建築物省エネ法・大幅改正のスケジュール

 改正建築物省エネ法(令和4年6月17日公布)により、2027年(令和7年)4月(予定)から、「全ての新築建築物」に「省エネ基準への適合」が義務付けられ、また、4号特例の見直しにより、木造建築物に係る構造規定等の審査・検査が省略される規模が大幅に縮小する。

 また、2026年(令和6年)1月以降に建築確認を受けた新築住宅について、「住宅ローン減税」を受けるためには、原則として「省エネ基準への適合」が要件となる。

 このような大幅な制度改正に対応するため、省エネ計算に不慣れな方や、4号特例の見直しに伴う構造関係資料等の作成へ不安を抱える設計者は多い。

 この改正により、省エネ基準適合義務となる建築物の棟数は、改正前の14,000棟から改正後は445,000棟と約32倍に審査件数が増加する。木造住宅等は仕様基準に基づいて省エネ設計されるものもあるので、一定量減ずるものと思われるが、それにしても大幅な業務量の増加になるだろう。

 住宅性能評価・表示協会が発表している「省エネ適合性判定に係る審査実績」を見ていると、日本ERIが全体の25%程度、ビューロベリタスジャパンが全体の約10%程度の審査実績となっている。審査実績のすくない機関は実質的な省エネ審査担当者が少なく、審査経験が蓄積されない傾向があるので、省エネ適判機関の選定は注意する必要がある。

 弊社が省エネサポートをしている経験からも、省エネ担当者が一人しかいないため省エネ適判も確認申請もワンストップだというわりには事前受付審査期間が長時間だったり、省エネ審査を実質担当している補助員が、建築士無資格者であった為、質疑が頓珍漢であったこともある。質疑ぐらい省エネ適判員が確認してから送るべきだ。現状でも問題が噴出している現場が対応できるのだろうか

 又、現在の省エネ適合判定では、モデル建物法による計算が主流だが、今後の省エネ適合基準引き上げやZEB対応に伴い標準入力法を用いるケースが増えるだろうと予想されている。

 ただでさえ設備設計者・環境設計者の人材が少ない建築業界。どうなるかな。


【今後の規制強化の予定(非住宅)】

2024年 : 大規模建築物に係る省エネ基準の引き上げ BEI=0.8程度

2025年 : 小規模建築物の省エネ基準への適合義務化

2026年 : 中規模建築物に係る省エネ基準の引き上げ BEI=0.8程度

遅くとも2030年 : 中大規模建築物について誘導基準への適合率が8割超えた時点で、省エネ基準をZEB基準(用途に応じてBEI=0.6又は0.7)に引き上げ、小規模建築物についてBEI=0.8程度に引き上げ・適合義務付け。あわせて2022年に引き上げた誘導基準の更なる引き上げ

以上が予定されている。

 

子育てエコホーム支援事業


令和5年11月10日、令和5年度補正予算案が閣議決定され、新たに「子育てエコホーム支援事業」が創設された。

①「子育てエコホーム支援事業」(国土交通省)
②「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」(経済産業省)
③「先進的窓リノベ事業」(経済産業省および環境省)
④ 「既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業」(経済産業省)

※令和4年度補正予算案に盛り込まれた事業①~④をまとめて、以下、子育てエコホーム支援事業等といいます。詳しくは国土交通省「子育てエコホーム支援事業」を見て゜ください。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000243.html

補助対象は、以下の条件を満たす方が対象】

①子育て世帯または若者夫婦世帯のいずれかである
※子育て世帯とは、申請時点において、2005年4月2日以降に出生した子を有する世帯です。

※若者夫婦世帯とは、申請時点において夫婦であり、いずれかが1983年4月2日以降に生まれた世帯です。ただし、令和6年3月末までに工事着手する場合においては、令和4年4月1日時点でいずれかが39歳以下(すなわち、昭和57(1982)年4月2日以降出生)の世帯となります。

②-1注文住宅を新築される場合
事業者と工事請負契約を締結して住宅を新築する方

※事業者は消費者に代わり交付申請手続きを代行し、交付を受けた補助金を消費者に還元する者として、予め本事業に登録をした住宅事業者です。

または、

②-2分譲住宅を購入される場合
こどもエコすまい事業者と不動産売買契約を締結し、新築分譲住宅を購入(所有)する方

※事業者は消費者に代わり交付申請等の手続きを代行し、交付を受けた補助金を消費者に還元する者として、予め本事業に登録をした住宅事業者です。

※宅地建物取引業の免許を有する事業者からの購入に限ります。

または、

②-3リフォームを実施する場合
令和4年11月8日以降に工事請負契約を締結したもの
別途定める事業者登録を行った後に建築工事に着工するもの
令和5年12月31日までにすべての工事が完了した上で交付申請が可能なもの

【補助対象となる新築住宅】
以下の①ないし②および③④⑤のすべてを満たす住宅が対象になります。

①長期優良住宅
長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられている住宅で、所管行政庁(都道府県、市区町村等)にて認定を受けたもの

②ZEH住宅
強化外皮基準に適合し、再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上の一次エネルギー消費量が削減される性能を有するもの(ZEH、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Oriented※1)

※1 BELS 評価書に記載される「ゼロエネ相当」(強化外皮基準に適合しないもの)は対象となりません。

③ 住戸の延べ面積が 50 ㎡以上 240 ㎡以下
(床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積(吹き抜け、バルコニーおよびメーターボックスの部分を除く。)により算定します。なお、住戸内に階段が存在する場合、階段下のトイレおよび収納等の面積を含める。以下同じ。)のもの

④ 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成 12 年法律第 57 号)に基づく土砂災害特別警戒区域または災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域または地すべり防止区域と重複する区域に限る)に原則立地しないもの
⑤ 都市再生特別措置法(平成 14 年法律第 22 号)第 88 条第5項の規定※2により、当該住宅に係る届出をした者が同条第 3 項の規定による勧告に従わなかった旨の公表がされていないもの
※2 「立地適正化計画区域内の居住誘導区域外の区域」かつ「災害レッドゾーン(災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域)内」で建設されたもののうち、一定の規模以上(3戸以上または1戸若しくは2戸で規模が 1,000 ㎡以上)の開発によるもので、都市再生特別措置法第 88 条第 3 項に基づき立地を適正なものとするために行われる市町村長の勧告に従わなかった場合、その旨が市町村長により公表できることとされています。

【交付申請時の工事出来高の確認について】
交付申請は、一定以上の工事の出来高が確認できる時点とし、各事業タイプにより異なります。(1)および(2)については、完了報告期限までに住宅の引渡し、入居の完了についての報告が必要です。

完了報告期限:交付決定~補助対象である建物に応じた下記期限

(1)戸建住宅 交付決定~2025年7月31日
(2)共同住宅等で階数が10以下 交付決定~2026年4月30日
(3)共同住宅等で階数が11以上 交付決定~2027年2月28日
申請時期(工事の出来高)
(1)注文住宅の新規※3 補助額以上の工事の完了後 ①基礎工事の完了
(抗基礎の場合は抗工事の完了)
②建物価格×工事出来高(〇%)
 ≧戸 当たり補助額 × 住戸数※4
(2)新築分譲住宅の購入※3
(3)リフォーム工事 すべての工事の完了後
※3(1)(2)のいずれの場合も①②のどちらかを満たしている場合に、補助額以上の工事が完了しているとみなす。

※4 戸建住宅:1戸、共同住宅:当該住宅の全住戸数(申請しない住戸を含む。)

出典:子育てエコホーム支援事業の内容について

対象期間
契約期間:2023年11月2日~遅くとも2024年12月31日(予定)
着工期間:2023年11月2日以降に基礎工事より後の工程の工事に着手※5
期間内に基礎工事より後の工程の工事に着手するものを対象とします。ただし、申請時に工事が一定以上の出来高※5に達しているとともに、別途定める期間内に申請、完了報告が可能なものに限ります。
※5 補助額以上の工事の完了とします。

○ 基礎工事より後の工程の工事への着手

令和5年11月2日(令和5年度経済対策閣議決定日)以降に基礎工事より後の工程の工事に着手※6するものを対象※7とします。

※6 工事請負契約後に行われる工事であること
※7 着手可能な工事と対象とならない工事(具体例は下表参照)

〇 2023年11月1日時点で、着手可能な工事 杭、基礎、地下室、基礎断熱、足場等の仮設、給排水、電気、土台数、外構
× 2023年11月1日時点で、着手済の場合は、対象とならない工事 地下階の柱、壁、梁、屋根
出典:子育てエコホーム支援事業の内容について

「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」ガイドライン発表

2022年6月に建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律が改正され、建築物の販売・賃貸時の省エネ性能の表示について制度が強化された。
これを受けて、改正法に基づく表示ルール、制度の施行に向けた表示の促進方策として「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」が2024年4月1日より施行される。

省エネ表示制度の根拠となる「建築物のエネルギー消費性能に関し販売事業者等が表示すべき事項および表示の方法その他建築物のエネルギー消費性能の表示に際して販売事業者等が遵守すべき事項(以下、告示)」および「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン(以下、ガイドライン)」が9月25日付で国土交通省より発表された。

また9月26日よりガイドライン(第1版)の解説資料および事業者向けの解説動画が特設ページにて配信が開始された。
詳しくは国土交通省「建築物省エネ法について 省エネ性能表示制度 特設ページ
」を参照。

建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度|国土交通省 (mlit.go.jp)

(例)努力義務の対象となることが想定される建築物
住宅/新築分譲住宅、新築分譲マンション、賃貸住宅、買取再販住宅 等
非住宅/貸し事務所ビル、貸しテナントビル 等

既存建築物については、建築時に省エネ性能が評価されていない等の理由により、表示すべき事項等を表示できない場合が想定されることから、告示(案)においては、既存建築物については必ずしも告示に従った表示を求めないこととしている。

新型コロナウイルス感染拡大の抑制等の最新学術動向(東京理科大学・倉渕隆教授)

一般社団法人建築環境設計支援協会・代表理事の倉渕隆先生による、新型コロナウイルス感染拡大の抑制等の最新学術動向や当団体の活動内容の紹介。

代表理事・倉渕 隆(東京理科大学工学部建築学科 教授、空気調和・衛生工学会換気設備委員会委員)

「新型コロナウイルス感染拡大の抑制について、感染経路はインフルエンザと同様、飛沫感染と接触感染が重要ですが、空気感染に近い微細なエアロゾルによる感染も疑われています。
インフルエンザに比べて、致死性が高いので、とにかく感染しないことが重要です。
厚生労働省が推奨している必要換気量30m3/hは、カナダの医療施設における結核の院内感染に関する調査結果に基づく2回/hを目安にしています。これは一般病棟に感染者がいるかもしれない想定に基づくもので、患者一人当たりの気積は2×4×3=24m3ですから2回/hだと48m3/hなのですが、これが概ね30m3/hと同じオーダーとして、空気感染する伝染病における換気対策を想定しています。
至近距離の飛沫感染は、換気では防げないので、まず一定の距離(できれば2m以上)を保つことが重要です。また動画中にもあるように、中距離の飛沫による感染には換気が効くと考えられ、できるだけ換気量を増やすのがよさそうですが、特に置換換気などで実現できるピストンフロー(一方向に流れ、後戻りのない気流)にするのが望ましいと思います。」

換気の「見える化」

新型コロナウイルスの感染経路として、空気中を浮遊する微粒子(エアロゾル)によるものがあり、そのリスク低減のためには換気をするのが基本です。その換気の状況を「見える化」し換気の目安を計算した産業技術総合研究所の首席研究員、原史郎さんの研究成果が興味深い。

内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室のサイトに、その研究成果が発表されている。オフイス、食堂・レストラン、ディービス、スポーツジム、カラオケ、住宅でCO2濃度を測定し換気の目安を計算している。

https://www.covid19-ai.jp/ja-jp/organization/aist/articles/article001

住宅については2003年以降に建てられたものは24時間換気システムが法的に義務付けられているので換気口の掃除と窓開け換気の併用が有効なようだ。

『住宅でのCO2測定
24時間換気対応換気口を備えた個人住宅では、寝室に2名で就寝すると、朝には1,000ppmを超えるようになる。ただし、その値が直に不健康を意味するわけではない。
換気口を掃除すると、CO2の排出効果が促進される。本例では、昨年度末の大掃除から11ケ月経過後に換気口の掃除を実施したところ、換気効率は、1割程度回復。
朝起床後などに適宜窓を開けると、5分でCO2濃度は半減する。
基本的に、各部屋は【空気の屋外排出】の向きにファンが取り付けられており、他の部屋とは空気の流れでは独立である。しかし、リビング、ダイニング、廊下は気流の上流側であり、感染者が出た場合感染者との動線が交差しないように注意が必要。』

原さんの研究のまとめは、

『CO2測定で、どのような人数でも、換気状況が明快にわかる。
典型的なそれぞれのシーンにおいて、本研究結果で示された換気対策を施すことで、CO2濃度を建築基準法で定める1,000ppmに抑える運営が可能。
ただし、個別事例で部屋の換気性能はまちまち。より安全に換気対策を施すには、CO2センサーを用いて、常時測定することで、数値に基づく換気の運営が可能になり、間欠換気などを適切に実施できる。
換気程度がわからない場合でも、冬はその分暖房を強めるなどして、少しでも多く窓を開けるなどして外気取り込みを多くすることが効果的。
CO2測定は、あくまで浮遊微粒子の換気状況を明らかにするもの。近接飛沫対策(マスク、衝立、ソーシャルディスタンス)と媒介対策(手洗い、消毒)は併せて必ず行わなければならない。』

悩むのは、どのぐらいの仕様のCO2測定器が必要かと言う事、アウトドアでは、テントや車中泊の場合CO2測定器を購入した方が良いと言われている。その場合は安価なCO2測定器で充分なのだが、建築室内の場合は、事務室とか会議室とか部屋別に設置して管理したほうが良いのか。そういえば工場等で従来から環境要因を見える化するシステムがあったはずと思い、検索したら見つけた。熱中症対策の温度湿度計測、二酸化炭素濃度の計測「CO2れんら君」。

https://nke.co.jp/ec/network/renra/n0028.html

もうひとつ悩むのは、そもそもの「外気の質」。昨年からマルチワークスペースに取り組んでいたので、都心部、都心郊外、東京から100kmぐらい離れた田園地帯とそれぞれの地域環境で外気の質がこんなにも違うものかと実感していた。具体的には山手線内側とさいたま市と千葉県の三里塚、三カ所比較しても全然外気の質が異なる。勿論温度、湿度も同時間でも異なるはずだ。ただ科学的に外気を計測したわけではないが、その置かれた地域環境で対応は異なるのではないだろうか。

壁面緑化 -2

さいたまスーパーアリーナのJR線路敷きに沿った壁面の緑化

西側の壁面に沿って南北の通路があるのを始めて知った。

説明書には

「ヒートアイランド現象に対する配慮から、アリーナ東西の壁面には、つた系植物(ヘデラヘリックス)が植えられた壁面緑化ユニットが設置されています。また、これらの潅水にも、地下の貯水槽に貯えられた雨水を利用し、水資源の有効活用をしています。」と書かれている。

裏メニュー

このところ「改正建築物省エネ法オンライン講座」を視聴している。分割して好きな時間に視聴できるので とても良い。

振り返ると非住宅2000㎡以上の建物が省エネ適合義務となった平成29年前後は、弊社でも省エネ計算サポートの業務は、かなり多かった。その後、モダル建物法が拡充され計算方法が簡略化された上に省エネサポート会社が増えこともあり、自然と業務は減っていた。何事も諸手続きが簡略化していくと、中間的な技術者や専門家は必要なくなっていくものだ。

経済学で言うとイノベーションで獲得される期限付きの剰余価値を「特別剰余価値」というのだそうだ。特別剰余価値は、「ある商品の現在の社会的価値と未来の社会的価値との差異から生まれる」。

資本主義はダイナミックに常に変転している。その変化に対応して自営業者として生きていくのは中々忙しい。

省エネ計算サポートは、現在のところ特段営業もしていないが決まった固定客からの依頼と紹介業務は途切れずにある。

さて弊社の裏メニュー化しつつある「省エネ計算サポート」。一年を振り返ると途切れずに依頼がある。とりわけ300㎡以上の集合住宅が多い。集合住宅の場合は意匠上のタイプ数は少なくても、外皮条件や階高等が異なる場合も多いので省エネ上のタイプは増えがちで計算上は煩雑になる。

今年発表された「フロアー入力法」も取り入れてみた。計算は簡略化されるが、それぞれの外皮の熱貫流率は最も大きい数値、窓の日射熱取得率も最も大きい値とされているので、どうしても棟全体のBEIは安全側になる。施策的には安全側に誘導することになるのだろうから良いのかもしれないが、民間賃貸アパートなどの場合は熱的性能は貧弱なもの多く、意匠設計者が従来の熱的性能の延長で考えているとBEIがオーバーすることがある。

来年4月に迫ってきた非住宅300㎡以上の省エネ適合化。色々と準備しておかなければならない。

透明ソーラーパネル

ミシガン州立大学が作った「透明ソーラーパネル」赤外線や紫外線といった、人間の目には見えない波長の光のみを吸収するので、透過する光の明るさは変わらないらしい。ビルや建物に使われている全てのガラスで発電できるようになったら、エネルギー問題は改善し、自立循環型社会に大きく舵を変える事ができそうだ。

https://www.arch2o.com/transparent-solar-panels-will-turn-windows-into-green-energy-collectors/?fbclid=IwAR3lIYfkKyjn-W8dfeVTLw235iPQiNOt7Z1yKjihKQFD0SNA-TB6QtYpc30

あと1年、300㎡以上非住宅建築物省エネ適判まで

いつのまにやら4月になった。

これまで届出義務となっていた中規模非住宅建築物に、省エネルギー基準への適合義務が課さられ、以前から適合義務の対象だった2000m2以上の大規模非住宅建築物と合わせ、300m2以上の非住宅建築物全てに省エネ適合性判定(省エネ適判)が求められるようになる。21年4月に予定している施行日以降に確認申請を行う建築物が対象だ(施行日以前に届出をした場合を除く)。
 一方、300m2以上の中規模・大規模の住宅(共同住宅)については、従来どおり届出のまま。

この3月は、省エネ届の計算代行の仕事が続いた。平成27年から平成29年までは、省エネ計算代行の仕事は結構多かった。ほとんど標準入力法でやっていたが、簡便なモデル建物法が導入されたことや省エネ計算代行会社も増えたこともあり、特に新規営業もしていないので依頼は減った。専門家はあまり必要ないのかも知れない。現在は昔から付き合いのある会社の省エネ計算代行しか行っていない。建築法規の無償相談付きだからかもしれないが。

まあ、非住宅のモデル建物法は、簡便である。

問題は共同住宅だな。省エネ上のタイプ別に計算をしないとならないし、現状は共用部は標準入力法だし、結構煩雑で手間がかかるのは変わらない。

非住宅300㎡省エネ適判は、変更申請とか完了検査に応じた変更箇所の把握と書類の整備が混乱しそうだなぁと予感している。

外装材の風圧力

最近 知人から、千葉鋸南町の道の駅 保田小学校の旧体育館をコンバージョンしたマルシェ(農産物販売所)が台風15号で被災して建物上部の中空ポリカポネート板がほとんど剥がれ、使用できなくなったと聞いた。何故か屋根は無事だったとの事。RC部分(旧教室校舎)は使えていて、温泉も機能して地域の復興拠点になっていると聞いた。

下2枚の写真は、私が2016年2月に撮影した写真。

【2016年2月撮影・道の駅保田小学校・マルシェ】

【2016年2月撮影・道の駅保田小学校・マルシェ】

下の写真は、台風15号で被災した直後の道の駅 保田小学校マルシェ

外装材の中空ポリカポネート板が剥がれ落下している

下の2枚は、最近のマルシェの状況・使用停止中

道路側だけは 合板で囲われている。一日も早い復旧と被災からの復興を願っています。

さて 思い出したのは、帳壁の風圧力は、平成12年建設省告示第1458号に規定されている計算式と係数から算出した風圧力を使用するが、高さ13m以下の建物や1階部分については適用除外となっている

平成12年6月2日付「建築基準法関連法令及び告示の制定・改正に関する意見募集の結果について(建設省住宅局建築指導課)」の「建築基準法関係省令及び告示の制定・改正案に寄せられたご意見の要旨と建設省の考え方」には、次の記載がある。

【寄せられたご意見の要旨】

13m以下の建築物についても帳壁の構造計算を義務付けるべきである。

【建設省の考え方】

最低限の基準と言う観点から、13m以下のものについては、仕様規定(昭和46年建設省告示第109号)により対応することとしています。

一方で、「『平成12年6月1日施行 改正建築基準法・施行令等の解説』講習会における質問と回答」には、次の記載がある。

【質問】

外装材の構造計算に関して、高さ13m以下の建築物の取り扱いとその根拠は?

【回答】

13m以下の建築物における外装材の構造計算については規定していないが、検討する場合は平12年建告第1458号に従って計算を行うのが望ましい。

道の駅 保田小学校・マルシェの中空ポリカポネート板が、どういった計算に基づく施工方法(胴縁への留め方)をしたのか不明だが、低層建物でも注意は必要だ。

タワマンのリスク

今年は、春から横浜の仕事が連続しているので池袋から横浜まで湘南新宿ラインで移動することが多い。

このところ車中から武蔵小杉のタワーマンションに灯る まばらな光を眺めていた。

たまにしか週刊誌を読まないが、「週刊現代」10月2日・9日合併号の「検証 武蔵小杉の悲劇 タワマンで何が起きたのか」の見出しにつられて読んでみた。

今は、この内容はデジタルで全文読める。

武蔵小杉高級タワマン

台風19号の被害で地下の電気室が水没し、停電、照明・ELV・水道・トイレも使えなくなったという事は 報道で知っていたが全貌が明らかになりつつある。不動産会社から「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」の中古売り物件が沢山でていると聞いた。

排水の合流式・分流式といった都市のインフラの課題。タワマンの設備関係のリスクマネジメント等、とにかく今年は災害が多く色々とこれからの建築を考える機会が多かった。

3.11の時もタワマンは停電でインフラが使えなくなって一時期人気がなくなったのだが、タワマンのスペックは さほど変わってなかったようだ。

広告代理店が考えるタワマン・ポエムは相変わらずだし。

個人の防災対策

誰か神様を怒らせた人がいるのだろうか。

僕は「あの人」だと思うけど・・

日本中の神様が出雲に集まって、今 色々と相談中なのかも知れない。

神様を怒らせると本当は恐ろしいことを現代の人は知らないから。

さて台風15号、台風19号による被害は、日本のインフラの脆弱さを表面に出した。リスクは、以前から国土交通白書等で指摘されていたことだが、実際たて続けに被災し大手メディアでは報道されない各地の被害状況を聞いたり、見たりすると、阿武隈川の氾濫で1階が水没して現在はホテル住まいとか、土砂崩れにあったとか、床下浸水したとか。相当広範な地域が被災していることがわかる。早期の復旧が望まれる。

武蔵小杉のタワーマンションの被災や川崎市市民ミュージアムの地階収蔵庫の水没(現在休館)、東京都市大学世田谷キャンパスは、図書館の地階図書室を始め教室などが被災した為、全ての施設の利用停止、終日休講と聞いた。10/28再開とのことだが、まだ確定ではないらしい。というように建築物の被災も沢山耳に入ってくる。

既存建築物の防災対策の見直しは急務になるだろうなと思っている。ただ そのスペックをどの程度にすれば適正なのかが悩ましいところだ。

さて個人の防災対策だが、3.11以降 どちらかというと地震対策に重きを置いていた。東京の山手線の内側に住んでいると食糧の供給がストップすると完全にお手上げなので、米・缶詰・水の備蓄は万全にしてきた。

今回も、台風が到来する前日からコンビニから食べられそうなものは一切なくなっていたし、食品が納品されて普段の状態に戻るまでに、台風が去った翌日の夕方になった。

今年の台風被害で、個人的に見直しているのは「電気」

現在、所有している蓄電池は、60000mAh 222Wh 家庭用蓄電池 QC3.0 / TypeC搭載 LED画面表示 三つの充電方法 ソーラー充電 ACコンセント(200W 瞬間最大300W) DC(180W)/USB/Type-Cなど出力 LEDライト 発電機という仕様で、安かったので試しに買っておいた商品。

照明とか電気ポット、ホットプレート等を使うには支障がないらしいが、インバーターが修正正弦波なので一般の家庭用家電を長時間使うのは支障があるらしい。ノートパソコンの接続もしない方が良いと言われた。

長期間の対応を考えると現在はソーラーパネルを持つていないのでソーラーパネルと正弦波インバーター付きか別の蓄電池が必要になるかもしれない。

ソーラーパネル+ソーラーチャージャーコントローラ(インバーター)+蓄電池という構成だが、ソーラーパネルの設置場所には限界があるし、屋根設置はメンテナンス上避けた方が良いと言われた。そうなると蓄電池の容量・能力に期待したいところだが。今話題のリチウムイオン電池は、少しお高い。

テスラも家庭用蓄電池を日本市場に投入するといういうが、次世代蓄電池も含めて蓄電池には関心を持つている。敷地に余裕があるところでは地べたにソーラーパネルの設置をすることは可能だろうが、高密度の都市住宅では設置面積に限界があるので色々と考える余地はありそうだ。

家庭用では、投資対効果を含めて考え、どの程度の仕様にするか検討中。試験的に3階バルコニーにソーラーパネルを設置して3階照明だけは、オフグリッド的にして試験運用してみようかと色々と思案中。たかだか個人の小さな発電装置ですら悩むのだから建築物の防災対策のスペックは悩ましい限りだ。

モバイルバッテリーは、この24000mAh モバイルバッテリー ソーラーチャージャー ソーラー充電器 の他、2台所有しているし、乾電池はストックがあるので充分だと思う。ガスボンベの備蓄もあるし、アウトドア用品は基本的に揃っているので建物が全壊しない限り避難しなくても大丈夫かも知れない。

日常的にリスクマネジメントは大事だと考える今日この頃。

罹災証明の為の建物被害認定調査(水害編)

水害で家屋が被災したときの,り災証明書取得のためのポイントをまとめています。かたづける前の記録の残し方について。建物被害認定調査のトリセツ「水害編」

罹災証明の為の建物被害認定調査は自治体職員が行っています。今後は建築関係の諸団体に依頼が来るかもしれません。建築専門技術者でなくても一般的な木造住宅は調査できるようなシステムになっています。スマホ用アプリ等のツールも整備されています。水害編の他に風害編、地震編もあります。

建物被害認定調査(水害編)

 

災害対策・防疫対策

日本経済新聞を眺めていたら、「防災科学技術研究所と一条工務店(東京・江東)は2日、茨城県つくば市にある世界最大級の大型降雨実験施設で、ゲリラ豪雨や洪水の対策をした「耐水害住宅」の公開実験をした。一般的な住宅が床下・床上浸水するのに対し、排水管の逆流を防ぐ弁の設置などによって浸水を防止できた。」と書かれていた。

日経「耐水害住宅実験」

過去の想定値を超える風水害がこれだけ増えてきているので、それらの対策を施した戸建て住宅の仕様を作成する必要があるだろうなと思っていたところ、ちゃんと研究開発しているところはあるんだなと感心した。

地震も含めた災害対策住宅は関心を集めているし対策も色々と考えられてきているが、「防疫」の観点はどうだろうか。

最近の旅館ホテル業の現場での悩みを聞くと、外国宿泊客によるトコジラミ(南京虫)被害が増加しているらしい。訪日外国人観光客の増加、とりわけ低予算で長期間にわたり旅行するバックパッカーの増加が要因としてあげられていた。トコジラミは安価な宿での被害報告が多い上、彼らが全国各地の観光地に広げていると言われている。

「トコジラミの恐ろしさは、爆発的な繁殖力と飢餓への強さにあります。1人の旅行者に付着した、たった1~2匹のトコジラミが3カ月後には数十匹にも増殖してしまうのですから、その繁殖力たるや恐ろしいものです。トコジラミの成虫は毎日5~6個の卵を3か月にわたって産み続けます。この計算では、1匹の親から約500匹ものトコジラミが生まれる計算になるのです。また、寿命は半年~1年以上ですが、大変飢餓に強く、2カ月以上吸血しなくても生き続けることができます。そのため、「しばらくその部屋を使わないようにすれば、いなくなるだろう」といった甘い考えは通用しません。

駆除に一定期間が必要(2~3週間、刺されると激しい痒みが1週間以上続く、毎日産卵する(3ヵ月間)、市販薬が効かない、血を吸わなくなっても2ヵ月以上生き続ける、1mmの隙間があれば生息可能、風評被害による営業不振、クレームにより訴訟沙汰になることもあります。また住宅地内にある民泊から周囲の住宅に広がる可能性もあります。」トコジラミ駆除ザウルス

また様様な感染症の媒体となることもあります。

私の地元で、民泊出店が計画された時に 防疫のことも心配事として指摘したのですが、民泊事業者の問題ではなく、行政の問題だったので要望事項には入れませんでした。

政府は、訪日外国観光客や外国人労働者(移民)を増やすことばかりに目がいっていますが、それに伴う現場でのトラブルは現地・地域住民任せです。

パンデミックスは 身近に潜んでいるのです。

人類の歴史は疫病との闘いでもあり、日本でも明治時代に全国各地につくられた長屋建築規制条例は、コレラ対策として住宅の衛生状態確保のために作られました。

疫病と建築との関係は、また別の機会に書くことにします。

「建築物省エネ法説明会~適判における疑問点と対処法の紹介」

今日は、朝から川越市役所に行き 折り返して永田町へ、午後から「建築物省エネ法説明会~適判における疑問点と対処法の紹介」講習会に参加してきた。地下鉄有楽町線と東武東上線を東西に行き来しているだけなので電車の中で睡眠時間を補えれる。

2017年4月からの建築物省エネ適判は、自分は3件しか経験していないが、建築確認決済に合わせてバタバタと修正し間に合わせたようになった。これから軽微変更や計画変更、完了検査を迎えるわけだが、その経験を踏まえていないので、どういう問題点が発生するのかわかるのはこれから。

夕方 事務所に帰ると、(株)計画・環境建築 代表取締役 澤崎宏氏が今朝亡くなったとの訃報が届いていた。

東京都建築士事務所協会 千代田支部長、工学院大学非常勤講師、工学院大学校友会役員等、数々の公職を勤めている。

彼は大学の後輩にあたるので、会えば働き過ぎだよと注意していたのだが、昨年夏ごろから体調を崩し、入院して闘病していた。暮れに容態を聞いたとき この日が来るかもしれないと思っていた。

無念だろうな澤崎君。

残念だよ 君がいなくなって

合掌

「伝統的民家における温熱特性と現代住宅への応用に関する研究」金田正夫著

本書は現在、無垢里一級建築士事務所を主宰されている金田正夫氏の学位論文です。金田氏は 設計実務を続けながら法政大学に学び2011年3月に博士号を取得され、現在も実務と研究を続けられている「在野の研究者」です。

本書では、民家の温熱特性については茅葺屋根の日射遮熱効果や民家の通風特性についての既往研究は調査事例があり解明されつつあるとし、夏季における置き屋根による日射遮熱、土壁による西日遮熱、民家構成材による調湿、冬季における放射熱源と土壁の採熱・蓄熱については調査事例が少なかったので それらを補完するのが本研究の第一目的としています。

また、民家の温熱特性を現代住宅の諸条件の中で応用し、その効果を対比検証していますが、それが第二の目的としています。

とりわけ面白いと思ったのは「置き屋根(二重屋根)」による遮熱効果。夏の良好な温熱環境をつくるうえで無視できない西日遮熱の問題。民家の調湿効果を類似の新建材に特化した調湿実験の結果。約10年間にわたる実測に裏打ちされた研究成果が満載されています。

「自費出版」ですが、住宅の温熱環境に関心がある人には読んでほしい一冊です。

申込は 下記「無垢里」サイトへ

無垢里

 

新「そらまどの家」 丸谷博男著

「地球の恵みの素は、太陽の熱 その熱は、1億5千万㎞を駆け抜けてきた輻射熱です。 「そらどま」は その輻射熱を 住まいに採り入れ その輻射熱で 採暖採涼をします。 太陽の恵み「そら」の熱と 地球の恵み「どま」の熱を 両手両足を背一杯広げて 受取る仕組みです。 そして、人と住まいの健康の素「呼吸する家」をつくります。」

エコハウス研究会

エコハウス研究会のホームページ巻頭に書かれていた この言葉にほれぼれとしました。

「そらどまの家」はフランチャイズではなくオープンシステムです。

「その土地の微気候、それぞれの工務店の工法や技術力にふさわしい、きめの細かいパッシブな家づくりを創案し、皆様のものにしていただこうというものです。このような考えこそがパッシブデザインの本質と考えています」

高断熱・高気密住宅には違和感をずっと感じています。ビーニール袋にアルミの蓋住宅の傾向は、今も昔も何ら変わっていません。省エネと言いながら石油製品の断熱材を多用する矛盾。

日本の風土と共に息づいてきた伝統工法の知恵を生かした家づくりは憧れですが、庶民には高嶺の花であるという現実も存在しています。

省エネ適判が始まって・・

省エネ適判・非住宅2000㎡以上が2017年4月1日より始まり二カ月半あまり経ちました。この間二つの審査機関から計3件の省エネ適合通知を貰いました。内、標準入力法2件、モデル建物法1件でした。

他にも省エネの届け出は、数多く提出していますが、届出とは異なる適判ならではの問題があります。

とりあえずの感想としては「省エネ適判の実務者は大変だぁ~」でした。

恐らく省エネ計算をする担当者、審査者も同じような感想を持っているのではないかという想像しています。

まず第一に省エネ適合となると意匠・設備関係の変更・修正の影響を確認済証交付の最後まで、まともに受けます。これは構造適判とは異なるところです。

意匠図と設備図との整合、開口部の変更、面積の修正や変更、消防からの指摘事項に伴うもの(消防法の無窓階判定により開口部が変更になったりとか)、建築確認申請が本受付になり、消防同意送付をしている短い期間で補正をして省エネ適合通知を貰っておかないと建築確認済証は交付されないからです。

大概のプロジェクトは確認済証交付日の厳守は絶対ですから、実務者は翻弄されます。

出す側も審査する側も初めてなので、これから試行錯誤しないといけないかと思いますが、幾つか改善点があると思います。

1、意匠設計者や設備設計者の図面等の記載事項・記載方法の改善

  • 断熱仕様等の名称・厚み・(密度)等は正確に記載する
  • 平面図に室面積・天井高を記載してもらう
  • 幾つもの図面に同じことを記載しない。不整合を生じる要因
  • 設備関係の機器の仕様は、新しいカタログから引用する。時々廃番あり
  • とにかく設計者は、意匠図や設備図等との整合は自分でやってほしい。
  • その他多数あり

2、審査機関は、なんでもかんでも計算根拠・図の提出を求めない

例えば

  • 換気扇の定格出力は、消費電力(KW)×電動機効率(0.75)×1/1000=定格出力(w)で電卓をチョコチョコと叩き入力シートに記載するが 、計算根拠の提出を求められた
  • 給湯機器の定格加熱能力と熱源効率の計算根拠を求められた。ガス給湯器の32号の場合、定格加熱能力は 32号×1.74=55.68KW、定格消費電力が0.075KW、定格燃料消費量(表示ガス消費量) LPG 58.7とした場合。熱源効率は、定格加熱能力/定格消費電力×9760/3600+定格燃料消費量で求めるのだが、これも今までは電卓をチョコチョコ叩いて入力していた。
  • とにかく第三者が審査するとなると、とかく数値の根拠を求められますが簡単な計算のものは根拠を求めないでほしい。

3、審査機関は自分でWEBPRO等のプログラムを使ってみて欲しい

  • 省エネの室用途は、建築基準法の室用途とは異なります。換気があっても換気計算対象室になっていない室用途はエラーが出るので別の室用途にしなければなりません。現実の建物は多様なのです。自ら入力シートを作成しプログラムで計算して経験の上で指摘して欲しいものです。

4、省エネ適判の時代に備えて、特に意匠設計者の頭を切り替えて欲しい。

全建物省エネ適判の時期は迫ってきています。設計のスケジュール管理や図面の記載方法、省エネサポーター等の外注任せでは これからはいけないと思いますよ。

他にも書きたいことはありますが、この程度でやめておきます。

深夜? 、早朝5時に毒を吐いてしまいました。

モデル建物法と標準入力法

4/1から非住宅2000㎡以上の省エネ適判が始まり、今日2件の省エネ適判の事前申請を提出してきました。連休明けにもう1件省エネ適判の事前申請を提出しないとなりません。今晩はつかの間のオフ。ブログに投稿する余裕がちょつとできました。

建築物省エネ法における非住宅建築物の計算方法については、「標準入力法」「モデル建物法」「主要室入力法」があります。

【モデル建物法】

建物用途毎に建物形状や室用途構成などを想定したモデル建物に対して、評価対象建物全体の外皮や設備の仕様を適用した場合のPAL*及び一次エネルギー消費量を算定して評価する簡易な計算方法です。

【標準入力法】

評価対象建築物の室毎の面積や外皮・設備の仕様を入力して計算します。
BELS認証取得など詳細な数値が必要な場合は、実際に建つ建物の面積・形状に仕様を当てはめて計算する標準入力法を採用しす。入力に時間がかかり設備の知識も一定程度必要です。

「モデル建物法」は、「標準入力法」よりも計算方法は簡易ですが、一般的には1割ほど安全側(不利側)の評価結果になります。「モデル建物法」でクリアできない建物でも、「標準入力法」で計算する事でクリアできる場合も有ります。

【主要室入力法】

小部屋などの主要でない室の入力を省略できる計算方法ですが、主要室選定の条件が複雑で適用が難しい場合があり、実務的には使いづらくあまり使われていないと聞きます。計算支援プログラム(WEBPRO)は標準入力法と同じです。

【モデル建物法か標準入力法の選択】

建物の図面を見た時に、モデル建物法か標準入力法で行うか判断しないとなりません。入力作業量がかなり違いますので見積額・報酬も異なりますし、省エネ適判の申請料も大きく異なります。

通常 建物の用途が単一(飲食店・事務所・学校・物販店等)あるいは2程度であり、建物形態が単純であればモデル建物法。建物用途が多数の複合建築物であれば標準入力法の方が逆に入力が簡単であり、説明資料の作成も簡単ではないかと個人的には思っています。ましてやモデル建物法のような大雑把な計算方法で本当にいいのかしら??とも思うので、出来ればすべて標準入力法でやりたいところです。

とは言え趨勢は「モデル建物法」になっていく事でしよう。政策的にも省エネレベルを安全側に誘導できるのですから。BELS認証が必要な建物や特殊な形状なものなどが「標準入力法」を採用することになるのではないかと思います。

ともあれ省エネ適判が始まり、その混乱の渦の中にいます。建築確認申請と同時並行って結構疲れます。

なたねづゆ

【車窓から・飛鳥山の桜】

菜の花が咲く頃の3月から4月にかけての 降り続く小雨のことを菜種梅雨(なたねづゆ)と、いにしえから言うそうですが、それにしても今日は寒いですね。

このところ引きこもりで省エネ計算に取り掛かっています。

今年は花見も行けていません。

多分 ゴールデンウイークもずっと仕事になりそうです。

3月末から4月にかけてH28基準の省エネ計算ツール、入力シート等が変更になり、またエネルギー消費計算計算プログラム入力シートからモデル建物法入力支援ツールの入力シートを生成するコンバートツール等も発表され新規建物の計算に追われる中で変更箇所を勉強していました。

モデル建物法を推奨するのは、建築環境技術者・設備技術者が建築業界・審査機関に少ないからというのもありますね。

建築環境技術者というのは今後確立した領域としなければならず、その人たちが省エネ・CASBEE等を扱っていくのが望ましいと思います。

弊社は、省エネ計算は基本的に標準入力法ですがコンバートツールを使ってみて、標準入力法の場合とモデル建物法で、どの程度差異があるか興味深いです。

弊社は、立方体の建物の省エネ計算を依頼されることは少ないので、標準入力法で計算しておいて、BPI・BEIに余力がある場合はコンバートしてモデル建物法で省エネ適判に提出するというのが良いかなと思ってます。

省エネ適判の申請料が、どこも高額なので顧客の負担を減らすためにはコンバートする方が審査時間も短縮できるから良いのかなと思いますが、こちらの手間は少し増えますね。

これから何件か省エネ適判を提出しますが、審査機関の対応はどんなもんでしょうか。

4月 新年度

4月、新年度になりました。寒の戻りがありましたが桜はあちこちで咲き始めました。

4月1日から建築確認申請書式が新しくなります。そして非住宅2000㎡以上の建物の省エネ適合判定がいよいよ始まります。

登録建築物エネルギー消費性能判定機関(多くは民間の指定確認検査機関)が「建築物省エネ法判定業務規程」と「料金表」を発表し始めています。まだ準備中のところもあるようですが、来週中には各社出そろうでしよう。

各社とも建物用途、面積別、入力法の三つで料金を考えているようですね。

審査対象面積が2000㎡~5000㎡までは同価格で標準入力法・主要室入力法の場合はモデル建物法の概ね倍の価格というところが多いですね。

意外と高い料金設定になっているという印象を持ちました。

例えばA社は審査対象面積2000㎡から5000㎡で用途が老人ホームの場合、標準入力法・主要室入力法で250,000円(税別)、モデル建物法で150,000円(税別)となっています。B社は同条件で標準入力法・主要室入力法で300,000円(税別)、モデル建物法で150,000円(税別)となっています。

建築確認申請と併願の場合は減額したり、事業者別に特約を締結して実際は料金表より低価格で受注している指定確認検査機関が多いと聞きますから、実勢価格は公表価格と異なるでしようけど。

指定確認検査機関の受付窓口に、審査機関系列会社と思われる省エネ計算コンサル会社や省エネ計算サポート会社のチラシを置いて業務を誘導したり、計算は系列会社で行い審査は審査機関でワンストップというのは止めて欲しいものです。

遮熱措置

倉庫業の登録は10種類に分類されますが一類倉庫は、求められる構造基準が厳しい分、保管可能な物品の種類も多くなっています。危険物及び高圧ガス、10℃以下保管の物品を除いた全ての物品の保管が可能です。

一類倉庫の施設設置基準は、倉庫業施行規則運用方針(H14.3.29付け、国総貨施第25号)に詳しく記載されていますが、その中に表題の「遮熱措置」(則第3条の4第2項第6号)があります。

既存の自己用倉庫を一類倉庫として登録申請するためには施設設置基準を満たさなければなりませんが、その中の一項目である「遮熱措置」の規定は、屋根・外壁・開口部の平均熱貫流率が4.65W/㎡・K以下となるようにしなければならないと定められています。

熱貫流率、熱伝達率、熱伝導率等、建築の環境計画を学んだ人なら基本的な事を知っていれば容易に計算できますが、外皮の平均熱貫流率が4.65W/㎡・K以下というのは、結構緩い基準のようにも思えます。

私の試算では、屋根が折版の場合は断熱ペフt=4mm、外壁は角波サイディングに石膏ボードt=9.5程度があれば平均熱貫流率は満足するようでした。

もつとも運用方針でも、天井がある場合や準耐火構造の屋根、外壁の場合は適合しているものとして扱うとありますから、さほど厳しい基準ではないということです。

昔は、おおらかだったのに・・

最近、知人から聞いた話ですが、

確認申請・実施設計が完了し、省エネ設置届をコンサルに依頼したら計算がOUTになったので断熱材の仕様を変更して省エネ設置届を提出した。仕様変更の旨を工事会社と建築主に告げたら、それは設計者の瑕疵だから断熱仕様変更に伴う追加工事費は、設計者が負担すべきとなり、設計監理料から減額されることになった。との事でした。

昔は、追加になっても工事会社で面倒みてくれたり、他の部分で変更してプラスマイナス0にすることもできましたが、今は 世の中余裕がないというか、すぐコンプライアンスがどうのこうのと言われる方もいるみたいです。

省エネ関係の法令や計算ブログラムは毎年のように変わっているので、過去の経験だけで省エネ仕様を決めていると、紹介した事例のように、あとで痛い目にあうこともあるようです。

弊社は、特定の会社の省エネ支援しかしていませんが、非住宅の建物用途も毎回異なりますし、形態も結構複雑なものが多いので計画段階から一緒に省エネ検討を行っています。断熱材の仕様選定、開口部やガラスの仕様選定は、計画段階で確定できます。

このところ省エネスタディーの毎日です。

建築物省エネ法の詳細説明会@東京

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11/15「建築物省エネ法の詳細説明会」国際フォーラムに参加してきました。いよいよ来年H29年4月(予定)より、非住宅部分の面積が2000㎡以上の建築物の新築建物について、省エネ基準への適合義務化が始まります。

それについての適合義務(適合性判定)・届出マニュアルについて、設計図書記載例・工事監理マニュアルについて詳細が明らかになりました。

計算方法については、これまでの「モデル建物法」の5000㎡以下の建物に適用としていた面積要件を撤廃、中央式空調の評価を可能にし、建物用途の適用を現行8モデルから14モデルに選択肢を増やし、集会場モデルでは計算対象室用途を12に増やしています。

省エネ法の計算法である「標準入力法」から「モデル建物法」へと誘導しています。標準入力法とモデル建物では、その計算手間、審査手間は雲泥の差がありましたから、その誘導の意図はわかります。ただ弊社としては、同一建物で標準入力法と新モデル建物法の計算比較をしていませんので、これまでの建物を比較してどの程度の差があるかを把握しておきたいと考えています。

省エネ適合義務に合わせて設計図書への記載方法も変更する必要があり、仕上表や建具表、設備関係の機器表への対応が必要です。適合義務マニュアルに沿う設計図書が設計者・設計事務所に周知徹底されるかどうか不安が残ります。今でも従来通り、設計図書が完了してから省エネ届を依頼してくるケースが多いの現状です。仕上表への記載名称や数値は整合しなければなりませんが、それが相変わらず省エネ届出に対応していない為、あとから設計図書を是正してもらうことが多いです。また省エネ適合義務と建築確認申請の時期が同時期ですから、一定期間業務の混乱が起こる可能性が高いように思えます。

省エネ適合義務においては、計画変更申請と軽微変更が、ほとんど発生するものと予想しています。

業務が大きく増加しそうなのが工事監理と施工管理事務です。大規模な建物=設備工事監理担当者がいる。施工管理者(現場監督)が多数いるような物件では心配不要でしょうが、意匠設計者が工事監理全般をみているような建物、所長しか正社員でないような弱小現場での事務量増加による負担と責任は、これまでより、かなり重くなると予想します。

ともあれ省エネ適合義務に係る詳細が明らかになりましたから、スムーズに対応できるように、よく読んで準備を怠らないようにしたいと思っています。

 

省エネ設置届にまつわる話し -1

最近 歳を取ったせいか怒りっぽいというか挑発的な言い回しになる時がある。

都内の某区の省エネ審査担当者との会話

区「外皮計算の算定根拠となる図面を添付してください」

私「各室別・方角別に外皮計算をエクセルで作成し添付してありますが」

区「どこがどこの部分という色分けして外皮計算根拠がわかる。こちらがチェックしやすい図面を添付してもらっています」

私「平面図・立面図等の添付してある建築一般図で階高や辺長をチェックするのが審査ではないですか。図面に基づく算定根拠は添付してありますから、それでチェックしてください。」

区「算定根拠図がないとチェックできないでしょ」

私「添付した確認申請の図書である建築一般図で充分チェックできるでしょ」

区「皆さんに図面とは別に算定根拠がわかりやすい図を作ってもらっています」

私「何度もそちらの区に省エネ設置届を出していますが、別図を作成しろと言われたことはありません」

区「皆さんに作ってもらっているし、算定根拠図を作成してもらうのは区の方針です」

提出してあるのは2階建て500㎡あまりの建物だが、屋根形状と外皮形状からモデル建物法はそぐわないと思い、標準入力法で設置届を提出してあった。区に提出(受付)してから18日目になって電話がきた。18日経過しても全部の内容は見てないらしい。

私「今年4月に、そちらに別件の省エネ設置届(標準入力法)で提出したときも別図を作成しないさいとは言われませんでしたよ」

区「誰が担当でしたか」

私「え~っと。Aさんです」

区「わかりました。このままの書類でチェックして質疑書を出します。少し時間がかかります」

私「もうすぐ21日経過するので工事着工が伸びてしまいます」

区「受付してあるから工事着工は構いません」

工事着工の21日前に省エネ設置届を出すというのは、要は書類上の形式的儀式なのですね。

以上の会話 音声にすると結構 お互いにエスカレートした口調なのです。