【覚書】地震PML

地震PML(Probable Maximum Loss)とは、地震による「予想最大損失額」のことで、アメリカの火災保険で保険情報の一つとして生まれた概念。

日本では1966年(昭和41年)の家計地震保険の創設以来、総支払額限度額の設定根拠としてPMLが用いられており、保険制度運用上重要な指標となっている。

PMLは元来保険業界で使用されてきた概念だが、建設業界や不動産業界にも広がっている。

損害保険業界では、地震保険の引受業務や保有契約のポートフォリオのリスク管理にPMLが用いられている。PMLの値としては、国内の損害保険会社では再現期間500年に相当する予想損失が用いられている。 海外の損害保険会社では再現期間200年または250年に相当する予想損失が用いられる場合もある。

建設業界で用いられるPMLは、「再現期間475年相当の地震動の大きさにおける90%非超過確率に相当する物的損失額の再調達価格に対する割合」が一般的に用いられている。

不動産業界で用いられるPMLは、「対象施設あるいは施設群に対し最大の損失をもたらす再現期間475年相当の地震が発生し、その場合の90%タイル非超過確率に相当する物的損失額の再調達価格に対する割合」か、或いは、「リスクカーブから読取った再現期間475年における予想損失額」の双方が用いられている。

一般には、建物の耐震性が高いほどPML値は小さいと判断されている。10%以下では「軽度な損害で耐震性には問題なし」とみなされる。

15%または20%を超えた場合は、「地震リスクを軽減する措置を講じる必要がある」と判断される。(ただし、耐震性が低い建物でも、地震危険度が低い場合にはPML値も小さくなる。)

不動産の証券化では、PMLが20%を超えると融資にも影響がでてくる。格付けの低下や銀行などの金融機関から融資を受けることが困難になるため、耐震補強工事や地震保険への加入が検討される。

【具体例】

現時点で新築すると100億円かかる建物があったと仮定すると、その建物の存在する地点に対して予想される最大規模の地震が起きたときにその建物の補修に必要な費用が最大10億円かかると予想されるときには、その建物の地震PMLは10%(最大損失額10億円÷100億円)となる。

【計算方法】

建築物の築年、構造、用途を設計図書と実地調査により調べ、また過去起きた地震の震度、震源の深さ、地盤、断層の位置を調査した上で独自の計算方法に基づき算出する。

【地震PMLレポートの形式】

通常はエンジニアリングレポート(建物診断レポート)に包含される形で地震PMLレポートが提出されることが多く、特に統一されたものはないが、下記の構成となっていることが多い。

所在、建物の概要/算出PML値/周辺で起きた過去の地震とその地点で予想される最大震度/周辺の地盤の状況/周辺の断層、活断層の状況/その他(付属資料など)