「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」2017年度版

全国の特定行政庁及び指定確認検査機関等で構成されいる日本建築行政会議(JCBA)が、建築確認審査・検査の適正な運用を図るため、全国的な審査・検査の統一化に向けて検討を進め、2009年(平成21年)に「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」を出版。その後2013年度版と続き、本書は3冊目となる。

この「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例 2017年度版」は、法令等の改正、利用者等からの質疑に対する回答及びその後の部会での検討結果を踏まえ、改訂がなされている。

2013年度版から加筆された項目や変更された文章をマーキングしたのだが、新旧対照表をサイトにでもアップしておいてくれると助かる。

「空洞化と属国化・日本経済グローバル化の顛末」坂本雅子著

建築事務所のブログに経済学の本の読書感想を書くのは場違いのようにも思われるかもしれないが、個人的には若い時から折々につれ経済学の本を読んできた。

今でも新聞の中では、日本経済新聞を一番熱心に読んでいるかな。

思い返せば、経済の影響で人生が左右されてきたようにも思う。高校生時代のオイルショック。バブル経済と収束。リーマンショック等と建築の仕事にも大きな影響を受けてきた。

知人に薦められて、この774頁の大著を年末年始の約2週間をかけて読み通した。

2017年は、日本の電機産業(パソコン、半導体、液晶テレビ・液晶バネル)の総崩れ・敗北が確定した年だった。

知人と「一体どうしちゃったのか東芝は? シャープは? 日本のグローバル企業は、経済はどうなっているのか、これからどうなるのか」そんなことを話していたら この本が面白いからと薦められた。

電機産業も総崩れだが、国内自動車生産も崖っぷちと聞く。日本経済は20年も停滞して来た。世界的に見ても先進国の中で日本だけが停滞している。政府の成長戦略は効果的な対策となっているのかという疑問に、著者は産業の空洞化と対米属国化(従属)によるものと指摘しているのだが、個々の企業活動や日本経済の実態のみならず経済政策や外交・軍事戦略までと総合的に学問の枠を超えた分析をされている。提示された個々の数値に、ここまで日本の企業活動・経済が追い込まれていたのかと呆然としてしまった。

経済学の中では一世を風靡した。今でもかなり浸透している「スマイルカーブ」。縦軸に「付加価値」、横軸に製品の開発・製造・販売の工程をとって図式化すると両端が上がって人が笑った口のように見えることから名づけられたと聞く。台湾のEMS企業・エイサー創始者スタン・シーが最初に言い出した。これが米国の製造業の空洞化に拍車をかけたが、今は技術革新(イノベーション)を生み出すには製造業・生産現場と一体で不可欠という指摘が増えてきている。

この「スマイルカーブ」論は、少なからず日本の建設業や設計業界に影響を与えている。ゼネコンも大手設計事務所も実施設計という図面を作成する工程は、外注事務所や非正規の設計者・ドラフトマンを集めた子会社が担っている。図面の書かない書けない一級建築士は多い。住宅業界は、生産図や申請図は海外で作成しているのは随分と前から。

日本は、いつのまにか「ものづくり」により成長するのではなく、互いにサービスを提供しあうことに依存する経済になりつつある。

 

  • 序章  日本経済と産業空洞化
  • 第1章   日本電機産業の敗北-生産の海外移転が行きつくところ
  • 第2章     自動車産業は空洞化するか
  • 第3章  成長戦略と日本経済-インフラ輸出戦略で空洞化は止められない
  • 第4章  安倍成長戦略と・「日本再興戦略」の本質
  • 第5章     インフラ輸出と「安全保障」の一体化-安倍内閣期のインフラ輸出
  • 第6章 空洞化、属国化の協定・TPPと米国のアジア回帰戦略

とあるように 日本経済の幅広いテーマを取り扱っていて、とても感想を書ききれないが、この本を読み終わって今後の自分のビジネスをどうするべきかはっきりした。

この本は、売れているそうだ。出版3ヶ月で3刷目。

岡倉天心記念学術奨励賞を受賞したとは言え、専門書で6千円もする本なのに。それだけ日本の産業や経済が今どうなっているのか皆 関心があるのだろう。

 

「世界のリノベーション」日経アーキテクチュア編

昨年の暮れに発売された「世界のリノベーション」日経アーキテクチュア編です。

日経アーキテクチュア誌が、近年リポートしてきた国内外のリノベーション事例の中から厳選し、未掲載の写真や資料を加えて紹介しています。

ザハ・ハディド氏の遺作となるベルギーのポートハウスのほか、フランク・O・ゲーリー氏、安藤忠雄氏など、世界の著名建築家による「新築を超える増改築」を多数掲載しています。国内のモダニズム建築の保存再生事例や、技術・法規面を押さえつつ実現過程が詳細に書かれています。

作品紹介にあたり、リノベーションの特徴を示す6つのアイコン「包む」「載せる」「はめ込む」「くり抜く」「つなぐ」「掘る」を付けていますが、良い整理方法だと思いました。

今、小さいプロジェクトだが鉄骨造3階建ての建物に1層増築して4階建てにする「上増築」(しかも工事完了検査済証が無い)の仕事を手掛けています。この本によると「載せる」という範疇になるのですが、幾つか建築基準法の構造規定の既存遡及の壁にぶち当たっていました。現在も知恵を絞り中。

ザハ・ハディド氏の遺作となるベルギーのポートハウス「海に浮かぶダイヤ」が「載せる」の事例となっているが、既存建物とは構造的には切り離しているようです。

五十嵐太郎氏の「リノベ建築史」の視点も重要です。

建築史を俯瞰すれば、「リノベ」は昨日今日流行ったものではなく古来より「再開発」「修景/保存」「再利用」は同じような建築的創造行為であったことが理解できます。

ヨーロッパに行ってきたい・・・。

「設備設計スタンダード図集」ZO設計室

毎年、年末年始に読もうと大量の本を購入するのだが、今年最初に読み終えたのが、この本「設備設計スタンダード図集」ZO設計室・柿沼斉三・伊藤教子共著。

本来は設備設計者を対象としているのだろう、その極意を伝授する内容となっている。

建築ストックの活用・再生を業務にしていると、既存の建物の設備図面を読みこなす力が必要になってくる。名ばかり設備一級建築士なので、専門とする設備設計者に協力を仰がなければならないのだが、自分でもある程度は理解する必要があるので最新の知識は勉強しておきたい。

設備関係の更新が中心のリフォームも多くなってきているが、だからと言って設備設計者だけに業務を任せていれば良いというものでもなく総合的に判断する力量が必要となってくる。

この本の良いところは、オフィスからマンション、公共建築、戸建て住宅と規模と用途の異なる9タイプの事例を掲載していて、それぞれの図面に対して設計の決め方や留意点を記載するなど、きめ細かく解説している点だろう。

とても勉強になった。

「RENOVATION CASE STUDY BOOK 2」

リノベーションは建物単体の再生にとどまらず、街の活性化、コミュニティーの再生にも大きな役割を担っている。

「リノベーション ケーススタディブック 2」は、全国各地の店舗、文化施設、オフィス、宿泊施設、住宅の38の事例を紹介している。

巻頭特集は、リノベーションによる街の活性化に取り組む北九州市小倉、尾道市旧市街地、長野市善光寺門前を取り上げコミュニティ再生におけるリノベーションの役割、成功の秘訣を探っている。

既に見に行ったものも多く紹介されているが、遠方の為 中々行く機会がない兵庫県の豊岡・城崎温泉・出石に出向きたいと思った。

「キズカイのケンチク」

木造建築にこだわってきた東海大学・杉本祥文教授の活動の集大成ともいえる本。氏の生い立ちから木材を巡る諸問題についてふれ木造建築復権にかける熱い思いが語られてる。杉本先生とは年に数回会う機会があるのだが、生い立ちは始めて知った。祖父が伊豆修善寺で製材業を営まれていたということから木との関わりは幼少時代にあったものらしい。

「木」という一つの材料にこだわりを持って設計をしている人をうらやましく思うことがある。私などのように実現したい空間を構成するストラクチャは何でもいいと思っている輩からは なんでそんなに「木」にこだわるのか理解しがたいところである。

杉本先生が前社長・現会長職にある㈱計画・環境建築は、かって日本の建築界をリードした鬼才・木島安史さんと橋本文隆さんが設立した事務所である。

若い時に木島安史さんの作品が新建築に発表されるたびに、そのデザイン力・ダイナミックな構想力には圧倒され脱帽した。

木島安史さんの日本建築学会建築会館コンペ案が実施に採用されていたら、どんな空間を我々に提供してくれたのだろうかと建築会館を訪れるたびに思ったものだ。

この本の中には、杉本先生が関わった私の好きな建物が幾つかある。周辺環境に共鳴するかのごとく柔らかな稜線をもつ「道の駅 みかも」。木質ハイブリッドな構造の「道の駅安達・智恵子の里」等だ。

以前の作品には木島安史・橋本文隆のDNAを色濃く継承したデザイン・構想力に秀でていた作品が多かったのだが、最近はおとなしいというか拙い作品も散見する。

今時の大学で子供達と戯れているのも良いけど、デザインの現場に復帰して指導力を発揮してもらいたいものだと影ながら思っている。

「老いる家 崩れる街~住宅過剰社会の末路」野澤千絵著

著者である野澤千絵・東洋大学教授によると「住宅過剰社会」とは、「世帯数を大幅に超えた住宅がすでにあり、空き家が右肩上がりに増えているにもかかわらず、将来世代への深刻な影響を見過ごし、居住地を焼畑的に広げながら、住宅を大量につくり続ける社会」のことと書いています。

2060年の日本の将来人口(合計特殊出生率1.35の場合)は、約8700万人と予想されていて、減少が始まった2010年の人口・1億2806万人の約7割にまで減少するとの国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2012年1月推計)が指摘しています。

国は、経済対策や住宅政策の一環として従来通り新築住宅への金融・税制等の優遇を行い、住宅建設の後押しを続けていて、住宅過剰社会を食い止めようという兆しがほとんど見られないと著者は指摘しています。

不動産は、その住宅の質や立地によっては、売りたくても買い手がつかない、貸したくても借り手が見つからないケースが続出しています。財産ではなく、固定資産税や管理費・修繕積立金を払うだけの「負動産」になりつつあるものも増加しています。

東京近郊における賃貸アパートの供給過剰による空き家の増加。越後湯沢のようなリゾートマンションの廃墟化。限界集落。

最近、弁護士や司法書士に話を聞いたところ「相続関係」の業務が増えているそうです。「相続問題」というと以前は、家族や親族間のトラブルによるものだったのが、最近は相続放棄、認知症の老人の成年後見人になったり、不動産の信託であったりと少子高齢化の波が、建設・住宅業界より一足早く押し寄せているなと感じたものでした。

私が死んだ後の日本の将来を思うと暗澹たる気持ちになってしまいますが、「住宅過剰社会から脱却するための7つの方策」も提案されており まだ方針転換すれば間に合うかもしれないという かすかな期待を抱くことができます。

「伝統的民家における温熱特性と現代住宅への応用に関する研究」金田正夫著

本書は現在、無垢里一級建築士事務所を主宰されている金田正夫氏の学位論文です。金田氏は 設計実務を続けながら法政大学に学び2011年3月に博士号を取得され、現在も実務と研究を続けられている「在野の研究者」です。

本書では、民家の温熱特性については茅葺屋根の日射遮熱効果や民家の通風特性についての既往研究は調査事例があり解明されつつあるとし、夏季における置き屋根による日射遮熱、土壁による西日遮熱、民家構成材による調湿、冬季における放射熱源と土壁の採熱・蓄熱については調査事例が少なかったので それらを補完するのが本研究の第一目的としています。

また、民家の温熱特性を現代住宅の諸条件の中で応用し、その効果を対比検証していますが、それが第二の目的としています。

とりわけ面白いと思ったのは「置き屋根(二重屋根)」による遮熱効果。夏の良好な温熱環境をつくるうえで無視できない西日遮熱の問題。民家の調湿効果を類似の新建材に特化した調湿実験の結果。約10年間にわたる実測に裏打ちされた研究成果が満載されています。

「自費出版」ですが、住宅の温熱環境に関心がある人には読んでほしい一冊です。

申込は 下記「無垢里」サイトへ

無垢里

 

新「そらまどの家」 丸谷博男著

「地球の恵みの素は、太陽の熱 その熱は、1億5千万㎞を駆け抜けてきた輻射熱です。 「そらどま」は その輻射熱を 住まいに採り入れ その輻射熱で 採暖採涼をします。 太陽の恵み「そら」の熱と 地球の恵み「どま」の熱を 両手両足を背一杯広げて 受取る仕組みです。 そして、人と住まいの健康の素「呼吸する家」をつくります。」

エコハウス研究会

エコハウス研究会のホームページ巻頭に書かれていた この言葉にほれぼれとしました。

「そらどまの家」はフランチャイズではなくオープンシステムです。

「その土地の微気候、それぞれの工務店の工法や技術力にふさわしい、きめの細かいパッシブな家づくりを創案し、皆様のものにしていただこうというものです。このような考えこそがパッシブデザインの本質と考えています」

高断熱・高気密住宅には違和感をずっと感じています。ビーニール袋にアルミの蓋住宅の傾向は、今も昔も何ら変わっていません。省エネと言いながら石油製品の断熱材を多用する矛盾。

日本の風土と共に息づいてきた伝統工法の知恵を生かした家づくりは憧れですが、庶民には高嶺の花であるという現実も存在しています。

「週刊 東洋経済8/12-19合併号・親の住まい 子の住まい」

2019年には世帯数が5307万でピークを迎える

2033年には空き家が2167万戸を超え3戸に1戸は人が住まなくなる。

2050年・現在の居住地の約20%が「誰も住まない土地」になる。団塊ジュニア世代がすべて75歳以上に

今後の日本を展望すると、確かに住環境は激変していくのだろう。

今でもその兆候は見られるし、爺が心配しても仕方ないのかも知れないが、何だか暗澹たる気分になってしまう。

子育て世代の住まいは一戸建てかマンションか。はたまた購入か賃貸か

老後の住まいはどうするのか。

そう言えば 他人ごとではなかった。

NICHE 04

母校の校友会にわずかばかりの寄付をしたところ、出版されたばかりの「NICHE 04・ドイツ建築探訪!」が送られ来た。

いずれ購入しょうと思っていたので丁度良かった。

仕事に追われていてパラパラめくっただけで紹介記事を書くのはおこがましいが、こういう大学の知的資源やネットワークを生かした本を世の中に出し、社会に貢献していくのは大学の使命である。

大学はまだ死んでいなかった。

教育界の品位を下げた「もり・かけ」ばかりではないのだ。

日本語とドイツ語のバイリンガルになっているのだが、かってドイツ語を専攻していたのに今やさっぱり読めなくなっている。

「ブルーノ・タウト再考」を始め、ドイツ建築を特集している。仕事で煮詰まっている時に気分転換で、しっかり読むことにしよう。

「NICHE 04」出版

 

「ひつじの京都銭湯図鑑」大武千明著

京都の街中を歩いていると意外と銭湯に出くわします。レトロなものやモダンな外装のものあり、ひとつひとつの銭湯が個性的です。

仕事に追われている時は、活字の本を読む余力がありませんが、この本のようなイラストが多い本は、ちょつとの合間の息抜きにピッタリです。

銭湯の営業中は、カメラ撮影が不可なので記憶にとどめておいてイラストにされていたそうですが、結構可愛らしいイラストが散りばめられています。

京都銭湯巡りの小トリップ。

何だかワクワクしてきます。

「伝統民家の生態学」

学生時代に伝統民家について学んでいた時、伝統民家の秀でた温熱環境について感覚的・情緒的に語るものはあったが、科学的に調査し考察をした研究は少なかったように記憶しています。

そうした中で花岡利昌氏の研究は刺激的でした。

1991年に初版が発行されたこの本は、各地の伝統民家についての調査と研究の集積であり、伝統民家の形態に地域性をもたらしているのがその風土、すなわち気候や地形などの自然条件であることを物語っています。

今、省エネや環境建築が業務の中心になってきて、改めて伝統民家について生態学的アプローチをされている研究文献を再読しているところです。

【伝統民家の生態学・目次】

第一章 伝統民家と風土
第二章 住居気候とその測定方法
住居気候/住居気候測定における問題点/測定法/測定結果の処理
第三章 加賀白山麓の大壁造り民家
白峰村の大壁造りの構造/白峰村の自然環境/大壁造り民家の住居
気候/(附記1)大和高原の真壁造り民家
第四章 飛騨白川村の合唱造り
合唱造り民家の構造と分布/合唱造りの住居気候
第五章 庵美の分棟民家
分棟民家の構造/庵美の気候風土/分棟民家の住居気候
第六章 庵美の高倉
庵美大島の高倉/庵美式高倉の構造/高倉の屋内気候
/改造高倉の室内気候
第七章 大隅の二棟造り民家
二棟造り民家/二棟造り民家の構造/二棟造り民家の住居気候
と瓦葺き住宅との比較
第八章 沖縄先島(石垣)の民家
石垣の風土と伝統民家/先島の宮良殿内と分棟民家/先島民家住
の居気候
第九章 四国の竹床(簀掻床)民家
竹床民家/竹床民家の構造/竹床民家の室内気流
第十章 岐阜高山の吹き抜け民家
吹き抜け民家の構造/吹き抜け民家の室内気候
第十一章 出雲の屋敷防風林
築地松/自然環境と対象民家/築地松の効果
第十二章 山形の土座民家
山形の土座/自然条件と対象民家/土座の室内気候
第十三章 新潟の土座民家
新潟の風土と土座/土座の構造/土座の温熱環境
第十四章 近江伊香の土座民家
伊香型の土座民家/伊香型民家の構造/土座の温熱状況
第十五章 アイヌの伝統民家「チセ」
アイヌの冬の住生活/チセの種類と構造/住居気候の測定内容
/チセの住居気候/冬季のチセの防寒性能とそのメカニズム/
(附記2)秋田横手のカマクラ/(附記3)雪の断熱性を利用した
上越のアイディア住宅
第十六章 山梨のオンドル民家
オンドル室の構造/測定方法/測定結果
第十七章 韓国の伝統民家におけるオンドル
韓国のオンドル事情/在来式オンドルの測定/セマウル温水ボイラー
オンドルの測定

「工手学校・日本の近代建築を支えた建築家の系譜・工学院大学」

明治、帝国大学総長であった渡邊洪基は、建築家の辰野金吾や土木を専門とする古市公威と共に、8つの学科を擁する「工手学校」を設立し日本の建築界に多くの卒業生を輩出しました。

 本書は、工学院大学建築学部同窓会誌『NICHE』に掲載された「輝かしき先輩たち」と題された連載を基に再編集したもので日本の近代建築を支えた工手学校の歩みを、13人の建築家の歩みを通して描かれています。
同窓生だからこの本を持ち上げるわけではなく、日本の近代建築史を学ぶ上での貴重な資料です。とりわけ私が興味深く読んだのは戦前の台湾の活動でした。「戦前期工手学校卒業生の台湾における活動-八坂志賀助を事例として」「工手学校卒業生と台湾総督府の土地調査事業」「飯田豊二と日本統治時代初期の台湾鉄道」「進藤熊之助と日本統治時代初期の台湾鉄道」の四編は、今は資料が少ない戦前の台湾について多くの教示を得ました。
それと 今亡き建築家・内井昭蔵さんの御父さん・内井進さんが同窓だ初めて知りました。
とても面白い本です。

「孤篷の人」葉室麟著

この作品の主人公は、大名(晩年は伏見奉行)、茶人、作庭家、建築家、書家として名を遺した小堀遠州です。フィクションですが、晩年の小堀遠州(小堀政一)が、利休、石田三成、沢庵、古田織部等との邂逅を綴る形で書かれていて、茶の湯の精神とか茶室について理解を深めるための本になっていると思います。
孤篷庵(こほうあん)は、京都市北区紫野にある臨済宗大徳寺派大本山大徳寺にあります。建築関係の本にはよく登場し、時には建築士の試験などにも登場しますが、たまにしか一般公開しませんし茶室内部の写真撮影は禁止なので、著名な割には実物を見た人は少ないと思います。そういう私も何度か大徳寺には行っていますが実物を見たことはありません。
この庵号の「孤篷」は「一艘の苫舟」の意で、小堀政一(遠州)が師事した春屋宗園から授かった号です。
なにか全てを暗示しているような庵号でもあります。
この本を読んで、すこし即物的な建築の世界から離れて、精神世界に触れることができたような気がします。