建築基準法第6条の2第6項

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東京都建築士事務所協会の「コア東京・2016・11月号」に掲載されていた「一級建築士の懲戒処分は今・平成28年度第1回一級建築士の懲戒処分の分析」加藤峯男さんの記事がとても参考になりました。

東京三会建築会議の「処分適正化」「処分問題の改善要望」への活動もあり、建築士法第10条の2の改正につながっている事を知りました。役員の方々が常日頃建築士の為に活動されている事に敬意を表したいと思います。

平成28年度第1回の建築士の懲戒処分は、今年業務停止処分を受けたA指定確認検査機関と、かってA社に所属した4人の確認検査員に関わる物件だと聞いています。いずれも指定確認検査機関から確認済証及び検査済証の交付を受けた物件であり、済証を交付した指定確認検査機関に対する国土交通省の監査で違反設計部分が発見され、それに係つた設計者=建築士の処分となっています。

もともと建築基準法第6条の2第6項には、下記のように記載されています。

『6   特定行政庁は、前項の規定による確認審査報告書の提出を受けた場合において、第1項の確認済証の交付を受けた建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは、当該建築物の建築主及び当該確認済証を交付した同項の規定による指定を受けた者にその旨を通知しなければならない。この場合において、当該確認済証は、その効力を失う。』
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指定確認検査機関が交付した建築確認済証や工事完了検査済証は、絶対的な「正」ではなく、事後に覆ることがあるということは指定確認検査機関制度が出来たときからの問題でした。このことを話すと、未だに知らない建築士がいることに逆に驚きを感じます。
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設計者が指定確認検査機関と付き合う時の基本的スタンスは、「全幅の信頼」を持つことではなく、基準法の取扱いが難しい場合は、あくまでも特定行政庁と指定確認検査機関の相互の見解を聴くようにして設計者自らが判断することが必要だと思います。
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指定確認検査機関の業務は、あくまでも本来行政が行うべき「確認事務」の代行であるに過ぎません。「確認」なのですから、その設計の内容に責任をもつのは「設計者」です。仮に不適合とされた設計箇所に対する法的取扱いが指定確認検査機関の判断であったとしてもです。
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尚、建築基準法第6条の2第7項には、下記のようにあります。
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『7  前項の場合において、特定行政庁は、必要に応じ、第9条第1項又は第10項の命令その他の措置を講ずるものとする。』
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第7項では、違反建築物に対する措置を定めていますが、是正命令を出せるのは特定行政庁にあり、指定確認検査機関にはありません。
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平成28年第一回の処分には、旧知の方が2名いました。いずれも、この道数十年のベテランの方です。それ故に、指定確認検査機関が確認済証や検査済証を交付し物件の引き渡しが完了し、すでにその物件が使用されているのに違反設計とされ是正命令が出て、とてもやりきれなかったと思います。もしかしたら業務停止処分になるのではないかと、さぞかし不安な気持ちでおられたことでしょう。
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現行の建築基準法の指定確認検査機関制度では、こうなってしまうのです。
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設計者が判断が分かれる建築基準法の取扱いについて指定確認検査機関に相談に行くと、「指定確認検査機関では判断する裁量がないから特定行政庁に行って相談して、議事録つけてもらえば良いから」と言われ、特定行政庁に行けば、「確認を民間に出すなら指定確認検査機関に判断してもらって」と。一体「設計者はどうしたらいいのさ」というのは、今でも耳にします。
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もう15年もダブルスタンダード(二重規範)は、続いています。

季刊大林・№13「長屋」

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現在の集合住宅の原型は、江戸時代の長屋ですが、明治時代になっても、その形態は継承されたと言われています。

明治期の建築法制では、長屋建築条例が各地につくられています。その「長屋建築条例」を全国各地から収集し比較分析した先覚者の研究も見られます。

深川江戸資料館の常設展示室では、天保年間(1830年~1844年)の深川佐賀町の街並みの一部(5世帯)を想定再現していますが、規模が小さい為か何となく雰囲気はわかるものの今一つです。東京では現存していませんが、大阪には現存し改修して今でも使われている長屋があるそうです。

深川江戸資料館の展示でも参考にしたのが、この『季刊大林・№13「長屋」』です。

この1982年に発表された『季刊大林・№13「長屋」』は、とても先駆的な研究であり、江戸と大阪の長屋の比較がされているうえに、長屋の平面図と立面図が再現されているため全貌が掴める内容になっています。

「長屋」は、社会的システムつまり法で規制するというのは、古くて新しいテーマです。

「長屋」は、共同住宅の一形態であるのに 何故 現代の建築基準法では「特殊建築物」と定義されなかったか。建築基準法では定義がなく、各地の解釈にゆだねられたのはどうしてか。今なお、各地で紛争を起こす「重層長屋」や接道の問題は、なかなか厄介です。

明治のころから「長屋」の防火性・衛生は、社会的問題だったということが分かる貴重な本です。

省エネ設置届にまつわる話し -1

最近 歳を取ったせいか怒りっぽいというか挑発的な言い回しになる時がある。

都内の某区の省エネ審査担当者との会話

区「外皮計算の算定根拠となる図面を添付してください」

私「各室別・方角別に外皮計算をエクセルで作成し添付してありますが」

区「どこがどこの部分という色分けして外皮計算根拠がわかる。こちらがチェックしやすい図面を添付してもらっています」

私「平面図・立面図等の添付してある建築一般図で階高や辺長をチェックするのが審査ではないですか。図面に基づく算定根拠は添付してありますから、それでチェックしてください。」

区「算定根拠図がないとチェックできないでしょ」

私「添付した確認申請の図書である建築一般図で充分チェックできるでしょ」

区「皆さんに図面とは別に算定根拠がわかりやすい図を作ってもらっています」

私「何度もそちらの区に省エネ設置届を出していますが、別図を作成しろと言われたことはありません」

区「皆さんに作ってもらっているし、算定根拠図を作成してもらうのは区の方針です」

提出してあるのは2階建て500㎡あまりの建物だが、屋根形状と外皮形状からモデル建物法はそぐわないと思い、標準入力法で設置届を提出してあった。区に提出(受付)してから18日目になって電話がきた。18日経過しても全部の内容は見てないらしい。

私「今年4月に、そちらに別件の省エネ設置届(標準入力法)で提出したときも別図を作成しないさいとは言われませんでしたよ」

区「誰が担当でしたか」

私「え~っと。Aさんです」

区「わかりました。このままの書類でチェックして質疑書を出します。少し時間がかかります」

私「もうすぐ21日経過するので工事着工が伸びてしまいます」

区「受付してあるから工事着工は構いません」

工事着工の21日前に省エネ設置届を出すというのは、要は書類上の形式的儀式なのですね。

以上の会話 音声にすると結構 お互いにエスカレートした口調なのです。

ツリーハウスって何なの?

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ツリーハウスは建築確認申請が必要か否か聞かれた。
そもそもツリーハウスの用途は一体何なんでしょうかね? 「樹の家」という名称だけど住宅ではない。居室か非居室かと言われると「継続性」はないので非居室ということになるだろうか。
法文に沿って考えると
 1、屋根・壁があるので建築物
 「法2条第1項第一号 建築物:土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)。これに付随する門扉若しくは塀、・・・<中略>・・・観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗・・・<中略>・・・をいい、建築設備を含むものとする。」
 ということで、ツリーハウスは建築物にあたり建築基準法が適用されると考えるのが一般的。
 ちなみに「随時かつ任意に移動できない状態で設置」され「継続的に使用」する場合は、土地への定着性が確認できるものとして建築物として取り扱われる。
 2、確認申請が必要か
 法6条第1項:建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築すしようとする場合・・・<中略>・・・確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証交付を受けなければならない。」
  法6条第2項:前項の規定は、防火地域及び準防火地域において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10㎡以内であるときについては適用しない。」
 10㎡以内の増築の場合には確認申請なしで建築が可能だが、新築の場合は必要となる。
 ゆえに あとから増築なら確認申請は不要とも考えられるが、申請が不要なだけで遵法性は求められるのでツリーハウスで事故があった場合は、設計者の責任が問われることになる。
3、写真のようなツリーハウスで確認申請が可能か
・・・極めて困難。令第40条の木造の構造規定は、適用除外とならないのではないか。写真のように自然木に抱かせる形で、自然木を含めた総体の構造検証が困難に思える。
4、用途を物見塔と考えることもできる
・・・ただし工作物申請は必要だが、高さが8mを超えなければ工作物申請は不要。これも又申請が不要というだけで遵法性は担保しておく必要がある。
5、グランピング施設(宿泊)や喫茶・飲食として使用する場合は当然建築物
・・・どこかで見たことあるけどね
6、世の中に存在するツリーハウスは、確認申請は出していないのでは
・・・だと思うが確認申請を提出した事例があれば御教示いただきたい。

省エネ適合に対応して設計は二段階ロケットに?

建築物エネルギー消費基準への 適合性判定の制度が平成29年4月に迫ってきた。2000㎡以上の建築物は、建築確認申請時に構造適合と同じように省エネ適合を受けなければならなくなる。

その省エネ適合機関となる登録建築物エネルギー消費性能判定機関の登録要件として適合性判定員の選任が必要とされ、この制度の円滑な開始のために、施行前に一定数の適合性判定員の資格要件者確保する必要から、一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構で国土交通省補助事業として事前講習「省エネ適合性判定に関する講習」の開催計画が発表された。

これまでは施工着手日21日前までに省エネ設置届を特定行政庁に届出すれば良かったが、来年4月からは指定確認検査機関に確認申請を提出する場合(2000㎡以上)、事前審査段階に省エネ適合計算書を間に合わせ省エネ適合性判定を受けなければならない。

設計事務所・設計施工の建築会社にとつて建築確認済証を取得する日時は、契約上とても重要であり、工事着手日に影響することから、申請スケジュールは厳守である。

意匠・構造・省エネと同時並行的に審査が進められている中、かつ建築主側からの変更の要望を組み入れながらで、事前審査段階での省エネの修正対応が忙しくなることが予想される。

また非住宅の場合、これまで確認申請図書には不要だった一般照明図、空調図、(建具表)なども省エネ計算をするには必須となるため設計スケジュールは、これまでと大幅に変わることとなる。

それゆえにある規模以上のプロジェクトでは、確認申請段階ではとりあえずの設計図書を作成し確認済証を取得後、基礎工事段階でVE等に伴う空調機器や一般照明器具の変更等を反映して計画変更確認申請を提出するようにならざるを得ないのではないかと思われる。すなわち設計・確認二段階ロケットである。

ところで省エネ適判となった場合、確認検査員は工事完了検査において設置されている空調機の機器、照明器具の機種、個数等は確認するのであろうか。あるいは工事監理者からの報告書類のみで適合判定をすることになるのだろうか。

弊社はH25年基準以降、比較的複雑な形態(外皮計算が面倒な)の建築物の省エネ設置届の作成を業務として行ってきた。

最近はプロジェクトの基本設計段階で参画し省エネ計算でシュミレーションし必要な断熱性能・断熱材の種別などを意匠設計者側にフィードバックしている。こうした参画ができる場合は、設計者にコストコントロール意識があるときである。

リノベーション案件でも基本設計段階で既存図を基に省エネシュミレーションを行い施工性や大規模模様替えにならないよう配慮し断熱改修を提案し意匠設計者側にフィードバックしている。標準入力法で計算しているので、予算が限定されたリノベーションの場合、例えば北側だけ壁面断熱改修をするとか細かなシュミレーションが可能となる。

来年は、省エネ適判導入によつて忙しく振り回されそうな予感がする。

「建築物の防火避難規定の解説2016」

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「建築物の防火避難規定の解説2016」が発行された。2012年版から4年での改訂版となった。

早速、日本建築行政会議のサイトで発表されている「追加・更新の概要」を基に、差分ヶ所をマーキングした。

変更箇所は、2012年版以降の建築基準法令及び告示の改正に伴うものの他、これまでの質疑応答も掲載されている。

この本は、建築基準法令の全国的に統一された取扱いや運用を意図して日本建築行政会議で編集作業が進められたものである。

実際にはこの本に全面的に依拠して審査する指定確認検査機関もあれば、依拠度が低い指定確認検査機関もあるが、2005年版発行当時に比べれば年々、重要度は高くなっている。

設計者・審査者にとって必読書の一冊である。

『プロが読み解く「増改築の法規入門」Q&Aと実例で学ぶ「可否の分かれ目」』

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『プロが読み解く「増改築の法規入門」Q&Aと実例で学ぶ「可否の分かれ目」』日経アーキテクチュア+ビューロベリタスジャパン著。

特殊建築物の増改築・用途変更等のリノベーションで、いかに魅力的な提案ができるかは、法的知識が左右する。この本では建築基準法に焦点をあてているが、実際は消防法、バリアアフリー法等の関連法規に熟知していないいけないし、意匠のみではなく設備や構造についても一定の知識が必要だ。

プロデューサーは、ゼネラリストでなければならない。

この本で取り上げている「実例」は、見覚えがあるから これまで日経アーキテクチュア誌に掲載されてきたリノベーション関係の事例だと思う。これまで実際見に行ってきた建物も多く含まれている。実は、法的な取扱いについては仲間内でも議論が分かれている建物もあるが、それについて書くのはまた別な機会にしておく。

増改築・用途変更に係る法規のQ&Aは、BVJにより良く整理されている。

綴じ込みの「建築基準法・改正年表」「遡及条文チェック表」は、実務に役立ちそうだ。

リノベーションの必読法令本に仕上がっているので、是非意匠設計者の方々に読んでもらいたい本である。

「天災から日本史を読みなおす」磯田道史著

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「武士の家計簿」「無私の日本人」の歴史学者・磯田道史氏の「天災から日本史を読みなおす~先人に学ぶ防災」をいっきに読んだ。

地震・津波・火山噴火・異常気象。史料・古文書に残された「災い」の記録を丹念にひも解いている。

著者は若い時から災害に係る史料を収集していたとある。東日本大震災のあと、防災に係る本は沢山だされたが、この本は人間が主人公の防災史の本であり、災害から命を守る先人達の知恵と工夫が満載されている。

建築法も 近代以降に限ってみても国内外の災害に対応して修正されてきた経緯がある。

さて現代の建築基準法では、地上部分の地震力は、当該建築物の各部分の高さに応じ、当該高さの部分が支える部分に作用する全体の地震力として計算される。具体的な数値は、当該部分の固定荷重と積載荷重の和に当該高さにおける地震層せん断力係数を乗じて計算する。(Q=Ci・ΣWi)

地震層せん断力係数は、Ci=Z・Rt・Ai・Coで算出する。

そのうち地域係数Zは、「その地方における過去の地震の記録に基づく震害の程度及び地震係数活動の状況その他地震の性状に応じて1.0から0.7までの範囲内において国土交通大臣が定める数値」である。(令第88条、昭和55年建告第1793号)

熊本市はZ=0.9、八代市・水俣市・宇土市はZ=0.8である。

先般地震があった函館市もZ=0.9で軽減されているが、今後この地域係数は変更されるのだろうか。ちなみに東京はZ=1.0 で沖縄県がZ=0.7

これら軽減地での今後の耐震診断・耐震補強において地域係数Zは軽減したままで良いのだろうか、と ふと考えてしまった。

「用途変更の円滑化について(技術的助言)」国住指第4718号

「用途変更の円滑化について(技術的助言)」国住指第4718号・平成28年3月31日が出されていた。行政庁ごとに運用のばらつきがあるので整理したとある。

「1、用途変更の手続き」で下記のように記載されている

「区分所有建築物等で 、異なる区分所有者等 が 100 ㎡以下の 特殊 建築物の用途 への 用途変更を別々に 行う 場合に、用途変更する部分の合計が 100 ㎡を超えた時点での用途変更手続 きは、特定行政庁が地域の実情に応じ必要と判断した場合に限 り、その手続きを要する 。なお、 用途変更の手続きを要しない場合であっても、建築基準関係規定が適用されることはいうまでもないが、 同一の者が 100 ㎡以下 の用途変更を 繰り返し行う場合については、意図的に意図的用途変更の手続きを回避しようとすることがありえるので、 特に留意すること。」

共同住宅等で区分所有部分が100㎡以下で、区分所有者が異なれば手続きは不要とある。建物総体で100㎡を超えても「特定行政庁が必要と判断」した場合のみであるとある。これでは意図的な用途変更の回避は制御できないだろうと感じた。

いつのまにやらマンションから飲食店ビルになっているかも知れない。

「2、用途変更時に適用される規定等について」

この部分は、指定確認検査機関の人達は、よく読んで理解してほしいと思う。用途変更の確認申請で、指定確認検査機関の審査担当者から、しばしば指摘されるのが法第28条の2(シックハウス)である。法第87条の既存遡及からは除外されている。

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法第28条の2が何故法第87条から除外されたのはわからないが、建物の一部を用途変更する場合しか想定していなかつたからではないかと思ったりする。建物全体を用途変更するフルリノベーションも増えてきた今日では、確かに法的には遡及しないがシックハウス・24時間換気を除外するのはいかがなものかなと考える。

同じように、用途変更では建築士の設計・工事監理は不要である。建築士法第3条、第3条の2、第3条の3には用途変更は除外されているから。これも法的には必要ないのだが、事務所ビルの1階をコンビニにするような用途変更ならいざ知らず、フルリノベーションでは、有資格者が介在しなくても良いのかどうか検討する必要があると考えている。

建築主からこの条文を逆手に取られて、用途変更は工事監理は不要なのだからと言われ工事監理料を大幅に削られたが、リノベーションの方が現場に行ったり打合せ回数が増え赤字になった。というような声も聞く。

用途変更・大規模改修・大規模模様替えに伴う法的な取扱いは、交通整理ができてないと思う。

例えば、

  1. 耐震補強をアウトフレームで行う場合は、増築や大規模模様替えにならないか
  2. 屋根防水を取り換え別の防水にする場合、大規模模様替えとするか否か
  3. 外断熱で改修する場合、大規模模様替えとなるか否か、床面積が増加し増築となるか否か

法的に考えていくとグレーな問題が沢山出てくる。

是非 国交省にあられては、ストック活用を巡る法的な問題において引き続き指導力を発揮し、運用の整理を行ってもらいたい。

 

コア東京6・2016 東京都建築士事務所協会

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先頃届いた東京都建築士事務所協会の機関誌「コア東京6・2016」をながめていた。

記事の中では、「オフィスビルを保育所にコンバージョン・ビルイン型保育所の課題と設計の実際」石嶋寿和氏(株式会社石嶋設計室)が読み応えがあった。

石嶋氏が、ビルイン型保育所を設計する上で直面した用途変更に伴う諸問題が良く整理されている。

1、消防法の既存遡及

保育所がテナントとしてビルインする場合、ビル全体の消防法の用途が「複合用途防火対象物(16項イ)となり、用途変更する保育所部分の問題だけでなく建物全体に現行の消防法の基準が適用される。それらにかかる防災設備の費用をテナントが負担しなければならない場合があり資金的なハードルとなる。これはビルの一部に飲食店が入居する用途変更の場合も同様の問題が生じる。

2、建築基準法の採光

オフィスビルに入居する場合などは、敷地境界線から建物の離隔距離か少ないため有効採光が取れないことがある。弊社でも事務所から入院施設のある診療所への用途変更で病室の有効採光の確保に苦心したことがある。

3.東京都建築物バリアフリー条令

記事では「誰でもトイレ」の設置について取り上げているが、おりから東京都都市整備局市街地建築部長から「高齢者、障害者が利用しやすい建築物の整備に関する条令第14条の適用に係る基本的な考え方について」(28都市建企第252号・平成28年6月2日)という技術的助言が通知されている。これで保育所関係の都バ条令第14条の制限の緩和は、やりやすくなった。

4、東京都児童福祉施設の設備及び運営の基準関する条令

記事では、二方向避難の問題を取り上げている。駅前などの中小ビル等には敷地の余裕がないため外階段等を設置できないという実情はわかるが、こと安全上の問題に関わることであり、避難に関わること、防災上の問題は慎重に考えたいところだ。それにしても建築基準法上は、「直通階段」で良いところを「屋外避難階段」とされている。より安全性を考えて「屋外避難階段」としているのかも知れないが、過剰かなと思うこともある。

5、排水

記事では既存の給排水の位置を現地調査し計画図を作成しているとある。リノベーションでは「調査なくして設計無し」であり、新築とは異なる設計手法が必要となる。

用途変更に伴うオール電化厨房設置による幹線の変更、キュービクルの変更あるいは新設、飲食店等が入居する場合はグリストラップの設置などの問題もある。

これらのように、用途変更には幾つものハードルがある。入居ビルの選定の段階から、構造・設備・法令等の総合的な知識と経験が要求される。

平成28年熊本地震による建築物等被害調査報告

国土交通省国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の平成28年(2016年)熊本地震による継続的な建築物等被害調査報告がとても興味深い。

国総研

第一次調査報告(その1)4月15日(本震前)、第一次調査報告(その2)4月16日(本震後)も読んでいたが、5月2日に発表された第二次調査報告(速報)は、熊本市内20棟、宇土市内3棟、宇城市内1棟の鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物が24棟調査されている。

一次調査(その2)で、益城町役場庁舎(RC3階建て)は、4/15には外観上無被害であったが、4/16には庁舎正面の搭状部分の頂部、中間部分の損傷がみられ、基礎底盤と周辺地盤に隙間が拡大。渡り廊下も損傷している。と報告されていたが、これまでは木造建築物の被害報告が大半だった。

今回の第二次報告書では特殊建築物(RC造・SRC造)のまとまった件数の学術的な視点での調査報告がなされている。

新耐震基準以降に建設された建築物や耐震補強がなされた建築物で、構造被害が甚大であった建築物を注視したい。

構造だけでなく各分野の多角的な詳細調査を行い、被害要因の分析がなされることがまたれる。

RC造のスパン計画

つらつらと昨年度の一級建築士設計製図試験の課題をみていた。スパン割りは、7m×7m=49㎡とか6m×8m=48㎡が標準のようだ。スラブ厚は200mm程度にしている。

設計製図の課題の場合は、建築面積から単位グリッド(スパン割り)の目安をつけ、敷地の形状・敷地ゾーニング計画から決定する。設計製図の場合、均等スパンが基本だろうから、7m×7mあるいは6m×8m等の、どのスパンが適正なのか判断しないとならないだろう。

私が一級建築士を受けた1982年今から34年前は6m×6m=36㎡、スラブ厚120mmだったように記憶している。戦前昭和12年頃のオフィスビルの図面をみていたらスパン割りは5.4m×5.4m=29㎡でスラブ厚120mmだった。

これにはコンクリート強度も関係があって、現在はFc24N/m㎡が標準だが、戦前はFc13.5N/m㎡。80年間の建築技術の進歩を感じる。

最近読んだJSCA(日本建築構造技術者協会)の資料で、「梁せい-スパン-コスト」に関するものを読んだ。これはエクスナレッジ刊「スパッとわかる建築構造」に書かれている。

RC造の大梁のせい、スパンを変化させ、適正断面を検討したもので、RC5階建ての4階の大梁を想定していた。6m×8mの場合で大梁のせいを変化させたとき、梁せいを小さくすると鉄筋量が増えコストアップにつながり、梁せいがL/11~L/10の範囲ではコストはさほど変わらないようだ。

久しぶりに一級建築士の設計製図試験の課題をながめてみたが、要求図面+面積表+計画の要点について記載しないとならなくなっており、より実務的というか、かなり幅広い建築知識が必要なものになつていると感じた。設備計画などは、設備設計一級建築士の試験を思い出した。

小石川二丁目マンション(ル・サンク小石川後楽園)@事件の現場

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2/25、小石川二丁目マンション(ル・サンク小石川後楽園)の現地を訪れてみた。

外構工事を残して工事は中止されたままだった。工事事務所は撤収されており、現在は管理者は常駐していないように見受けられた。

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地下鉄の後楽園駅、春日通り・文京区役所の交差点からはとても近く、利便性が良くマンションとして最適な立地だと感じた。

しかし道は狭い。

住民側の要望だった「車寄せを敷地内に設けてください。ゴミ出し場やメインエントランスを車寄せに代用しないでください」というのは、近くに住んでいる人達にとっては、至極あたりまえのような要望だと思った。

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この建物の敷地は凸型で、実質は急傾斜の「掘坂」に面していて、六角坂とかこの道には形ばかりの接道なのだ。

DSCF2350_R「堀坂」は、歩道はあるものの、思っていたより急傾斜だった。

私だったらこの坂の途中に駐車場の出入り口があるのは嫌だな。何よりも坂道発進苦手だし。

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「堀坂」を「六角坂」から見たところ。住民側の要望に「駐車場出入口を坂が平坦になる位置に移してください。」とあったが、マンション側住民の駐車場出入りの安全性から考えても検討の余地はあったのではないか。

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1階の駐車場出入口付近

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「六角坂」は、一方通行だが幅員は6m程度ある

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「六角坂」側の接道。

昨年平成27年11月2日付けで東京都建築審査会で建築確認申請が取り消されたのだが、その後公表された「第1254回口頭審査議事録」「建築計画概要書」等を読んだ。

こうした傾斜地に建つ建物の「避難階」の考え方は難しい。建築基準法では、施行令第13条第一号に「避難階」カッコ書きで「直接地上に通ずる出入口のある階をいう」とあるだけだ。法律の解釈だけで是非を判断しがちだけど、果たしてそうだろうかと思う事が多い。

竣工間際の建築物の工事の執行停止や建築確認を取り消す事が、どれだけ社会的に影響が大きいことか。マンションを契約していた人達、事業者、設計者、施工者・・・。そして地域の人達にとっても、このままこの建物が放置されることは望んではいないのではないかと思う。

建築業界のみならず、様々な教訓を「事件の現場」は提起してくれる。

「貸会議室」@「集会場」

オフィスビルの余剰床のコンバージョンの一つの案として提案されたり、採用されるのが「貸会議室」。

注意しなければならないのが、東京都安全条例ではその用途が200㎡を超えると「不特定多数の者が集会等に利用する建築物又はその部分」として集会場として取り扱われること(都安全条例第9条第7号)。集会場となると既存の建物の避難経路では、ほとんど対応できない。(都安全条例第40条から第52条)

ゆえに私のようなコンバーターは、基本的に集会場扱いを避ける。

建築物としては、文化会館・市民ホール・多目的ホール・結婚式場・葬祭場・セレモニーホール。建築物の部分としては、大会議室・ホテルの大宴会場。

日本建築行政会議の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例(2013年版)」では、200㎡以上で、全国的には概ね200㎡以上なのだが、横浜市では「すべての集会室が200㎡以下で、かつ、その床面積の合計が1000㎡以下」だと集会場に該当しない。

ただし熊本県は300㎡以上。

いくつかある貸会議室の最大の一室の床面積が200㎡未満であれば、集会場に該当しないが、例えば199㎡の貸会議室が10室あり合計で1990㎡あっても集会場には該当しないというのも変なもんだ。

固定席でない貸会議室の定員は、床面積を1㎡で除するのが一般的だから200㎡なら定員は200人となり、前例の1990㎡の貸会議室がすべて利用されていると1990人が定員となる。実質はテーブルなどがあるから0.5人/㎡程度になるからその半分ぐらいとなる。それでも定員は995人=約1000人となり、建物全体では地方都市の大ホール以上の定員でも集会場とならないというのは避難上どうなんでしょうかね。

やっぱり横浜市のように、全体の面積の上限を定めておくのが妥当なのではないだろうか。

日本建築学会住宅系研究報告会・10th

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異質なものに触れると脳が活性化され認知症予防になるからという友人の誘いで日本建築学会の第10回住宅系研究報告会に行ってきた。

たまに電車に乗って出かけると、目で見るもの聴くもの全てが刺激的だ。

田町の建築会館に来たのは何年ぶりだっただろうか。

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この住宅系研究報告会は、建築計画委員会・建築社会システム委員会・都市計画委員会・農村計画委員会が共同で開催しているらしく、購入した論文集も豊かな内容だった。

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第一日目の午後の部である、セッション2「集落の地域性と空間構成」とセッション3「復興とすまいの諸相」、パネルディスカッションの「地域に『住ま・ふ』ためのストック考~住宅系研究の次の10年を見据えて」のみの参加となったが、それぞれ報告者との質疑回答も活発で楽しく聞かせてもらった。

通常、住宅系の仕事には触れていないので、友人の言うように異質のものに触れると確かに脳の活性化にはなるようだ。

【覚書】難燃材料

難燃材料とは、

「建築材料のうち、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後5分間第108条の2各号(建築物の外部の仕上げに用いるものにあつては、同条第一号及び第二号)に掲げる要件を満たしているものとして、国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。」(建築基準法施行令第1条の六)

建築基準法施行令第1条第六号(難燃材料)
平成12年建設省告示第1402号(難燃材料を定める件)

一般には難燃合板、難燃繊維板、難燃プラスチック板などの材料が難燃材料に含まれる。

その物が薄く下地の不燃性能に影響されるクロスや塗料・吹付材等については、下地面材(基材)との「併せ技」で認定を取得している。

このような材料は、下地の種類に応じてその仕上がった状態での不燃性能が異なってしまう。

塗料などで国土交通省防火材料/不燃材料認定とあり認定番号NM-■■■■とあっても、決められた基材での認定なので、かりに木材等の可燃物に塗装しても難燃材料とはならない。

木部系塗料で樹脂限定(松系等)で認定を取得しているものがある。

検査体制はひとつも機能しなかった

友人からの情報によると 今、建設会社や大手の設計事務所では、「杭」に関する建築主からの照会とその対応に追われ通常業務が出来ずにいるらしい。あの耐震偽装事件の頃を思い起こして、現役の人達は大変だろうなと思った。

横浜市の「パークシティLaLa横浜」の傾きに端を発して次々と明らかになった旭化成建材の杭打工事のデーター偽装は、全国各地の公共施設にまで波及し、さらにジャパンパイル等の他の杭打ち業者にまで広がっており、地盤と杭の認定工法の問題、施工管理のありかた、重層構造、工事検査体制、確認中間検査など建設業界の構造的問題を幾つも露呈し、業界全体の信頼を揺さぶる問題に広がってきている。

あの耐震偽装事件とその後の建築基準法の改正を経て、建設業界への信頼も回復し少しは落ち着いていたように見えたが、今回の問題は、耐震偽装のときより大きな問題になっていく予感もある。これから原因究明・保障・行政処分・法改正と収束していくのに10年近い年月がかかるのだろうか。

今度の事件を知り残り少なってきた人生を、未だに建築業界に投じて糧を得ている事が、なんだか空しく感じている。そんな個人的思いを書いていても仕方ないので「検査体制」について書いておきたい。

元請け建設業者には、施工管理を行う監理技術者を置き安全を確保する責任がある。今回の問題では、建物の安全にとって最も重要な基礎杭が支持層(強固な地盤)に届いておらず、杭を固定するコンクリートのセメント量のデータも偽装していた。施工会社(元請け)の三井住友建設の監理責任が果たされていなかった。(そこには、工事現場の職員構成が一握りの正社員と工事期間に限定された契約社員・派遣によって成り立っているという工事管理体制のあり方も問われるだろう)

「パークシティLaLa横浜」は、三井住友建設の設計施工であり、三井住友建設一級建築士事務所の管理建築士には、建築法令や条例で定める基準に適合するよう設計、監理することが義務付けられているわけだから、設計上の工事監理者の検査は、まったく機能していなかったことを示している。(杭打ち工事の最初のみ立ち合い、後は、杭打ち業者まかせだったという報道もある。重点監理方式では結局施工業者任せとなる)

1998年の建築基準法改定で、それまで地方自治体の建築主事が行っていた建築確認検査を、民間の「指定確認検査機関」でも可能にするなどした建築行政の規制緩和はどうだったのかということを振り返り、問わなければならないのではないかと思う。

建築会社・設計事務所・指定確認検査機関と勤務した経験から、現在の建築に関わる「検査」は形式的になるばかりだ。(指定確認検査機関の検査員の一日あたりの検査件数を調べてみれば、驚愕すると思う。例えば特殊建築物だと膨大な施工実施報告書を見なければならないが、その時間は少なくなる一方だし、特殊建築物でも住宅でも相当な件数を一日に検査することが強要されている)

建築基準法に基づく中間完了検査も機能しなかった。報道では指定確認検査機関については個別名が出ていないが、いずれ明らかになることだろう。

2005年におきたマンション耐震強度偽装事件から10年。また大規模なデータ偽装が再びおこったことは、国・自治体が徹底解明とともに、再発防止にむけて安全性確保のための建築確認検査についての体制整備、中立・公正な第三者による検査体制の確立など抜本的改善を図る必要がある。

しかし道は遠い。

時代にそぐわなくなってきた用途変更の規定

「用途変更」(コンバージョン)についての規定は、戦前の法律である市街地建築物法にも規定されていた。

大正八年法律第三十七號 「市街地建築物法」(昭和二十二年十二月二十二日改正)

【六條】

「前四條ノ規定ノ適用ニ付テハ新ニ建築物ノ用途ヲ定メ又ハ建築物ヲ他ノ用途ニ供スルトキハ 其ノ用途ニ供スル建築物ヲ建築スルモノト看做ス 」

前4条の規定の適用について新たに建築物の用途を定めるとき、または建築物を他の用途で使用するときは その用途に使用される建築物を(新たに)建築するものとみなす。 

ところが、昭和25年に建築基準法が制定された時点では「用途変更」に係わる規定はなかった。

「建築」の定義は新築、増築、改築、移転に限られていた。このほか修繕、模様替えといった概念もあるものの「用途変更」が法文に現れるまで、それから約10年を要することになる。

現在の用途変更については建築基準法第87条(用途の変更に対するこの法律の準用)において4つの項目から構成されている。
第1項は用途変更の対象建築物、第2項は実体規定と言われる準用規定、
第3項は既存不適格建築物に対する準用規定、第4項は部分規定に関するもので、法第86条の7(既存の建築物に対する制限の緩和)第2項,第3項(部分規定)の準用規定だけである。

最近は、用途変更と言っても建物の一部を用途変更するものだけでなく、建物全体を用途変更(コンバージョン)するものも多く見られるようになったのに、工事完了検査は必要ない、工事監理も不必要、設計者の資格も問われない。「用途変更」は「建築行為ではない」なんて、なんだか時代にそぐわない。

戦前の建物の再生@北九州市

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先月、戦前の建物を再生する業務の為、北九州市と打合せをしてきた。戦前の「市街地建築物法」に基づいて設計され建設された建物だから、当然建築基準法に基づく建築確認申請も工事完了検査済証もない。

電話で概ね北九州市建築都市局指導部建築審査課と打合せしてあったのだが、「戦前の建物」を「建築基準法に基づく工事完了検査済み証が無い建物」と同様に扱うことになった。

工事完了検査済み証の無い建物についての取扱いは、北九州市に内規(試用版)があるらしく、「既存建築物状況報告書」(別添:施工状況報告書、現況調査チェックリスト、現況図、現況写真、構造チェックリスト、その他)の提出が必要との事だった。

内容的には大阪府内行政連絡協議会の基準とさほど変わらない。施工状況報告書は法第12条第5項報告の規定によると記載されているから実質、法第12条第5項報告書を提出するのと同等のようだ。

ただし、これは北九州市に用途変更確認申請なりを提出する場合で、民間指定確認検査機関に用途変更確認申請を提出する場合の手続きは聞いていない。

手続きのメニューは単純なのだが、調査の内容とその評価・判断は、そう単純ではない。

川口の古民家調査

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シルバーウィークの前、三日間の北九州出張から夜中に帰ってきて、翌日朝からの埼玉県川口市の古民家調査に参加した。

疲れていたが関東では古民家調査の機会が少ないので少し無理して調査に参加した。

(一社)住宅医協会の主催で、参加者14名の調査。

築約175年というから江戸時代後期・天保年代の建物と思われる。

上の写真は土間部分の豪壮な梁組。

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調査の担当は、矩形図の作成だったのだが、GLラインから天井までは自分で実測できるのだが、床下チームから基礎伏図、小屋裏チームから小屋伏図や高さ関係の野帳を見せてもらっての作図となる。

しかし この建物の小屋裏は中々複雑で、小屋梁と小屋束では芯ずれがあり調査・伏図の作成が難航していた。すべての作業が同時並行では矩形図の作成も中々まとまらず、夕方までにフリーハンドの矩形図が出来たのは梁間方向一断面だけだった。

日本の建築法制史を振り返る中で、近世民家のフィールドワークに参加して見聞きするのは欠かせない。というか文献読んでいるだけではわからないことが多い。

江戸時代には「三間梁規制」といって上屋の梁間は三間(約19.5尺)に制限されていた。寛永20年(1643年)「武家住宅法令」が定められ、明暦3年(1657年)に大名屋敷だけでなく町民屋敷へと規制は拡大されている。

しかし古民家を調べていくと実に色々な架構形式があり、三間梁規制を守りながらもあの手この手の工夫で架構方法を変えてながら大きな梁間の家を実現しようとしているのが見られて面白い。

約一か月後ぐらいには調査結果をまとめた検討会が開催されるらしいから、成果小屋伏図、架構図を見せてもらうのが楽しみだ。

「同潤会上野下アパート材料調査報告」(日本建築学会)

2013年に解体された最後の同潤会アパートの解体前の耐久性調査の報告書「同潤会上野下アパート材料調査報告」(2015年3月、日本建築学会・材料施工本委員会)を読んだ。

この同潤会上野下アパートは、竣工が1929年(昭和4年)である。

ここは建替事業でザ・パークハウス上野(三菱地所レジデンス)として生まれ変わるのだが、もう完成して入居開始が始まっただろうか。まあ 新しい建物にはあまり関心が無いので、この報告書についてだけ書いておこう。

今、戦前の鉄筋コンクリート建築物のコンバージョン・プロジェクトに参加しているので、どうしてもその頃の建築物や法令に触れることが多い。

この調査報告書では、コンクリート採取数が1号館で38本、2号館で31本 合計69本と4階建て延べ床面積2,093.99㎡(1号館556.80㎡、2号館1,537.19㎡)と約30㎡/1本となり採取コアが多い。現在の耐震診断の基準である3本/階から見ると約3倍の数となっている。

このコンクリートコアの圧縮強度試験は、柱・梁・壁・床と部位別と全体が示されていて全体で平均圧縮強度21N/m㎡という結果が報告されている。ただし床データを除外した場合には平均が19.5N/m㎡、標準偏差6.1N/m㎡となっている。

戦前の建物の構造部位別の調査報告というのが少ない。「同潤会アパートの施工技術に関する調査研究」(古賀一八他、2004年)で同潤会大塚女子(1930年)、同潤会青山(1927年)、同潤会江戸川(1934年)では、平均圧縮強度の部位別の内訳が不明なため強度や標準偏差の単純比較ができない。

今、関わっているプロジェクトでも数年前に耐震診断調査が終わって構造評定を取得している建物なのだが、コア採取が内部壁だけなので良くわからないことが多い。

ともあれ、学術調査でこれだけ念入りな調査を行い、調査報告書が世にでてくることは大変ありがたいことだ。

包括同意基準・歴史的建築物

昨年出された国交省の技術的基準、国住指第1号平成26年4月1日「建築基準法第3条第1項第3号の規定の運用等について(技術的助言)」でも歴史的建物の活用で「包括的同意基準」を行政が策定することを推し進めるものだ。

ようやく歴史的建築物の活用にひとつの風穴があいたように思う。

以下、国住指第1号平成26年4月1日「建築基準法第3条第1項第3号の規定の運用等について(技術的助言)」の抜粋

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 1.法第3条第1項第3号の規定の適用に当たっては、歴史的建築物の保存活用が円滑に進むよう、地方公共団体が建築審査会の同意のための基準(以下「同意基準」という。)を定め、当該同意基準についてあらかじめ建築審査会の包括的な了承を得ることにより、別途、地方公共団体に設ける歴史的建築物の保存活用や構造安全性に詳しい者等により構成される委員会等において個別の歴史的建築物について同意基準に適合することが認められた場合にあっては、建築審査会の個別の審査を経ずに、建築審査会の同意があったものとみなすことができること。
2.建築審査会における同意基準の策定に当たっては、地域における歴史的建築物の実情や要望、歴史的建築物の保存活用や構造安全性に詳しい者等の意見を十分踏まえて対応すること。

また、同意基準の内容としては、次のような事項を定めることが考えられること。

ⅰ)条例で定められた現状変更の規制及び保存のための措置が講じられていること。
ⅱ)建築物の構法、利用形態、維持管理条件、周辺環境等に応じ、地震時等の構造安全性の確保に配慮されていること。

ⅲ)防火上支障がないよう、出火防止、火災拡大防止、近隣への延焼防止及び消防活動の円滑性の確保に配慮されていること。

ⅳ)在館者の避難安全性の確保に配慮されていること。

3.条例を定める地方公共団体が特定行政庁でない場合、特定行政庁である都道府県知事は、当該地方公共団体の意向を十分踏まえ対応すること。

************

包括同意基準・法第43条第1項ただし書

建築基準法では、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する基準を定めているが、その中には、特定行政庁が建築計画や周辺状況等を勘案して、やむを得ないと認めたうえ建築審査会の同意を得る等の所要手続きを経た場合に、特例的に制限を解除することができる許可制度がある。

その中で許可事務の迅速化を図るため、基準に適合する場合は、あらかじめ建築審査会の同意を得たものとして取扱う「包括同意基準」を定めている。

この包括同意基準に適合しない場合は、特定行政庁が審査のうえ、許可相当と判断された場合に限り、個別に建築審査会に諮り、同意を求めることとなる。(とは言え実際は難しい)

最近、九州で法第43条第1項ただし書道路のケースに遭遇した。法第43条第1項ただし書道路の運用基準が定められていて、それに沿っている場合は、建築審査会の同意が不要との事だった。ちょつと調べてみると横浜市とかさいたま市とか「包括同意基準」「運用基準」を定めているところは多かった。

地域によっては、法第43条第1項ただし書道路の許可申請が、年間を通し大量に出される場合がある。

それらに対応するため、平成11年5月の法改正まで建築主事による運用が図られてきたことを受け、一般的な事例については運用基準をつくり、この基準に対して事前に建築審査会の同意を得ることにより、円滑な許可業務の執行を図ることが目的となっているようだ。

「サクッとわかるヤマベの木構造の極意」建築知識8月号

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執筆者の一人から案内があり、Amazonから取り寄せて読んでみた。

とても解りやすく、豊富なイラスト・写真で木構造を巡る問題を説明している。

さすが山辺構造設計事務所

けして初心者向けの本ではない。私が興味深く読んだのは「不整形の建物の場合の構造計画」「スラブ状ベタ基礎の問題点」「壁量計算用の床面積の算定」等。

木造の設計・耐震診断・調査・補強方法まで、木造住宅に携わる人にとっては必需品のような本に仕上がっている。

最近、木造2階建て住宅の許容応力度計算の計算書をペアチェツクする機会があったが、小屋裏物置などはH12年国交省告示第1351号で規定されているにも関わらず、まったく指摘がされてなく壁量算定が過小評価されていた。建築確認許可を取得した時点の指摘事項は、不整合箇所の指摘と是正のみで、最近の審査は、どうやら間違い探しに終始しているような傾向が見られる。

かって四号建築物(三号も)の建築確認申請の審査をしていたことがあるが、木造住宅を設計している人達の技術が低下しているなぁと感じたものだ。

意匠設計者が木造伏図も書けずプレカット屋さんに全面依存し、 筋違計算も構造事務所に依頼すると聞いて 、確認申請に筋違計算書も伏図も不必要となり、「書かないから」「書けない」となってしまったのだろうか。

生産現場と乖離して図面だけ書いていると歳をとっても本当の事は何も知らない資格者(一級・二級建築士)ではどうなんだろうか。

久しぶりに「建築知識」を買ってみたが、イラスト・画像満載でリアルにわかった 気がするだけの本に進んでいるのではと思った。

まぁ こんなことを書いても年寄りの冷や水になりつつあるが・・・

「高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル」

飛騨高山市内の伝統構法建築物を耐震改修する場合は、このマニュアルに沿ってという事で、高山市役所でもらってきた。高山市のサイトでもPDFで公開している。

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労作である。長年にわたる調査研究に基づき限界耐力計算に近い計算方法である近似応答計算で耐震計算を行っている。

高山市から耐震診断・耐震改修費の補助金をもらう場合は、このマニュアルの講習修了者に耐震診断を頼まないとならないらしい。受講者は、ほとんど高山市内の人達。ちょつとクローズ気味の制度。

補助金を貰うかどうかわからないが、高山市内で伝統構法の耐震改修をする場合は、このマニュアルに沿って実施してみたいと読み始めた。

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気がつけば、最近は構造関係の文書ばかり読んでいる。どうも関心事が広がりすぎて自分でも制御しきれない。

爺さん婆さんが二人で営む「拉麺専門店」を指向していたのだが、だんだん「食堂」になりつつある。

ともあれ、木造に関心がある人には読んでもらいたい一冊。