「最高の環境建築をつくる方法」山梨知彦・伊香賀俊治著

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刺激的な本である。

この本では、Co2で環境建築の価値を測るのはもう古い。住む人が健康になり、働く人の生産性が向上する方法を提案している。

「環境建築」に日建設計設備設計主幹を務めた伊香賀俊治による建築環境の最新の知見と日建設計設計部代表の山梨知彦による実作という二つの方向からそのあるべき未来を導き出す二部構成。

「環境から建築を考える」「建築から環境を考える」というアプローチを本の両側から展開。

日建設計による環境建築の最前線が見られる。

■目次
・環境から建築を考える
断熱で住環境と冷・暖房効果は大きく変わる
省エネ住宅に住むと健康になる
断熱が健康保険制度を救う
中古住宅の改善に必要な動機付け
住宅の性能が疾患率を左右する
これからは家のなかでの熱中症対策も必要
内装を木質にするべき科学的根拠がある
森林セラピーは確かにリラックスできる
木質内装にすれば医療福祉施設のサービスが向上する
CASBEEでは測れない建物の価値もある
室温28度では能率が下がり損失がでる
知的生産性は照明でも変わる
よいオフィスビルには月坪3700円上乗せしてもいい
付加価値スペースが知的生産性を高める
経営者は知的生産性が上がれば賃料アップに応じる
満足度を分析する
自然の光と風が仕事の生産性を高める

・対談 環境から建築を考える×建築から環境を考える

・建築から環境を考える
環境建築の言葉を定義しなおす
木材会館
ソニーシティ大崎
ホキ美術館

「東京箱庭鉄道」 原 宏一著  -1

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最近、原宏一のファンになり著作をまとめて読んでいる。

建築事務所のサイトで こうした本を紹介するのは場違いかも知れないが、原宏一の「東京箱庭鉄道」は、小説の中に具体的な路線案が三案も地図入りで出ており、何れも魅力があり東京の「まちづくり」に有益だと思う。

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上の地図は その中の「新宿路線案」

新宿の都庁・新宿駅南口・新宿三町目・歌舞伎町・新宿高層ビル街を周回する4kmの路線案で、ビルの三階ぐらいの高さを「ゆりかもめ」のような新交通システムで結ぶというビジネス街と歓楽街を結ぶ魅力溢れる路線案で なんだか乗客も多く見込めそうな=収益性も高そうな案。

近接ビルの三階部分に駅をつくり、直接乗り入れたりすると近未来的な立体的都市構造が出来上がる。

その昔、新宿西口の大学近くから歩き、西口の小便横丁で安酒を飲み、先輩に歌舞伎町まで走らされた事を思い出した。歌舞伎町に着いたころには結構酔っ払ってしまうのだが、西口と東口は近くて遠いというか、新宿大ガードまで迂回するので結構遠いのだ。

事業予算400億円だけど経済波及効果も高いし、東京都がその気になれば出来そうな路線だと思うし、実現して欲しいものだ。

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上の地図は「世田谷路線案」

東急田園都市線・二子玉川駅と小田急線の成城学園駅を結ぶ4kmの路線案

昭和44年まで二子玉川駅と砧本村駅までの2.2kmは、東急電鉄砧線として線路があった。

東京都というところは、中心に向かって縦軸の電車や道路があるが横軸に結ぶ電車や道路が少ない。こういう横軸を結ぶ交通網の整備は必要だ。

新交通システムでなくても、例えばコミュニティーバスなんかでも良いかも知れない。

「ウジェーヌ=エマニュエル・ヴィオレ=ル=デュク」の事

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「建築講話」(飯田喜四郎訳、中央公論美術出版)は、ヴィオレ=ル=デュク(1814年~1879年)の著作である。

はるか昔 学生時代に読んだ事がある。

ヴィオレ=ル=デュクは、その著作をして建築史上 最も優れた理論家の一人と言われている。

アール・ヌーボーの展開に大きな影響を与えたし、フランク・ロイド・ライトやガウディもヴィオレ=ル=デュクの著作から多くの啓示を受けている。

ヴィオレ=ル=デュクが建築家として手がけた仕事は、ほとんど修復作業だった。

フランスの有名な中世建築で彼の手が入らなかったものはほとんどないと言われている。

パリのノートルダム大聖堂(1845年~64年)、サン・ドニ大聖堂(1846年~)、ランスの大聖堂(1860年~74年)、ヴェズレーのラ・マドレーヌ大聖堂(1840年~)等だ。

私が「既存建築ストックの再生と活用」を業務のテーマにあげたとき、脳裏に浮かんだのが修復の名人と言われたヴィオレ=ル=デュクだった。

彼はゴシック・リヴァイヴァリストとレッテルを貼られていたが、修復にあたっては考古学的判断と構造的な安定を両立させると言う難しい仕事に取り組んでいる。

 

建築には真実であるための必要不可欠な道が二筋ある。建築は要求項目に沿って真実でなくてはならぬ。また、構造の方法に添って真実でなくてはならぬ。要求に従って真実であるとは、すなわち、必要によってかせられる条件を正確かつ率直に満たす事である。構造の方法によって真実であるとは,つまり,その方法の性質ならびに特質に随う材料を採用する事である。[・・・]左右対称や見かけの形態など、全く芸術上の諸問題などは,われわれのいう支配的原則からすれば二義的条件に過ぎぬ。

ウジェーヌ・ヴィオレ・ル・デュク「建築講話」1863〜1872年

「建築講話」は、現在再版されて30,000円弱の価格で売られている。図書館では見れるが中々自分の所蔵書に出来ないでいる一冊のひとつである。

中世建築を広義の立脚点から解読していったヴィオレ・ル・デュックの軌跡は、結論として普遍的な建築哲学に到達している。そこには19世紀の近代精神が輝いており、その近代精神は20世紀のそれを凌ぐほどの整合性をもって聳えている。「建築講話」は、もっとも19世紀的かつもっともフランス的なラショナリズムの書であり、それゆえにこそ、本書は全歴史を通じて最も刺戟的な建築論のひとつとなり得ている。本書は全20講よりなり、I 巻は第10講までを注釈を付して訳出した。2004年再販出来。
■目次
読者の皆様へ
第一講 野蛮とは何か/第二講 原始時代の建物/第三講 ギリシア人とローマ人の芸術の比較/第四講 ローマ人の建築/第五講 建築の研究方法、ローマ人パシリカ、古代人の私的建築/第六講 古代建築の衰退期、ビザンティン建築の起源、キリスト教公認以後の西欧建築/第七講 中世西欧建築の原理/第八講 建築衰退の原因/第九講 建築家に必要な原理と知識/第十講 19世紀の建築と研究の方法/訳註・原註/訳者あとがき/索引

「用途変更時の建築関連法規の抵触事項に対する設計者の意識調査に基ずく規制緩和の可能性に関する考察」を読んで

『「用途変更時の建築関連法規の抵触事項に対する設計者の意識調査に基ずく規制緩和の可能性に関する考察」・・建物の長寿命化を目的とした用途変更促進のための研究』

CONSIDERATION ON THE POSSIBILITY OF DEREGULATION BASED ON SURVEYS OF DESIGNERS’ CONSCIOUSNESS FOR THE MATTERS AGAINST BUILDING CODES

は、2008年4月に日本建築学会計画系論文集 第73巻 第626号に掲載された、大阪工業大学・吉村英佑教授グループの論文で 以前に読んだのだが、感想を整理しておこうと思う。

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006657341

現在の建築基準法は、新築が前提の規定や法体系となっており、増改築や用途変更などの既存建築物の活用を叫ばれている現在においては、充分適用できていない法律となっている。(他にも複合用途の建築に対する対応)

本稿は、1993年~2006年までの13年間の建築雑誌から用途変更事例を抽出し、設計担当者に用途変更の妨げとなった建築関連法規の規定とその程度をアンケートで尋ねている。

その項目は、床荷重・居室の採光・廊下の幅員・階段の寸法・避難階段・排煙・その他であり、実際プロジェクトの企画段階で これら関係法規のチェツクをし改修コストがかかるものは取り壊される。

用途変更の確認審査・設計申請の両方の経験をして感じるのは、条例関係の制限が多いことだ。とりわけ用途変更の場合におけるバリアフリー条例の適用に困難を伴う時がある。バリアフリー条例の用途変更への対応は、高齢者・子供・障害者・妊婦が多く利用する施設に限定して適用しても良いのではないかと思う。

避難関係・防火に対する規定の緩和は好ましくない。

完了検査済証が無い建物、確認申請(副本)がない建物、そうした既存建築物が世の中に沢山あり、無届出で用途変更がなされているのが多いのが実情だ。そうした建物への対応をどうするのか?

用途変更は「建築行為では無い」(法第3条)が、完了検査が必要ないのは「ザル法」的でいだけない。現状では、行政の監察と特殊建築物定期報告でしかチェツクできない。

ちょつと羅列的な感想だけど・・・

たまに研究者の論文を読むのは、問題が整理されて参考になる。