「鉄筋コンクリート造建物の耐久設計と診断・改修」依田彰彦著

2008年に出版された足利工業大学名誉教授の依田彰彦先生の本。

A5・100頁程の薄い本だが、実験に基づく研究に裏打ちされた中身の濃い本。

RC造の耐久性について調べていて古本屋ネットで400円で購入したが「儲かった」という感じがした。状態はほとんど新品だった。

 この本の中に「既存RC造躯体コンクリートの残存耐用年数等の予測」という章があり、別章に記載のある「中性化速度式」を用いた残存耐用年数の計算式が記載されている。「躯体コンクリートの屋外側、および屋内側水廻り部分(浴室、厨房、洗面所等)の半数が、鉄筋表面の位置までコンクリートが中性化した時点を耐用年数とする。」「また、屋内水廻り部分以外は半数が鉄筋裏面の位置までコンクリートが中性化した時点とする」と記載されている。耐用年数を把握した上で的確な補修・改修の必要性を強調し、その方法が例示されている。

 こうした先人達の地道な基礎研究が時代を超えて役立つのだと、改めて思った。

 最近知ったRC造の中性化を改善する方法として、1970年代にノルウェーで開発され、主として北米や欧州で使われ始め、日本では1992年に導入された、アルカリ性を再付与する電気化学的補修工法があると知った。

 コンクリート表面に陽極となるアルカリ性電解質を含む外部電極を仮設し、コンクリート中の鉄筋を陰極として直流電流を一定期間流すことで再生する方法。

 日本でも土木を始めたとした社会的インフラで実績があり効果は抜群だと聞いたが、工事費はとても高いらしい。

 人間の病気の治療と同じで、設計者は臨床医だから診断と治療はセットで考えないといけない。保険適用外の高額な医薬品や治療法を使えるかどうかは、クライアントの懐しだい。