「雪あかり日記/せせらぎ日記」谷口吉郎著

雪あかり日記せせらぎ日記
雪あかり日記せせらぎ日記
東北大学教授の五十嵐太郎さんが日経アーキテクチュア誌で推薦していた「今こそ読みたい名著01」「雪あかり日記/せせらぎ日記」(谷口吉郎著)を読みました。

1938年、アドルフ・ヒトラーの指揮の下、第三帝国へと都市計画の進むベルリン。若き日の谷口吉郎さんは、日本大使館の改築監督のため赴任しました。ナチスによって大規模な反ユダヤ攻撃がドイツ各地で起きたいわゆる「水晶の夜」に「うすら寒く、鉛色の空」のベルリンに到着します。それからナチスのポーランド侵攻、独ソ不可侵条約締結の4日後に陸路ノルウェーへ出国、日本へ向かう船で英仏の対独宣戦布告の報を聞くまでの1年弱の激動する政治社会情勢のもとで欧州の建築、人々の暮らしが描かれています。

 このように歴史の転換点の目撃談としても貴重な記録です。谷口吉郎さんの本はあまり読んだことが無かったのですが、谷口吉郎さんの豊かな教養と建築知識に裏付けられた文章は読みやすかつたです。
建築については、19世紀のドイツの建築家・シンケル(カール・フリードリッヒ・シンケル)に関する記述が多く勉強になりました。シンケルの建築は、ギリシア建築を源泉とする新古典主義建築ですが、ベルリン旧博物館・アルテス・ムゼウム(Altes Museum)にも見られる幾何学的、厳格で端正なデザインはモダニズム建築の美学に通じる言われています。
ベルリンは訪れたことがないので、現存しているシンケルの建築に触れてみたいと思っています。

広島は6日、71回目の「原爆の日」を迎えた

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広島は6日、71回目の「原爆の日」を迎えた。広島市中区の平和記念公園では午前8時から平和記念式典が開かれ、被爆者や全国の遺族の代表、政府関係者、各国代表が参列する。

戦前は、日清戦争(1894-1895)、日露戦争(1904-1905)、満州事変(1919-1931)、日中戦争(1931-1945)、太平洋戦争(1941-1945)と戦争が断続的に継続した。

本田勝一さんは日清から太平洋戦までを「50年戦争」と言ってた。

戦後71年戦争がないということは、すごいことなのだとあらためて思う。

安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから

合掌

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原爆ドームの写真は、いずれも2014年3月のものです。

超高層マンションの外壁タイルが落下

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先月中旬、豊島区東池袋の超高層マンション・エアライズタワーのタイルが地上に落下していたのが発見された。その後の調査で24階の外壁タイル2枚が剥がれ落下したものと判明した。

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1ヶ月以上経つ現在も地上部分は、立ち入り禁止部分を設けている。

エアライズタワーは、池袋四丁目市街地再開発組合事業でデベロッパーは住友商事、東京建物、伊藤忠都市開発。設計は日本設計。施工は大成・フジタ建設工事共同企業体で2007年(平成19年)1月31日 に竣工した。

地上42階地下2階で、住戸数555戸(計画時)、メトロ東池袋駅に直結し豊島区新庁舎に近接しているうえに、業務棟には豊島区図書館等が入居している。

築9年が経過しているので瑕疵補修期間外なのだろうが、他にも付着力が低い個所がないかどうか、果たして自然経年劣化と言えるかどうかは全面的に調査をしてみないと詳しくはわからないだろう。

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なにしろ42階建ての超高層マンション、どこまで調査するか、足場はどうするのか興味津々である。風聞によると調査点検費用は5億円と聞く。通常の修繕積立金では賄いきれないだろうし、大規模修繕費用が足りなくだろう。仮に住民側が全て負担すると一世帯あたり約10万円となる。

入居者住民・管理会社・設計監理者・施工会社で責任の所在を巡って議論沸騰していることであろうと推測される。

2011年7月の最高裁判決では、欠陥マンションをめぐる損害賠償訴訟で、設計者や施工者が負うべき不法行為の責任範囲を具体的に示している。判決文では、「建物の構造耐力に関係しない瑕疵であっても、外壁が落下して通行人に危害を与える恐れがあるような場合には、基本的な安全性を損なう瑕疵に当たると明示した」

マンションの瑕疵が見つかった場合、住民は売り主の瑕疵担保責任を問うことが多かったが、この最高裁判決以後は原則20年間、設計者や施工者の不法行為責任を直接問うことができる。

外壁タイルの落下は、しばしばあるだけに設計監理・施工は悩ましい問題だ。

ツリーハウスって何なの?

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ツリーハウスは建築確認申請が必要か否か聞かれた。
そもそもツリーハウスの用途は一体何なんでしょうかね? 「樹の家」という名称だけど住宅ではない。居室か非居室かと言われると「継続性」はないので非居室ということになるだろうか。
法文に沿って考えると
 1、屋根・壁があるので建築物
 「法2条第1項第一号 建築物:土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)。これに付随する門扉若しくは塀、・・・<中略>・・・観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗・・・<中略>・・・をいい、建築設備を含むものとする。」
 ということで、ツリーハウスは建築物にあたり建築基準法が適用されると考えるのが一般的。
 ちなみに「随時かつ任意に移動できない状態で設置」され「継続的に使用」する場合は、土地への定着性が確認できるものとして建築物として取り扱われる。
 2、確認申請が必要か
 法6条第1項:建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築すしようとする場合・・・<中略>・・・確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証交付を受けなければならない。」
  法6条第2項:前項の規定は、防火地域及び準防火地域において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10㎡以内であるときについては適用しない。」
 10㎡以内の増築の場合には確認申請なしで建築が可能だが、新築の場合は必要となる。
 ゆえに あとから増築なら確認申請は不要とも考えられるが、申請が不要なだけで遵法性は求められるのでツリーハウスで事故があった場合は、設計者の責任が問われることになる。
3、写真のようなツリーハウスで確認申請が可能か
・・・極めて困難。令第40条の木造の構造規定は、適用除外とならないのではないか。写真のように自然木に抱かせる形で、自然木を含めた総体の構造検証が困難に思える。
4、用途を物見塔と考えることもできる
・・・ただし工作物申請は必要だが、高さが8mを超えなければ工作物申請は不要。これも又申請が不要というだけで遵法性は担保しておく必要がある。
5、グランピング施設(宿泊)や喫茶・飲食として使用する場合は当然建築物
・・・どこかで見たことあるけどね
6、世の中に存在するツリーハウスは、確認申請は出していないのでは
・・・だと思うが確認申請を提出した事例があれば御教示いただきたい。

「アメリカ先住民のすまい」L.H.モーガン著

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今、戸建て3階建ての建物に住んでいる。1,2階がほぼ事務所、3階が寝室なのだが夏場は猛烈に暑い。エアコンを1時間後ぐらいに切るようにタイマーを設定して寝ると夜中に汗びっしょりになつて目を覚ましてしまう。それで1階事務所の床で寝るようにしたら、上階の冷気が階段を通じ降りてきて快適に寝れるようになった。

自分が設計した家ではないが、木造3階建ては階段竪穴区画が免除されている為か、あるいは断熱性能が低いせいか冬は1階が寒く、夏は3階が猛烈に暑い。

あれやこれやと木造3階建て住宅の断熱改修について考えているうちに、俺って、なんか季節ごとに住まいを変える遊牧民? と思った。

季節住居の一般的な形態は、周りの気候と共に変化する。

ステップ気候では、冬は猛烈に冷たい風が激しく吹き、夏は長くて暑い日中と短くて涼しい夜がある。冬の住居は熱容量の大きい壁や屋根のしっかりしたものを必要とし、一時的な夏の住まいは、熱容量の小さい壁や屋根で事足りる。冬は寒さや風から最大限守ってくれる土で覆われた半地下の住居が多く、夏の住まいは単なる日除けや風除けが多い。

亜熱帯のサバンナ気候では、季節の変化はほとんどない。一年中日中は暑くて夜は涼しく、湿度は低く雨はほとんど降らない。そこで必要とされる住居は、熱容量の大きい壁と屋根を持つものである。建物の熱容量の大きさのため、日中に蓄えられた熱が夜間に解き放たれ、逆に夜間に冷えた壁は少なくとも昼のある時間帯には住居の内部を涼しくするのである。

昔 アメリカインディアンの住まいの本にも、そんなことが書いてあったぞと思い読み始めたのがこの本「アメリカ先住民のすまい」L.H.モーガン著、古代社会研究会訳、上田篤監修、岩波文庫である。

しかし読み始めて気がついたが、この本は住居建築様式の起源について肉薄する内容となつている。

現代では住居は必ずしも家族の専用の場ではなくっている。家族という血縁的な器だけでなく、様々な人間関係からなる多様な器になってきている。

人間関係も「血縁」「地縁」があり、会社や組織が取りもつ「社縁」、シェアハウスやグループホーム、老人ホームが取りもつ「住縁」もある。そしてネット時代のSNSなどがとりもつ「サイバー空間縁」もある。

多様化する住まいと人間関係の原点となる生活共同体のあり方について今一度考えさせてくれる本である。

省エネ適合に対応して設計は二段階ロケットに?

建築物エネルギー消費基準への 適合性判定の制度が平成29年4月に迫ってきた。2000㎡以上の建築物は、建築確認申請時に構造適合と同じように省エネ適合を受けなければならなくなる。

その省エネ適合機関となる登録建築物エネルギー消費性能判定機関の登録要件として適合性判定員の選任が必要とされ、この制度の円滑な開始のために、施行前に一定数の適合性判定員の資格要件者確保する必要から、一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構で国土交通省補助事業として事前講習「省エネ適合性判定に関する講習」の開催計画が発表された。

これまでは施工着手日21日前までに省エネ設置届を特定行政庁に届出すれば良かったが、来年4月からは指定確認検査機関に確認申請を提出する場合(2000㎡以上)、事前審査段階に省エネ適合計算書を間に合わせ省エネ適合性判定を受けなければならない。

設計事務所・設計施工の建築会社にとつて建築確認済証を取得する日時は、契約上とても重要であり、工事着手日に影響することから、申請スケジュールは厳守である。

意匠・構造・省エネと同時並行的に審査が進められている中、かつ建築主側からの変更の要望を組み入れながらで、事前審査段階での省エネの修正対応が忙しくなることが予想される。

また非住宅の場合、これまで確認申請図書には不要だった一般照明図、空調図、(建具表)なども省エネ計算をするには必須となるため設計スケジュールは、これまでと大幅に変わることとなる。

それゆえにある規模以上のプロジェクトでは、確認申請段階ではとりあえずの設計図書を作成し確認済証を取得後、基礎工事段階でVE等に伴う空調機器や一般照明器具の変更等を反映して計画変更確認申請を提出するようにならざるを得ないのではないかと思われる。すなわち設計・確認二段階ロケットである。

ところで省エネ適判となった場合、確認検査員は工事完了検査において設置されている空調機の機器、照明器具の機種、個数等は確認するのであろうか。あるいは工事監理者からの報告書類のみで適合判定をすることになるのだろうか。

弊社はH25年基準以降、比較的複雑な形態(外皮計算が面倒な)の建築物の省エネ設置届の作成を業務として行ってきた。

最近はプロジェクトの基本設計段階で参画し省エネ計算でシュミレーションし必要な断熱性能・断熱材の種別などを意匠設計者側にフィードバックしている。こうした参画ができる場合は、設計者にコストコントロール意識があるときである。

リノベーション案件でも基本設計段階で既存図を基に省エネシュミレーションを行い施工性や大規模模様替えにならないよう配慮し断熱改修を提案し意匠設計者側にフィードバックしている。標準入力法で計算しているので、予算が限定されたリノベーションの場合、例えば北側だけ壁面断熱改修をするとか細かなシュミレーションが可能となる。

来年は、省エネ適判導入によつて忙しく振り回されそうな予感がする。

かくして違反建築は放置される

「検査済証のない建築物のリノベーション(増築・用途変更)」のセミナーの為の資料を整理してて、調査を経て完成した物件の紹介より、調査に至らなかった未成約案件の事例を紹介した方が実務者には、意外と役に立つのではないか思い、そうした未成約案件の資料を見直してみた。

この分野は成約物件より未成約案件(相談のみ)の方がはるかに多い。

弊社は基本的に「調査」に一定の報酬をいただいているが、設計事務所や不動産関係の会社は中々調査費を計上できない気風があるらしく リノベーション物件の調査や計画に深入りしたが報酬請求ができず「営業活動」とされることが多いと聞く。

数多くの案件の相談を受けているうちに、初期の資料提供と現状の把握で、このプロジェクトは進展するか否か、成約にいたるかどうか容易に判断できるようになってきた。

極論すると建築確認済み証を取得した後に無届増築、無届用途変更等の違反箇所が多く その是正に工事費用が多額になるものは、ほとんど実施にいたらない。

未成約案件を振り返ってみると他にも理由はあげられるのだが、それはセミナーなり出版物で紹介しょうと考えている。

住宅は、確認済み証の時点の設計図書と全く異なる建物が完成している場合が特殊建築物などより多くみられ、建ぺい率・容積率オーバー、斜線制限等に抵触しているものは減築及び屋根の是正を行わないとならない。

容積率・建ぺい率をオーバーしている違反建築物は、銀行融資はしてもらえないと聞く。一部高利のファイナンス系だと60%~70%程度融資してくれるらしいが、かなりの自己資金を持つていないと取得は無理だろう。

それゆえに違反中古住宅は売れず、空き家のまま、違反建築物のまま放置されることが多い。

「建築物の防火避難規定の解説2016」

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「建築物の防火避難規定の解説2016」が発行された。2012年版から4年での改訂版となった。

早速、日本建築行政会議のサイトで発表されている「追加・更新の概要」を基に、差分ヶ所をマーキングした。

変更箇所は、2012年版以降の建築基準法令及び告示の改正に伴うものの他、これまでの質疑応答も掲載されている。

この本は、建築基準法令の全国的に統一された取扱いや運用を意図して日本建築行政会議で編集作業が進められたものである。

実際にはこの本に全面的に依拠して審査する指定確認検査機関もあれば、依拠度が低い指定確認検査機関もあるが、2005年版発行当時に比べれば年々、重要度は高くなっている。

設計者・審査者にとって必読書の一冊である。

『プロが読み解く「増改築の法規入門」Q&Aと実例で学ぶ「可否の分かれ目」』

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『プロが読み解く「増改築の法規入門」Q&Aと実例で学ぶ「可否の分かれ目」』日経アーキテクチュア+ビューロベリタスジャパン著。

特殊建築物の増改築・用途変更等のリノベーションで、いかに魅力的な提案ができるかは、法的知識が左右する。この本では建築基準法に焦点をあてているが、実際は消防法、バリアアフリー法等の関連法規に熟知していないいけないし、意匠のみではなく設備や構造についても一定の知識が必要だ。

プロデューサーは、ゼネラリストでなければならない。

この本で取り上げている「実例」は、見覚えがあるから これまで日経アーキテクチュア誌に掲載されてきたリノベーション関係の事例だと思う。これまで実際見に行ってきた建物も多く含まれている。実は、法的な取扱いについては仲間内でも議論が分かれている建物もあるが、それについて書くのはまた別な機会にしておく。

増改築・用途変更に係る法規のQ&Aは、BVJにより良く整理されている。

綴じ込みの「建築基準法・改正年表」「遡及条文チェック表」は、実務に役立ちそうだ。

リノベーションの必読法令本に仕上がっているので、是非意匠設計者の方々に読んでもらいたい本である。

「天災から日本史を読みなおす」磯田道史著

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「武士の家計簿」「無私の日本人」の歴史学者・磯田道史氏の「天災から日本史を読みなおす~先人に学ぶ防災」をいっきに読んだ。

地震・津波・火山噴火・異常気象。史料・古文書に残された「災い」の記録を丹念にひも解いている。

著者は若い時から災害に係る史料を収集していたとある。東日本大震災のあと、防災に係る本は沢山だされたが、この本は人間が主人公の防災史の本であり、災害から命を守る先人達の知恵と工夫が満載されている。

建築法も 近代以降に限ってみても国内外の災害に対応して修正されてきた経緯がある。

さて現代の建築基準法では、地上部分の地震力は、当該建築物の各部分の高さに応じ、当該高さの部分が支える部分に作用する全体の地震力として計算される。具体的な数値は、当該部分の固定荷重と積載荷重の和に当該高さにおける地震層せん断力係数を乗じて計算する。(Q=Ci・ΣWi)

地震層せん断力係数は、Ci=Z・Rt・Ai・Coで算出する。

そのうち地域係数Zは、「その地方における過去の地震の記録に基づく震害の程度及び地震係数活動の状況その他地震の性状に応じて1.0から0.7までの範囲内において国土交通大臣が定める数値」である。(令第88条、昭和55年建告第1793号)

熊本市はZ=0.9、八代市・水俣市・宇土市はZ=0.8である。

先般地震があった函館市もZ=0.9で軽減されているが、今後この地域係数は変更されるのだろうか。ちなみに東京はZ=1.0 で沖縄県がZ=0.7

これら軽減地での今後の耐震診断・耐震補強において地域係数Zは軽減したままで良いのだろうか、と ふと考えてしまった。

「用途変更の円滑化について(技術的助言)」国住指第4718号

「用途変更の円滑化について(技術的助言)」国住指第4718号・平成28年3月31日が出されていた。行政庁ごとに運用のばらつきがあるので整理したとある。

「1、用途変更の手続き」で下記のように記載されている

「区分所有建築物等で 、異なる区分所有者等 が 100 ㎡以下の 特殊 建築物の用途 への 用途変更を別々に 行う 場合に、用途変更する部分の合計が 100 ㎡を超えた時点での用途変更手続 きは、特定行政庁が地域の実情に応じ必要と判断した場合に限 り、その手続きを要する 。なお、 用途変更の手続きを要しない場合であっても、建築基準関係規定が適用されることはいうまでもないが、 同一の者が 100 ㎡以下 の用途変更を 繰り返し行う場合については、意図的に意図的用途変更の手続きを回避しようとすることがありえるので、 特に留意すること。」

共同住宅等で区分所有部分が100㎡以下で、区分所有者が異なれば手続きは不要とある。建物総体で100㎡を超えても「特定行政庁が必要と判断」した場合のみであるとある。これでは意図的な用途変更の回避は制御できないだろうと感じた。

いつのまにやらマンションから飲食店ビルになっているかも知れない。

「2、用途変更時に適用される規定等について」

この部分は、指定確認検査機関の人達は、よく読んで理解してほしいと思う。用途変更の確認申請で、指定確認検査機関の審査担当者から、しばしば指摘されるのが法第28条の2(シックハウス)である。法第87条の既存遡及からは除外されている。

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法第28条の2が何故法第87条から除外されたのはわからないが、建物の一部を用途変更する場合しか想定していなかつたからではないかと思ったりする。建物全体を用途変更するフルリノベーションも増えてきた今日では、確かに法的には遡及しないがシックハウス・24時間換気を除外するのはいかがなものかなと考える。

同じように、用途変更では建築士の設計・工事監理は不要である。建築士法第3条、第3条の2、第3条の3には用途変更は除外されているから。これも法的には必要ないのだが、事務所ビルの1階をコンビニにするような用途変更ならいざ知らず、フルリノベーションでは、有資格者が介在しなくても良いのかどうか検討する必要があると考えている。

建築主からこの条文を逆手に取られて、用途変更は工事監理は不要なのだからと言われ工事監理料を大幅に削られたが、リノベーションの方が現場に行ったり打合せ回数が増え赤字になった。というような声も聞く。

用途変更・大規模改修・大規模模様替えに伴う法的な取扱いは、交通整理ができてないと思う。

例えば、

  1. 耐震補強をアウトフレームで行う場合は、増築や大規模模様替えにならないか
  2. 屋根防水を取り換え別の防水にする場合、大規模模様替えとするか否か
  3. 外断熱で改修する場合、大規模模様替えとなるか否か、床面積が増加し増築となるか否か

法的に考えていくとグレーな問題が沢山出てくる。

是非 国交省にあられては、ストック活用を巡る法的な問題において引き続き指導力を発揮し、運用の整理を行ってもらいたい。

 

コア東京6・2016 東京都建築士事務所協会

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先頃届いた東京都建築士事務所協会の機関誌「コア東京6・2016」をながめていた。

記事の中では、「オフィスビルを保育所にコンバージョン・ビルイン型保育所の課題と設計の実際」石嶋寿和氏(株式会社石嶋設計室)が読み応えがあった。

石嶋氏が、ビルイン型保育所を設計する上で直面した用途変更に伴う諸問題が良く整理されている。

1、消防法の既存遡及

保育所がテナントとしてビルインする場合、ビル全体の消防法の用途が「複合用途防火対象物(16項イ)となり、用途変更する保育所部分の問題だけでなく建物全体に現行の消防法の基準が適用される。それらにかかる防災設備の費用をテナントが負担しなければならない場合があり資金的なハードルとなる。これはビルの一部に飲食店が入居する用途変更の場合も同様の問題が生じる。

2、建築基準法の採光

オフィスビルに入居する場合などは、敷地境界線から建物の離隔距離か少ないため有効採光が取れないことがある。弊社でも事務所から入院施設のある診療所への用途変更で病室の有効採光の確保に苦心したことがある。

3.東京都建築物バリアフリー条令

記事では「誰でもトイレ」の設置について取り上げているが、おりから東京都都市整備局市街地建築部長から「高齢者、障害者が利用しやすい建築物の整備に関する条令第14条の適用に係る基本的な考え方について」(28都市建企第252号・平成28年6月2日)という技術的助言が通知されている。これで保育所関係の都バ条令第14条の制限の緩和は、やりやすくなった。

4、東京都児童福祉施設の設備及び運営の基準関する条令

記事では、二方向避難の問題を取り上げている。駅前などの中小ビル等には敷地の余裕がないため外階段等を設置できないという実情はわかるが、こと安全上の問題に関わることであり、避難に関わること、防災上の問題は慎重に考えたいところだ。それにしても建築基準法上は、「直通階段」で良いところを「屋外避難階段」とされている。より安全性を考えて「屋外避難階段」としているのかも知れないが、過剰かなと思うこともある。

5、排水

記事では既存の給排水の位置を現地調査し計画図を作成しているとある。リノベーションでは「調査なくして設計無し」であり、新築とは異なる設計手法が必要となる。

用途変更に伴うオール電化厨房設置による幹線の変更、キュービクルの変更あるいは新設、飲食店等が入居する場合はグリストラップの設置などの問題もある。

これらのように、用途変更には幾つものハードルがある。入居ビルの選定の段階から、構造・設備・法令等の総合的な知識と経験が要求される。

夢は枯野をかけ廻る

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【写真は、群馬県館林美術館】

「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」 元禄七年 十月八日

松尾芭蕉 最後となったこの句からは 旅先で死の床に臥しながら、見る夢は、あの野、この野、と知らぬ枯野を駈廻りたいという思いが切々と伝わってきます。

芭蕉の気持ちがわかる歳になってきました。

東京に住みながら、全国各地に足を運び、各地方に思いを寄せる日々。

今は北は宮城県から、南は熊本まで

全てのプロジェクトの場所が異なり、出かけては各地の風景・材料・食材に触れ大いなる刺激を得ています。

あ~。まだまだ全国各地を飛び回りたい。

夢は、留学です。

熊本新市街

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5/31の熊本市中央区新市街の様子

一見、平常の生活に戻ったようにみえますが

地震の際に建物が相当揺れたようでアーケードの屋根とぶつかりあい

損傷した後が生々しいです。

閉店したままの店もあり、フロントサッシが変形していたり

外観の目視だけでも損傷個所は、かなり見つけることができます

飛騨高山テディベアエコビレッジ

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飛騨高山テディベアエコビレッジ

こちらは民家を利用したミュージアム棟

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こちらはショップ棟

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ミュージアム棟の中には入らなかった

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ショップ棟の出入口部分・右側はカフェ

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妻側の壁

飛騨高山テディベアエコビレッジのショップには、

既に廃版になった熊さんも置いてあるとか。

「東京の老舗を食べる」安原真琴著

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この本を買ってみようかと思ったのは、挿絵が富永祥子さんだつたから。

富永さんは、工学院大学建築学部建築デザイン科教授であり建築家、そして時々漫画家という多面的な才能を持つ人で、昨年2015年建築学会賞・作品賞を工学院大学弓道場・ボクシング場で受賞した話題の人。

本全体としては出来は悪くはない。グルメ本というより江戸より継承された食文化を東京の老舗飲食店にかいまみることができるという食文化史的な紹介本と言ったらよいだろうか。

建築の道を歩んでいる人は、こういう老舗飲食店に足を運ぶことで伝統的な建築に触れることができる。ただし、その店その店固有の味付けがあり全ての人の口にあう味かどうかは別物で、色々と食べ歩いて自分好みの店を見つけ出さなければならない。

せっかく東京の老舗飲食店が紹介されているのだが、池波正太郎の本を読んだ時のような食べに行ってみたい。自分で作ってみたいという気持ちにはなれなかった。

それはほとんどのグルメ本、飲食店紹介記事に言えることだが・・。

「建築を保存する本01」工学院大学八王子図書館/武藤章

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わずか35年あまりしか空間を体験することを許さなかった工学院大学八王子図書館。

武藤章先生の代表作とも言える八王子図書館は、工学院大学八王子キャンパスの核となる施設であったが昨年2015年10月解体された。

学生時代1年間ゼミで武藤章先生の教えを受けた。設計演習でも指導を受けたが、先生はとても論理的だけど文学的な一面もあって、私が好きだった立原道造の詩を先生も好きでとても親近感を覚えていた。設計の成績はそれなりに良かったけど、自分は設計はあまり好きではなく、卒論は伊藤ていじ先生のもとでお世話になることとなった。それ以来、先生に会う機会がないまま月日は経過したが、あまりにも早く武藤章先生は他界してしまった。

八王子図書館の完成は、私が大学を卒業した後だったし、当時は東京から離れていたので、残念ながら実物は見ていない。雑誌等で見て記憶に残っていた程度だったが、まぎれもなく武藤章先生の代表作のひとつになるだろうと思っていた。

さて、この本は消えゆく建築の新しい保存方法を提起した「本」である。

惜しむらくは、解体時の変状調査をしておくと良かったように思う。一種の「解剖」なのだが、ストック活用の立ち位置からは有意義な資料が得られたように思う。

とにかく写真72枚、意匠図108枚、武藤章先生の八王子図書館に寄せる思い、関係者の証言、なんと申請図書まであり圧倒される。

端正なプロポーションで緊張感のあるデザイン・武藤章の空間を是非体験あれ

【本の紹介】

「建築を保存する本01」工学院大学八王子図書館/武藤章

上高地帝国ホテル

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1933年(昭和8年)に、日本初の本格的な山岳リゾートホテルとして誕生した上高地帝国ホテル。深紅の屋根は、上高地の自然の中で一段と映えます。
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 正面玄関側

今回は、上高地に二時間あまりしか滞在できなかった。

途中近くまで来たので上高地の神様に挨拶だけ

また来ます。

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開業当初の設計者は、高橋貞太郎

現在の建物は、開業当初の外観を忠実に再現して1977年(昭和52年)

に新築された。

上高地インフォメーションセンター

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上高地バスターミナルの一画にある上高地インフォメーションセンター

神の郷、神河内と呼ばれ聖域だった上高地

20代前半に後立山連峰の縦走以来、槍、穂高へ足を運ぶうえで上高地を訪れてきた

思い出深いところです。

自然は神秘的までに美しく、清らかな梓川、気高き山々、清浄な空気

何度来ても魅力的な世界が広がっています。

そんな聖域も、外国人観光客に満ち溢れていた。

まあ、バスターミナルと河童橋周辺に限定されてはいるが

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春の陽ざしがある半面、雪雲に半身覆われ細かな霰が降るといった不思議な天気

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内部は、木材で覆われた空間です。

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この上高地インフォメーションセンターは、上高地に関する様々な情報を提供している公共施設。環境省自然保護管事務所があり、繁忙期には上高地臨時警備派出所、登山相談所が開設される。入山届を提出するのもここ

「食と栄養」領域の業務を始めました。

かねてより準備中でした「食と栄養」に関連する業務を始めました。

「建築事務所なのに何故?」と聞かれそうですが、スタッフの潜在能力や資格を活かしていくと自然と業務範囲が広がり、それが「食と栄養」領域だったと言うわけです。

「建築事務所ですがなにか?」

この際だから社名も変更しようかと検討しましたが、「食と栄養」関連業務の事業が伸びて来たら再度検討することにしました。

担当者は、子ども二人を育て、現在孫二人。還暦を過ぎましたがとてもアグレッシブです。

栄養士・食生活指導士等の資格を持っており、豊富な社会的経験から学問上の知識だけでなく知恵の溢れる個別対応をさせていただきます。

当面の受注業務は、下記のものが中心です。近々別サイトにて活動を御紹介しようと準備中です。

  1. 妊産婦の食事・授乳期のお母さんの食事・離乳食等の栄養相談。
  2. ダイエットの相談
  3. 生活習慣病予備軍(まだ病気には至ってないが限りなく近づいている人)の食生活相談
  4. 食育講師(オリジナル紙芝居仕立て)
  5. 家庭料理の実践と継承
  6. 食品衛生のアドバイス
  7. その他

担当者は、まだ大学で食品衛生学の研究を続けており不在がちですが、下記アドレス宛にメールをください。後ほど担当者からお返事さしあげます。メール相談は無料です。

eiyouアットマークtaf2012.sakura.ne.jp

「アットマーク」部分を「@」に直して送信してください。

料亭 洲さき

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高山の老舗料亭・洲さき

高山陣屋から宮川にかかる中橋を渡ると岐阜県・最古の料亭・洲さきがあります。寛政6年(1794年)創業、建物は高山市有形文化財です。

司馬遼太郎の「街道をゆく」(飛騨紀行)に、洲さきを取り上げた章があり、飛騨美学の結晶が込められていると称えられています。

洲さきのために高山に行く価値があると断言する人さえいます。

たぶん大人になつてしか感受できない空間・料理・おもてなしが、ここには凝縮されています。

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入口

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暖簾を潜ると寛成当時のままの玄関、土間を抜けると右手に囲炉裏があります。

飛騨らしい造りで趣があります。

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室町時代に始まる本膳料理という日本料理の一つの型式・作法を今に伝える店です。

洲さきの宋和流本膳料理は、茶の湯の心をふまえた料理で、第二代高山藩主・金森可重の長男、茶道宋和流始祖である金森宋和が好んだ本膳の形と味を整えたものとあり、現在は、本来30品ある料理を11品に絞り込んだ宋和流本膳崩を提供しています。献立は毎月変わるそうです。

京都の華美な日本料理とは異なる日本料理が継承・進化されているようです。

高山恐るべし。

平成28年熊本地震による建築物等被害調査報告

国土交通省国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の平成28年(2016年)熊本地震による継続的な建築物等被害調査報告がとても興味深い。

国総研

第一次調査報告(その1)4月15日(本震前)、第一次調査報告(その2)4月16日(本震後)も読んでいたが、5月2日に発表された第二次調査報告(速報)は、熊本市内20棟、宇土市内3棟、宇城市内1棟の鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物が24棟調査されている。

一次調査(その2)で、益城町役場庁舎(RC3階建て)は、4/15には外観上無被害であったが、4/16には庁舎正面の搭状部分の頂部、中間部分の損傷がみられ、基礎底盤と周辺地盤に隙間が拡大。渡り廊下も損傷している。と報告されていたが、これまでは木造建築物の被害報告が大半だった。

今回の第二次報告書では特殊建築物(RC造・SRC造)のまとまった件数の学術的な視点での調査報告がなされている。

新耐震基準以降に建設された建築物や耐震補強がなされた建築物で、構造被害が甚大であった建築物を注視したい。

構造だけでなく各分野の多角的な詳細調査を行い、被害要因の分析がなされることがまたれる。

断捨離

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ゴールデンウィークは、どこにも行かず仕事と家の片付けをして過ごした。

家の片付けの事などを、最近では「断捨離」というらしい。

  • 断:入ってくるいらないものを絶つ
  • 捨:家にずっとあるいらないものを捨てる
  • 離:物への執着から離れる

東京の狭い居住空間では、定期的に物を整理・処分しないと生活空間がせせこましくなる。今回は痩せたら着れるだろうと取ってあった衣類と恒常的に溜まり続ける本・仕事関係の書類・カタログ等の処分が中心だが、家具類も配置換えをした。

本格的な片付けは2年ぶりだったかもしれない。

家具類の配置換えの影響でインターネット、イントラネットの接続に不具合が出て復旧に追われたり、掃除機が壊れてしまったりした。

本は「偲び難きを偲び」という思いで処分をする。漫画・推理小説・雑誌・仕事の資料etc・・・さようなら。

本を片付けていると、読んだことが無かった本とかを発見したりする。今回は、池波正太郎の「酒肴日和」(「そうざいエッセイ選集」・高丘卓編)を見つけて読みふけってしまった。池波正太郎が愛した本当にうまいものが満載。

しかし随分と事務所も居住部分もすっきりした。

「断捨離」自分と物との関係だけでなく、仕事や人間関係にも広げて実践することを薦めている人もいるらしい。最近では「断捨離」を実践する人を「ミニマリスト」と呼ぶこともあるとか。

ゴールデンウィーク

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出張から東京に戻ったら 世の中はゴールデンウィークに突入していた。今年もゴールデンウィークは、ゆっくりと休んではいられない。

写真は、中部山岳地帯・奥飛騨の平湯で撮影した桜の樹

ゴールデンウィーク直前で七分咲きだという。

細かな霰が降っていた。

それにしても、最近はどこに行っても外国人だらけ。日本人の観光客よりもはるかに多くの外国人が席巻しているように思える。

出張中に東野圭吾の「無限花(むげんばな)」を読んだ。人が抱える「宿命」について色々と考えさせてくれる。