「よくわかる コンクリートの基本と仕組み」岩瀬泰己・岩瀬文夫著

鉄筋コンクリート造の既存建築物の調査をしていると疑問に思うことが沢山あった。

例えば「コンクリートコア採取」。JIS規格では「一般に粗骨材の3倍以内としてはならない」としており、粗骨材の最大寸法は2cmが一般的だから コアの直径は7cm~10cmとされている。しかし行政の担当者によっては直径10cmにこだわる人もいる。コア採取の技術者や試験所に聞くと3.5cmや5cmでも問題ないと聞いていた。既存の構造体の事を考えたら小さい直径が良い。この本の著者も直径3.5cmでも品質推定できると書く。

またコア採取の位置は、高さ方向のどの位置が適切なのかとか、コンクリートについて知りたかったことが沢山書かれていた。実務経験者が書いた本は、経験に裏付けられていて知恵が溢れている。

以前、両面コンクリート打放しの建物で外壁が孕んだり、垂直方向に壁が傾斜したり、外壁から雨漏りや結露するというので弁護士に依頼され現場を見に行ったことがあった。両面全面コンクリート打放しなのに施工計画書も作らないで施工しており、設計・工事監理者も何一つコミットメントしていない状態だった。協力業者という名の下請けに全面的に依存した施工だった。

遠目にはインスタ映えする建物だが、近くでみるとがっかりするような施工状態だった。

両面コンクリート打放しが難しい施工という認識は工事施工者も設計・工事監理者にも欠落しているような現場だった。もっと関係者は。コンクリートについて勉強して欲しいなと思ったものだ。

この本には、初学者にも読みやすいが学術書にはない楽しみが溢れている。コンクリートが好きになるような本。実務に役立つ本です。