安藤忠雄の建物のコンクリートコアを抜いてみたい。

専門業者に依頼しているコンクリートのコア採取。部位別に鉄筋探査を行い、鉄筋の無い部分からコンクリートコアを採取し、検体を指定検査機関に送付し、コンクリートの圧縮強度試験、中性化試験をしてもらうのだが、最近は専門業者さんの現場調査に付いて写真を撮影するのは、妻の任務にしている。

妻は建築の専門教育を受けてきたわけではないが、私のほとんどの既存建物の調査や視察に同行しているので、そんじょそこらの建築士よりは建築に詳しく、感覚的に感想を語る。

この日も、今日のコンクリートは「あまりよくない」と言う。確かにそうだ。

以前調査した、あそこの現場のコンクリートはきれいだったと言う。その現場のコンクリートは築28年だけど37N/mm2あった。確かに、きれいなコンクリートコアは強度がある。

以前視察した安藤忠雄の建築について語りあう。

私「安藤さんの大きな建物は、やたらと歩かされて方向感覚がなくなることがあるから、そこは僕は嫌い」と言う。

妻「でも安藤さんのコンクリート打ち放しはきれいだったね、安藤さんの建物のコンクリートコアを抜いたら、とっても美しいコアが採取できるのではないか」と言う。

妻「一度コアを抜かせてもらいたい」と。

飾っておきたいようなコンクリートコアが採取できて、もしかしたら商品化できるかも知れない。「住吉の長屋45」とか。まるでスコッチウイスキーみたいだねと笑った。

この日、コンクリートコアを抜きに来てくれた専門業者の若い職人さん達と一緒に昼食の弁当を食べる。若い職人さんたちの話が聞けて楽しかった。

若い職人さんからスマホの「電子小黒板アプリ」の存在を教えてもらった。

責任者の人が、まだ新入社員の人に鉄筋探査機の使い方やコア採取後の無収縮モルタル(今はすでに配合された商品がある)の水分量、固さの確認方法等を口伝で教えていた。まだ30代だという責任者の人は、左官屋さんを見て自分の感覚でモルタルの固さを覚えたという。穴埋めと言っても結構難しい。素人がやると水分量が多すぎたり、埋めた後に凹んだりする。技術の継承と言うのは、やっぱり口伝なんだろうなと思った。