建築病理学の構築 -2

 

■建築病理学

ヨーロッパやアメリカでは、古くから歴史的建築物の補修が盛んであり、経験的・個別的にノウハウが蓄えられてきた。

日本でも補修に関する技術は、経験的・個別的に蓄えられてきたといえる。

建築病理学は、改修理論や技術を体系的に学び、全ての建築物に生じる欠陥、不具合の技術的側面を考究すること、建築設計や施工、使用過程における重大な欠陥・不具合を診断し予防するための情報を提供することが目的である。

今、ストック活用を進めていくためには、全構造・構法にわたる建築病理学の構築が必要となっている。
イギリスでは、建築病理学を用いて、

1)既存建築物の劣化診断、補修設計、

2)建物の担保価値の評価、

3)建物の適法性評価、

4)過去の修繕効果の検証、

5)維持管理・補修工事の根拠提供、

6)建物の用途変更時の根拠提供

7)修繕義務違反建物に関する法的措置の根拠提供などに応用的利用がなされている
■岐阜県立森林文化アカデミーの木造建築病理学課程について

欧米に比べ日本では住宅の診断業務がビジネスとして、まだまだ十分に広がってはいないが、今後の建物の高寿命化と性能の確保の必要性から、必要不可欠な技術体系であると考えられている。

岐阜県立森林文化アカデミーでは、英国での建築病理学とその関連資格を紹介している中島正夫先生(関東学院大学)監修のもと、2006年度に授業科目として「木造建築病理学課程」を設置した。これが教育機関では日本初の設置となる。

木造建築病理学課程は、「木造建築病理学」(講義・実習、60時間)及び「木造建築病理学実習」(実習、60時間)の計120時間からなっている。この課程の開講期間は、2年間に渡る内容となっていて、実物件での調査を3回以上参加し、診断レポートを作成することで実践力を身につけます。さらに、これらの講義及び実習を受講した後、中間試験及び最終試験という2回の試験がある。

「木造建築病理学課程」では、以下のような授業構成となっている。

1)建物の長寿命化の必要性

2)建築病理学とは

3)耐震調査の目的・内容とその手順

4)各種検査機器と使用法

5)構造的不具合の原因と対応策

6)木材の腐朽と防腐

7)現場における検査手順

8)報告書作成法

9)床・壁・屋根、その他の不具合とその対応

10)建築病理学の必要性

11)床下環境について~防蟻対策

12)温熱環境の改善と対策

13)法規・制度関連

14)室内空気質の改善と対策

15)契約依頼者との契約上の注意 など。