感染症病棟 -1

これまで診療所、歯科医院、整形外科病棟等の設計に関わったことがあったが、大規模な病院や感染者病棟については知らないことが多かったので、感染者病棟の仕様や空調・換気について調べてみた。

まず「感染症」には、全部で5類あるが、一類と二類を記載すると。

【一類感染症】
ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、南米出血熱、痘そう、クリミア・コンゴ出血熱、エボラ出血熱
【二類感染症】
ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS)、急性灰白髄炎、中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)

今問題になっている新コロナウイルスは、指定感染症になり、分類としては二類感染症となったので感染症指定医療機関に入院することになる。感染症指定医療機関は3種類ある。

特定感染症指定医療機関は、新感染症の所見がある患者、一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関として、厚生労働大臣が指定。(全国で4か所)

都道府県知事が指定する第一種感染症指定医療機関及び第二種感染症指定医療機関に分類される。

厚労省・感染症指定医療機関

例えば北海道の市立札幌病院は、厚労省の感染症病棟施設基準に基づく病室等を下記のようにしている。

市立札幌病院・感染者病棟


【第一種病室】
病室、ベッドパンウォッシャー、トイレ・シャワールーム
・個室に依る感染管理
・患者の居住環境に配慮し、テレビや面会用電話を設置
・気密性を確保するためブラインド内蔵の二重構造窓
【第一種病室前室・前々室】
・前々室(-10Pa)、前室(-30Pa)、第1種病室(-50Pa)の陰圧設定
・前室入室時は防護スーツを着用。病室入室時にはその上にさらにガウン・手袋を着用
・病室退室時、手袋、ガウンなどの防護具を脱ぎ、前室退室時、防護スーツを脱いで退室


【第二種病室】
病室、手洗い設備


【ナースステーション】
・陰圧空調、室温モニター制御装置、病棟出入口監視モニター電気制御装置
・生体情報モニター装置
・ 患者モニター

【診察室】
診察室前室には車椅子型アイソレーターを保管

【患者家族待合室】

【排水処理施設】
・連続加熱方式
・コンピューターによる集中制御


第一種病室と第二種病室の仕様を比較するとかなり差があることに気づく。

空調・換気については次回。

「建築設備パーフェクトマニュアル2018-2019」山田浩幸著

「建築設備パーフェクトマニュアル2013」を最新情報に更新し、集合住宅・オフィスビルの解説を付け加えた増補版です。

意匠設計者が最低限押さえておくべき建築設備の基礎知識をまとめていますが、中々実務に役立つ本になっていてこれ一冊で概略は把握できます。

最新の「設備機器導入ガイド」を収録していますから現在の設備機器の傾向もわかるようになっています。結構知らなかった設備機器もあり、勉強になりました。

■目次
STEP1 設備設計を始める前に
STEP2 給排水衛生設備の設計
STEP3 空調換気設備の設計
STEP4 電気・通信設備の設計
STEP5 省エネ機器の導入計画
STEP6 設備図面の読み方・描き方
STEP7 防災・防犯設備の設計
コラム
先分岐工法とヘッダー工法/注意したいガス機器の給排気
加湿・除湿と結露/スマートハウス/オフィス配線
蓄電池の仕組み/ZEHの基礎知識/地中熱の可能性
改正省エネ法の要点
最新 建築設備導入ガイド
エコ関連の設備/設備機器全般

法32条 電気設備

建築確認審査の質疑で「法第32条の電気設備について明示してください」という補正事項がきた。

「(電気設備)
第三十二条  建築物の電気設備は、法律又はこれに基く命令の規定で電気工作物に係る建築物の安全及び防火に関するものの定める工法によつて設けなければならない。」

「建築基準法施行規則第1条の3第4項」では、「法第6条第1項の規 定による確認の申請に係る建築物の計画に建築設備に 係る部分が含まれる場合においては、同項の規定によ る確認の申請書は、次の各号に掲げる図書及び書類と する」と規定されており、表1-(5)の(い)欄に掲げる法 第32条の規定が適用される電気設備がある場合にあっ ては、(ろ)欄に掲げる図書を提出することとなっている。

なお、『正本に添える図書にあっては、当該図書 の設計者の記名及び押印があるものに限る』とされ ている。これにより、常用の電源及び予備電源に関する図 書を提出することとなったので、メーカーの機器仕様書などにも設計者の記名捺印が必要と言われることが多い。

いままで建築確認審査(用途変更)の補正指摘で、法第32条について何らかの記載を求められることが無かったが、確かに法施行規則第1条の3「確認申請書の様式」に「法第6条1項(法第第87条第1項において準用する場合を含む。第4項において同じ。)」とあるから指摘されても仕方がない。

用途変更の場合、既存の施設をほとんど再利用する場合も多いし、電気設備図も書かない事があるが、これからは施行規則をよく読み 注意が必要だ。

「設備設計スタンダード図集」ZO設計室

毎年、年末年始に読もうと大量の本を購入するのだが、今年最初に読み終えたのが、この本「設備設計スタンダード図集」ZO設計室・柿沼斉三・伊藤教子共著。

本来は設備設計者を対象としているのだろう、その極意を伝授する内容となっている。

建築ストックの活用・再生を業務にしていると、既存の建物の設備図面を読みこなす力が必要になってくる。名ばかり設備一級建築士なので、専門とする設備設計者に協力を仰がなければならないのだが、自分でもある程度は理解する必要があるので最新の知識は勉強しておきたい。

設備関係の更新が中心のリフォームも多くなってきているが、だからと言って設備設計者だけに業務を任せていれば良いというものでもなく総合的に判断する力量が必要となってくる。

この本の良いところは、オフィスからマンション、公共建築、戸建て住宅と規模と用途の異なる9タイプの事例を掲載していて、それぞれの図面に対して設計の決め方や留意点を記載するなど、きめ細かく解説している点だろう。

とても勉強になった。

設備設計一級建築士定期講習

今日は終日、設備設計一級建築士の定期講習でした。かれこれ一年前に更新講習の案内が来ていたのに忘れていて、3月31日までに定期講習を受講しなければならないのに 気がついたら東京で開催される最後の講習、3/9確認サービス主催しかありませんでした。

三年毎とはいえ、最近の法令改正の要点を全体的に再確認しておくのは必要なことだと思いました。又「確認審査で指摘されることの多い不備事項」や「既存不適格について」は、とても役に立つ内容でした。

ただ、設備設計に関する科目は、あまりにも建物が大規模で 採用されている設備技術も最先端すぎて、たぶん遭遇することはないと思いましたので一般知識として聞きました。内容は、カタカナ語と略アルファベットが多すぎて、なんだかチンプンカンプンでした。日本語で表現できるものは日本語で表記して良いのではないかと思いました。

  • アンビエント (室全体)
  • タスク(人の居るところ)
  • VAV(変風量制御)
  • VWV(変水量制御)
  • VRV(変冷媒量制御)
  • BCP(事業継続性)
  • デマンドレスポンス(エネルギーインフラの供給状況に応じて、ビル側の需要量を調整制御する)
  • GSHP(基礎杭利用型地中熱ヒートポンプシステム)
  • PMSM(二巻線式永久磁石同期電動機)

以上が今日初めて聞いたカタカナと略アルファベットでした。

知識だけでは仕事を遂行できないのですから、もっと規模の小さいもので実践的な知恵が身につくような講習が必要なのではないかと思いました。

終了考査もテキストのポイントから40問出題されるだけの形式的なものですから20分で終わってしまいました。

 

HCJ2016厨房設備機器展@東京ビッグサイト

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東京ビッグサイトで開催されている第16回厨房設備機器展を見てきました。

北九州出張から帰ってきた翌日で、少しお疲れモードで集中力欠如気味だったのでデスクワークには向いていない一日のため出かけることに。

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入場者が多かったですね。それだけ「食」に関わる生業の幅の広さが伺えます。

会場内では写真撮影禁止なのですが、スマホで記念撮影している人がちらほら。

(株)TOSEIさんの真空包装機・トスパックシリーズは興味深かった。真空・脱気・ガス封入・ホットパックと様々な食品と目的に合わせたパック方法。

(株)フジマックさんのコンビオーブンシリーズも力の入った展示。実は招待状はフジマックさんからいただいたので御挨拶。今や庫内の洗浄も自動なんですね。

その他、大小ブースに興味深い商品が多数。

新しい食に関する機器や厨房機器の商品知識を常に見聞きしているのは大事ですね。刺激的だし、結構試食とかもできるので楽しいです。

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二時間あまりしか会場にはいられませんでしたが、足は疲れたけど有意義でした。

2/19(金)まで開催中です。

 

小規模マンションの受電方法

小規模マンションの計画では、もともと敷地が狭く、そこに建蔽率いっぱいで建物が計画され、緑地やゴミ置場も必要ということで集合住宅用変圧器(パットマウント)の設置場所に苦慮する。

過密都市東京ならではの設計上の悩みでもある。

小規模マンション(20戸~30戸程度)の電気容量は、電灯が50KVAを超え、動力は10KVA以下(ELV、増圧ポンプ等)という特徴がある。

事務所・店舗等の動力が多い傾向の建物とは異なる特徴を持っている。

ところでこの集合住宅用変圧器(パットマウント)は、建築設備であり、高さが1.2mを超えているので建築基準法施行令第130条の12の後退距離の算定の特例を受けられない。

つまりパットマウントの道路側の位置が、道路斜線制限の最小後退距離となる。

2013年度の国交省による指定確認検査機関の処分で、「建築物の各部の高さの制限に係る建築物の後退距離の算定において、建築基準法施行令(以下「令」という。)第 130 条の 12 に定める特例の対象とはならない変圧器の存在を見落としたまま令第 135 条の 6 に定める基準を適用したため、結果として高さ制限に適合しない計画となっていたこと)を看過し、建築基準法第 53 条及び第 56 条の規定に適合していない建築計画に対し確認済証を交付した。」事などが処分理由とされた事案があり、パットマウントの位置が注目を浴びた。

単身者用マンション(1K・1LDK)などでは、一住戸が30A程度でもよい時代があったが、昨今の電気器具の消費傾向が反映してか1Kでも東京電力は40A(契約容量ではない)と言うし、同時使用率を考慮してもすぐ50KVAを超えてしまう。IHコンロを使う場合は、もっと受電容量が増える。

とういうように高圧受電となった場合の対応は、建物内に東電借室 (電気室)、集合住宅用変圧器(パットマウント)方式、施設柱方式となるが、初めに書いたように設置場所や最少後退距離の問題があり、色々と苦慮する。

店舗・事務所等の事業用「低圧弾力供給」は、電灯が50KVAが超えると適用できない。そこで出てくるのが共同住宅用の「低圧架空2条引き込み」である。

東電に建築場所を確認してもらい、「低圧架空2条引き込み」(電灯線を二条、動力を一条)でOKが出れば、敷地内に立つのは引き込み柱だけとなる。

もっとも「低圧架空2条引き込み協議・事前確認票」という書類に必要事項を記載し、図面などを添付してFAXして、東電が現地調査をして約4週間程度の時間が経たないと可能性の可否が判明しない。

意匠設計者のプロデュース力が低下している・・・

「知らない・書けない・解らない」というのは困ったものだ。

非常用照明

非常用照明器具は、マーケット・病院・劇場・ホテルなど多数人の集まる場所で、火災その他不慮の事故で停電したとき、居合わせた人々を速やかにかつ安全に避難できるように、室内や通路を照らし出す照明器具。

既存建物を調査して思うのは、この非常用照明があまり大事にされていない事だ。

電池が無いもの、電球がないもの、非常用照明そのものがなくなってしまったりと 扱いがおざなりにされている建築設備のひとつ

テナントが入居しているビルでは、工事区分がビル所有者工事とテナント工事区分とに分けられたりするが、防災設備関係はビル所有者工事区分になることが多いせいか、店舗の照明器具は新品だけど、非常用照明だけはタバコヤニで黄ばんでいたりする。

■非常用照明器具の基本要求機能

【1 照明器具】
(1)直接照明で、床面において水平面照度で1lx(蛍光灯の場合は2lx)以上確保できること(地下街の地下道は10lx以上)
(2)常用電源が保たれた時、予備電源により即時点灯する光源を有すること。
(3)周囲温度の40℃の雰囲気の中で30分間点灯を維持できるものであること。
(4)照明カバー、その他付属するものを含み、主要な部品は不燃材料にて造り、または覆うこと。
■電源

電池内蔵型と予備電源別置型がある。どちらを選定するかは建物の規模、構造、用途、取り付け場所、配線の方式、耐熱処理の有無、電源の種類などにより異なるため、その都度検討する必要がある。

【1、電池内蔵型】

電池内蔵型は配線規制を受けない。また、予期しない事由により、器具に至る配線がしゃ断されても点灯するので、安全で非常用照明装置を設ける目的に合致。配線規制のないこと、予備電源装置が不要で施工が簡単。

【2、予備電源別置型】

予備電源を別置する場合は、配線は耐火規制を受けるが、予備電源の寿命が長く、電源確保の信頼性が高い。
また、内蔵電池がないので、器具の意匠上も有利。

一般的に電池内蔵型は設備費は割高だが、予備電源が不要で、配線規制を受けないことで増築、改築の場合や小・中規模の建物に適している。大規模の建物では、予備電源装置が必ず設けられるので、電池内蔵型より予備電源別置型の方が経済的。
■非常用照明器具の配置設計

【 照明設計上の注意事項】
(1)照明範囲〔令第126 条の5、告示1830 号、通達住指発第44 号〕
照明は直接照明として、床面において水平面照度で、1 lx 以上の照度を確保します。蛍光灯を使用する場合は、常温において、1 lx 以上というのを、2 lx 以上におきかえて設計する。

床面必要照度は、避難行動上のさまたげとならない隅角部や居室、通路、階段などで柱の突出による陰の部分や物かげなどを除いた部分で規定の照度が確保できるように計画する。