「フードスケープ 図解 食がつくる建築と風景」 正田智樹 著

地形と気候に応じた食がつくる建築と風景が、フィールドワークに基づく図解集として紹介されており興味深い。

 食をつくる条件が、純粋に建築となってあらわれる。

 プラックスボックス化したフードシステムに支配された現代では、ハンナ・アーレントの「機械のリズム」と「生命の自然のリズム」が想起されると藤原辰史さんと正田智樹さんが対談の中で書かれている。

 スロー・フードスケープは「顧客と売る側」「売り手と買い手」という固定化した人間関係に隙間を作っている。

カレマ村のワイン、アマルフィのレモン、小豆島の醤油、多気町の日本酒等、日本とイタリア16の食の生産現場を読み解いている。

 蓄熱する石積みの段々畑、風を呼込む櫓、光や湿気を採り入れる窓等、自然のリズムとともにある食生産と人の暮らしを取り戻す為の建築の問い。

 現実と折り合いをつけながらの建築、それが僕らの目指す唯一のシステムではないという事を教えてくれる。