自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」-2

自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-明日館講堂」に参加してきました。

現在、耐震対策工事が進められている重要文化財・自由学園明日館・講堂の修理現場の見学ということで以前から楽しみにしていました。

「講堂」は、1927年(昭和2年)に建てられ、昭和25年頃屋根葺替、昭和37年に部分修理、平成元年に屋根葺替・部分修理、平成13年に設備改修が行われ、平成26年11月から平成29年7月にかけて屋根葺替、耐震補強工事等が行われています。

築90年の建物が今まで比較的良好な状態で利用されてきたのは、この屋根の葺替を始めとした幾たびかの修繕工事がなされてきたからだと思います。

修理工事中の写真は撮影させていただきましたが、インターネットでは公表しないという約束になっていますので、工事看板だけ掲載しておきます。

設計監理は文建協、施工は大成建設東京支店で、見学では文建協の田村さん、大成建設の方から詳細な説明を受けました。

設計者の遠藤新は、自分が設計する講堂の構造の特徴・空間デザインの特徴を「三枚おろし」に例えて論じています。従来の講堂建築は、構造を梁行(輪切り)で設計されていたが、風や地震で倒壊することが多く椀木や控柱で補強するよう法規で決められていたそうです。

この明日館講堂は、市街地建築物法第14条による「特殊建築物」だった思われますが、その第14条は、「主務大臣ハ學校、集會場、劇場、旅館、工場、倉庫、病院、市場、屠場、火葬場 其ノ他命令ヲ以テ指定スル特殊建築物ノ位置、構造、設備又ハ敷地に關シ必要ナル規定ヲ設クルコトヲ得 」とあり「必要な規定を設けることができる」とありますが、勉強不足で まだその規定は探し出せていません。

明日館講堂は、平面を桁行方向に三分割し、さらに前後に空間を設けて合わせて九つのゾーンを連続的でありながら、それぞれのゾーンにふさわしい機能を持たせています。遠藤新の空間デザイン論は、中々優れてると思いました。

この講堂は、耐震診断の結果「大規模な地震の際には倒壊の危険がある建物」であること、解体調査の結果、講堂の外壁が外側に倒れ、屋根の棟は中央を最大に垂れ下がっている状態だったそうです。その事は、既存の構造体が屋根の重量を完全には支え切っていなかった事を表しています。

補強工事に際しては、遠藤新の思想を残しつつ「基礎と軸組の健全化」「内在骨格の強化」「壁面・床面・屋根面の補強」の三点を軸に行われたと説明を受けました。

すでに屋根の葺き替えは完了し、新しい銅板屋根が黄金色に輝いていました。

エキスパンションジョイントのクリアランス

既存建物にエキスパンションジョイントを設置して増築する建物で、エキスパンションジョイントのクリアランス(有効な隙間)が問題になりました。

隙間(クリアランス)は設計者が変位量の大きさにより決定します。

参考文献としては、ちょっと古いですが日本建築センター発行の「構造計算指針・同解説1991年版」(現在は、「2015年建築物の構造関係技術基準解説書」に統合)に「相互の建築物の一次設計用地震力(建築基準法施行令第88条第1項に規定する地震力)による変形量の和の2倍程度以上を推奨」と記載されています。

また1995年10月「阪神・淡路大震災における建築物の被害状況を踏まえた建築物耐震基準・設計の解説」では、エキスパンションジョイントのクリアランスは、大地震時にも建物相互が衝突しないように、構造計算により算出し設定することが望ましい」と記載されています。

施行令第82条の2【層間変形角】には、「建築物の地上部分については、第88条第1項に規定する地震力によって各階の高さに対する割合が1/200(地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって特定建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合にあっては、1/120)以内であることを確かめなければならない」とあります。

なので上記による略算式としては、クリアランス=エキスパンションジョイントの地上高さ×1/200×2(双方の建物が地震で変形する為)×2倍となります。

10mだと 10000/100×2=200mm

20mだと 20000/100×2=400mm

30mだと 30000/100×2=600mm

という結果になります。略算式だと3階建て程度で200mmのクリアランスが必要ということになります。

問題になった案件は構造計算ルート1-1で、軒高9m以下鉄骨造3階の増築です。

層間変形角の計算は不要なのですが、X・Y方向の層間変形角を算出したところX方向で1/500、Y方向で1/1400でした。パラペット高さを9600mmとしてX方向の変位量は19.2mm、Y方向の変位量は6.9mmとなります。以上により一般的なクリアランスである50mmに設定しました。

既存建物に増築する場合のエキスパンションジョイントのクリアランスは、低層の建物は略算式によらず 実際の変位量、層間変形角から判断して決定した方が良いと思います。

1/26 テレビ東京・カンブリア宮殿 村上龍×やまと診療所 安井佑

1月26日にテレビ東京「カンブリア宮殿 村上龍×経済人」に、弊社が昨年 新規診療所プロジェクトに携わった医療法人社団 焔 やまと診療所の安井佑院長が出演されます。

1月26日(木)
「自宅で安心して最期を…板橋発!若き在宅医の挑戦」
村上龍×やまと診療所 安井佑院長
夜9時54分~10時54分
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『「あなたは、人生の”最期”をどこで迎えたいですか?」。国の調査では、自宅で亡くなることを希望する人は7割。しかし、実際に自宅で最期を迎える人はわずか1割。その理由は、在宅医の不足、また在宅医療に対する認知度が低いことによる。その課題に取り組み、注目を集めている診療所がある。東京・板橋区に拠点を置く「やまと診療所」だ。医師で院長の安井は、在宅医療PA(医療アシスタント)という独自のシステムを構築し、多くの患者に安心して自宅で死を迎えられる医療サービスを提供している。「自宅で自分らしく死ねる。そういう世の中をつくる!」。そのミッションの下、多死時代を迎えた日本の医療、その変革に挑む若きドクターの奮闘に密着する。 』
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やまと診療所(板橋区東新町)は鉄骨造3階建て、延べ面積336㎡の事務所ビルを訪問医療センター(有床診療所)に用途変更しました。
事務所から有床診療所(特殊建築物)に用途変更する場合、病室の採光、階段寸法、法114条区画、都安全条例8条区画等の法的制限が出てきます。
既存建物の調査、建築法のプロデュースと申請業務は弊社で行い、設計はデザイン事務所という建築主からの分離発注、設計関係者のコラボレーションで業務にあたりました。
【調査+法的プロデュース+申請】㈱寺田建築事務所
【デザイン+工事監理】MTMデザイン

自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-考え方と方法-」-1

【写真は、明日館の2階食堂】

1/7(土)、今日は自由学園明日館公開講座「文化財建造物の修理について-考え方と方法-」に出席してきました。講師は文建協の田村匠氏。

「文建協」正式名称は「公益財団法人文化財建造物保存技術協会」という名前で、文化財建造物である社寺仏閣、民家、近代建築、近代化遺産の維持修理、根本修理、構造補強(耐震補強)の為に設計監理及び技術指導を行っています。

講師は現在、自由学園明日館講堂の屋根葺替、耐震補強等の部分修理を担当されています。

今日は、講師が担当された近世の社寺仏閣から民家までの事例紹介と修理の考え方について概括的な講義でした。2月には現在修理工事中の明日館講堂の見学が組み込まれているそうですが、実はそれが楽しみで講座に申し込みました。

【写真は、2階食堂(ミニミュージアム)から1階ホール(喫茶室)】

「文建協」の場合、文化財建造物が対象ですから近世から近代の建物、歴史的に古いものから新しいものに対象が移っているんですね。確か私の学生時代には、近世民家の調査など断られていたように記憶しています。

私が調査に関わっているのは現代建築から近代建築という、新しいものから古いものへのアプローチですから「文建協」さんとは、真逆のアプローチになります。

ミシェル・フーコーの「系譜学的な思考」では、歴史を「過去から未来に向かって、原因と結果の連鎖として、一方的に進むもの」としてとらえるのではなくて、現在から過去に向かって遡行するかたちで理解する思考訓練と書かれています。

上の文は、内田樹さんの本からの引用なんですけど、歴史ものを扱っていると実際様々な出来事には、その前に幾つもの分岐点があったことがわかります。幾つもの分岐点の中の一つの分岐点が選択されたから、現在の結果が生じているわけです。どうしてあの時この道が選ばれ、それ以外の道は選ばれなかったのか。なぜこの出来事が起きて、あの出来事は起きなかったのかという問いに沢山直面します。

どんなことがあっても存在し続けるものと、わずかの手違いで消え去ってしまうものを識別する能力は、「系譜学的な思考」で歴史を学ぶことから養われますが、この能力=想像力は現代を生きる上で、歴史的建造物を扱うものとして、とても大事だと私は考えています。

そういったことを思い出しながら公開講座を聞いていました。

【写真は、旧帝国ホテルで使用されていたタイル】

「検査済証のない既存建築物等における取扱」の改訂検討が進む

検査済証のない既存建築物の法適合性の確認については、平成26年7月に国土交通省より「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況業務のガイドライン(以下、「ガイドライン」)が公表され、指定確認検査機関が調査者になることができることが位置付けられました。

国交省に登録した指定確認検査機関は、31社(平成28年11月28日時点)です。

現在、国交省では「ガイドライン」の改訂に向けて検討が進められているそうです。改訂内容は、チェックリストの詳細化、調査方法、調査範囲の明示、指定確認検査機関の役割の明確化等が行われる予定で、「技術的助言」を発出する予定と聞きました。

これ先立って国交省が平成27年12月に全国425特定行政庁/450特定行政庁にアンケート調査をしたところ、「ガイドラインに基づく法適合状況調査の活用を図っているか」という設問に対して「あまり活用していない」が279特定行政庁65.6%という結果でした。

「活用されない理由は」

  1. 相談された実績事体がない
  2. ガイドライン以外の調査方法で既に法適合状況調査に対応しているため
  3. 具体的な調査方法が明記されておらず、不明確な部分が多い等

弊社は、指定確認検査機関勤務の経験も踏まえて、国交省「ガイドライン」以前から、全国の特定行政庁で個別に調査方法や調査箇所などの打合せを行い「2」の「ガイドライン」以外で直接特定行政庁に申請し検査済証のない既存建築物の増築・用途変更の申請を行ってきました。

一方、大阪府内建築行政連絡協議会(以下、「大連協」)では、「ガイドライン」ができる8年前である平成18年5月に「既存建築物の増築等の法適合性の確認取扱い要領」(以下、「取扱要領」)を制定し、各特定行政庁において既存建築物の増築、改築等を行う場合の法適合性の確認を行っていました。

「取扱要領」は、4回の改正を経て平成27年6月1日改正版が最新ですが、調査部位や調査方法が明確になり、書式等も統一されており実務に則しています。関西圏では、この「取扱要領」が浸透しています。

しかし法適合性チェックや申請手続きなどの具体的運用については各特定行政庁の判断にゆだねられていたようで、特定行政庁・指定確認検査機関の役割分担のあり方を踏まえ、既存建築物の法適合性の確認方法や審査方法における法的課題や審査リスクについて整理・検討が始まっているようです。こちらも来年には、改訂版が出てきそうです。

「検査済証のない既存建築物の増築等」は、「ガイドライン」に沿った「登録指定確認検査機関」しかできないという誤ったセールストークをする審査機関もあるようですが、そんなことはありません。

全国的視野に立ってみると、登録指定確認検査機関による「ガイドライン」調査は、一つの方法でしかありません。

「大連協」の改訂作業は、とても注目しています。

病理医という仕事に学ぶ

病理医は、病理診断をする医師で基本的な仕事として「病理解剖(部検)」「組織診断(生研及び手術材料)」「細胞診断」があるそうです。

以下「日本病理学会」サイトからの引用です。

病理解剖は病院で不幸にして亡くなられた患者さんの死因、病態解析、治療効果などを検証し、今後の医療に生かすことを目的に行います。
組織診断は内視鏡医がみつけた病変部から採取(生検といいます)した、小さい組織片を顕微鏡でみて診断したり、手術して切除された検体から臨床診断を確認したり、どの程度病気が進展しているかなどを検証する作業を行うことです。手術中の短時間に病理診断を下して、手術方針を決めるのに役立つ「術中迅速診断」も病理医の重要な業務です。
細胞診断は婦人科医が子宮粘膜表面から細胞を採取したり、外科医が乳腺など体表に近い病変部から注射器で針を刺して細胞を採取して検査することです。細胞診断は細胞検査士という日本臨床細胞学会が認定した資格をもつ専門技師と共同で診断します。病理医は病理診断に迷うこともあります。その時はこれが自分や自分の家族だったらどう診断するかと思いをめぐらせることで、答えが自ずと見えてくることがあります。もちろん、難解で自分の手に負えないと思えば臓器別専門の病理医に標本を送ってアドバイスを請うことも少なくありません。これをコンサルテーションシステムとよび、日本病理学会の重要な業務の一つとなっています。
この3大業務以外にも臨床各科と合同で解剖例や手術例についてカンファレンスを行ったり、院内医療安全検討会のメンバーとなって病理の立場から意見を述べたりすることもあります。最近は主治医の立ち会いのもとで、病理医が患者さんに写真や図を示しながら病理診断の説明を行う病理外来を実施する施設も見られるようになってきました。また、蓄積された病理データを使って臨床研究も積極的に行っています。」
「病理医のつよみは、何と言っても、『病気の総合的判断が可能な医師である』点です。その理由として、全科の検体を扱っていること、剖検による全身の病態診断に慣れていること、病理総論的見方を訓練されているために全身の臓器に共通した病変の概念を理解していることなどがあげられます。言い換えれば、病気を正常からの逸脱の度合いという見方からとらえ、病気の本質的な部分を深く考えている医師が病理医と言えるでしょう。」
しかしその病理医も、まだ全国に2,232名(平成26年9 月現在)しか病理専門医がおらず、決して十分とは言えないそうです。
病理医は患者と直接対面する機会が少ないからでしょうか、以前はそういう専門医がいることを知りませんでした。私が大学病院で2回の整形外科の手術を受けたときも、徹底的な入院前検査、手術前検査を受けました。しかし教授回診、担当医師のみならず多くの整形外科チームの医師や内科医などの他、麻酔医師とは直接面談しましたが、病理医と接する機会はありませんでした。
病理医という専門医がいることを知ったのは、2006年に出版された海堂尊の「チームバチスタの栄光」という小説・映画からでした。
その中に鳴海涼基礎病理学教室助教授という病理医が出場します。桐生の義弟で考えも桐生と似通る部分もあり、かつて桐生とアメリカで外科医をしていたが、病理に興味を移し病理医に転進した人です。「ダブル・ステイン法」という術中診断法を確立させ、「診断と治療は分けるべき」という考えから、会議には参加しないが病理医ながらも桐生と切除範囲を決める形で手術に参加している人物として描かれています。
日本の建築界にも「建築病理学」の確立が必要だと固く信じている私としては病理学の手法は勉強になります。

12条5項報告の現地調査立ち合い

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豊島区に提出していた法12条5報告の豊島区建築課職員による現地調査の立ち合いをしました。

築26年の鉄骨造3階建ての建物です。1・2階がアパートで3階がオーナー住居ですが、3階住居専用のエレベーターを設置したいということでした。増築申請が必要ですが工事完了検査済証が無いということで、巡り巡って弊社に相談がありました。

確認申請の副本が保存されていた事、違反部分がなかった事、色々な書類が残っていたため豊島区と打合せさせていただいて構造関係の調査はせずに建築基準適合性状況調査を行い、法12条5項報告書を提出しました。

道路幅員の確認、隣地境界からの建物の離隔距離の確認、内外観の目視・計測等で現地確認をしてもらいました。私の目からみても問題のない建物でしたのでスムーズに現地調査は終了。弊社の提出した12条5項報告書は見本にしたいような体裁とお褒めの言葉をいただき、年甲斐もなくちょつとうれしかったです。

この案件は、調査だけでなく増築申請のための設計もお受けしましたので、珍しく図面も書いています。現地調査が終わり12条5項報告が決済になったら建築確認申請を豊島区に提出できるので、少しピッチをあげなくてはなりません。

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ヘッドライトランプ

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最近は電気の供給がされていない既存建物の調査が多いので、ヘルメットに装着するLEDヘッドライトランプを新調した。

ヘッドライトとリアライトからなり、単三電池3本の白色LEDのもの。

LEDは、lm・ルーメン(光束)で表記されていて、今回は210lmのものにした。以前は100lmだったのだが屋内作業用としては少し暗かった。今回は屋内用としては丁度良いようにも思う。ルーメンは数値が高いほど良いかというとそうでもなく、要はヘッドライトを使う用途によると思う。

重量が軽い事も選択項目だと思う。

市街地で調査をすることが多いので、入手が容易な乾電池機種を使用することが多い。

ヘルメットに装着するクリップは別売り。

空き家サミット2016

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「空き家サミット2016」に参加してみました。

基調報告のひとつは、東京都計画調整担当課長から都内の空き家の状況が報告された。「平成25年時点の空き家は約82万戸、空き家率は平成10年からほぼ横ばいで、平成25年では11.1%」「内訳は、空き家のうち約60万戸は賃貸用であり、平成20年と比較して10万戸以上増加している」「長期不在・取り壊し予定の空き家は、平成20年比較して減少しているものの、約15万戸存在」「都内区市町村の空き家の実態調査は、まだ始まったところ」

もうひとつの基調報告は、「豊島区における空き家問題とその対策・活用」で現状は全国的な空き家問題である戸建て住宅の空き家問題とは少し異なる様相が見られる。「豊島区では世帯構成がファミリー世帯22.2%、単独世帯60.9%である」「住宅数は増加傾向だが56%が民営貸家(すなわち単身者アパート・マンション等)」「面積30㎡未満の物件が多く、増加している」

統計には表れていないかもしれないが外人向けシェアハウスも相当数増加していると個人的には思っています。

木密地区に住んでいて思う事を少し書いてみます。

この10年、豊島区東池袋地域は再開発が進み、長く住んでいた住民は流出。古い住宅や事業所跡地は、単身者アパート・マンションに建て替えられた。よって町会は再編成され子どもは減少。新しく建替えられたアパートのあおりを受け古くなった賃貸住宅には、外人入居者が増え、住民は治安の悪化を心配する。

結婚しても、低価格のファミリー向け賃貸住宅の供給は少なく、子育て世代への施策が充実していて物価等も安い北区等に転出する傾向があります。(例えば北区と千代田区は高3まで医療費無料・豊島区他は中3まで)

UR賃貸等の空き室傾向を見ていると豊島・文京・新宿などは空き室がほとんどありません。

豊島区は、単身者が歳を重ねても定着する傾向が見えてきた。その単身者の多くは非正規労働者で所得が少なく、人口が増加しても税収は減少し、豊島区は将来財政破綻の可能性があるという衝撃的な指摘で、以前NHKで特集されていました。

豊島区からの基調報告における「現時点における主な課題」についての私的意見

1、空き住戸、空き室は思いのほか見つからない

賃貸住宅は再転用されやすい。単身者用→外人用シェア・老人向け→貧困ビジネス等と意外と老朽化しても転用できる。しかもほとんどが正規の手続きを踏んでいない。

2、法令によつて利活用を断念

住宅以外の用途に転用しようとしても、従来からの住宅は違反建築・法不適合・検査済み無し・再建築不可(接道)であることが多く、前段階で活用不可となる事が多い。つまり計画の土俵にもあがらない物件が多い。

3、空き家オーナー・家族の合意形成が大事

相続の問題もあり「個人所有物件」の活用は予期しないことに直面することが多い。

4、貸したい人と借りたい人とのスピード感の違い

民間ベースでは、個別の需要が見込まれて経済的合理性を勘案して事業計画に着手するのでマッチングは中々難しい。

5、入居者の関心は家賃

豊島区は土地の実勢価格や評価額が高いので、民間ベースで再活用ビジネスを計画した場合は、中古リノベ―ションであつても家賃を安く供給するのは難しい。既存建物調査→耐震診断→耐震補強工事→その他リノベーション工事という正規の手順を踏んでいくとどうしても工事原価と営業経費が積み増しされます。

空き家は、昭和55年(1980年)以前の建物が多いので、耐震診断+耐震補強工事は不可欠となるのがほとんどだと思われます。

近接他区(板橋・練馬等)の方が有利になるケースが多い。又城南に比べると城北の所得水準は低いので購買層が限定されという傾向もみられます。

空き家の維持管理の問題と切り離し、都市のバランスのとれた成長と維持から空き家問題を考えると

ワンルームマンション規制の再検討。シェアハウスの規制。子育て世代向け施策の充実。公的住宅施策の作成が必要で、民間事業者を主体とした施策のスキームだけを考えても難しいのではないでしょうか。空き家という量はあっても、活用したいという潜在的需要が少ないところに色々なスキームを作ってみても、ビジネスにはなりづらいのではないかという感想を持ちました。

「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」

平成26年3月に文科省が取りまとめた「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」を読んでみました。

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東日本大震災では、学校施設は子供たちや地域住民の緊急避難場所又は避難所としての役割を果たしましたが、その中で発災直後から教育活動再開までの間において防災機能に関する様々な課題が顕在化しました。

災害対策基本法の改正(平成25年)において,緊急避難場所と避難所が明確に区別されました。
緊急避難場所:切迫した災害の危険から逃れるための避難場所
避難所:避難者が一定期間滞在し,その生活環境を確保するための施設

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文部科学省では,「学校施設の在り方に関する調査研究協力者会議」の下に「災害に強い学校施設づくり検討部会」(部会長:長澤悟 東洋大学理工学部教授)を設置し,学校施設の津波対策と避難所となる学校施設の在り方について検討を行い,報告書として取りまとめたとあります。

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「避難所となった学校施設の利用状況と課題」として、文科省の調査から避難所として利用された施設は「体育館」(70.1%)、「普通教室」(34.9%)、「特別教室」(33.3%)となり、やはり体育館の利用が多かったようです。

次に施設・設備に関しては「トイレ」(74.7%)、「暖房設備」(70.3%)、「給水・上水設備」(66.7%)、「通信設備」(57.5%)、「電力供給設備」(45.0%)、「備蓄倉庫等」(35.2%)、「放送設備」(32.8%)、「避難者の避難スペース」(32.6%)等が指摘されています。

避難所として指定されていても学校施設の防災機能の整備が遅れている現状が浮き彫りされ、それぞれの課題が指摘されています。避難所の指定と防災機能の実態が必ずしも整合していませんが、文科省が平成24年度に「防災機能強化事業」を新設して防災機能の整備に財政支援をし始めたので、徐々に整備が進んでいます。

また、「地域の避難所となる学校施設の在り方」について、災害発生から避難所の解消までの期間を4つの段階に区分し、必要な機能を整理していて参考になります。

日本全国、何時どこで災害が起きるかわかりません。学校施設を含めた避難所の防災設備の整備は、喫緊の課題であると思いました。

「建築再生学~考え方・進め方・実践例」編著:松村秀一

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2016年1月に市ヶ谷出版から発行された本です。

「これからは既存の建物に手をかけることが主役」という時代認識のもと、建築再生という新分野の課題や実務上の展開の方法を体系的に捉えることを全面的に支えようという意図で編まれたものと書かれています。

大学等の教育機関での「建築再生」の教育方法は、未だ手探りであり、全国的みても「建築再生」の講座がある大学はないのではないかと思います。

個人的には大学等を卒業して一定の実務経験を経た人を対象として「建築再生学」を学ぶ場所を提供した方が良いのではないかと考えています。建築再生のカリキュラムを考えたとき、各個別の項目である建物診断、構造、劣化、設備、外装、内装、法的知識等は何れも基礎的知識がありその上で個別の対応が必要になります。すなわち応用が必要となります。

私の場合は、建築基準法等の法的アプローチで「建築再生」に関わってきましたが、例えばコンバージョンの場合、現在の用途と変更後の用途の、独自の法チェックリストを作成して計画段階から問題点を整理したり、検査済み証が無い場合の手続きを担当し、そこから建物診断や耐震診断・耐震補強業務に関わってきました。

ついこないだまでは、黒子の業務が多く「図面を書かない設計事務所」と言っていたのですが、最近はデザイナーとのコラボレーションのケースや実施図面まで全て依頼されるケースも増えてきました。又歴史的建築物の業務比重も増えてきています。

「建築再生学」を進めていくうえで「建築病理学」も体系的に整理していく必要があると思います。

いずれにしても この本は「建築再生学」を体系的にまとめてあり、「建築再生学」の教科書として利用できる わかりやすい本になっています。

超高層マンションの外壁タイルが落下

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先月中旬、豊島区東池袋の超高層マンション・エアライズタワーのタイルが地上に落下していたのが発見された。その後の調査で24階の外壁タイル2枚が剥がれ落下したものと判明した。

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1ヶ月以上経つ現在も地上部分は、立ち入り禁止部分を設けている。

エアライズタワーは、池袋四丁目市街地再開発組合事業でデベロッパーは住友商事、東京建物、伊藤忠都市開発。設計は日本設計。施工は大成・フジタ建設工事共同企業体で2007年(平成19年)1月31日 に竣工した。

地上42階地下2階で、住戸数555戸(計画時)、メトロ東池袋駅に直結し豊島区新庁舎に近接しているうえに、業務棟には豊島区図書館等が入居している。

築9年が経過しているので瑕疵補修期間外なのだろうが、他にも付着力が低い個所がないかどうか、果たして自然経年劣化と言えるかどうかは全面的に調査をしてみないと詳しくはわからないだろう。

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なにしろ42階建ての超高層マンション、どこまで調査するか、足場はどうするのか興味津々である。風聞によると調査点検費用は5億円と聞く。通常の修繕積立金では賄いきれないだろうし、大規模修繕費用が足りなくだろう。仮に住民側が全て負担すると一世帯あたり約10万円となる。

入居者住民・管理会社・設計監理者・施工会社で責任の所在を巡って議論沸騰していることであろうと推測される。

2011年7月の最高裁判決では、欠陥マンションをめぐる損害賠償訴訟で、設計者や施工者が負うべき不法行為の責任範囲を具体的に示している。判決文では、「建物の構造耐力に関係しない瑕疵であっても、外壁が落下して通行人に危害を与える恐れがあるような場合には、基本的な安全性を損なう瑕疵に当たると明示した」

マンションの瑕疵が見つかった場合、住民は売り主の瑕疵担保責任を問うことが多かったが、この最高裁判決以後は原則20年間、設計者や施工者の不法行為責任を直接問うことができる。

外壁タイルの落下は、しばしばあるだけに設計監理・施工は悩ましい問題だ。

かくして違反建築は放置される

「検査済証のない建築物のリノベーション(増築・用途変更)」のセミナーの為の資料を整理してて、調査を経て完成した物件の紹介より、調査に至らなかった未成約案件の事例を紹介した方が実務者には、意外と役に立つのではないか思い、そうした未成約案件の資料を見直してみた。

この分野は成約物件より未成約案件(相談のみ)の方がはるかに多い。

弊社は基本的に「調査」に一定の報酬をいただいているが、設計事務所や不動産関係の会社は中々調査費を計上できない気風があるらしく リノベーション物件の調査や計画に深入りしたが報酬請求ができず「営業活動」とされることが多いと聞く。

数多くの案件の相談を受けているうちに、初期の資料提供と現状の把握で、このプロジェクトは進展するか否か、成約にいたるかどうか容易に判断できるようになってきた。

極論すると建築確認済み証を取得した後に無届増築、無届用途変更等の違反箇所が多く その是正に工事費用が多額になるものは、ほとんど実施にいたらない。

未成約案件を振り返ってみると他にも理由はあげられるのだが、それはセミナーなり出版物で紹介しょうと考えている。

住宅は、確認済み証の時点の設計図書と全く異なる建物が完成している場合が特殊建築物などより多くみられ、建ぺい率・容積率オーバー、斜線制限等に抵触しているものは減築及び屋根の是正を行わないとならない。

容積率・建ぺい率をオーバーしている違反建築物は、銀行融資はしてもらえないと聞く。一部高利のファイナンス系だと60%~70%程度融資してくれるらしいが、かなりの自己資金を持つていないと取得は無理だろう。

それゆえに違反中古住宅は売れず、空き家のまま、違反建築物のまま放置されることが多い。

久しぶりに都内で調査

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雨の中、久しぶりに都内で既存建物の調査だった。

以前の所有者から新しい所有者に所有権が移行したばかりで、通電してないかと思っていたが、電気も水も開通済みだった。

鉄骨造3階建ての建物で、建築確認済証・検査済証のある事務所ビルを用途変更してフルリノベーションするプロジェクト。

デザイン事務所が設計・図面作成を行い、弊社が許認可・申請業務を全て行うという建築主も了解したコラボレーション。

既存不適格調書・現況調査書等を作成するために調査を行った。

3階に少し奥行きのあるバルコニーがあり、テーブルと椅子が置いてあった。執務の合間の息抜きやコミュニケーションの場として、こんな空間が少しでもあると仕事のクオリティーが高まるような気がする。

調査は、いつもながら階段を計測し、非常用照明を確認し、図面と現況との整合性を確認し、天井裏を各階覗いてきた。

都内だと車に調査道具一式が入ったハードキャリーと脚立を持って、気軽に二人で出かけられる。

現場調査のスタイルと装備

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最近整理した特殊建築物を現地調査するときの弊社のスタイルと各自が持つ装備のイラスト。

特殊建築物では、木造住宅等の調査とはまた少し異なる条件が加わる。

まず第一に調査面積が広いし、階数も多い。通電してない、エレベーター使えない、換気悪い等の条件も加わる。

実は、イラストも弊社の裏メニュー。わかりやすいでしょ。

ということで、来週一週間は調査の旅に出かけてきます。

ストック活用と民法の壁

工事完了検査済証のない建物は、何故にこんなにも多いのか・・

とため息が出てしまう。

最近、相談を受けた建物は築30年で鉄骨3階建てのビル。最上階3階にビルオーナーの住まいがある。歳をとったので外部にエレベーターを増築したいと思い、業者に依頼したところ建ぺい率・容積率は余裕があるので増築は可能なのだが、工事完了検査済証が無いため申請が難しいと言われた。それで弊社に相談が持ち込まれた。

テレビコマーシャルで話題になった大手ハウスメーカーの設計施工の建物。

法適合状況調査の見積もりを作成したが、個人オーナーにはかなり負担だろうと思う金額になった。メーカーは構造計算書を建築主に渡していないのでなんとか協力してもらおうと建築主から連絡を取ってもらった。

メーカーの営業担当曰く「うちで工事をやらせてもらえるなら協力します」「技術資料は社外秘なので出せません」・・・馬鹿野郎と言いたくなる。

民法の不法行為の消滅時効は20年で、建築物関係にあてはめると時効期間が短いように思える。だいたい増築・用途変更・大規模模様替え等のアクションが起きるのは20年を過ぎたものが多い。だから民事で損害賠償請求するのは難しい。

逆に20年以内なら、これからは不法行為を問えるケースも出てくるだろう。

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第724条不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
(不法行為による損害賠償)
第709条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

建築基準法上は工事完了検査を受けず、検査済証がなく使用を開始するのは違法行為なのだが、当時は検査済証がなくてもとがめられなかった。というか多くは完了検査をうけなくても平気という風潮があった。登記できたし銀行融資も実行された。ところが今はそうはいかない。

平成26年に国交省から出された「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」、このガイドラインが出る前から事例は多くはなかったが特定行政庁と個別に協議し検査済証の無い建物の増築・用途変更等は申請することができた。大阪府下とか横浜市とか都区内でも幾つかの特別区は対応してくれていた。

弊社では、いまでも指定確認検査機関ではなく特定行政庁と個別に相談して法適合性調査を行っている。

だから、検査済証の無い建物の建築ストック活用を妨げている最大の障害は、その手順ではなく、法適合性調査にかかる費用なのだと思う。実際 調査費を聞いて増築や用途変更を断念する人は多い。だからと言って規制緩和のもと安全性をないがしろにする風潮には賛成できない。

たとえ不法行為の消滅時効が経過しているとしても、「検査済証無建物」に関わつた事業者、少なくても現在も継続して事業を行っている設計事務所・建築会社はその責任の一旦を担わなければならないのではないかと思う。

このことは、社会問題化しないと解決していかないのではないかと思ってきた。というか相談した弁護士のアドバイス。

検査済証の無い建物は、多くが実態的にも建築基準法に違反している。

集団規定に抵触している場合、避難経路の場合、構造上の問題、「どこにやましいところがあつて完了検査を受けなかったのか」と疑ってみなければならない。「手続きがめんどくさかった」ということだけ完了検査を受けなかつたケースは少ないと考えている。

既存建築物と放射能汚染

3.11の福島第一原子力発電所のメルトダウン以前は、既存建築物や都市における放射能汚染は西日本が高い数値を示していると言われていた。

その一つは、広島原爆によって発生した放射能に汚染された膨大なコンクリート瓦礫が、戦後の都市開発において再生骨材としてコンクリートに混入され西日本各地の建築物や土木構築物に使用されたからとされている。

しかしどのぐらいの量の瓦礫が再利用されたかは、詳しくわかっていない。

もう一つは、岡山県の人形峠で採掘されたウラン鉱採掘の際に発生した岩石や砂利と「ウラン煉瓦」によるものと言われている。ウラン煉瓦は約145万個製造され、約93万個が一般に売却され、各地の花壇や歩道の舗装材として使用されている。

この「ウラン煉瓦」は平均0.02msv/hと言われ、実際に計測した人の報告によると中には0.03msv/hを超えるものもあると報告されている。

今、福一の瓦礫の処理で再生利用をということが言われている。

これは東京電力㈱から発表されている「福島第一原子力発電所の固体廃棄物保管に関する中長期計画(案)について」(平成26年4月7日)で放射能汚染された金属くずは、溶融されリサイクル鋳造品として遮蔽体や貯蔵容器にリサイクルされることが検討されており、コンクリートくずはも再破砕され再生コンクリートに混入されたり路盤材としてリサイクルするということが検討されている。

また、日本建築学会でも2013年に材料施工委員会から「都市・建築・材料に関わる放射能汚染の現状とその対応に関する報告書」が出されているが、建築部材の線量測定手法や安全性の評価手法は、明確に定まったものはない。

さらに放射能汚染された木材の建築材料としての再利用も出てくるであろう。

建築物や都市空間のストック活用の評価基準のひとつとして、「放射能汚染度」も加わるのは、そんなに遠くはないように思う。

既存建物の調査は勿論、新築建物の建築現場でも、放射能対応マスクと作業着、そしてガイガーカウンターは必須になるかも知れない。

道の駅 保田小学校

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昨年の12月にオープンした「道の駅 保田小学校」

南房総の仕事のついでに寄り道

館山自動車道・鋸南保田インター出口からすぐのN.A.S.A設計共同体による千葉県鋸南町(きょなんまち)「鋸南町都市交流施設・道の駅 保田小学校」

N.A.S.Aとは古谷誠章/NASCAを代表に、渡辺真理+木下庸子/設計組織ADH、北山恒/architecture WORKSHOP、篠原聡子/空間研究所の4者で構成されたユニット。

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体育館を改装したマルシェ

外壁上部は、ポリカポネートの中空板

法的には用途変更+大規模模様替(?)

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旧校舎の窓側・バルコニー側に

新たに鉄骨造で半屋外の縁側空間を作り出している

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RC部分とはエキスパンションジョイントにし構造的には別建物扱いのように見える。旧校舎のRC造に遡及させない配慮だろうか。

法的には、増築+用途変更(?)

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1階は開放的な通路

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マルシェ妻側、平日の夕方に近い時間だったが、客が多かった。

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旧保田小学校の校庭にあったであろう二宮金次郎の像

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旧小学校職員室側の玄関

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室内は、教室の面影を残している。

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春になれば里のはらっぱは、房総の花々を咲かしてくれるだろう

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農林水産省の農村漁村活性化プロジェクト交付金の支援を受けている

廃校を新たなコミュニティの核となる施設として

再生する魅力的な空間を演出している。

有害物質調査(蛍光灯PCB)

既存建築物の内部にはアスベスト、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、シックハウス成分など建築時には問題とされていなかったが、現在は有害とされる化学物質が存在する場合がある。

弊社の業務には、付随調査の形でこうした有害物質の調査も依頼されることが多い。

建築主の要求レベルに応じて、最新の規制動向をもとに各種有害化学物質の調査を実施する必要があるのだが、分析が必要な場合には、地域の最適な分析機関と共同で実施している。

弊社の場合、分析機関とか産業廃棄物業者、電気工事会社に丸投げは絶対しない。自ら現場に足を運び、記録を取り、書類を整理して自らの責任で有害物質調査報告書を作成している。

また昨今は「既存不適格建築物調書」に添付して「既存建築物の石綿含有建築材料使用調査書」を設計者の責任で提出しなければならないところも増えている。

重層下請け構造が常の建築業界にあって、アッセンブリ―をしているが実は本当の事は何もしらないし、技術も蓄積されていない会社が多いなかで、こと調査・設計に関しては協力会社任せにはしないというのを会社の方針にしている。

弊社でもアスベストや変圧器(トランス)の有害物質調査は多いのだが、蛍光灯の有害物質調査を本格的に行うことはあまり多くない。

今回 補充調査として既存蛍光灯のPCB含有の有無についての調査を行った。

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【照明器具の型番を撮影】

地元の電気工事会社に協力してもらい古い蛍光灯器具、水銀灯器具、低圧ナトリウム灯がある場合、内臓されている安定器の銘板あるいは照明器具の型番を調査してPCBを含む器具かどうか判断する。

照明器具の外観目視でも照明器具の型番から製造年を判断できるが、蛍光灯を外しカバーを外さないとわからない場合も多い。

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【器具のカバーを外し安定器の銘板を撮影】

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【全く判読できない器具の銘板】

中には、銘板・型番が全く判読できない場合もある。又既存建物の多くは照明器具の配置図面がないことが多く、既存図に照明器具の種類と位置を記載し記録し、後にCAD図面上に整理する。

またPCBを含む器具かどうかメーカー別に突合するという地味な業務もある。

そして産廃費用を算出するために図面と箇所数を明記したものを渡して見積もりを依頼する。

有害物質の調査は、多岐にわたり、その調査費用や分析費用も内容によって大きく異なるので事前に依頼者と充分な打合せが必要となる事が多い。

インバウンドは増え続けるのだろうか

2015年のインバウンド(訪日外客数)が過去最高の1973万人を超えたという日本政府観光局(JNTO)の発表があった。

東京の街には外国人(アジア系)が溢れ、ホテル建設ラッシュが続いている。とりわけ品川周辺のホテル用地の価格が高騰しているらしい。さらに規制緩和で「民泊」が話題に上がっている。

JNTOの資料を見ると2015年の年計では、中国・韓国・台湾・香港の東アジアからが72%。東南アジア+インドからが11%で全体の83%がアジア系の観光客のようだ。

元々、池袋はリトルチャイナタウン(北池袋)があるぐらいだから中国人は多いのだが、それに加えて日本語学校が増えているらしく街を歩いていても聞いたこともない言語が飛び交っている。

昨年年末まで業務が押しており、年明けてそれらの修正・補足に追われていた。そうはいっても年賀状も年末に間に合わせて、毎年恒例のTAF通信(PDF)も発行できた。そして2016年の事業計画書を作成して社内協議をした。もっとも二人だけ・(笑)

近頃、ようやく時間があいてきたので色々なことを考える。

その中で考えたのが、これからの日本社会・経済の動向。

インバウンドが増えたのは2015年の円安、原油安=燃油サーチャージの値下げによる航空運賃の低下、ビザの大幅緩和等々に起因している。

さて、これからどうなっていくのだろうかと思うと2016年は円高になりそうだし、右肩あがりでインバウンドは増加していくだろうか。

今はやりの「民泊」という怪しいビジネスモデルに手を出して資金回収を図るころには、東アジアの観光客が大幅減ということにならないとも限らない。

消費税10%になると、また国内消費者の需要は低下するのだろう。一定の駆け込み需要の後は反動があるし、死んだ親父が東京オリンピック(私は小学生)の後の数年は不景気だったと言っていたのを思い出すと202×年まで・・・

そんなことを考えると暗澹とした気持ちになる。

以前買って読み半端な「下流老人」という本を読んだ時のような気分。

「求道学舎再生・集合住宅に甦った武田五一の大正建築」

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2008年日本建築学会賞(業績)を受賞した「求道学舎」の再生の全貌を設計者であり施主であり住人である著書がその全貌を綴っている。

東大正門にほど近い本郷の住宅地にあるこの建物は、大正15年(1926年)に学生寮として建てられた。

求道学舎の建物を生かしつつ、62年間の定期借地権付き分譲マンションとして再生された。元はワンルームだった部屋を複数連結し、小家族向けの住戸に改造している。

こんにちでは文化財ではない戦前の建物の多くは解体されているが、この求道学舎は戦前の建物として改修・再生事例として取り上げられることが多い。求道学舎は耐震診断時のコンクリート圧縮強度は公表されていないが、「コンクリート強度は戦前のものとは思えないほど良かった」とこの本でも書かれている。

この建物は耐震性能を確保するために、コンクリートの打増しや外壁仕上げ下地にポリマーセメントモルタルの吹付け等の工事を行っており2009年の改修・再生時に約100万円/坪の工事費がかかっている。(延べ床面積768.1㎡=232坪、概算改修・再生工事費 約2.3億円として~公表資料による。)

求道学舎は、リノベーションと言ってもほぼ新築するのと変わらない工事費がかかっているので、経済合理性を第一番に考慮する民間における一般的なリノベーションとして適用するのは比較しづらい。

恐らく収益性の高い分譲マンションというビジネスモデルだったから成立したのではないだろうか。

以前、この建物の外部だけ見させてもらった事があるが、都心とは思えない静かな住宅地に大正・昭和の雰囲気をかもしだしていた。

内覧

日曜日、中古一戸建て住宅の内覧に付き合った。

業務の一貫ではなく、ボランティアのようなもの。

ネット検索等で絞り込んで、これぞという物件の内覧であり、かつ探し始めて最初の内覧だった。

私には、物件の住所の丁目までと建物の外観・間取りがわかるとネット上で事前に位置を特定(住所・地番)することができるという得意技があって、この日も的中していた。

物件は築15年の中古一戸建て住宅だったが、建物の状態が良かった。恐らく小さい子供が住んではいなかったからではないかと思う。

内外装、設備機器に大きな問題箇所はなかった。

居住中の物件だったので隅々まで見るのは遠慮したが、家具類が片付けられ、ハウスクリーニングをかけたら見違えるようになるだろうということでは内覧参加者の意見が一致した。

今回の建物は、建築確認申請の許可書は添付されていたが完了検査済証はなかった。建蔽率・容積率の違反はないので銀行融資は問題ないだろうが、完了検査済証が無くても不動産の商品として瑕疵にはならないというところに、日本の不動産商品のコンプライアンスの不十分さがある。

周辺環境で道路の幅員がもたらす空間のゆったりさは、とても大事だと思った。細街路の地域に比べると全然違う。住宅街のせいか日曜の日中でも人が歩いておらず車もほとんど走っておらず静か。

私の住んでいる木密地域は、細街路だし電車の音はうるさいし、日当たり悪いし住環境としては散々なのだが、交通利便性の良さと見知らぬ人が立ち止まったりしていると近所の人が監視していてくれて防犯上はとても安心していられる。

今回出てきた問題は、小学校・中学校の学区の問題。若いお母さんは、色々と学校の評判を調べてきたりしていて とても教育熱心。学校への距離は、1km以内なら問題ないのだが「質」が問題とのこと。

小中学校の有名校への進学率とか勉強熱心な地域は、住宅不動産の価格は高いらしい。そういえば豊島区と文京区の区界周辺に住んでいるのだが、文京区の住所だと不動産の価格が変わると聞いたことがあった。

中々 勉強になるわい。

依頼者には、不動産屋はあれこれ浮気しないで、第一印象でここぞと思ったらそこに探してもらうと良いでしょうとアドバイスしていたが、応対してくれた若い営業担当者の説明には、好感を持てたようで以後の物件探しをこの営業担当者を通じて行うことにした。他社の扱い物件でも気に入ったものがあれば連絡することにした。

窓口になってくれた営業担当者の第一印象はやっぱり大事だなぁ~。

帯びに短し 襷に長し

常々「中古住宅を購入しリフォーム・リノベーションしたら」と吹聴していたからか、年末に中古一戸建て住宅の物件探しに関わつた。

建築を生業としながらも住宅には ほとんど関わりがなく工務店とか不動産屋さんを知らないので ほぼネット検索に頼った。

依頼者からリストアップされてきた物件について意見をつけて返し、自分でもネットで検索し良さげな物件をリストアップしたり、仲介業者に電話をしたりしてみた。

依頼者からの要望は、二世代住宅で5LDK程度、駐車場は1台で出来ればビルトインタイプでない方が望ましい等。通勤の関係で探すエリアは概ね決まっていて、依頼者からの注文を整理して文書にして探した。

まずは、新築一戸建て住宅を探した。

基本的には建売住宅の売れ残りなのだろうか、規模は4LDK程度だが予算と最寄り駅からの距離など諸条件に合致するものは沢山あった。

両親に二部屋(在宅の仕事部屋が必要)、兄弟が来た時の部屋とか要望を入れると5LDK以上の物件は、新築一戸建て・建売では商品がない。さりとて注文住宅をと土地を探してみると更地の場合は、ほとんど建築条件付きとなり不動産屋に毛の生えた程度の住宅会社に頼むのは不安だと言う。

ということで1部屋減らせば諸条件に合致するというのがわかった。

そこで 中古住宅一戸建てを探してみた。

それこそ標題のように「帯に短し襷に長し」なのだ。

  1. 路地状敷地で路地幅員が2mで路地部分の距離が長く実質的に車を駐車するのは困難。車が駐車していると人も通れない→ゆえに安い
  2. 北側道路で採光悪そう。部屋の名称がやたら納戸になつている
  3. 容積率・建ぺい率オーバー(ようするに違反建築)で都市銀行の融資は困難。信販系でも6割程度しか融資されず自己資金がかなり必要。検査済み証がなくても良いが容積率・建ぺい率違反物件は融資が難しいらしい。一戸建て住宅には建築確認申請時の図面とは全く異なる建物が建築されているものがある。
  4. 接道されていなく再建築不可
  5. 昔の家だから駐車場がない。
  6. 最寄り駅から遠すぎ。

中古一戸建て住宅を商品としてみたとき欠陥もあり、建物が単に古くなったものとだけでは言いきれない色々な問題を内包している。ストック活用といいながらも空き家になつてしまうのがわかるような気がする。

 

日本建築学会住宅系研究報告会・10th

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異質なものに触れると脳が活性化され認知症予防になるからという友人の誘いで日本建築学会の第10回住宅系研究報告会に行ってきた。

たまに電車に乗って出かけると、目で見るもの聴くもの全てが刺激的だ。

田町の建築会館に来たのは何年ぶりだっただろうか。

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この住宅系研究報告会は、建築計画委員会・建築社会システム委員会・都市計画委員会・農村計画委員会が共同で開催しているらしく、購入した論文集も豊かな内容だった。

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第一日目の午後の部である、セッション2「集落の地域性と空間構成」とセッション3「復興とすまいの諸相」、パネルディスカッションの「地域に『住ま・ふ』ためのストック考~住宅系研究の次の10年を見据えて」のみの参加となったが、それぞれ報告者との質疑回答も活発で楽しく聞かせてもらった。

通常、住宅系の仕事には触れていないので、友人の言うように異質のものに触れると確かに脳の活性化にはなるようだ。

歴史的価値か経済的合理性か・・九州大学箱崎キャンパスの場合

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福岡市東区箱崎6丁目にある九州大学箱崎キャンパスは、九州帝国大学・同工科大学の設置に伴い1911(明治44)年に開設された。同キャンパス内には長い歴史を物語り、大正から昭和戦前・戦中にかけて建てられた近代建築が数多く残っている。今では同時期の建物が多く現存していない日本では、九州大学箱崎キャンパスの建築群は、歴史的建造物として大きな価値を有している。

箱崎キャンパスは福岡市西区と糸島市に跨る伊都キャンパスへの2019(平成31)年までの移転が予定されており、これらの建築群の将来が危ぶまれている。

そうしたなか2012年、移転後の取扱いについて方向性を探るべく、主要な近代建築を対象として有識者による調査が行われた。(九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループ)

これによって保存活用への道が開けたものもあれば、逆にその後解体撤去されたものもあり、建築群の将来は移転計画が進むにつれて明暗が分かれ始めている。

「九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループの評価報告」(2012年、H24.12.25、第5回九州大学跡地利用将来ビジョン検討委員会参考資料より)によると、近代建築物の客観的評価として以下の4つの大項目、7つの中項目を設定している。
■歴史的評価

1、大学の歴史的経過と結びついた価値評価
2、 社会、時代の歴史的経過と結びついた価値評価、産業遺産など

■建築学的評価

1、建築の意匠史的側面からの価値評価、様式、近代建築、モダニズム建築、インテリアデザイン、営繕の制度的評価

2、 建築の技術史的側面からの評価、構法、素材、建築設備、環境配慮など
■文化的評価

1、社会全般に対する文化的資産、芸術性、社会性、シンボル性
2、地域の文化資産、地域景観資産としての評価、地域への貢献

■再活用度評価

1、街づくりとしてのランドマークなどの利用価値評価、敷地、敷地建物としての再利用のしやすさ

各建物の評点の他に、耐震性能(Is値)、コンクリート中性化深さの平均、コンクリート圧縮強度が示されている。

この中で「安全性に問題有りと認められる近代建築物」として、「コンクリート圧縮強度が13.5N/m㎡以下もしくはコンクリート中性化深さ(平均)が40mm以上の建築物もしくは施設の特殊性から再活用困難とされる建築物」と位置付けている。

古い建物の再生に関わると歴史的価値か経済的合理性か悩む日々が続く。