日本建築センター・技術セミナー「欧州各都市のリノベーション等(改修・用途変更)の事例を紹介しながら、既存建築物の活用術を学ぶ」(団地再生、産業遺産(工場等)、駅舎・港湾まで)

4/18午後から、日本建築センターの技術セミナー「欧州各都市のリノベーション等(改修・用途変更)の事例を紹介しながら、既存建築物の活用術を学ぶ」(団地再生、産業遺産(工場等)、駅舎・港湾まで)に行ってきた。

ほとんどが欧州のリノベーション事例の紹介だった。既に雑誌や出版物で紹介されているもので「技術セミナー」と銘打っているにもかかわらず、意匠的観点に終始しテクニカルな分析はなかった。

例えば、欧州の共同住宅で上に一層ないしは二層増築する事例が幾つか紹介されていたが、欧州の法規制には明るくないが、日本で上増築しようと思ったら基礎耐力の問題だけでなく建築基準法が遡及するために全て現行法に適合させなければならない。非常に難関のプロジェクトになってしまう。

新耐震の建物であろうと地震力が増大するから補強が必要だし、現行法に適合させなければならないので様々な部位を構造的に検証し補強しなければならない。審査機関からも構造適判機関からも矢が束になるような指摘が降ってくる。

日本建築センターが主催している技術セミナーなんだから、法的な問題点を挿入してくれると良かったのにと思った。

「建築ストックの再生・活用には、柔軟な法規制が必要だ」とは、色々なところからよく聞く話だが、具体的な改正試案は見たことが無い。

欧州と異なり、20世紀後半の建築ストックを再生・活用することになる日本では、RC・S造の耐震診断や補強技術は比較的体系化していると聞く。建築病理学・耐震診断・補強技術を集大成すれば、世界を牽引する技術力を持つ事になると思う。

「建築ストックの再生と活用」を担う建築家は、デザイン至上主義ではまとめ上げれないのではないかと思う。かなりテクニカルな面も詳しい「ドクター・ゼネラル」でないとプロジェクを牽引できないだろう。

ともあれ、欧州特にオランダには行きたいと思い少しずつ調べていたので参考になったセミナーだった。

不動産から見る京町屋の活用法@住宅医スクール2014

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「不動産から見る京町屋の活用法」と題した、京都の(株)八清(ハチセ) 代表取締役社長 西村孝平氏の話を聞いてきた。

一般社団法人住宅医協会の住宅医スクール2014の一講座

「築年数30年以上の建物評価のない建物をリノベーションする事で、再びストックとしてよみがえる住宅の総称である」と定義づげした「リ・ストック住宅®」を展開しているが、中でもヒットしたのは「リ・ストック住宅 京町屋」だそうだ。

私の亡父が京都市街の出身なので、おのずと訪れる機会も多いなかで京都市内に空き家が多いのは知っていた。道幅が狭い、駐車場がとれない、接道していないので再建築不可、何よりも夏暑くて冬寒いのが京町屋。アジア太平洋戦争での戦災が少なかったせいで、戦前からの建物。建築基準法(昭和25年)以前の建物がゴロゴロしている。

西村氏の講義によると、(株)八清の京町屋は新しくても築64年とか。(株)八清では、これまでの不動産業界の常識であった築年数で評価するのをやめた「経年美は古くないと評価できない」と語った。

様々な京町屋改修事例、危険家屋再生を見せていただいたが、その一つ一つが老朽家屋の再生、京都市内で増えている賃貸住宅の空き家の活用、それらがまちづくりに結び付いている。

(株)八清のビジネスは、「リ・ストック住宅 京町屋」から、町屋の貸切宿泊施設「京宿屋」と広がっている。

「京宿屋」は観光客の多い京都らしいビジネスモデル。町屋の保存再生、景観維持・保全に貢献しているし、伝統建築である町屋の居住体験を提供している。オーナーとして「京宿屋」を所有して、自分もセカンドハウスして使うこともできるという。賃貸するより収益性の高いビジネスモデル。

私もネットで7月8月の幾つかの「京宿屋」の予約状況を見てみたが、中々稼働率は高そうだった。

それから京町屋のシェアハウス「京だんらん」というのも展開している。大店(おおだな)の京町屋は、面積が大きくてリ・ストックして貸家や売却するには不適格なケースがある。

随分と共用部が多いシェアハウスで、レンタブル比というドグマ(教条)に浸かっている頭では理解しがたいビジネスモデル。「京都だからできるんだよ、東京では無理、無理」と即座に断定されそうだ。

とにかく(株)八清は次から次と 新しいビジネスモデルを展開している。

町屋を改修すると同時に隣接する道を石畳に整備して地域のポテンシャルアップにつなげる「石畳プロジェクト」。「京町屋証券化と京町屋管理信託」「京町屋ファイナンス」・・・

ちょつと目を離せない会社の一つになった。

「株式会社 八清」(ハチセ)

http://www.hachise.jp/

 

 

「建築とまちづくり展2012『あらためて生活の豊かさを問う』―地震・津波・原発災害を体験して―」@新建築家技術者集団東京支部

10/28(日)知人から案内がきていたので、豊島区役所近くで開催されていた「建築とまちづくり展2012『あらためて生活の豊かさを問う』―地震・津波・原発災害を体験して―」(新建築家技術者集団東京支部主催)を見に行ってきた。

会場では、「被災地への支援と復旧・復興」、「エネルギー利用、原子力依存からの脱却と環境共生」、「安心・安全のまちづくり」などのテーマにわけて展示してあった。

私が一番関心を持っていた被災地支援を報告するパネル展示では、生活再建のために早急に実施すべき制度上の課題に再建資金の拡充や復興事業による支援格差の解消などをあげ、住民が納得するまで話し合う場と時間を確保するなど「住民の力を引き出すまちづくり」が被災地再生の基本だということを示していた。

学生時代から新建(新建築家技術者集団)とは、付かず離れずの関係だったかなと思うけど業務のかたわら彼らが一生懸命活動されているのは敬服している。

同会場2階で小池俊夫風景展が開かれていて、豊島区内の町角の風景画を楽しんできた。

 

「木密地域不燃化10年プロジェクト」学習会@豊島区

東京都は、23区内で木造密集地域12地区を「不燃化推進特定整備地区」に指定し、豊島区では東池袋4・5丁目地区が指定された。

この地域は、池袋サンシャイン・造幣局の南側にある都電荒川線を挟む両サイドで有楽町線と首都高速が走る日の出通りから春日通りまでの住宅地域。

この地域は、すでに都電荒川線に沿って補助幹線(補助81号線)に指定されており、都電の両サイドは建物の解体が進みつつある。

「木密地域不燃化10年プロジェクト」
不燃化特区制度の先行実施地区について

平成24年8月31日
都市整備局

 都は、特に甚大な被害が想定される木造密集地域のうち、地域危険度が高いなど、特に改善を図るべき地区について、区からの提案に基づき、都が不燃化特区に指定し、不燃化を強力に推進することとしており、本年6月に、11区12地区の応募がありました。
各区から、従来よりも踏み込んだ主体的で責任を持った提案がなされたことや、木密対策の緊急性、重要性等を総合的に勘案し、今般、12地区全てを先行実施地区とすることとしました。
今後、都は各区からのこれらの提案を受け、区と整備プログラムを作成するとともに、不燃化特区制度を構築していきます。

先行実施地区
墨田区 :京島周辺、鐘ヶ淵周辺東
品川区 :東中延一・二丁目、中延二・三丁目
目黒区 :原町一丁目・洗足一丁目
大田区 : 大森中
中野区 :弥生町三丁目周辺
豊島区 :東池袋四・五丁目
北区 : 十条駅西
荒川区: 荒川二・四・七丁目
板橋区 :大谷口

葛飾区: 四つ木一・二丁目

江戸川区: 南小岩七・八丁目周辺
※参考資料 先行実施地区位置図(PDF形式:710KB)
※参考資料 各区の提案区域(PDF形式:2.35MB)

今後の予定
平成24年9月~ 各区からの提案内容に応じ都が関与して整備プログラムを作成し、地区ごとに順次公表
平成24年11月頃 不燃化特区制度(案)の公表
平成25年3月 不燃化特区制度の創設、不燃化特区の指定
平成25年4月~ 整備プログラムの実施

 本件は、「2020年の東京」への実行プログラム2012において、以下の目標・施策に指定し、重点的に実施している事業です。
目標1 「高度な防災都市を実現し、東京の安全性を世界に示す」
施策1 「震災対策に集中的に取り組み、地震に負けない都市を造る」

この日の学習会は、当初予定されていた豊島区地域まちづくり課は参加せず、NPO法人区画整理再開発対策全国連絡会議・事務局長の遠藤哲人氏のスライドをまじえた講演のみとなった。

この地域には、すでに計画が明らかになっている街区が幾つかあり春日通りに面した住友不動産による高層マンション街区。地権者が区画整理組合を作る再開発。日の出通り側の旧都バス車庫跡地の利用計画など。

都の「木密地域不燃化10年プロジェクト」は再開発を10年で仕上げてしまおうという性急な計画で あれこれと逡巡しているとあっという間に再開発が進みそうだ。

防災都市は良いけれど、建物を耐火構造にすれば事足りるというものでもない。再開発地域では土地を持っている人達は、再開発後もかろうじてそこに住み続けられるが(統計によると6割程度らしい) 借地借家人の9割以上はその地域をさることになる。

この地域は子供も多く、休みの日は路地に遊ぶ子供達の声で賑やかだ。子ども会、隣組、町内会活動が活発で、神社の祭礼のみこしや冬季の夜回り等も町会で行なわれている。また高齢者の一人暮らし世帯も多い。何と言っても古くから住んでいる人が多いので近所の人が防犯などに目を光らせている下町的なコミュニティの残っている地域だ。まぁそれが「うざい」という人もいるのだろうが・・・。

そうした地域コミュニティを一旦崩壊させてしまうのが再開発なのだが、箱物だけの計画で防災都市は作れるのだろうかという疑問が残った。