建築ストックにおける建築基準法の取扱い

 先月、「床および階段の改修に関する建築基準法上の取り扱いについて」の技術的助言が国交省(国住指第208号 令和6年8月28日)から通知された。
 これは建築基準法第6条第1項より、同第一号から第三号までに掲げる建築物の大規模の修繕※1や大規模の模様替えをしようとする場合には、確認申請が必要になるが「床および階段の改修に関する建築基準法上の取り扱いについて」の技術的助言がまとめられたもの。

【床の改修】
次の行為は、大規模の修繕および大規模の模様替えには該当しないものと取り扱うことも可能です。

床の仕上げ材のみの改修等を行う行為
既存の仕上げ材の上に新しい仕上げ材をかぶせる改修

【階段の改修】
次の行為は、大規模の修繕および大規模の模様替えには該当しないものと取り扱うことも可能です。

各階における個々の階段の改修にあたり、過半に至らない段数等の改修を行う行為
既存の階段の上に新しい仕上材をかぶせる改修を行う行為

以上の内容程度でわざわざ技術的助言を通知しなければならないほど、審査の現場は混乱しているというのだろうか。

実際、建築ストックの設計・監理に携わっていると、もっと重要かつ取扱いが分かれている事があるだろうと言いたくなる。

例えば

「装飾か増築か」

 既存の壁面にルーバーをつける程度なら装飾で、植栽棚(点検床あり)のようなものは装飾と言ってよいのか。床面積が発生しないなら装飾か。装飾物が既存躯体にどの程度応力を負担させるなら増築と取り扱わなくて良いのか。いちいち審査機関に確認するのが面倒だ。そもそも増築の定義が建築基準法では明文化されていない。今日の状況に合せて定義する必要があると思う。

「庇をつければ増築?」

新しく開口部の上に庇をつければ増築だという。建築面積が生じなく幅1.8m程度なら増築ではないという。建築面積はともかく幅1.8mの根拠は如何に。

「RCかぶり厚の補正」

内装を解体してみたらRC梁のジャンカが多い。クラックが多い、鉄筋のかぶり厚が少ない場合等がある。この時の補正・補修はポリマーモルタル等を使うんだけど、鉄筋かぶり厚を確保する為に厚塗りするのは、建築基準法的にはどうなのと思う。モルタルは鉄筋コンクリートとは違うし。一体となったものがRCと言えるのか?

その他にもいろいろある。「エレベーターピット下の居室利用」「エレベーターのオーバーヘッド確保の為にエレベーターシャフト部分だけ高さを増す事」

事件は現場で起きているんだよ