多層階住宅

【箱根で見つけたタイルを張ったベンチ・お尻が熱かった】

最近の仕事の依頼は「多層階住宅のリノベーション」しかも「検済無」が圧倒的。

恐らく弊社の事務所兼住宅が豊島区の密集市街地にあり、まわりにあるのは3階建て以上の多層階住宅で「職住近接」「店舗併用住宅」が多いからなのだとは思う。居住しているからこそ地縁・人縁も年月が経っにつれ広がっている。

新築で建てた建物も20年も経てば家族構成も変わるし、下階にあった事務所や作業所も不要になったりする。高齢化に伴いエレベ―ター設置の希望も多い。住宅が不要になって他の用途に変更したいという相談もある。

既存の多層階住宅のほとんどが重量鉄骨造で、これが意外とスケルトン・インフィルで内部間仕切りの可変性が高い。鉄骨造特有の内部結露を起こしている建物も多いが、これは断熱改修をすれば改善する。

何度か郊外に移ろうかとも考えたこともあるが、交通の利便性がよいのでこの地が捨てがたい。三多摩等と比べる生鮮食料品等の物価は高いし品質も悪いと感じるが・・・。

しばらく「多層階住宅」の可能性を探ってみようと思う。

検済無・横増築・多層階住宅のリノベーション・荒川区町屋PJ

築21年、鉄骨造3階建て既存延床面積182㎡の建物の前面道路側・横に増築するプロジェクトです。既存建物の工事完了検査済み証がなかったので建築基準適合性状況調査を行い、荒川区に法第12条第5項報告と建築確認申請を提出しました。

建築主からの最初の希望は、屋上に増築して4階をつくりたい。新築する時に施工会社に依頼したし、上増築が出来るようになっていると言われていた。と言う事でした。

既存建物の構造計算書が残っていたので検討した結果。確かに屋上の積載荷重を多く見ていましたが、逆日影で検討したところ屋根裏部屋のようなものしか出来ない事。直通階段の設置が難しい事。既存建物全体の補強工事や法適合工事がかかる割には要望する空間が得られない事。つまり投資対効果が悪い事から4階増築は断念し横増築に変更しました。

既存建物が建てられた頃は建ぺい率が60%でしたが、その後の都市計画の変更で建蔽率が80%に変更されていましたので、横増築が可能となりました。

この物件は、法第12条第5項報告が比較的短期間にスムーズに終了しました。一番の理由は、荒川区が検査済証の無い建物の調査について調査報告書の指針・書式等を完備しているからだと思います。都内で自前の書式等を整備しているのは荒川区だけです。イレギュラーな部分は打合せ協議をし、物理的調査について調査者の判断で良いのかあるいは第三者機関の証明が必要なのか個々に打合せしておけば良く、後から追加調査が必要となるような追加指示がありませんでした。勿論弊社の調査報告書の完成度が高かったと言う事もありますが、行政側の方針がゆるぎなかったと言う事が一番の要因です。

既存延床面積182㎡+増築面積33㎡ 合計215㎡で1階から3階までが多層階住宅(二世代住宅)となっています。また新たに3層用ホームエレベーターを設置しています。建築確認申請上の工事種別は増築となっております。

【建築場所】東京都荒川区町屋
【法的規制】準工業地域・準防火地域・容積率300%・建蔽率80%
【既存書類・図書】意匠図・有/設備図・有/構造図・有/構造計算書・有/各種施工報告書・無/工事中写真・一部有
【調査・設計・許認可申請】株式会社 寺田建築事務所
【構造設計】一級建築士事務所 ビオス
【法12条5項・建築確認】荒川区

古民家の宿・川の音

群馬県神流町の古民家の宿「川の音」

6/26 OPEN

先日、設計者の野上恵子さんと大貫修二さんから、この古民家の調査から設計でぶつかった諸問題についてお話を聞いてきました。調査から竣工まで約2年間この案件に関われてたと聞きました。同じような案件があった場合を想定して色々と意見を述べさせてもらいました。

調査資料や設計図書を見せていただき群馬県神流町のサイトから古民家の宿「川の音」の写真を見て中々の労作だと思いました。

「建築ストックの再生と活用」と言っても 関係者の汗が滴る献身があってこそ こうして世の中に出ていくのです。

地図で見たところ あの御巣鷹山の麓である上野村の下流にあります。

遠いけど、ちょっと行ってみたいなと思っていますが、まる一日のんびりできるのは秋までお預け状態が続いています。

それにしても野上さんから頂いたジャンヌトロワのオレンジピールは、大人の味で美味しかった。

群馬県神流町・古民家の宿「川の音」

 

「リファイン建築が社会を変える」青木茂著

青木茂さんが首都大学東京を退官するに際して、青木さんの仕事を支えてくれた10人の方々と対談し、10年間を振り返るという内容の対談集。

中々示唆に富む指摘が散りばめられていた。

私が、建築法規の分野から建築ストックの再生と活用に関わりだし始めたのは、随分と前からなのだが、本格的にはリタイアしてからの この5年。

今でも、建築ストック活用プロジェクトの建築法規の領域だけに関わることが多いが、最近では直接 建築主から依頼され調査・申請・設計監理まですることも多くなった。

久しぶりに設計に直接かかわりだすと、やはり設計というのは法規や施工、構造・設備に目を配らないとうまくできないことを実感する。設計こそが鍛錬の近道なのではないかと 今更ながら思う。

建築ストックの再生と活用には法的調査が必須だが、新築と異なり現代法のみ勉強していれば良いというわけではなく、それに加えて現代法の改正履歴を学ぶこと、さらに明治から昭和25年建築基準法成立までの近代建築法制史(市街地建築物法だけでも)を学んでおく必要があると思っている。

いつまで経っても勉強することは山ほどある。

現地詳細調査 -4

荒川区町屋の鉄骨3階建て外壁・屋根ALC版t=100の建物・築27年

外壁劣化・屋上防水に際立つた損傷がなかったので、内部結露であろう。3階天井裏すなわち陸屋根屋上の下の鉄骨部に発錆が見られた。鉄骨造の建物では、鉄骨部の発錆は比較的よくある事象である。

恐らく天井裏に敷き込んだグラスウールt=50に保水し結露したものと思われる。鉄骨部材・材質調査を担当していた調査員が 簡単な温湿度測定を実施してくれたが、外気温と3階室内、3階天井裏では温度はほとんど変化がなかったが、3階天井裏の湿度は外気に比べて15%程高かった。

言われたことだけ自分の担当部分だけ調査するのではなく、常に建物全体を総合的に目を配る調査員になってくれれば調査員としては一流だ。

1階の西側外壁面の内壁の石膏ボードにカビが発生していた。これも壁体内結露だろうと推測できる。

こうした詳細調査を通じて既存建物の問題点が浮かび上がる。既存建物の温熱計算をして、断熱改修を検討する必要がありそうだ。

鉄骨の部材や材質の調査の為に天井点検口を設置し天井裏を覗いたのだが、鉄部の発錆から、その場で総合的に考えるのが大事だと思っている。調査が外注だと温湿度計で測る事などしてくれないだろう。調査員達で事象から意見交換を行い方向性を見出すことができた。

日本建築センター・技術セミナー「欧州各都市のリノベーション等(改修・用途変更)の事例を紹介しながら、既存建築物の活用術を学ぶ」(団地再生、産業遺産(工場等)、駅舎・港湾まで)

4/18午後から、日本建築センターの技術セミナー「欧州各都市のリノベーション等(改修・用途変更)の事例を紹介しながら、既存建築物の活用術を学ぶ」(団地再生、産業遺産(工場等)、駅舎・港湾まで)に行ってきた。

ほとんどが欧州のリノベーション事例の紹介だった。既に雑誌や出版物で紹介されているもので「技術セミナー」と銘打っているにもかかわらず、意匠的観点に終始しテクニカルな分析はなかった。

例えば、欧州の共同住宅で上に一層ないしは二層増築する事例が幾つか紹介されていたが、欧州の法規制には明るくないが、日本で上増築しようと思ったら基礎耐力の問題だけでなく建築基準法が遡及するために全て現行法に適合させなければならない。非常に難関のプロジェクトになってしまう。

新耐震の建物であろうと地震力が増大するから補強が必要だし、現行法に適合させなければならないので様々な部位を構造的に検証し補強しなければならない。審査機関からも構造適判機関からも矢が束になるような指摘が降ってくる。

日本建築センターが主催している技術セミナーなんだから、法的な問題点を挿入してくれると良かったのにと思った。

「建築ストックの再生・活用には、柔軟な法規制が必要だ」とは、色々なところからよく聞く話だが、具体的な改正試案は見たことが無い。

欧州と異なり、20世紀後半の建築ストックを再生・活用することになる日本では、RC・S造の耐震診断や補強技術は比較的体系化していると聞く。建築病理学・耐震診断・補強技術を集大成すれば、世界を牽引する技術力を持つ事になると思う。

「建築ストックの再生と活用」を担う建築家は、デザイン至上主義ではまとめ上げれないのではないかと思う。かなりテクニカルな面も詳しい「ドクター・ゼネラル」でないとプロジェクを牽引できないだろう。

ともあれ、欧州特にオランダには行きたいと思い少しずつ調べていたので参考になったセミナーだった。

日経アーキテクチュア 専門セミナー「改修で失敗しない素材&技術講義」

今日は、昼から日経アーキテクチュア 専門セミナー「改修で失敗しない素材&技術講義」と題した青木茂建築工房の話を聞いてきました。

青木茂さんといえば建築ストックの再生・活用である「リファイン建築」の生みの親であり再生・活用分野の先駆者でもあります。

青木茂建築工房の皆さんの講義で、調査からデザイン・工事監理までされ、ファイナンスも業務提携していると聞いて セット・メーカーだと感じました。

それに比べて弊社は調査と手続きを主として行うデバイス・メーカーです。何しろ2人だけの事務所ですから・・・。

段々 青木茂建築工房の扱うリファイン建築は規模が大きくなっていますね。

業務の進め方は、弊社とさほど変わらないようで安心しました。

「調査なくして設計なし」という事で調査業務を大事にしているところは、同じベクトルなのでとても共感を持てました。

また アイソメによるわかりやすいプレゼンテーションで大変参考になりました。これからは、弊社もアイソメで説明図を作成しようと思います。

用途変更の設計者資格と工事監理者

先般 用途変更の確認申請書類を役所に受理しに行った時の事。

副本に、「着工前に工事施工者届、工事監理者届を提出してください。それが提出されていないと工事完了届は受理できません」とメモしてあった。

「用途変更は工事監理者不要では?」「(法第87条の)準用規定から除外されているはずだよ」役所担当者「ちょつと調べてみます」

用途変更については、建築基準法第87条の準用規定に於いて、100㎡超の特殊建築物の用途に変更する場合に建築確認申請が必要とされています。
しかし、法第87条の用途変更の確認に対する準用規定に於いては、法第6条3項は除外されています。
即ち、用途変更については建築士法第3条の建築士の業務範囲が確認申請を受理を拒否する理由にはなりません。
つまり、用途変更確認申請・設計は、資格に関係なく誰でも行うことが出来るという事になります。ただし これは申請上のことで、業務として報酬を伴うものは建築士事務所登録が必要となります。

建築士法第3条の、資格による業務範囲についても、新築、増築、改築、大規模修繕、大規模模様替えについては、可能な設計・工事監理の範囲を定めていますが、用途変更については記載がありません。用途変更をするに当たり、増築・改築・大規模修繕・模様替えが伴わないのなら、工事監理者の資格もその存在も問われません。

しばらくして役所担当者「工事監理者届は不要です」との回答。

現在では、この用途変更に関わる部分の建築基準法・建築士法の規定は問題ありだと思います。

例えば床面積10,000㎡の用途変更や10階建てのビル全体の用途変更(フルコンバージョン)でも工事監理者が不要という事になります。設計者の資格も問われない。工事完了検査は不要で工事完了届(ただし監察対象となる場合がある)のみというのは、いかがなものでしょうか。これで遵法性を保持できるでしょうか。

用途変更の確認申請料が民間でも役所でも低価格すぎないか? 少し申し訳なささもありますので、料金についてもここに記しておきます。

又、用途変更は建築確認申請に際して「建築工事届」の提出が不要な為、国交省の統計データーから除外されてしまいます。どのぐらい用途変更の確認申請があるのか、実態は消防の統計データーで把握しなくてはならず、総務省のデーターに依存しているような状態です。ちなみに東京消防局では、この数年年間600件前後の同意数があり過去から見ると飛躍的に用途変更の件数が増加しています。

建築物の計画変更

建築確認申請を受け工事途中の建築物が、建築主の都合で建物用途等が変更になることがある。

建築基準法では建築基準法施行規則第3条の2の各号に掲げる軽微な変更について規定し、それ以外の物は計画変更確認申請を必要とするとしている。

その計画変更が建物全体に及ぶとき、例えば物販店で確認申請を取得していた建築物が工事途中で旅館業に用途を変更する場合、階数が変更になる場合(階数が増加)、構造を変更する場合(基礎工事中に上部構造が変更になる)等は、計画変更確認申請で済むだろうか。

このあたりの事は明文化した取扱いは、あまり見られない。

長崎県建築主事会議の「建築確認を受けた建築物の計画変更等の取扱い要領」(平成27年10月30日)に建築確認を受けた建築物の計画変更の取扱いについては、軽微変更届、計画変更確認申請、確認再申請の三つに分類し取り扱うものとしている。

その中で当初の確認申請を取止め新たに確認申請を行うものとして

  1. 建築確認を受けた建築物と大きく異なる建築物を計画しようとする場合(大きく異なる建築物であるかどうかの判断は、計画に継続性があるかどうかの観点から行い、原則として確認済証の交付した者の判断による)
  2. 階数が増加する建築物を計画する場合
  3. 建築物の構造を変更する場合

以上の三つを挙げている。

リノベーションに関わる仕事をしていると色々な案件の相談が持ち込まれるが、確認再申請か否かというのは指定確認検査機関の権限を越えていて建築主事判断が必要だと思っている。

確認再申請となると、あまたある条令や要綱の届出も再提出となることが多い事は予想されるし、工事も一時停止しないとならないだろうから慎重な判断が必要だが、工事が実質的継続しているならまだしも建築確認を受けた後 何年も工事が停止されている場合はどうだろうか。

最近受けた相談では、構造適判制度が施行された2007年(平成19年)6月20日以前に建築確認を受け工事中だった建物がリーマンショック(2008年9月)の世界的金融危機を受け事業計画が中断し、事業主が倒産し工事が停止した案件のリノベーションについてだった。

物販店から全館ホテルに用途を変える場合の手続き上の問題や構造規定の遡及について相談を受けたが、手続き上の問題として10年も工事が放置されていた建物を工事継続中として、通常の計画変更確認申請を受付して良いものだろうか。

もうひとつの問題として建築基準法を遡及させなくて良いのかという問題もある。この10年で建築基準法の構造規定関係もかなり変更されているから現在の規定に適合させるために検討や再計算が必要ではないか。私なら「建築確認申請の取り直し」だと思うと上記の長崎県の取扱いを添付して回答した。

事業主の都合ではなく建築物の安全性が担保されているかどうかから判断するべきだと思う。尚、工事が完了していないので用途変更確認申請はできない。

この場合、大規模な構造の補強工事が予想されるし、その補強工事は現場施工なのでびっくりするぐらいの工事費が予想される。ましてや構造適判が必要ならひとつひとつ厳密な検証が要求され設計者としてはとても手間がかかり、とりわけ構造設計者から泣きが入るだろうと思った。ようするに新築設計の場合の報酬額では出来ないのだ。

フルリノベーションに関わるなら手続き上の問題や建築基準法の遡及。それらが工事費=事業費に大きく影響することは、初期の段階で綿密に予測しておいた方が良いだろう。

「自由とは、必然性の洞察である」(F.エンゲルス)

45年前に読んだ本の1節がふと脳裏に浮かんだ。

「建築ストックの活用・再生テクニカルセミナー」実地セミナー

9/27に行ったセミナーの受講者から参加希望者を募ったところ4人の方が手を挙げてくれたので正調査員の補助員という形で詳細調査に参加してもらいました。

丁度この「建築ストックの活用・再生テクニカルセミナー」の開催時期に、検査済証の無い建物の用途変更に係る建築基準適合状況調査を行うことになり、座学ではわからないことを実地調査に参加してもらう事で理解を深めてもらうという趣旨でした。

人数が通常より倍になったので、いつもは劣化・現況実測・部材採寸・高低差、傾斜等の調査パートを各自黙々と行っているのですが、今回は色々と相談したり、他のパートの調査を確認したりと余裕を持って行うことができました。

私も調査の趣旨や法的な問題等、調査にあたって注意しなければならないことを説明することができました。

補助員としてついてもらつた方々は、全員一級建築士だつたので さすがに理解力は高かったです。

今後も 関係者の理解と協力が得られるならセミナー受講生を中心に希望者を募り補助員についてもらおうと思っています。

「建築ストックの活用・再生テクニカルセミナー」講師

久しぶりに人前で喋ってきました。木造住宅のストック再生に取り組んでいる住宅医協会の関東住宅医ネットワーク・スキルアップ講習会のひとつとして企画されたセミナーです。私の題目は、非木造の建物の「建築ストックの活用・再生テクニカルセミナー」とあるように、建築ストックの活用・再生について建築法規・設備・構造等の建築技術面から語るといった内容です。

昨今のリノベーションブームでソフトからアプローチしたセミナーは多く開催されているようですが、ハード面から総合的にアプローチしたセミナーはあまりないと思います。

セミナーの内容は下記のようなものです。

*****

1. はじめに : 事務所紹介、お願い
2. 現状とこれから
3. 基礎調査編
3-1. 資料調査
3-2. 既存不適格建築の場合
3-3. 工事完了検査済証が無い場合
(建築基準適合性状況調査、国交省ガイドライン調査と法第12条第5項報告等)
4. 詳細調査編
5. 事例編
5-1. 増築
: 平面増築 / エレベーター増築 / 入れ子増築 / 減築 /
5-2. 用途変更
: 事務所→有床診療所 / 物販→飲食店 /事務所→簡易宿舎/ 工場→物販店 /
5-3. テクニカル調査
: 遵法性調査 / 変状(劣化)調査 / 有害物質調査
5-4. 耐震診断・補強設計
5-5. 実現しなったプロジェクト  : 違反是正/用途変更工事費/耐震性
6. 留意事項 : 幾つかの法的事項の再確認/内部階段設置/内部ELV設置/その他
7. 小規模建物のテクニカル・デュ-デリジェンス
7-1. 概要
7-2. 劣化度合による修繕費の算出(事例 : アパート)
8. まとめ

*****

参加者は35名ほどでした。休憩を入れて3時間。ちょつと内容が総論的だつたかも知れません。

現役時代は終わった仕事を振り返る余裕がありませんでしたが、今回のような機会をいただき概ね過去5年程の仕事について整理することができました。自分でも結構面白いことやってきたんだなと~と思っています。

実は今、現役時代よりはるかに労働時間が長いのですが、それでも過去の仕事を振り返れるのは、現役時代は中間管理職としての業務がとても多かったことを物語っています。

何時ぽっくりいくかわからないから、最初で最後のセミナーだと言っていますが、機会があれば 次世代に継承していける場をまた持ちたいものです。

懇親会・二次会と行き若い人達と色々と話す機会を得て楽しい一日でした。

 

コア東京3・2017 東京都建築士事務所協会

毎月、東京都建築士事務所協会「コア東京」と「日事連」が郵送されてきます。

定期機関誌を毎月発行するのは大変な労力がかかっているのだろうなと予想できます。関係者の皆様に感謝しながら、このカラー印刷の機関誌印刷代・郵送代に随分と経費がかかっているのだろうなWEBサイトを充実させれば事足りるのではないかと思いつつ「コア東京」をパラパラとめくりました。

今号の気になった記事は「VOICE from editor」の記事でした。ようするに巻末の編集後記ですね。加藤峯男さんの建築法規の変遷、ストック活用に即した法体系の見直しの思いが記載されていました。

そこには加藤峯男さんが一級建築士を受験した1970年の建築基準法法令集・赤本と現在2016年度版の赤本の厚さが比較された写真が掲載されていました。頁数で言うと5倍になっていると指摘されていました。

「建築基準法の基礎的規定や意味合い」を若い人が理解していないと加藤峯男さんが嘆くのはわかりますが、その一因は大学や専門学校での建築法規の履修が戦後一貫して軽視されてきたからだと思います。1970年頃も大学では建築法規は2単位で現在もほとんど2単位だと思います。社会が複雑化しそれに対応し法令もこれだけ増えてきたのに、資格受験のための建築法規の学習では試験が終われば忘れてしまいます。しかも試験技術が最重要な要素である現代の資格試験では建築法規の基本を学ぶことには無理があると思います。

やはり設計実務を通じて徐々に全体像が掴めてくるのだと思います。

指定確認検査機関に勤めて審査をしていれば建築基準法と関係規定には詳しくなりますが、建築プロジェクトの遂行においては消防法や都市計画法などのあまたある法令・条例を読み理解しなければなりません。

建築法規を学ぶとしたら、やはり大学教育の中で学ぶ時間を増やさないといけないのではないかと思います。そしてどういうカリキャラムが必要か、よく考えないといけないと思います。

加藤峯男さんは「既存ストックを円滑に活用できるように法体系を見直す」必要性を訴えていますが、建築関係者は大概思っているのではないでしょうか。

どう改善するべきか建築関係団体から具体的な提起が必要になっていると思います。

内閣府・規制改革会議での業界関係者の意見等を読んでますと「床面積1000㎡以下は用途変更確認申請は不要として欲しい」等の意見もみられますが、業界関係者の利便や都合ではなく建物を使用する人の安全性に配慮した建築法規の改正が必要だと思います。

私見としてはストック活用に伴う建築基準法改正案はありますので、いずれ発表する機会があるかもしれません。

省エネ適合も かれこれ10年前に話題になりました。施行は本年4月1日から随時実施され やがて300㎡以上の建物は省エネ適合が必要となるでしょう。

ストック活用の法令も見直されることは歴史的必然だと思います。

遮熱措置

倉庫業の登録は10種類に分類されますが一類倉庫は、求められる構造基準が厳しい分、保管可能な物品の種類も多くなっています。危険物及び高圧ガス、10℃以下保管の物品を除いた全ての物品の保管が可能です。

一類倉庫の施設設置基準は、倉庫業施行規則運用方針(H14.3.29付け、国総貨施第25号)に詳しく記載されていますが、その中に表題の「遮熱措置」(則第3条の4第2項第6号)があります。

既存の自己用倉庫を一類倉庫として登録申請するためには施設設置基準を満たさなければなりませんが、その中の一項目である「遮熱措置」の規定は、屋根・外壁・開口部の平均熱貫流率が4.65W/㎡・K以下となるようにしなければならないと定められています。

熱貫流率、熱伝達率、熱伝導率等、建築の環境計画を学んだ人なら基本的な事を知っていれば容易に計算できますが、外皮の平均熱貫流率が4.65W/㎡・K以下というのは、結構緩い基準のようにも思えます。

私の試算では、屋根が折版の場合は断熱ペフt=4mm、外壁は角波サイディングに石膏ボードt=9.5程度があれば平均熱貫流率は満足するようでした。

もつとも運用方針でも、天井がある場合や準耐火構造の屋根、外壁の場合は適合しているものとして扱うとありますから、さほど厳しい基準ではないということです。

自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」-2

自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」に参加してきました。

現在、耐震対策工事が進められている重要文化財・自由学園明日館・講堂の修理現場の見学ということで以前から楽しみにしていました。

「講堂」は、1927年(昭和2年)に建てられ、昭和25年頃屋根葺替、昭和37年に部分修理、平成元年に屋根葺替・部分修理、平成13年に設備改修が行われ、平成26年11月から平成29年7月にかけて屋根葺替、耐震補強工事等が行われています。

築90年の建物が今まで比較的良好な状態で利用されてきたのは、この屋根の葺替を始めとした幾たびかの修繕工事がなされてきたからだと思います。

修理工事中の写真は撮影させていただきましたが、インターネットでは公表しないという約束になっていますので、工事看板だけ掲載しておきます。

設計監理は文建協、施工は大成建設東京支店で、見学では文建協の田村さん、大成建設の方から詳細な説明を受けました。

設計者の遠藤新は、自分が設計する講堂の構造の特徴・空間デザインの特徴を「三枚おろし」に例えて論じています。従来の講堂建築は、構造を梁行(輪切り)で設計されていたが、風や地震で倒壊することが多く椀木や控柱で補強するよう法規で決められていたそうです。

この明日館講堂は、市街地建築物法第14条による「特殊建築物」だった思われますが、その第14条は、「主務大臣ハ學校、集會場、劇場、旅館、工場、倉庫、病院、市場、屠場、火葬場 其ノ他命令ヲ以テ指定スル特殊建築物ノ位置、構造、設備又ハ敷地に關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得 」とあり「必要な規定を設けることができる」とありますが、勉強不足で まだその規定は探し出せていません。

明日館講堂は、平面を桁行方向に三分割し、さらに前後に空間を設けて合わせて九つのゾーンを連続的でありながら、それぞれのゾーンにふさわしい機能を持たせています。遠藤新の空間デザイン論は、中々優れてると思いました。

この講堂は、耐震診断の結果「大規模な地震の際には倒壊の危険がある建物」であること、解体調査の結果、講堂の外壁が外側に倒れ、屋根の棟は中央を最大に垂れ下がっている状態だったそうです。その事は、既存の構造体が屋根の重量を完全には支え切っていなかった事を表しています。

補強工事に際しては、遠藤新の思想を残しつつ「基礎と軸組の健全化」「内在骨格の強化」「壁面・床面・屋根面の補強」の三点を軸に行われたと説明を受けました。

すでに屋根の葺き替えは完了し、新しい銅板屋根が黄金色に輝いていました。

エキスパンションジョイントのクリアランス

既存建物にエキスパンションジョイントを設置して増築する建物で、エキスパンションジョイントのクリアランス(有効な隙間)が問題になりました。

隙間(クリアランス)は設計者が変位量の大きさにより決定します。

参考文献としては、ちょっと古いですが日本建築センター発行の「構造計算指針・同解説1991年版」(現在は、「2015年建築物の構造関係技術基準解説書」に統合)に「相互の建築物の一次設計用地震力(建築基準法施行令第88条第1項に規定する地震力)による変形量の和の2倍程度以上を推奨」と記載されています。

また1995年10月「阪神・淡路大震災における建築物の被害状況を踏まえた建築物耐震基準・設計の解説」では、エキスパンションジョイントのクリアランスは、大地震時にも建物相互が衝突しないように、構造計算により算出し設定することが望ましい」と記載されています。

施行令第82条の2【層間変形角】には、「建築物の地上部分については、第88条第1項に規定する地震力によって各階の高さに対する割合が1/200(地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって特定建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合にあっては、1/120)以内であることを確かめなければならない」とあります。

なので上記による略算式としては、クリアランス=エキスパンションジョイントの地上高さ×1/200×2(双方の建物が地震で変形する為)×2倍となります。

10mだと 10000/100×2=200mm

20mだと 20000/100×2=400mm

30mだと 30000/100×2=600mm

という結果になります。略算式だと3階建て程度で200mmのクリアランスが必要ということになります。

問題になった案件は構造計算ルート1-1で、軒高9m以下鉄骨造3階の増築です。

層間変形角の計算は不要なのですが、X・Y方向の層間変形角を算出したところX方向で1/500、Y方向で1/1400でした。パラペット高さを9600mmとしてX方向の変位量は19.2mm、Y方向の変位量は6.9mmとなります。以上により一般的なクリアランスである50mmに設定しました。

既存建物に増築する場合のエキスパンションジョイントのクリアランスは、低層の建物は略算式によらず 実際の変位量、層間変形角から判断して決定した方が良いと思います。

1/26 テレビ東京・カンブリア宮殿 村上龍×やまと診療所 安井佑

1月26日にテレビ東京「カンブリア宮殿 村上龍×経済人」に、弊社が昨年 新規診療所プロジェクトに携わった医療法人社団 焔 やまと診療所の安井佑院長が出演されます。

1月26日(木)
「自宅で安心して最期を…板橋発!若き在宅医の挑戦」
村上龍×やまと診療所 安井佑院長
夜9時54分~10時54分
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『「あなたは、人生の”最期”をどこで迎えたいですか?」。国の調査では、自宅で亡くなることを希望する人は7割。しかし、実際に自宅で最期を迎える人はわずか1割。その理由は、在宅医の不足、また在宅医療に対する認知度が低いことによる。その課題に取り組み、注目を集めている診療所がある。東京・板橋区に拠点を置く「やまと診療所」だ。医師で院長の安井は、在宅医療PA(医療アシスタント)という独自のシステムを構築し、多くの患者に安心して自宅で死を迎えられる医療サービスを提供している。「自宅で自分らしく死ねる。そういう世の中をつくる!」。そのミッションの下、多死時代を迎えた日本の医療、その変革に挑む若きドクターの奮闘に密着する。 』
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やまと診療所(板橋区東新町)は鉄骨造3階建て、延べ面積336㎡の事務所ビルを訪問医療センター(有床診療所)に用途変更しました。
事務所から有床診療所(特殊建築物)に用途変更する場合、病室の採光、階段寸法、法114条区画、都安全条例8条区画等の法的制限が出てきます。
既存建物の調査、建築法のプロデュースと申請業務は弊社で行い、設計はデザイン事務所という建築主からの分離発注、設計関係者のコラボレーションで業務にあたりました。
【調査+法的プロデュース+申請】㈱寺田建築事務所
【デザイン+工事監理】MTMデザイン

自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-考え方と方法-」-1

【写真は、明日館の2階食堂】

1/7(土)、今日は自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-考え方と方法-」に出席してきました。講師は文建協の田村匠氏。

「文建協」正式名称は「公益財団法人文化財建造物保存技術協会」という名前で、文化財建造物である社寺仏閣、民家、近代建築、近代化遺産の維持修理、根本修理、構造補強(耐震補強)の為に設計監理及び技術指導を行っています。

講師は現在、自由学園明日館講堂の屋根葺替、耐震補強等の部分修理を担当されています。

今日は、講師が担当された近世の社寺仏閣から民家までの事例紹介と修理の考え方について概括的な講義でした。2月には現在修理工事中の明日館講堂の見学が組み込まれているそうですが、実はそれが楽しみで講座に申し込みました。

【写真は、2階食堂(ミニミュージアム)から1階ホール(喫茶室)】

「文建協」の場合、文化財建造物が対象ですから近世から近代の建物、歴史的に古いものから新しいものに対象が移っているんですね。確か私の学生時代には、近世民家の調査など断られていたように記憶しています。

私が調査に関わっているのは現代建築から近代建築という、新しいものから古いものへのアプローチですから「文建協」さんとは、真逆のアプローチになります。

ミシェル・フーコーの「系譜学的な思考」では、歴史を「過去から未来に向かって、原因と結果の連鎖として、一方的に進むもの」としてとらえるのではなくて、現在から過去に向かって遡行するかたちで理解する思考訓練と書かれています。

上の文は、内田樹さんの本からの引用なんですけど、歴史ものを扱っていると実際様々な出来事には、その前に幾つもの分岐点があったことがわかります。幾つもの分岐点の中の一つの分岐点が選択されたから、現在の結果が生じているわけです。どうしてあの時この道が選ばれ、それ以外の道は選ばれなかったのか。なぜこの出来事が起きて、あの出来事は起きなかったのかという問いに沢山直面します。

どんなことがあっても存在し続けるものと、わずかの手違いで消え去ってしまうものを識別する能力は、「系譜学的な思考」で歴史を学ぶことから養われますが、この能力=想像力は現代を生きる上で、歴史的建造物を扱うものとして、とても大事だと私は考えています。

そういったことを思い出しながら公開講座を聞いていました。

【写真は、旧帝国ホテルで使用されていたタイル】

「検査済証のない既存建築物等における取扱」の改訂検討が進む

検査済証のない既存建築物の法適合性の確認については、平成26年7月に国土交通省より「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況業務のガイドライン(以下、「ガイドライン」)が公表され、指定確認検査機関が調査者になることができることが位置付けられました。

国交省に登録した指定確認検査機関は、31社(平成28年11月28日時点)です。

現在、国交省では「ガイドライン」の改訂に向けて検討が進められているそうです。改訂内容は、チェックリストの詳細化、調査方法、調査範囲の明示、指定確認検査機関の役割の明確化等が行われる予定で、「技術的助言」を発出する予定と聞きました。

これ先立って国交省が平成27年12月に全国425特定行政庁/450特定行政庁にアンケート調査をしたところ、「ガイドラインに基づく法適合状況調査の活用を図っているか」という設問に対して「あまり活用していない」が279特定行政庁65.6%という結果でした。

「活用されない理由は」

  1. 相談された実績事体がない
  2. ガイドライン以外の調査方法で既に法適合状況調査に対応しているため
  3. 具体的な調査方法が明記されておらず、不明確な部分が多い等

弊社は、指定確認検査機関勤務の経験も踏まえて、国交省「ガイドライン」以前から、全国の特定行政庁で個別に調査方法や調査箇所などの打合せを行い「2」の「ガイドライン」以外で直接特定行政庁に申請し検査済証のない既存建築物の増築・用途変更の申請を行ってきました。

一方、大阪府内建築行政連絡協議会(以下、「大連協」)では、「ガイドライン」ができる8年前である平成18年5月に「既存建築物の増築等の法適合性の確認取扱い要領」(以下、「取扱要領」)を制定し、各特定行政庁において既存建築物の増築、改築等を行う場合の法適合性の確認を行っていました。

「取扱要領」は、4回の改正を経て平成27年6月1日改正版が最新ですが、調査部位や調査方法が明確になり、書式等も統一されており実務に則しています。関西圏では、この「取扱要領」が浸透しています。

しかし法適合性チェックや申請手続きなどの具体的運用については各特定行政庁の判断にゆだねられていたようで、特定行政庁・指定確認検査機関の役割分担のあり方を踏まえ、既存建築物の法適合性の確認方法や審査方法における法的課題や審査リスクについて整理・検討が始まっているようです。こちらも来年には、改訂版が出てきそうです。

「検査済証のない既存建築物の増築等」は、「ガイドライン」に沿った「登録指定確認検査機関」しかできないという誤ったセールストークをする審査機関もあるようですが、そんなことはありません。

全国的視野に立ってみると、登録指定確認検査機関による「ガイドライン」調査は、一つの方法でしかありません。

「大連協」の改訂作業は、とても注目しています。

病理医という仕事に学ぶ

病理医は、病理診断をする医師で基本的な仕事として「病理解剖(部検)」「組織診断(生研及び手術材料)」「細胞診断」があるそうです。

以下「日本病理学会」サイトからの引用です。

病理解剖は病院で不幸にして亡くなられた患者さんの死因、病態解析、治療効果などを検証し、今後の医療に生かすことを目的に行います。
組織診断は内視鏡医がみつけた病変部から採取(生検といいます)した、小さい組織片を顕微鏡でみて診断したり、手術して切除された検体から臨床診断を確認したり、どの程度病気が進展しているかなどを検証する作業を行うことです。手術中の短時間に病理診断を下して、手術方針を決めるのに役立つ「術中迅速診断」も病理医の重要な業務です。
細胞診断は婦人科医が子宮粘膜表面から細胞を採取したり、外科医が乳腺など体表に近い病変部から注射器で針を刺して細胞を採取して検査することです。細胞診断は細胞検査士という日本臨床細胞学会が認定した資格をもつ専門技師と共同で診断します。病理医は病理診断に迷うこともあります。その時はこれが自分や自分の家族だったらどう診断するかと思いをめぐらせることで、答えが自ずと見えてくることがあります。もちろん、難解で自分の手に負えないと思えば臓器別専門の病理医に標本を送ってアドバイスを請うことも少なくありません。これをコンサルテーションシステムとよび、日本病理学会の重要な業務の一つとなっています。
この3大業務以外にも臨床各科と合同で解剖例や手術例についてカンファレンスを行ったり、院内医療安全検討会のメンバーとなって病理の立場から意見を述べたりすることもあります。最近は主治医の立ち会いのもとで、病理医が患者さんに写真や図を示しながら病理診断の説明を行う病理外来を実施する施設も見られるようになってきました。また、蓄積された病理データを使って臨床研究も積極的に行っています。」
「病理医のつよみは、何と言っても、『病気の総合的判断が可能な医師である』点です。その理由として、全科の検体を扱っていること、剖検による全身の病態診断に慣れていること、病理総論的見方を訓練されているために全身の臓器に共通した病変の概念を理解していることなどがあげられます。言い換えれば、病気を正常からの逸脱の度合いという見方からとらえ、病気の本質的な部分を深く考えている医師が病理医と言えるでしょう。」
しかしその病理医も、まだ全国に2,232名(平成26年9 月現在)しか病理専門医がおらず、決して十分とは言えないそうです。
病理医は患者と直接対面する機会が少ないからでしょうか、以前はそういう専門医がいることを知りませんでした。私が大学病院で2回の整形外科の手術を受けたときも、徹底的な入院前検査、手術前検査を受けました。しかし教授回診、担当医師のみならず多くの整形外科チームの医師や内科医などの他、麻酔医師とは直接面談しましたが、病理医と接する機会はありませんでした。
病理医という専門医がいることを知ったのは、2006年に出版された海堂尊の「チームバチスタの栄光」という小説・映画からでした。
その中に鳴海涼基礎病理学教室助教授という病理医が出場します。桐生の義弟で考えも桐生と似通る部分もあり、かつて桐生とアメリカで外科医をしていたが、病理に興味を移し病理医に転進した人です。「ダブル・ステイン法」という術中診断法を確立させ、「診断と治療は分けるべき」という考えから、会議には参加しないが病理医ながらも桐生と切除範囲を決める形で手術に参加している人物として描かれています。
日本の建築界にも「建築病理学」の確立が必要だと固く信じている私としては病理学の手法は勉強になります。

空き家サミット2016

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「空き家サミット2016」に参加してみました。

基調報告のひとつは、東京都計画調整担当課長から都内の空き家の状況が報告された。「平成25年時点の空き家は約82万戸、空き家率は平成10年からほぼ横ばいで、平成25年では11.1%」「内訳は、空き家のうち約60万戸は賃貸用であり、平成20年と比較して10万戸以上増加している」「長期不在・取り壊し予定の空き家は、平成20年比較して減少しているものの、約15万戸存在」「都内区市町村の空き家の実態調査は、まだ始まったところ」

もうひとつの基調報告は、「豊島区における空き家問題とその対策・活用」で現状は全国的な空き家問題である戸建て住宅の空き家問題とは少し異なる様相が見られる。「豊島区では世帯構成がファミリー世帯22.2%、単独世帯60.9%である」「住宅数は増加傾向だが56%が民営貸家(すなわち単身者アパート・マンション等)」「面積30㎡未満の物件が多く、増加している」

統計には表れていないかもしれないが外人向けシェアハウスも相当数増加していると個人的には思っています。

木密地区に住んでいて思う事を少し書いてみます。

この10年、豊島区東池袋地域は再開発が進み、長く住んでいた住民は流出。古い住宅や事業所跡地は、単身者アパート・マンションに建て替えられた。よって町会は再編成され子どもは減少。新しく建替えられたアパートのあおりを受け古くなった賃貸住宅には、外人入居者が増え、住民は治安の悪化を心配する。

結婚しても、低価格のファミリー向け賃貸住宅の供給は少なく、子育て世代への施策が充実していて物価等も安い北区等に転出する傾向があります。(例えば北区と千代田区は高3まで医療費無料・豊島区他は中3まで)

UR賃貸等の空き室傾向を見ていると豊島・文京・新宿などは空き室がほとんどありません。

豊島区は、単身者が歳を重ねても定着する傾向が見えてきた。その単身者の多くは非正規労働者で所得が少なく、人口が増加しても税収は減少し、豊島区は将来財政破綻の可能性があるという衝撃的な指摘で、以前NHKで特集されていました。

豊島区からの基調報告における「現時点における主な課題」についての私的意見

1、空き住戸、空き室は思いのほか見つからない

賃貸住宅は再転用されやすい。単身者用→外人用シェア・老人向け→貧困ビジネス等と意外と老朽化しても転用できる。しかもほとんどが正規の手続きを踏んでいない。

2、法令によつて利活用を断念

住宅以外の用途に転用しようとしても、従来からの住宅は違反建築・法不適合・検査済み無し・再建築不可(接道)であることが多く、前段階で活用不可となる事が多い。つまり計画の土俵にもあがらない物件が多い。

3、空き家オーナー・家族の合意形成が大事

相続の問題もあり「個人所有物件」の活用は予期しないことに直面することが多い。

4、貸したい人と借りたい人とのスピード感の違い

民間ベースでは、個別の需要が見込まれて経済的合理性を勘案して事業計画に着手するのでマッチングは中々難しい。

5、入居者の関心は家賃

豊島区は土地の実勢価格や評価額が高いので、民間ベースで再活用ビジネスを計画した場合は、中古リノベ―ションであつても家賃を安く供給するのは難しい。既存建物調査→耐震診断→耐震補強工事→その他リノベーション工事という正規の手順を踏んでいくとどうしても工事原価と営業経費が積み増しされます。

空き家は、昭和55年(1980年)以前の建物が多いので、耐震診断+耐震補強工事は不可欠となるのがほとんどだと思われます。

近接他区(板橋・練馬等)の方が有利になるケースが多い。又城南に比べると城北の所得水準は低いので購買層が限定されという傾向もみられます。

空き家の維持管理の問題と切り離し、都市のバランスのとれた成長と維持から空き家問題を考えると

ワンルームマンション規制の再検討。シェアハウスの規制。子育て世代向け施策の充実。公的住宅施策の作成が必要で、民間事業者を主体とした施策のスキームだけを考えても難しいのではないでしょうか。空き家という量はあっても、活用したいという潜在的需要が少ないところに色々なスキームを作ってみても、ビジネスにはなりづらいのではないかという感想を持ちました。

「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」

平成26年3月に文科省が取りまとめた「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」を読んでみました。

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東日本大震災では、学校施設は子供たちや地域住民の緊急避難場所又は避難所としての役割を果たしましたが、その中で発災直後から教育活動再開までの間において防災機能に関する様々な課題が顕在化しました。

災害対策基本法の改正(平成25年)において,緊急避難場所と避難所が明確に区別されました。
緊急避難場所:切迫した災害の危険から逃れるための避難場所
避難所:避難者が一定期間滞在し,その生活環境を確保するための施設

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文部科学省では,「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」の下に「災害に強い学校施設づくり検討部会」(部会長:長澤悟 東洋大学理工学部教授)を設置し,学校施設の津波対策と避難所となる学校施設の在り方について検討を行い,報告書として取りまとめたとあります。

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「避難所となった学校施設の利用状況と課題」として、文科省の調査から避難所として利用された施設は「体育館」(70.1%)、「普通教室」(34.9%)、「特別教室」(33.3%)となり、やはり体育館の利用が多かったようです。

次に施設・設備に関しては「トイレ」(74.7%)、「暖房設備」(70.3%)、「給水・上水設備」(66.7%)、「通信設備」(57.5%)、「電力供給設備」(45.0%)、「備蓄倉庫等」(35.2%)、「放送設備」(32.8%)、「避難者の避難スペース」(32.6%)等が指摘されています。

避難所として指定されていても学校施設の防災機能の整備が遅れている現状が浮き彫りされ、それぞれの課題が指摘されています。避難所の指定と防災機能の実態が必ずしも整合していませんが、文科省が平成24年度に「防災機能強化事業」を新設して防災機能の整備に財政支援をし始めたので、徐々に整備が進んでいます。

また、「地域の避難所となる学校施設の在り方」について、災害発生から避難所の解消までの期間を4つの段階に区分し、必要な機能を整理していて参考になります。

日本全国、何時どこで災害が起きるかわかりません。学校施設を含めた避難所の防災設備の整備は、喫緊の課題であると思いました。

かくして違反建築は放置される

「検査済証のない建築物のリノベーション(増築・用途変更)」のセミナーの為の資料を整理してて、調査を経て完成した物件の紹介より、調査に至らなかった未成約案件の事例を紹介した方が実務者には、意外と役に立つのではないか思い、そうした未成約案件の資料を見直してみた。

この分野は成約物件より未成約案件(相談のみ)の方がはるかに多い。

弊社は基本的に「調査」に一定の報酬をいただいているが、設計事務所や不動産関係の会社は中々調査費を計上できない気風があるらしく リノベーション物件の調査や計画に深入りしたが報酬請求ができず「営業活動」とされることが多いと聞く。

数多くの案件の相談を受けているうちに、初期の資料提供と現状の把握で、このプロジェクトは進展するか否か、成約にいたるかどうか容易に判断できるようになってきた。

極論すると建築確認済み証を取得した後に無届増築、無届用途変更等の違反箇所が多く その是正に工事費用が多額になるものは、ほとんど実施にいたらない。

未成約案件を振り返ってみると他にも理由はあげられるのだが、それはセミナーなり出版物で紹介しょうと考えている。

住宅は、確認済み証の時点の設計図書と全く異なる建物が完成している場合が特殊建築物などより多くみられ、建ぺい率・容積率オーバー、斜線制限等に抵触しているものは減築及び屋根の是正を行わないとならない。

容積率・建ぺい率をオーバーしている違反建築物は、銀行融資はしてもらえないと聞く。一部高利のファイナンス系だと60%~70%程度融資してくれるらしいが、かなりの自己資金を持つていないと取得は無理だろう。

それゆえに違反中古住宅は売れず、空き家のまま、違反建築物のまま放置されることが多い。

ストック活用と民法の壁

工事完了検査済証のない建物は、何故にこんなにも多いのか・・

とため息が出てしまう。

最近、相談を受けた建物は築30年で鉄骨3階建てのビル。最上階3階にビルオーナーの住まいがある。歳をとったので外部にエレベーターを増築したいと思い、業者に依頼したところ建ぺい率・容積率は余裕があるので増築は可能なのだが、工事完了検査済証が無いため申請が難しいと言われた。それで弊社に相談が持ち込まれた。

テレビコマーシャルで話題になった大手ハウスメーカーの設計施工の建物。

法適合状況調査の見積もりを作成したが、個人オーナーにはかなり負担だろうと思う金額になった。メーカーは構造計算書を建築主に渡していないのでなんとか協力してもらおうと建築主から連絡を取ってもらった。

メーカーの営業担当曰く「うちで工事をやらせてもらえるなら協力します」「技術資料は社外秘なので出せません」・・・馬鹿野郎と言いたくなる。

民法の不法行為の消滅時効は20年で、建築物関係にあてはめると時効期間が短いように思える。だいたい増築・用途変更・大規模模様替え等のアクションが起きるのは20年を過ぎたものが多い。だから民事で損害賠償請求するのは難しい。

逆に20年以内なら、これからは不法行為を問えるケースも出てくるだろう。

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724条不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
(不法行為による損害賠償)
第709条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

建築基準法上は工事完了検査を受けず、検査済証がなく使用を開始するのは違法行為なのだが、当時は検査済証がなくてもとがめられなかった。というか多くは完了検査をうけなくても平気という風潮があった。登記できたし銀行融資も実行された。ところが今はそうはいかない。

平成26年に国交省から出された「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」、このガイドラインが出る前から事例は多くはなかったが特定行政庁と個別に協議し検査済証の無い建物の増築・用途変更等は申請することができた。大阪府下とか横浜市とか都区内でも幾つかの特別区は対応してくれていた。

弊社では、いまでも指定確認検査機関ではなく特定行政庁と個別に相談して法適合性調査を行っている。

だから、検査済証の無い建物の建築ストック活用を妨げている最大の障害は、その手順ではなく、法適合性調査にかかる費用なのだと思う。実際 調査費を聞いて増築や用途変更を断念する人は多い。だからと言って規制緩和のもと安全性をないがしろにする風潮には賛成できない。

たとえ不法行為の消滅時効が経過しているとしても、「検査済証無建物」に関わつた事業者、少なくても現在も継続して事業を行っている設計事務所・建築会社はその責任の一旦を担わなければならないのではないかと思う。

このことは、社会問題化しないと解決していかないのではないかと思ってきた。というか相談した弁護士のアドバイス。

検査済証の無い建物は、多くが実態的にも建築基準法に違反している。

集団規定に抵触している場合、避難経路の場合、構造上の問題、「どこにやましいところがあつて完了検査を受けなかったのか」と疑ってみなければならない。「手続きがめんどくさかった」ということだけ完了検査を受けなかつたケースは少ないと考えている。

既存建築物と放射能汚染

3.11の福島第一原子力発電所のメルトダウン以前は、既存建築物や都市における放射能汚染は西日本が高い数値を示していると言われていた。

その一つは、広島原爆によって発生した放射能に汚染された膨大なコンクリート瓦礫が、戦後の都市開発において再生骨材としてコンクリートに混入され西日本各地の建築物や土木構築物に使用されたからとされている。

しかしどのぐらいの量の瓦礫が再利用されたかは、詳しくわかっていない。

もう一つは、岡山県の人形峠で採掘されたウラン鉱採掘の際に発生した岩石や砂利と「ウラン煉瓦」によるものと言われている。ウラン煉瓦は約145万個製造され、約93万個が一般に売却され、各地の花壇や歩道の舗装材として使用されている。

この「ウラン煉瓦」は平均0.02msv/hと言われ、実際に計測した人の報告によると中には0.03msv/hを超えるものもあると報告されている。

今、福一の瓦礫の処理で再生利用をということが言われている。

これは東京電力㈱から発表されている「福島第一原子力発電所の固体廃棄物保管に関する中長期計画(案)について」(平成26年4月7日)で放射能汚染された金属くずは、溶融されリサイクル鋳造品として遮蔽体や貯蔵容器にリサイクルされることが検討されており、コンクリートくずはも再破砕され再生コンクリートに混入されたり路盤材としてリサイクルするということが検討されている。

また、日本建築学会でも2013年に材料施工委員会から「都市・建築・材料に関わる放射能汚染の現状とその対応に関する報告書」が出されているが、建築部材の線量測定手法や安全性の評価手法は、明確に定まったものはない。

さらに放射能汚染された木材の建築材料としての再利用も出てくるであろう。

建築物や都市空間のストック活用の評価基準のひとつとして、「放射能汚染度」も加わるのは、そんなに遠くはないように思う。

既存建物の調査は勿論、新築建物の建築現場でも、放射能対応マスクと作業着、そしてガイガーカウンターは必須になるかも知れない。

道の駅 保田小学校

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昨年の12月にオープンした「道の駅 保田小学校」

南房総の仕事のついでに寄り道

館山自動車道・鋸南保田インター出口からすぐのN.A.S.A設計共同体による千葉県鋸南町(きょなんまち)「鋸南町都市交流施設・道の駅 保田小学校」

N.A.S.Aとは古谷誠章/NASCAを代表に、渡辺真理+木下庸子/設計組織ADH、北山恒/architecture WORKSHOP、篠原聡子/空間研究所の4者で構成されたユニット。

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体育館を改装したマルシェ

外壁上部は、ポリカポネートの中空板

法的には用途変更+大規模模様替(?)

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旧校舎の窓側・バルコニー側に

新たに鉄骨造で半屋外の縁側空間を作り出している

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RC部分とはエキスパンションジョイントにし構造的には別建物扱いのように見える。旧校舎のRC造に遡及させない配慮だろうか。

法的には、増築+用途変更(?)

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1階は開放的な通路

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マルシェ妻側、平日の夕方に近い時間だったが、客が多かった。

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旧保田小学校の校庭にあったであろう二宮金次郎の像

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旧小学校職員室側の玄関

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室内は、教室の面影を残している。

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春になれば里のはらっぱは、房総の花々を咲かしてくれるだろう

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農林水産省の農村漁村活性化プロジェクト交付金の支援を受けている

廃校を新たなコミュニティの核となる施設として

再生する魅力的な空間を演出している。