【2024年10月28日追記】
この記事を見ての問合せが意外と多いので追記。質問は令70条について平成12年改正以前の取り扱いがどのようなものであつたか知りたいという事だった。検査済証のある既存建物でも天井裏の部分で施行令70条の防火被覆が施行されていない案件を時々見かける。又既存不適格であるということを証明するには、過去の取扱いがどうなっていたか調べる必要がある。
1991年(平成3年)に出版された「詳解 建築基準法 改訂版」の令70条の解説では以下のように記載されている。これは昭和46年1月1日施行から平成12年5月31日までの規定についての解説。
「(柱の防火被覆)
令第70条 地階を除く階数が3以上の件建築物にあっては、1の柱のみの火熱による耐力の低下によって建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合においては、当該柱は、モルタルその他の断熱性のある材料で被覆しなければならない」
解説「鉄骨は、火災時の火熱によってその耐力が著しく低下する(材種により異なるが、おおむね温度450℃で約半減する)ので、3階建て以上のものについては、火熱時の耐力低下を防ぐための、柱の防火被覆の最低基準を示している。3階建て以上の1階の柱や中柱や大スパンの応力の大きい柱、柱数が少ない場合の柱等で、可燃物のあるとき、火気を使用するときは原則としてこれに該当すると考えられる。すなわち、その1の柱のみの火熱による耐力の低下によって、建築物全体が容易に倒壊するおそれのある場合に相当するときは、その柱をモルタルその他の断熱性のある材料で被覆しなければならないことになっている。ここで要求される防火被覆の耐火性能としては、おおむね耐火構造の柱1時間耐火程度と考えればよい」
この頃までは柱1時間耐火程度が適切という取扱いだったが、その後厳しすぎる面があるという事で「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施工令第70条の取扱いについて」という事務連絡が昭和62年12月1日に出て、現在は告示に集約されている。
この後、平成12年6月1日に改正され平成13年1月6日施行-現在有効が下記の条文
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設計上や審査上で意外と盲点というか忘れてしまうのが建築基準法施行令第70条(柱の防火被覆)です。
(柱の防火被覆)第70条
地階を除く階数が3以上の建築物(法第2条第9号の2イに掲げる基準に適合する建築物及び同条第9号の3イに該当する建築物を除く。)にあつては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合として国土交通大臣が定める場合においては、当該柱の構造は、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
耐火構造・準耐火構造とする必要が無い 三階建ての鉄骨造の建物・・・例えば倉庫とか工場、専用住宅で鉄骨がむき出しの建物などの場合には、柱の防火被覆が必要です。
防火被覆の条項が構造規定関係のところにあるので、つい見落としやすい条項です。
特定行政庁によっては、1階の柱部分のみ被覆すれば、容易に倒壊しないと考え指導しているところもあると聞いています。
検査機関は、法判断の裁量権がないので特定行政庁の指示に従う事になりますが、個人的には1階の柱部分のみ被覆すれば、容易に倒壊しずらい。と考えますので簡易的な方法としては有効だと思っています。
この施工令70条の法文は、昔は下記のようなものでした。
地階を除く階数が三以上の建築物にあっては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合においては、当該柱は、モルタルその他の断熱性のある材料で皮膜しなければならない。
昭和62年当時、近畿建築行政会議の統一解釈として大阪府下では、一時間耐火として指導していた。
しかし建設省住宅局建築指導課より「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施工令第70条の取扱いについて」という事務連絡が昭和62年12月1日に出され、一時間耐火の性能を要求する事は、やや厳しすぎる面があるとして是正された経過があります。
この事務連絡では、検討方法として
1,精算による方法
2,軸力再配分による方法
が詳細な計算方法とともに示されています。