政庁に設計者を出向かせ、特定行政庁の運用や解釈を確認させている例が見られます。
埼玉県では、埼玉県内を業務区域とする指定確認検査機関の長あてに、埼玉県都市整備部建築安全課長名で平成27年5月25日建案第255号で「建築基準法に対する解釈等に疑義が生じた場合の対応について(通知)」を発出しています。
疑義が生じた場合は、「計画内容を十分把握し貴機関の見解を踏まえたうえで、建築基準法第77条の32第1項の規定に基づき、直接貴機関から所管する建築安全センターに問い合わせるよう、改めて通知します。」
平成23年にも同様の通知が発出されていますから、どうやら守られていなかったようです。
これらの通知に書かれている事は、正しいのですが、この法第77条の32第1項の規定による「照会」を、正式文書として送付するとなると結構手間がかかり、日数も必要とします。
まず送り手側の指定確認検査機関では、設計者から相談→検討→文書起案→機関内決済→特定行政庁送付となります。受け手の特定行政庁でも文書受理→検討→稟議起案→稟議→決済→文書送付となります。文書ではなく特定行政庁の担当者から電話がかかってきて終了ということもあります。
法に基づく正式文書となると、かなりの日数が必要となることが理解できると思います。
指定確認検査機関の側では、事前相談の段階では「照会」を文書では発出できないというところもあるし「照会」そのものを断るところもあります。
どの業界・業種でもそうですが、弾力的な対応でフットワークの軽い人は人気があります。
法第77条の32第1項では、この「照会」は「文書」でとは規定されているわけではありませんから、指定確認検査機関から特定行政庁に電話や相談・打合せに行ってもらえるフットワークの軽い人が尊ばれる傾向にあります。
大体、こうした照会をしたい事項は、各種解説書、事例、通達等には参考例がなく、特殊な事例で判断に悩むからで、指定確認検査機関だけで判断させるにはヤバ過ぎるから特定行政庁の見解も聞きたいものなのです。
そこで指定確認検査機関の中に誰かいないかと探してみます。これは会社ではなくあくまでも個人の資質なので、会社の規模とかはあまり関係がありません。でもそういう人材は減ってきていますね。
「今、ある良い建物を これからも使い続けていくために」
工学院大学校友会・新春の集い2017で工学院大学教授の後藤治教授から頂戴した「今、ある良い建物を これからも使い続けていくために」既存建物を使い続けていくための諸制度見直し研究会の発行です。
このJIA再生部会や東京弁護士会歴史的建造物部会が協力してできた冊子を読んでみました。
歴史的に価値ある建築物の多くは、相当の年数が経過している為に現在の諸法律に適合していません。建築物を長期間継続して使い続けていくためには、大規模な改修や用途変更等もときには必要になります。しかし現行の法的基準を満たそうとすると工事費が嵩んだり、場合によってはその歴史的価値さえ失ってしまうこともあります。
今、多くの歴史的建築物は、経済的合理性の御旗のもと解体を余儀なくされています。
一方、歴史的建築物を社会的資源と捉えなおし、用途変更・増築等をして活用する事例も増えています。廃校からホテル・結婚式場。事務所から飲食・物販店舗からなる商業施設。廃校から道の駅等 各地で事例は生まれています。
この冊子は、日本建築家協会(JIA)再生部会と東京弁護士会歴史的建造物部会で、技術的な面と法的な面から様々な検討を行い、建築基準法第3条1項3号「その他条令」の規定を運用し、建築基準法適用除外の条令制定を勧めています。またその事に役立たせる目的でまとめられています。
社会的システムという法整備も喫緊の課題ですけど、個人的には、それと両輪で建築病理学の体系化が求められていると思います。
工学院大学校友会・新春の集い2017
自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-考え方と方法-」-1
【写真は、明日館の2階食堂】
1/7(土)、今日は自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-考え方と方法-」に出席してきました。講師は文建協の田村匠氏。
「文建協」正式名称は「公益財団法人文化財建造物保存技術協会」という名前で、文化財建造物である社寺仏閣、民家、近代建築、近代化遺産の維持修理、根本修理、構造補強(耐震補強)の為に設計監理及び技術指導を行っています。
講師は現在、自由学園明日館講堂の屋根葺替、耐震補強等の部分修理を担当されています。
今日は、講師が担当された近世の社寺仏閣から民家までの事例紹介と修理の考え方について概括的な講義でした。2月には現在修理工事中の明日館講堂の見学が組み込まれているそうですが、実はそれが楽しみで講座に申し込みました。
【写真は、2階食堂(ミニミュージアム)から1階ホール(喫茶室)】
「文建協」の場合、文化財建造物が対象ですから近世から近代の建物、歴史的に古いものから新しいものに対象が移っているんですね。確か私の学生時代には、近世民家の調査など断られていたように記憶しています。
私が調査に関わっているのは現代建築から近代建築という、新しいものから古いものへのアプローチですから「文建協」さんとは、真逆のアプローチになります。
ミシェル・フーコーの「系譜学的な思考」では、歴史を「過去から未来に向かって、原因と結果の連鎖として、一方的に進むもの」としてとらえるのではなくて、現在から過去に向かって遡行するかたちで理解する思考訓練と書かれています。
上の文は、内田樹さんの本からの引用なんですけど、歴史ものを扱っていると実際様々な出来事には、その前に幾つもの分岐点があったことがわかります。幾つもの分岐点の中の一つの分岐点が選択されたから、現在の結果が生じているわけです。どうしてあの時この道が選ばれ、それ以外の道は選ばれなかったのか。なぜこの出来事が起きて、あの出来事は起きなかったのかという問いに沢山直面します。
どんなことがあっても存在し続けるものと、わずかの手違いで消え去ってしまうものを識別する能力は、「系譜学的な思考」で歴史を学ぶことから養われますが、この能力=想像力は現代を生きる上で、歴史的建造物を扱うものとして、とても大事だと私は考えています。
そういったことを思い出しながら公開講座を聞いていました。
【写真は、旧帝国ホテルで使用されていたタイル】
「ゲニウス・ロキ~建築の現象学をめざして」クリスチャン・ノルベルグ=シュルツ著
1994年に出版された「ゲニウス・ロキ~建築の現象学をめざして」。
昨年末に読んだ「聖地巡礼」内田樹×釈撤宗対談集の中で「霊的トポス」と言う言葉が出てきていたので、この本を所有しているのを思いだし抜粋的に読み直してみました。
建築関係の本は、しばらく倉庫に預けていたのですが、昨年末に借りていた倉庫を撤収し所有していた本を整理・処分した中で残した本の一冊でした。
ゲニウス・ロキとは「地霊」と邦訳されます。ラテン語のゲニウス (守護霊) とロキ (場所・土地) を合わせた言葉です。どの土地 (場所) にもそれぞれ特有の霊があるから,その霊の力に逆らわず建物を建てたり、地域開発をすべきだという考え方です。
鈴木博之先生の「東京の地霊(ゲニウスロキ)」が出版されたのは何時だったでしょうか。1990年にサントリー学芸賞・芸術・文学部門賞を受賞しているので初版はそれ以前でしょうか。あの時期、もう30年ぐらい前ですが、私のなかでは「ゲニウス・ロキ」は、建築行為の理論的支柱でした。設計コンペの時は、その土地の場所性とか歴史性を調べることにばかりに力が入り、未消化の時は、結局参加を断念したりと、やたらとスケッチと資料ばかり増える傾向にありました。
今はどうなんでしょうか、「場所性」とか「歴史性」とか重要視されているんでしょうかね。設計行為そのものとは少し距離を置いてしまったので よくわかりません。
尚、所蔵していた本が少々くたびれていたので、新しく買おうかなとamazonで調べたら中古で54,000円の値がついていてびっくりしました。
「聖地巡礼 ビギニング」内田樹×釈徹宗
思想家・武道家の内田樹さんと浄土真宗本願寺派・如来寺住職、相愛大学教授の釈撤宗さんの対談集ですが、どこか部屋の中で静止した状態で対談するのではなく、実際に聖地を巡礼し、つまりを移動しながら対談したものをまとめた珍しい形式の対談集です。
聖地巡礼プロジェクトの目的は、「霊的感受性を敏感にして霊的なものの切迫を触覚的に感じる事」と書かれています。つまり五感のレーダーを研ぎ澄まさなければならないのだと思います。
私にとって聖地巡礼と言えば、サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼で、それを目指して、色々と資料を集めて準備していた時もありました。フランスからピレネー山脈を超えスペインを横断する巡礼路は、一か月以上かかり、最低でも徒歩で100Km以上歩かねばなりません。そんな体力はないからと、考古学的関心から日本の社寺仏閣を回り始めてしまい最大の目標から少し遠のいていますが、諦めたわけではありません。
しかし この本に書かれている日本の聖地巡礼も めちゃくちゃ行きたくなってしまいました。
この「聖地巡礼 ビギニング」の第一回は、ことし「真田丸」で有名になった「大阪・上町台地縦走」です。「かすかな霊性に耳をすませる」と添えられています。上町台地は南北に強い地脈を持ち、突端は生駒山と東西に一直線にあり、見える縦軸と心象的な横軸がクロスするという都市デザインが古代よりあったことを知りました。
内田樹さんが「大阪は本来霊的なセンターであり、それが都市としての力を賦活(活力を与える事)していたはずでしたけれど、世俗の力によって本来の霊的エネルギーが枯渇している」と書いています。大阪は、最も世俗的な人と政党に長く地方政治を担わせていますが現代的箱物やカジノでは復活は難しいでしょうね。
第二回は「京都・蓮台野と鳥辺野~異界への入口」です。「死者との交流」の地が京都の街の中にあったのは、まったく知りませんでした。これは、絶対行かねばならないと思いました。
第三回は「奈良・飛鳥地方~日本の子宮へ」で三輪山と大神神社です。「どの神社が一番好きか」と聞かれたら「大神神社」と答えていたので、「霊的トポス(場所)には透明感がある」というのは共感できました。私が今までで強い透明感を感じたのは大神神社と上高地でした。奈良は情念の南部、ロゴスの北部と言いますが、奈良南部は原日本の風景を感じるので大好きな土地です。
「出かけよう! 宗教性をみがく旅へ」
クオス横浜六浦ヒルトップレジデンス 建築確認取消し判決
2016年11月29日、東京地方裁判所で建築確認申請が取り消された横浜市金沢区の地下室マンションの概要について記載しておきます。新聞関係の掲載記事はリンク切れになりつつあるので。
【概要】
名称 : クオス横浜六浦ヒルトップレジデンス・ブライトガーデン
当該マンションは、第一期二次の販売を中止しています。
所在地 : 神奈川県横浜市金沢区六浦五丁目地内
地域・地区 : 市街化区域、第一種低層住居専用地域、22条地域、第1種高度地区、宅地造成工事規制区域、急傾斜地崩壊危険区域、緑化地域
建ペイ率 : 50%・40%
容積率 : 80%
設計監理 : 荒川建設工業(株)
建築確認 : 国際確認検査センター㈱
売主 : 株式会社 ワイ・エフ・エム
【関係記事】
【長屋】千葉県建築基準法施行条令
【千葉県建築基準法施行条令】
第八節 長屋
(木造長屋の形態等)
第四十二条 木造建築物等である長屋(耐火建築物又は準耐火建築物であるものを除く。以下「木造長屋」という。)は、六戸建て以下としなければならない。ただし、主要構造部を準耐火構造としたものについては、十二戸建てにまですることができる。
2 木造長屋の地階を除く階数は、二以下としなければならない。ただし、政令第百三十六条の二に定める技術的基準に適合し、かつ、次の各号に定めるところによるものは、その地階を除く階数を三とすることができる。
一 延べ面積(主要構造部が一時間準耐火基準に適合する準耐火構造である部分の床面積を除く。)は、五百平方メートル以下とすること。
二 各戸が重層しないこと。
三 地階部分は、主要構造部(階段を除く。)を耐火構造とすること。
3 前項第一号及び第二号の規定は、知事が当該建築物の構造及び敷地の状況により安全上及び防火上支障がないと認める場合は、適用しない。
一部改正〔昭和五二年条例四一号・平成三年二一号・五年二八号・一二年七五号・一五年六一号・二七年五一号〕
(出入口)
第四十三条 長屋の各戸の出入口は、その一以上が道に面しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する長屋については、この限りでない。
一 六戸建て以下の長屋で、その出入口が、道に通ずる幅員二メートル以上の敷地内の通路に面するもの。ただし、六戸建て以下の木造長屋で、地階を除く階数が三のものにあつては、その出入口が、道に通ずる幅員三メートル以上の敷地内の通路に面するもの
二 耐火建築物又は準耐火建築物で、その出入口が道に通ずる避難上有効な敷地内の通路に面するもの
2 階段等のみにより直接地上に達する住戸にあつては、その階段口(当該階段等が地上に接する部分をいう。)を出入口とみなし、前項の規定を適用する。
一部改正〔昭和四六年条例一五号・五二年四一号・平成三年二一号・五年二八号・一五年六一号〕
(内装)
第四十三条の二 階数が二以上の耐火建築物又は法第二条第九号の三イに該当する準耐火建築物以外の長屋は、最上階を除く各階の天井(回り縁、竿さお縁その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを難燃材料でしなければならない。
追加〔平成三年条例二一号〕、一部改正〔平成五年条例二八号・一二年七五号〕
【長屋】京都市建築基準法施行条令
第6条の2 都市計画区域内にある長屋は、次に定めるところによらなければならない。
(1) 法第23条に規定する木造建築物等である長屋(耐火建築物又は準耐火建築物を除く。)は、5戸建て以下で、かつ、階数を2以下とすること。ただし、令第136条の2各号に掲げる技術的基準に適合する場合には、階数を3とすることができる。
(2) 前号の長屋の側面には、隣地境界線との間に50センチメートル以上の空地を設けること。ただし、隣地境界線が、公園、広場その他これらに類する空地に接するときは、この限りでない。
(3) 各戸には、便所及び炊事場を設けること。
(1) 2戸建てで敷地内の幅員2メートル以上の通路に面するもの
(2) 耐火建築物又は準耐火建築物で各戸の界壁が耐火建築物にあっては耐火構造、準耐火建築物にあっては準耐火構造であり、かつ、両端が道路に通じる敷地内の幅員3メートル以上の通路又は一端が道路に通じる敷地内の幅員3メートル以上、長さ35メートル以内の通路に面するもの
(3) 公園、広場その他これらに類する空地に面するもの
【長屋】大阪府建築基準法施行条令
第六条 都市計画区域内の長屋は、次の各号に定めるところによらなければならない。
一 各戸の主要な出入口は、道路(法第四十三条第一項ただし書の規定による許可を受けた長屋にあっては、省令第十条の二の二第一号に規定する空地、同条第二号に規定する公共の用に供する道又は同条第三号に規定する通路を含む。以下この号において同じ。)に面すること。ただし、長屋が次のイ又はロに該当し、かつ、各戸の主要な出入口が道路に通ずる幅員三メートル以上の敷地内の通路(イに掲げる長屋にあっては、道路から各戸の主要な出入口までの長さが三十五メートル以内の通路に限る。)に面する場合は、この限りでない。
イ 床面積の合計が三百平方メートル以下のもの
ロ 耐火建築物又は準耐火建築物であるもの
二 桁行は、二十五メートルを超えないこと。ただし、耐火建築物又は準耐火建築物である場合は、この限りでない。
【長屋】神奈川県建築基準条令
第 19 条 長屋の各戸の主要な出口は、道に面して設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当し、かつ、安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない。
(1) 主要な出口から道に通ずる敷地内通路の幅員が 3 メートル(2 以下の住戸の専用の通路については、2 メートル)以上である場合
(2) 周囲に公園、広場その他の空地がある場合
第 20 条
3 階を長屋の用途に供する建築物は耐火建築物又は政令第 115 条の 2 の 2 第 1 項の技術的基準に適合する準耐火構造とした準耐火建築物とし、4 階以上の階を長屋の用途に供する建築物は耐火建築物としなければならない。ただし、重ね建て長屋の用途に供する部分のない建築物にあっては、準耐火建築物又は政令第 136 条の 2 の技術的基準に適合する建築物とすることができる。
2 長屋の用途に供する部分の床面積の合計が 600 平方メートル以上の建築物は、耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。
3 長屋の各戸の界壁の長さは、4.5 メートル以上としなければならない。ただし、当該建築物の構造若しくは形状又は周囲の状況によりやむを得ないと認められる場合は、その界壁の長さを 2.7 メートル以上とすることができる。
【長屋】東京都建築安全条例
第五条 長屋の各戸の主要な出入口は、道路又は道路に通ずる幅員二メートル以上の敷地内の通路に面して設けなければならない。
足立区議会「東京都建築安全条例に基づく長屋規制の見直しを求める意見書」全会一致で可決
以前より、その安全性が問題になっていた「重層長屋」。
都内では、足立区、世田谷区、練馬区などで「大規模な重層長屋」の計画や建設が進められています。
足立区西竹の塚2丁目に建設中の重層長屋の建築確認の取り消しを求める審査請求が提出されました。今後、足立区建築審査会で審議がされます。
12月22日、東京都建築安全条例の規制を強化するよう求める意見書が足立区議会本会議で全会一致で可決されました。
東京都建築安全条例に基づく長屋規制の見直しを求める意見書
当区において、現在、道路や避難経路の安全性を考慮しない複数の大規模長屋計画が予定され、建築工事が進められている。この状況は、震災時や火災時において長屋居住者や隣接住民の避難及び消火活動に困難をきたし、地域の安全を脅かしている。
このため、隣接住民より建築確認の取り消しを求める建築審査請求が提出されるとともに、地域住民からは建築確認の取り消しを求める要望書も提出されている。
しかしながら、「東京都建築安全条例」には、準耐火建築物の長屋に対する戸数制限などの定めがなく、今後もこのような長屋が多数建築されることが懸念される。安全な長屋計画を誘導するためには、都条例の規定整備が不可欠である。
よって、足立区議会は東京都に対し、良好な住環境の整備を図るため、東京都建築安全条例の見直しを強く求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。
平成28年12月22日
議長名
東京都知事あて
足立区・東京都建築安全条例に基づく長屋規制の見直しを求める意見書
足立区竹ノ塚の重層長屋の接道は、行き止まりの法42条2項道路で現況幅員は1.8m~1.5mほどしかないとの事です。(下図・黒い線)
この法42条2項道路が接道する やや広い道路は法42条1項1号道路で、足立区道路台帳では、幅員5.4mほどしかありません。
建設中の建物が62戸(32戸と30戸の二棟)と大規模で、居住者は100人を超えることが予想されます。
近隣商業地域、容積率300%、建ぺい率60%、第三種高度地域、準防火地域、日影規制5-3時間、測定高さ4m、景観計画区域(一般)となっています。
東京都安全条例では準耐火建築物の長屋の戸数制限はありませんが、もともとこれほど大規模な重層長屋を想定した法整備ではありませんから、その安全性・防火性などについて地域住民が心配するのは当然だと思います。
赤丸部分が建設地で東武スカイツリーライン・竹ノ塚駅から近い立地です。
建築法からの考察は、さらに資料が集まり現地を見てから詳しく書くことにしたいと思います。
いずれにしても重層長屋については、社会問題化することが求められています。
*12/25 記事を修正しました。