幾つかのホテルの事

1、地方の古くからの温泉宿

岡山県のとある温泉。バスがホテルまでの狭い道を行けないと観光案内所で降車させられ、雨の中坂道を五分ほど歩く。という始まりだから、そもそも第一印象が悪かった。

関東でもさびれた温泉は沢山あるが、平日の夕方とは言え、ほとんどの店が営業していない。というどころか廃業し少し朽ち果てた、さびれた温泉街を歩くと、現実に引き戻されて陰鬱になってくる。

そもそも視察ツアーなのに、この温泉街の中のホテル・旅館を自分で予約しなければならなかった。皆ツアーの客だと知っていれば送迎用の車を出せたと旅館の人は言う。

どうやら主催者側がまとめて予約した部屋もあり、ネットで予約した私たちは宴会場の下でエレベータ脇で建築計画的には、おそらくリネン室だったものを後で客室に改造したものではないかと予想できるなんともちぐはぐな部屋だった。

掃除が行届いてない。部屋の換気が悪い。Wi-Hiのパスワードを聞いても答えられずチェックインの時に書いた紙を渡したとしか答えない外人の従業員

お湯だけは良かったが、これは自然の力

ツアーの懇親会を観光案内所近くの居酒屋でやるというので雨の中坂道を降りて向かう。油ぎとぎとの唐揚げ、刺身もどき、砂糖をどれほど入れたのかと思うほどの鳥すき焼き、まともに食べれたのは冷凍枝豆とおむすびぐらい。

それでも懇親会で関連する業界の人たちと話せたのは良かった。

賞味期限が残り少ない商品を飾っているだけの売店。地方の魅力を感じない 業務用スーパー品ではないかと思うのような品が並んでいる朝食。

負のスパイラル状態で抜け出すことができないでいるのだろうと想像してしまう。

2、地方都市の駅前にあるビジネスホテル

鳥取県のある主要都市の駅前という立地と有名ホテルチェーンということもあり金曜の夜は満室だという。ネットでツインを予約していたが、一人当たり料金ではなく室あたりの料金だという。おかげで半分の料金で済んだ。

ツインでも部屋はギリギリの大きさ。ユニットバスとトイレと手洗いが一緒。実は このスタイルのユニットバスは嫌い。換気悪いし、夫婦だからといって臭いを我慢することはできない。

朝食がひどかった。のどぐろの干物というが生臭かった。客単価と原価率を考えたら こんなものとは思うけど。建物は立派な大きさだが安かろう悪かろうの典型のようなホテル。稼働率は高さそうだが、利益は出るのだろうかと心配してしまう。

3,コンテンツ・ツーリズムに乗った地方都市のホテル

島根県の中心的な都市から車で一時間あまりの港町にある宿が、知人のお薦めだったので行ってみた。全国的に展開していたホテルをパワーアップした和風温泉宿シリーズ。

最上階に展望風呂と露天風呂があり、湯上りにはアイスキャンデーが無料で食べられる(朝風呂にはヤクルト)。お風呂は夜通し利用することができ、掃除は日中するとの事

部屋の冷蔵庫には、今時珍しくカットフルーツとミネラルウォーターが入っている

コンセント、有線LANとWi-Hiが完備。コンセントが要所要所に配置され宿で仕事をする私にとって有線LANはありがたい。全館畳マツト式で清潔、しかも完全バリアフリー

売店は設置していない、和風のデザインで統一されているが自己主張の強いデザインではない。朝食はバイキング方式だが品数豊富、地方食が取り入れられており、評判通り大人気。

夕食もバイキング方式らしいが これは予約いっぱいで食べれなかった。

土曜の夜とは言え、小さな子供の家族等で満室。旅館の専用駐車場で車のナンバープレートを見ると、かなり広範囲の地域から客が来ていることがわかる。温泉旅館とビジネスホテルの良さをミックスしたようなホテルの業態。ここの主体は学生寮やサービス付き高齢者住宅を展開してきた企業なので、運営ノウハウの蓄積があるのだと思う

細かい部分に従業員の手間を省く工夫がみられ、様々な部分を合理化した一方でお客さんが喜ぶ客室・食事(料理)に集約している様子がみえる。

ある漫画家の出身地であり、街全体がコンテンツ・ツーリズムに彩られている。
妻は10年程前に訪れているが、その頃は寂れた港町という印象だったというが、随分と店舗も増え、港もきれいになったと言う。

インバウンドに依存しない これからの日本のホテル業態のひとつを見ることができ紹介してもらった知人に感謝。