時代にそぐわなくなってきた用途変更の規定

「用途変更」(コンバージョン)についての規定は、戦前の法律である市街地建築物法にも規定されていた。

大正八年法律第三十七號 「市街地建築物法」(昭和二十二年十二月二十二日改正)

【六條】

「前四條ノ規定ノ適用ニ付テハ新ニ建築物ノ用途ヲ定メ又ハ建築物ヲ他ノ用途ニ供スルトキハ 其ノ用途ニ供スル建築物ヲ建築スルモノト看做ス 」

前4条の規定の適用について新たに建築物の用途を定めるとき、または建築物を他の用途で使用するときは その用途に使用される建築物を(新たに)建築するものとみなす。 

ところが、昭和25年に建築基準法が制定された時点では「用途変更」に係わる規定はなかった。

「建築」の定義は新築、増築、改築、移転に限られていた。このほか修繕、模様替えといった概念もあるものの「用途変更」が法文に現れるまで、それから約10年を要することになる。

現在の用途変更については建築基準法第87条(用途の変更に対するこの法律の準用)において4つの項目から構成されている。
第1項は用途変更の対象建築物、第2項は実体規定と言われる準用規定、
第3項は既存不適格建築物に対する準用規定、第4項は部分規定に関するもので、法第86条の7(既存の建築物に対する制限の緩和)第2項,第3項(部分規定)の準用規定だけである。

最近は、用途変更と言っても建物の一部を用途変更するものだけでなく、建物全体を用途変更(コンバージョン)するものも多く見られるようになったのに、工事完了検査は必要ない、工事監理も不必要、設計者の資格も問われない。「用途変更」は「建築行為ではない」なんて、なんだか時代にそぐわない。