在りし日の能登-15、妙成寺

2011年9月撮影

前田家ゆかりの日蓮宗・妙成寺

妙成寺

「境内の建物配置の特徴は、本堂を真ん中に、向かって右に祖師堂、左に三光堂という3つの御堂が横一線に並んだ点にあります。これは、古い図面などを見ると、近世以前、各地の日蓮宗(法華宗)寺院で見られたようですが、今でも建立当時の姿を残しているのは全国では妙成寺(みょうじょうじ)だけです。いにしえの法華宗寺院の配置を伝えるとても貴重な境内です」

「建築転生から都市更新へ・海外諸都市における既存建築物の利活用戦略」角野・木下・三田村・讃岐・小林編著

 この本は、2019年6月から2021年8月まで日本建築センターの機関紙「ビルディングレター」で連載されていた「海外諸都市における既存建築物の利活用による都市更新の広がり」の原稿を元に編集され2022年6月に出版された。

 建築単体だけでなく都市的視点と重ねて見る事で、都市の更新技術としてのコンバージョン建築のあり方を論じている。

 世界の諸都市は、その成り立ちそのものに様々な背景を持っている。それがどのような更新を遂げているのかを西欧、東欧、北欧、北米、オセアニア、アジアという広大な地域を取り上げており知見は豊富で有意義だ。

 私も2023年より「まちづくり」の中の大規模な既存建築物活用プロジェクトに関わり、自ずと都市的視点の必要性を感じた。プロジェクトに合せて読み返していたのが「人間の街・公共建築のデザイン」ヤン・ゲール著や「ソフトシテイ」ディビッド・シム著だった。

 そのプロジェクトに於いては、その地域のランドマークとなるような建物は、新築建替え(着工済)であるが、その地域がこれから変化する方向性を指し示めすメッセージ性を持っている。と他の設計者の担当だが、私はそう感じている。

 私が関与しているのは、そのランドマーク的な建物の街区に連続する2棟の既存建築物のリノベーションだが、街区は異なるが連続性を強く意識した。

 建築コンバージョン・リノベーションの価値は

  • 1、実用的価値 : 使われていない建物を有効に使う。新築よりも工事期間が短い。投資金額が少ない等
  • 2、文化的価値 : 建物の歴史や都市の記憶の一部を残すことができる価値
  • 3、美学的価値 : 新築ではできないコンバージョン・リノベーションならではの空間や外観が出来るという価値

があると言われている。

 民間の商業的なプロジェクトでは、実用性が最も重視される。投資対効果、事業収支の実質利回り、既存建築物の多角的視点による潜在能力(ポテンシャル)の確認等である。

 私は、学者でもなく、評論家でもなく、単なるデザイナーでもない。実践者の一人なので「実用性」を最も重視していている。

 この本には、登場する建物の建築名リストと所在地がリンクされている。地図を見ていると その建物の都市の中の配置、景観的位置づけ等を読み取ることができ、ペーパーとデジタルの連携的な本の作り方は参考になった。

蜻蛉

蜻蛉(とんぼ)の暖簾を事務所にかけた。

古来より蜻蛉は攻撃性が高く勇敢という「勝ち虫」のイメージがあり、

その性質にあやかろうと縁起物として武士に好まれた。

特に戦国時代には兜や鎧、箙、鍔などの武具、陣羽織や印籠の装飾に用いられた。

前田利家は兜の前立に蜻蛉を用いていた。

そんなことで、蜻蛉の暖簾が京都からやって来た。

八田利也

 「八田利也」というのは私の恩師である建築史家・伊藤ていじ と建築家・磯崎新、都市計画家・川上秀光が架空の人物を装って使用していたペンネームです。

 『現代建築愚作論』(八田利也、彰国社、1961年)は、学生時代に大学の図書館で読みふけった記憶がありますが、自分では所有してなかった本です。2011年に復刻されたのでようやく蔵書にしましたが、しばらく書棚に並んだままだったものを最近読み直しました。

「建築家諸君! せっせと愚作をつくりたまえ。愚作こそ傑作の裏返しであり、あるいは傑作へのもっとも確かな道である。愚作を意識してこそ建築家は主体性を確保し、現代の悪条件に抵抗する賢明な手段となる」

 この本に掲載された「近代愚作論」のなかの一節で、「近代愚作論」は当時の建築家へのエールとして書かれたものですが、現代でも生きている「檄(げき)」だと思います。

 八田は歴史的に傑作とされる姫路城や法隆寺、また数々の近代建築家の名作を引き合いに出しつつ実はそれらの建築には致命的な欠陥が含まれていること、しかしだからこそ傑作になり得たと指摘しています。そして建築家に向けて、失敗を恐れず愚作をつくり続けることが、傑作への道なのだと説いています。

 創意に満ちた挑戦がその時代においては愚作となる建築を生み出してしまったものの、後世から振り返ると傑作と呼べるものになり得ているのだと。

 しかし現代では こうした高邁な思想に基づく「八田利也」ではなく、失敗を恐れるばかりの者や自信過剰の「ハツタリヤ」も散見されます。

 設計者と建築主の訴訟に登場するのは、正真正銘の「ハツタリヤ」設計者です。学校教育の影響でしょうか、自信過剰の「表現建築家」が多いのは哀しい事です。

工事予算の明示

 民間の建設工事において、最初から予算を明示してくれる建築主は少ない。
その理由は幾つかある。第一に工事費がどの程度かかるか検討がつかない場合。第二に工事費は安ければ安いほど良いと考え、不用意に伝達するとその工事予定額が目安となり見積金額の最低ラインが決まる可能性があるという心理が建築主側に発生するからだと言われている。

 しかし設計者の立場で言うと、建築主はベンツが欲しいのかカローラが欲しいのかを聞きださないと設計ができない。建物の計画内容とコストは相互に関係するので、いずれかを決めないと仕事は前に進まないからだ。

 何とかクライアントから工事予算を聞き出しても、その額が書類上は残っていない事が多い。それが民間建築では慣例的なもので、特に問題はないと思っていた。

 ところが工事予算額を文書上残しておかなかったために建築主に不利に働いた事例がある。

 裁判は形式的で、証拠が支配する。

 以前関わった訴訟案件で、建築主はある特殊用途で容積率限度一杯の建物を設計者に依頼したが、基本設計は難航し当初契約より半年以上遅れた。その後建設会社から当初予算の2倍近くの概算見積が提出され、その後仕様変更しても1.5倍程度にしかならず、建築主は他の要因も重なり設計者に対する不信感が募り設計契約を解除した。

 建築主は、実質的に基本設計が完了していないにも関わらず、設計者にほぼ当初の契約日時で基本設計料を支払済みだった。基本設計が難航し設計期間が延長した為に経済的に困窮したと設計者に泣きつかれたから支払ったのだと建築主は言ったが、後々その善意が仇となった。

 設計者(原告)は当初契約日時で基本設計は終了しているのだから、その後の契約解除までの期間は実施設計であるとして損害賠償請求を起こしてきた。

 建築主(被告)が依頼した弁護士から訴訟チームに参加するよう依頼され関与したのだが、建築主(被告)は法人なので、当然役員会等で工事予算を承認した文書はあるのだが、建築主(被告)から設計者(原告)に工事予算を明示した文書は存在しなかった。ゆえに設計者は工事予算の明示はなかったと主張した。

 そして延床面積あたりの工事金額ではなく施工床面積あたりの工事金額では、さほど乖離が無いと主張してきた。そもそも「延床面積」は建築基準法に則った算定方法であるが、「施工床面積」は算定根拠そのものがあいまいで基準はなく、いかようにもできる算定面積なのだから信頼性が薄いものだと思うのだが・・・。 

 最終的には、建築主(被告)が不利な形で和解となった。

 その後、建設工事は別の建設会社により設計施工で進められ無事竣工した。

 【この訴訟案件からの教訓は】

 ・工事予算額を設計者に対して文書上明示したものの必要性。

 ・基本設計が実質的に未了状態であったのに、当初契約日時で支払ってしまったことにより、形式的に基本設計は完了しているものと裁判官は考えたようだ。 

 ・設計期間が大幅に遅延していたのにも関わらず、設計監理契約の日時等変更事務を行っていなかった事

 ・第三者として俯瞰すると、基本設計の難航と遅延は特殊用途の建築物に対する設計者の経験不足に起因している。設計者の選定に関わる問題。

 ・設計者(特にアトリエ系設計事務所)は、工事予算をコントロールする能力が低下している

 ・その他 諸々

 

「青天を衝け」

 年初頭に2021年のNHK大河ドラマ・渋沢栄一を主人公とする「青天を衝け」をHuLuで一気見した。自分は、ほとんどテレビを見ないので今頃配信されたものを見るしかない。

 今更2021年の大河ドラマの話題なのと言われるかもしれないが、一気見した方が全容を掴みやすいように思っている。もつとも数日で全部見るので少し疲れる。

 2022年に仕事で何度か深谷市を訪れていた。深谷市ではどこへ行っても「渋沢栄一」の写真と名前を見ていたので、気になる存在だった。

 渋沢栄一の時代は、幕末から昭和初期で、私からだと曽祖父母・直系3親等の時代になるかもしれない。私が生きてる顔を見た事があるのは、母方の祖母の晩年だけで、幼少の時に時々お小遣いを貰った記憶しか残っていないので、曽祖父母の時代なんて全く実感がわかない。

 ネットで登場人物を検索しながらのドラマを見ていた。平岡円四郎、徳川昭武、高松凌雲、武田耕雲斎、橋本佐内、等々。 彼らは綺羅星のごとくあり、八百万の神とさえ思ってしまった。 

 ドラマを見て歴史、政治、経済のお勉強になった。学校では学べない統合的な知識を得ることができた。

 さて、幕末から昭和の時代というのは、本当に激動の時代で、あの時代に自分が生きていたらどうしただろうかと考えてしまった。農民や町民、下級武士だったとしても尊王攘夷にかぶれて、テロリストみたいになって切られて早死にしたのではないかと思う。時代が動く変革の時代を生き抜くのは、とっても大変そうだ。

 時代が動く時に生き残れるのは、専門知識・ひとりでやれる能力、技術を持っている人のようだ。幕末から明治にかけては、語学・医学・算術等の専門家や旧幕臣の海外渡航者が、官吏として重用されているのを見ると大いに参考となる。

『表題「青天を衝け」は、渋沢自身が内山峡(長野県佐久市)を旅した際に詠んだ漢詩の一節「勢衝青天攘臂躋 気穿白雲唾手征」(意:青空をつきさす勢いで肘をまくって登り、白雲をつきぬける気力で手に唾して進む)から取られた。』とウキペディアに書かれている。

 元気を貰えたドラマだった。

 これからも「青天を衝く」爺婆であろうと話していた。

在りし日の能登-6、能登島ガラス美術館-1

2011年9月撮影

2024年1月4日現在、能登島へ渡るツインブリッジのと、

能登島大橋の二本の橋は、通行止めで

陸路では、支援物資が届れていない状況のようです。

この時の能登半島一周・最大の目的は、能登島ガラス美術館でした

建築家・毛綱 毅曠、1991年の作品

私にとっては、毛綱 毅曠はアイドルみたいなもんで

「きゃ、モンタ~!」と

ここでは心の中で叫んでいたことを思い出した。


日経アーキテクチャー誌の2024年1月5日付の記事によると、「毛綱毅曠建築事務所の設計で91年に竣工した石川県能登島ガラス美術館では、外壁の一部がはがれるなどの建物被害が発生した。建物内部に大きな被害はなかったが、本棚や案内看板などが倒れた。施設設備の点検や整備のため、当面は臨時休館の予定だ。」とある。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02706/010400008/

「ディテール 2024.1 季刊⁻冬季号 №239」

ディテールの№239は、「緑化と防水・水仕舞」の特集

 2023年のプロジェクトで壁面緑化と屋上緑化についての事例をリサーチしていた。プロジェクトにおけるリサーチは、主として設計をサポートしてもらう人達にお願いしている。その中で特に気になる事例については、実際現物を見に行ってもらい写真を撮影してきてもらっているので、事例は多く集まっている。

 ということで「植物とつながる建築」というのは、自分の中でもテーマだったので、興味深く読んだ。

 川島範久さんの淺沼組名古屋支店改修PJは、2023年に名古屋に出張した際、見てきた。実際見た建物のディテールは貴重だ。

 以前見たアクロス福岡のような建築自身が森のような地形になると圧倒される。

 特集とは別に坂茂建築設計の下瀬美術館(広島県大竹市)のディテールも紹介されている。機会があれば見に行きたいと思っていたので予習になった。

 こちらは、雑誌で見て現代美術のミニマル・アートの影響が色濃いのかと第一印象で持っていたのだが、その印象は払拭された。

 水面に浮かぶ可動展示場の色彩が、ドナルド・ジャッドの作品を彷彿させたからだが、そんな単純なミニマル・アートな作品ではなく自然環境と応答しあっている。

【ドナルド・ジャッドの作品】

【ドナルド・ジャッドのファーレタチカワの作品】

在りし日の能登-5、ぼら待ちやぐら

2011年9月撮影

穴水町のぼら待ちやぐら

七尾北湾

静かな海でした

国道249号線を七尾方面に移動中の写真です

海面と陸上の高低差が とても少なくて驚いた記憶があります

このあたりは、西岸のあたりではなかったかと思います

夕陽がとても美しいところだと聞きました

アクセスデーター・2023年12月

2023年12月のアクセスデーターの公開です

1日あたりの平均訪問者は2,257。平均閲覧ページ数は10,765でした

月間の訪問者数は69,992。月間閲覧ページ数は333,723でした

2023年にSSL化した影響でしょうか。検索によるアクセスが増えています

在りし日の能登-2、白米千枚田

2011年9月に撮影した白米千枚田の風景です

県道276号線を輪島から奥能登へ向かう途中

大きな崩落はないようですが、無数の亀裂が入っているとの情報あり

【石川県HPより】

2024年1月4日 14時時点の車両通行可は赤い線との事

奥能登は、車両でアクセスできないところが多い

在りし日の能登-1、輪島朝市

2011年9月の輪島朝市の風景

この日は、台風の影響に依る雨だったので数枚しか写真を撮っていません

 2024年1月2日の報道によると、「輪島市の中心部にある河井町では1日夕方、観光名所として知られる「朝市通り」周辺で火事があり、消防によりますとこれまでにおよそ200棟が焼けたとみられる」ということです。

 古い木造家屋が密集した地域ですが、報道によると焼野原のように見えます

 朝市の商売上手なおばちゃんたち、避難できたかな。

 能登の被害は甚大で心が痛みます。

 下記、読売新聞「令和6年能登半島地震被災状況」

https://storymaps.arcgis.com/stories/f9dc1fce8ce3421d92b97a8bf2e697b1

 事務所開設前だったので掲載していなかった能登半島一周の旅の断片を記録として掲載したいと思います。

 

初詣

初詣は毎年 旧巣鴨総鎮守・大塚天祖神社。

この神社の氏子だし

現在は、天祖神社総鎮座700年記念事業の一環として改修工事中

昨年、弊社も少し寄付をしたので境内に芳名が掲示されていた

末社も8社になりました
昨年の御札、お守り等を奉納してきましたが、今年は、雨空の初詣でした。

正月の日本酒

新年の食卓に添えられた日本酒

今年は、妻が誕生日プレゼントに貰った「獺祭・磨き三割九分」
我がファミリーは、女性陣は飲んべだが、男性陣は下戸が多い。

「あなたの血は、酒ではないか」と疑われている女性もいる。

と私の好きな「田酒・四割五分」
と言っても下戸な私は御猪口にちょっと舐めるだけ

今年も正月は、ほろ酔い気分。

であったが、そんな正月気分を一掃するような

能登半島地震

大きな地震の度に原発を心配しなくてはならない。

難儀な国や

新年明けましておめでとうございます。

【2023年夏・北海道美瑛町・青い池】

謹んで新年のお慶びを申し上げます

 弊社は二ッチャーとして、ブルーオーシャンとはいきませんがブル―レイクの市場を切り拓いていきたいと考えております。

明るい一年になりますように、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げます。

 株式会社 寺田建築事務所/合同会社 てらだ組