「日本最古の災害文学 漫画方丈記」鴨長明 漫画:信吉

「ゆく河の流れは絶えずして しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのこどし」

 その昔、国語の教科書に書かれていたように記憶するこの一節。爺(jiJii)になって読み返すと中々味わい深いものがある。

 大学時代、確か先生から「方丈の庵」の事を聞いた。方丈とは一丈四方のことで約3m四方・四畳半から六畳ぐらいの広さで高さは7尺たらず。土台を組み簡単に屋根を葺き、桁・柱の継ぎ目は掛け金で留めただけ。別の場所に建て直そうと思っても移動は簡単。庵の建材を全て積んでも荷車二輌で足りる。究極のシングルルーム。モバイルハウスだと教わった記憶が蘇ってきた。

 しかもこの方丈の内部空間を「生活の間」「仏道修行の間」「芸術の間」に分割して利用しており、必要最低限のものがあれば快適な暮らしができると。

「どんな家が欲しいか」ではなく「どんな暮らしがしたいのか」と時折考えるようになったのは、今思えば鴨長明の「方丈記」に依るところが大きいのかも知れない。

「方丈記」が時代を超えて読み続けられるのは、日本という災害の多い国で生き続けていくために必要な精神性。鴨長明の「自足の思想」に共感するからではないかと思う。

「人生に本当に必要なものは何か」