検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-東京都

先日 都内某区役所に検査済証未取得の既存建築物の一体増築(EXJにより構造的に別建物でない)の相談に行ったときの話し。

建築審査課構造担当係との打合せで「建築構造設計指針2010」監修・東京都建築構造行政連絡会議、(社)東京都建築士事務所協会構造技術専門委員会(所謂オレンジ本)の「第12章第7項 増築等に関する審査要領」に沿って構造関係の調査・検査したものを審査しようということになった。

この本は、たぶん構造設計者しか持っていないだろうし、意匠屋さんは見たこともない人が多いだろうが、ソーリューション業務をする上では結構大事なことが書かれている本である。

しかし定価11,000円だから、結構高価であり飾るだけで買うのはちょっと勿体無い本ではある。

この本の建築基準法での位置づけというのが実は難しい。法の規定について具体的に解説した部分以外については、法的強制力はないというのが建前なのだが、性能・指標は業務上目安になる。

この中の「既存建築物判定要領(案)」670頁は、「案」なのだが 東京都内では、他に取扱いの基準となるものがなく、裁量権のある行政がこの設計指針に沿ってやろうというのなら、乗った方が良いと思っている。

この設計指針には、「基本的事項」660頁に「3  既存建築物の法適合性の判定」について次のように記載している。

「増築等を行う既存建築物は原則として検査済証を取得している建築物とする。ただし検査済証等のない建築物についても、申請者による一定の調査結果で法適合が確認できる場合または法適合が推認できる場合については、検査済証を取得した建築物と同様に扱う事ができる」

まあ詳しくは設計指針を読んでください。

「推認」などという言葉が出てくると裁量権がなければ安易に決済できないなと感じる。

同行した建築設計事務所の所長さん(私の依頼主)いわく「検査済証がない建物が増築申請できる筋道があるなんて始めて知った」と感激してくれた。

今まで検査済証が無い既存建築物の増築や用途変更は全て断っていたそうである。勿体無い話だが、これからビジネスチャンスが広がると喜ばれた。

まあ、結構調査費もかかるし何度も行政に脚を運ぶようになるので そう簡単ではないのだが・・・

「法適合性調査のマニュアル」を作ってくれと頼まれているのだが、物件毎に検査・調査方法が異なるし、もう少し物件数をこなしていかないと人前に出せるものは整理できないかもしれない。

ここで行う「法適合性調査」は、マニュアル世代には難しい調査・検査で 熟練技術者が必要とされる分野。