来年4月に施行予定とされている改正建築基準法等に伴う改正施行令が9月12日、閣議決定されました。
公布は今週末になりますが、添付の報道発表資料からの修正は無いと思われます。
報道発表資料
建築法務/ 建築ストック再生・活用 /長寿命化/ 環境建築 / 建築設計監理 / ㈱寺田建築事務所・一級建築士事務所
来年4月に施行予定とされている改正建築基準法等に伴う改正施行令が9月12日、閣議決定されました。
公布は今週末になりますが、添付の報道発表資料からの修正は無いと思われます。
報道発表資料
先人達が遺した手書きの図面の美しさには、いつも惚れ惚れしている
この表紙に使われている断面詳細とファサードの青図もそうだけど、報告書に掲載されている幾つもの元設計図には目を奪われる。
いま100年後の人達が目を留める図面を書いているのか。と自問自答
この建物は、鉄骨鉄筋コンクリート造で営業室吹抜けの天井(下弦材)と屋根(上弦材)の二重スラブは、コンクリートスラブと一体となったラチス梁(梁成6尺6寸)となっている事を知った。この構造はメラン式橋梁と同じ構造方法とある。復元図によると約14.544mのスパンであり、石膏繰型の大きな面積で重量のある天井を実現する為に採用されたものと思われる。このメラン式構造はあまり見たことが無かった。
全体として良くまとまっている報告書だとは思うが、やっぱり建築史家の視点のまとめ方だと思った。昔の自分ならこれで充分満足していただろうと思う。
この報告書には記載されない調査はあるようにも思うが、コンクリートの圧縮強度、中性化、塩化物イオン量、躯体の劣化状況等の建築病理学的視点の報告も盛り込んで欲しいと思った。
昇降機(エレベーター)は建築設備として、建築基準法第87条の4及び同施行令第146条1項1号の適用を受けます。
既存建築物の屋外にエレベーターを設置する場合は、通常床面積が増加するので「増築」となりますので、エレベーターを設置する既存建築物の検査済証が無い場合には、建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査等)が必要となり建設時の法適合性が確認されないと昇降機の申請を出すことが出来ません。
ただし既存建築物の屋内に設けるエレベーターで床面積が増加しない場合、つまり既存の床スラブ等を解体し、そこに昇降機路を設置する場合には、建築基準法上の「増築」には該当しませんので、建築基準法第87条の4及び同施行令第146条1項1号により、確認を要する建築設備としてエレベーター単独での確認申請が必要となります。
この場合でも既存建築物の検査済証が無い場合には、建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査等)が必要となり建設時の法適合性を確認する必要があります。
既存建物の昇降機を交換する場合も同様です。
既存建築物が建築基準法第6条1項4号に該当する場合には、昇降機(エレベーター等)の確認申請については規定がありません。この場合特定行政庁は、建築基準法第12条5項に基づく報告を求めます。
昨今、リノベーションやリフォーム案件が増え、昇降機新設に伴って、こうした相談がガイドライン調査機関に多く持ち込まれているそうです。
又、最近はエレベーターメーカーの法令遵守の意識は高く、昇降機設置の相談をすると最初に確認済証ありますか、検査済証ありますかと聞いてきます。検査済証が無ければ昇降機の出荷はできないようです。
弊社では、既存建物に設置する場合の相談等をする時は、最初に建築確認記載台帳証明や検査済証を昇降機メーカーに見せるようにしています。
2021年1月に建築確認申請、検査申請に押印が廃止され、それまで あれほど押印押印と言っていたのが、一転して図面や申請書類、委任状まで押印が必要なくなった。
あれから2年半、最近 押印廃止に伴うトラブルを耳にする。
ひとつは、設計と確認申請は受注したが、工事監理は契約しなかった物件で、勝手に名前を使われて計画変更申請が出されていた。これは昔からあり、計画変更申請に認印で押印されて承諾していないのに名前を使われたという相談を受けた事があった。
弁護士から聞いた話では、設計の打合せ中で、まだ工事を発注することも決めてなかったのに、施主の承諾なし知らないうちに確認申請図書が作られ、確認通知書が交付されていた。工事契約に至らなかったのに確認通知まであるのだからと高額の金額を請求されたという事件があったと聞いた。確認申請詐欺まがいの行為だが、これも押印廃止に基づいて容易になった。
そもそも法的行為である「委任状」に押印がいらないというのが、今でも解せない。
とある機関に提出した依頼書も押印不要だが、施主の担当者のメールアドレスを記載しろとあったので、なんでかと聞くと、本当にその依頼をしたかどうか確認するためだという。だったら施主の代表者(社長)の社判を貰ってくると言ったら、結局押印してもらっても良いということになった。
そういえば押印廃止について以前書いていたものがあったが、その時も危惧していたことが現場では起きている。
今揉めているマイナンバーカードの担当は、河野太郎デジタル相。この押印廃止も河野太郎さんが総務大臣だったときだった。「根回しは好きではないが力業をする」という河野さん。結構なトラブルメーカーかも。
東京都建築士事務所協会で編纂作業が進んでいる「既存建築物活用に係る建築基準法令とその解説(仮題)」の2023年6月段階での全章を印刷したファイルが事務所協会事務局から送られてきた。
私は、東京都建築士事務所協会のワーキンググループであるリノベーション専門委員会の編集委員のひとり。
まだ補強すべき箇所や書き加える章もあるが、こうして一冊のファイルになってくると、中々読みごたえがあるし、今まで約20回(月1回)にわたる委員会の成果なので振り返ると考え深いものがある。
建築基準法の事だけ考えていると頭の中が酸性になりそうで嫌なのだが、時間を割いて私が書いた章以外も真剣に読まないとならない。多忙で書けなくなった他の編集委員の人の章もバトンタッチして書かないとならなくなったし大変。
法令解説本というのは、世に沢山出版されている。主として指定確認検査機関や元行政関係者などによる本であり、それらの本は当然設計者にとって有意義な本だ。
ただ設計者は建築基準法だけを見ているわけではなく、あまたある法令 例えば消防法、都市計画法、福祉のまちづくり条例等、建築プロジェクトに係る法令全般を俯瞰し把握しなければならない。
すなわち設計者は、常に「森をみている」
指定確認検査機関は建築基準法という「木」、消防は消防法という「木」、沢山の条例という「木々」。個々の「木」を見ているだけの場合が多い。
設計者は森をみる。それに役立つ法令解説本を作りたいと個人的には考えている。
鉄筋コンクリート造の既存建物の耐震診断をするにあたって、構造事務所と一緒に現場確認をした。
外部・内部の劣化調査は既に済ませてあるが、これから耐震診断のための「図面照合調査」(既存図面と現況の主として壁種別の確認、壁開口の大きさ確認、実測)をする為の下見。
耐震診断業務も調査から計算まで一貫して依頼出来る会社もあるが、現在弊社で検討している耐震補強設計の技術的難易度が高そうなので、対応できる構造事務所と弊社で手配する調査チームの共同業務にした。
RC壁でも写真のように上部にダクトが貫通していると右側部分は耐震壁として評価できず、左側のみの評価となる。現地調査をして図面に壁種別と開口寸法を記載していく調査。
屋上には、何のための基礎だったか良くわからない基礎が残っていたりする。こういう設備基礎の類も実測しなければならない。これを「屋上重量物調査」という。
建築・設備を含めた竣工図が残っていない既存建物、長い期間の間で更新されて変わってきた設備類の記録が整理・保管されていない既存建物は、まことに手間がかかる。
既存建築物の活用では、こうしたアナログ調査が不可欠で、身体を使い汗をかく。こういうところが敬遠される所以なのかもしれないと思うこの頃。まあ爺さんは楽しみながらやっているが。
元々
国土交通省(旧建設省)の通達(昭和32住指発第461号)による「普通の構造の小屋裏の一部を利用し、季節的に不要な物等を置く設備を設けたものと認められる程度のもの等は、通常階数に算入されない。」というのが基本的な考え方のベースにあります。
住宅の小屋裏物置に関する規定条文は、建築基準法施行令第2条第1項第八号です。
この規定は、昭和50年に改正されて現在も有効です。
「八 階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなつている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によつて階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。(昭和50年4月1日 – 現在有効)」
昭和55年に「小屋裏利用の物置の取扱いについて(昭和55年2月7日住指発第24号)」が発出されて 以下のことが記載されています。
昭和55年2月7日
建設省住宅局建築指導課長・建設省住宅局市街地建築課長から特定行政庁あて通知
標記については、すでに「昭和32年6月1日付け住指受第461号徳島県土木部建築課長あて」例規が示されているが、最近この種の形態を有する住宅の建築が増加しつつあることにかんがみ、その取り扱いの統一を図るため、今後は左記により取り扱われたい。
記
住宅の小屋裏部分を利用して設ける物置(以下「小屋裏物置」という。)で、次の各号に該当するものについては、建築基準法の規定の適用に当たつては、階とみなさないこととする。
一 小屋裏物置の部分の水平投影面積は、直下の階の床面積の1/8以下であること。
二 小屋裏物置の天井の最高の高さは、1.4m以下であること。
三 物の出し入れのために利用するはしご等は、固定式のものとしないこと。
(昭和55年2月7日)
さらに平成12年に「建築基準法の一部を改正する法律の施行について(平成12年6月1日住指発第682号)」が発出されており、この中の第5項(2)に下記の事が記載されており、この時に1/8から現在の1/2に取扱いが変わりました。
「(2) 木造建築物の耐震壁の配置規定の整備(令第46条並びに告示第1351号及び第1352号関係)
木造の建築物については、基準の明確化を図る観点から、木造建築物の耐震壁の配置の方法に関して建設大臣が定める基準によらなければならないこととした。建設大臣が定める基準においては、建築物の部分ごとの耐震壁量の割合等を定めた。
また、小屋裏、天井裏その他これらに類する部分に物置等がある場合において、当該物置等の最高の内法高さが1.4メートル以下で、かつ、その水平投影面積がその存する部分の床面積の2分の1未満であれば、当該部分については階として取り扱う必要はないものであるが、近年このような物置等を設置する事例が増加してきていることを踏まえ、軸組等の規定を整備した。なお、構造計算が必要となる場合においては、令第85条の規定に基づき当該部分の積載の実況を反映させて積載荷重を計算することが必要である。」
注意しなければならないのは、小屋裏収納の面積が、その存する階の床面積の1/8を超えた場合は、軸組計算に面積を加算しなければいけないという事です。
固定式階段の有無については、昭和55年当時は、固定梯子も不可とする取扱いでしたが、現在は「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例(2022年度版)」に小規模な階段に関する記述があり、「小屋裏物置等への専用の階段は、法第2条第5号に規定する「局部的な小階段」に該当する」とあり、一般的に固定階段を認める取扱いとなっています。しかし階段設置を不可としている特定行政庁もあります。
法令の規定を変更しないで通達類で取扱いを変更してきているので、法令集も法文・施行令の規定・告示を拾い読みしただけでは解りづらいです。
2023年(令和5年)4月1日より、建物用途限定で大規模庇の建築面積が緩和される。
令和5年国土交通省告示第143号
対象は「工場又は倉庫」で「貨物の積卸し等の業務」。建物の一部に当該用途があっても適用。
柱で支える形式の軒は不可。
緩和されるのは建築面積のみ。
2022年の10月に出版されて新年早々に購入したのだが、ちょつと目を通すのが遅くなった。2009年(平成21年)に出版されてから改訂を重ねている。
この本は、昨年2022年12月に発行された「近畿建築行政会議 建築基準法 共通取扱い集」2022(第2版)とは違い「改訂項目一覧表」が記載されておらず、前回の2017年度版から改訂がないもの、内容が改訂された項目、条項ずれや文書等を整理した項目、新規の項目、削除した項目等は自分で差分を確認しないとならず、読者がそれなりに勉強しなければならない本となっている。
追加項目で目立つのは「用途規制(法48条)」に関わるものだ。
例えば【学校等】では、「こども食堂」「プリスクール」「日本語学校(日本語教育機関)」。
【老人ホーム等】では「こども送迎ステーション(送迎保育ステーション)」
【老人福祉センター等】では、「高齢者向けふれあいサロン」「就労移行・継続・定着支援事業の用に供する施設」「居宅介護・重度訪問介護又はこれに相当するサービス事業の用に供する施設」。
【物販店舗等商業施設】では、「スポーツ振興くじ及び宝くじ売り場の用に供する施設」「eスポーツ施設」「レンタルスペース」
【事務所】では「インターネット通信販売を行う兼用住宅の非住宅部分」「住宅宿泊管理業者の営業所又は事務所」
【工場等】では、「義肢装具(補装具)の製作所」「細菌培養加工施設」
【ホテル又は旅館】では、「ホテル・旅館のフロント代替設備を有する建築物」「簡易宿所の共同玄関帳簿」
【動物関連施設】では、「全天候型の屋内ドッグラン」
用途規制は時代を映す鏡のようなものだけど、実態が良くわからないものもある。
新たに追加された項目については概ね確認したけれど、修正文章等の箇所の確認はこれから。法令に関して自分の頭をバージョンアップさせるのには、それ相応の時間と努力が必要。
プリスクールとは、欧米では5歳以下の子供が通う幼稚園や保育所を指すらしいが、日本では、概ね3歳から就学前の子供を対象に、主として英語を基本とした環境で保育又は教育を行う施設の総称として使われている。インターナショナルスクール(幼稚部)、キンダーガーデンなどと呼ばれている施設もある。
プリスクールの構成は「英語環境」「少人数制」「外国人講師(海外の幼稚園教諭又は保育士資格)と英語の話せる日本人スタッフが特徴となっている。
建築基準法の用途で言うとインターナショナルスクールの一種で「各種学校」や「無認可保育施設」の届出がないなものは「学習塾の類」として扱う事が多いが、これがまた実態が良くわからない。
一般的なオフイスをインターナショナルスクールとして賃借し、その後プリスクールとして事業を行い、知らぬ間に「無認可保育園」として届出していた事例がある。消防の定期点検で用途違反が判明し児童福祉法に規定される保育所への是正命令が発出された事例がある。
プリスクールが増えている要因として、東京の急速な国際化があげられるだろう。
東京都豊島区でも人口の10%は外国人で、エリア別でみると東池袋1丁目、池袋1丁目、池袋2丁目あたりでは25%程度になっているとの事だ。あと港区愛宕2丁目で約40%、港区赤坂1丁目で約32%、新宿区百人町2丁目、大久保2丁目でも約32%が外国人登録がされている。
200㎡以下だから用途変更申請は不要、用途は事務所の類ということで放置しておくわけにはいかない。施設が1階だけにあるならともかく、2階、3階、地階などにある場合には子供達の避難安全性を充分確保する必要がある。
とかく実態がわからず、用途判別があいまいになっているものは定期的な査察が必要だと思う。
2023年正月に注文し最初に読んだ本。
昨年2022年12月15日に発行された「近畿建築行政会議 建築基準法 共通取扱い集」2022(第2版)。
2014年(平成26年)5月に、この本の意匠分野が発行され、2016年(平成28年)に構造・設備分野の取扱いが発表された。そして今回、近畿建築行政会議が主体となり近畿建築確認検査協会と連携し編集委員として参画してもらい発刊に至ったと記載されている。
近畿圏内では府県市単位で発行している取扱い集等があるが、内容が重複する場合又は差がある場合等は原則としてこの本が優先する。
この取扱い集は「改訂項目一覧表」が記載されていて、第1版からの改訂がないもの、内容が改訂された項目、条項ずれや文書等を整理した項目、新規の項目、削除した項目が判るのが読者目線だと思うし第1版から第2版の差分が判るのは、とても使いやすい。
誰かが言ったが法律は「生もの」である。法の改正や取扱いが変われば、その時点で旧来の解説書の類は役に立たなくなる。変化に対応するスピードが必要で、近畿圏という多くの都道府県の特定行政庁と確認検査機関から意見を集め、内容を整理し発行に至るのは、相当のリーダーシップが必要ではないかと推測する。
新規の項目で目に留まったのは、「吹抜けを介した採光」の規定、「増築に該当しない項目」「屋根の修繕の取扱い」「排煙方式が異なる異種排煙の区画」「給水管等が防火区画を構成する床・壁と一体となる柱・はりを貫通する場合の取扱い」「法第86条の7第1項による増築又は改築を行う場合の既存エレベーターに遡及適用される規定」等が気になって注意深く読ませてもらった。
設計者にとって法律は「武器」である。日々鍛錬にいそしむ年にしたいと思う。
都内で建築設計をしている人に、本件の敷地形状を見せたら、ほぼ100%の設計者は東京都建築安全条例第10条に規定される「路地状敷地」の可能性があると最初に想起するのではないでしょうか。
【敷地形状】
「路地状敷地は区よって取扱いが若干異なる」が、東京都建築安全条例における路地状敷地とは「道路から見通せない死角部分がある敷地」という原則は変わりません。
本件の敷地形状を見ただけで死角部分がある路地状敷地であるというのは明白であります。
普通の設計者なら基本計画の初期の段階で行政に打合せをするような事項であると筆者は考えますが、最近の若い設計者はそうはしないようです。
ある設計監理契約を中途解約した事案で、契約解除をした設計者が東京都建築安全条例の路地状敷地認定について設計監理契約の標準外業務として追加報酬請求をしてきました。この設計者は基本設計がかなり進んだ段階で路地状敷地ではないかと建築主から指摘され、あわてて区の建築審査課に打合せに行っており、実際の業務は区の建築審査課との打合せだけで認定業務申請を行っていません。にもかかわらず路地状敷地認定業務費として60万円(税別)の請求を起こしてきました。
東京都建築士事務所協会の「建築士事務所の業務算定指針2022年版」には、標準外業務の参考例が記載されていますが、この中に路地状敷地認定の業務は記載されていません。また設計監理契約で路地状敷地認定業務を標準外業務とするという取り決めはなされておりませんので、業務の難易度や作業量から考えても基本設計に含まれるものと判断するのが妥当だと思うと意見を述べました。
実際のところプロジェクトを完遂させた別の設計監理者が路地状敷地認定業務を行い。これは通常の設計業務の中に含まれるとして別段追加請求は有りませんでした。
この追加請求をしてきた設計者曰く「路地状敷地だと建築主側から与条件として与えられなかった」。ほとんどの抗弁が「言われなかったから、やらなかった」という感じの抗弁なので、まるで現代学生気質をみているようだと感じました。
「小規模な倉庫は、建築物には該当しない。」という国交省の技術的助言が出されたのは、もう随分と前だったと思い調べてみたら平成27年(2015年)だった。
国住指発第4544号・平成27年2月27日「小規模な倉庫の建築基準法の取扱いについて(技術的助言)」
「土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置等を含む。)のうち、外部から
荷物の出し入れを行うことができ、かつ、内部に人が立ち入らないものについ
ては、建築基準法第2条第1号に規定する貯蔵槽に類する施設として、建築物
に該当しないものとする。したがって、建築確認等の手続きについても不要で
ある。
この取扱いについては、当該倉庫が既製のものであるか否か、及びその構造
種別にかかわらず、上記に従って判断するものとする。」
以上が技術的助言の内容。
「建築確認のための基準総則集団規定の適用事例2017年度版」でも「小規模倉庫」について記載があり、
「土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置等を含む)のうち、奥行き1m以内の物又は高さが1.4m以下のものは、建築物に該当しない」
解説として
「・小規模な倉庫は物置等を含むものとし、外部から貨物の出し入れができ、かつ、内部に人が立ち入らないものについては、法第2条第1号に規定する貯蔵槽に類する施設として、建築物に該当しないものとする。」「・したがって上記の規模は、最低限、人が内部に入ることのないものとした数値の目安を示したものである。」「・なお 倉庫の内部に収納・備蓄する内容は問わないものとする。」「・この取扱いについては、当該倉庫が既成のものであるか否か、及びその構造種別にかかわらない。」「・幅、面積及び連結型の取扱いなど具体的な適用の判断については、申請する審査機関に確認が必要である」とある。
意外と「小規模倉庫は建築物ではない」という事を知らない設計者が多い。また具体的な取扱いが行政によって異なることがある。
例えば東京都・大田区では、下記の規定が全て満たすものとしている
「1 、外部から物の出し入れを行うことができ、かつ、内部に人が立ち入らない
もの。
2 、用途は 防災用とする。
3 、1 棟のおおむねの大きさ (下記の全ての条件を満たすもの
高さ2 メートル 以下、幅 2 メートル 以下、奥行き 1 メートル 以下
4 、建築物に付属して、設置する こと 。
5 、設置できる合計床面積等
・敷地面積が200 平方メートル 以下の場合は、 2 平方メートル 以下とする。
・敷地面積が200 平方メートル を超える場合は、敷地面積 の 1 パーセント 以
下かつ3 棟程度までとする。
6 、風致地区内や壁面後退制限のある地区計画内
・壁面距離を確保する。」
神奈川県・相模原市 平成29年4月14日「小規模な倉庫の建築基準法上の取扱いについて」
「「小規模な倉庫の建築基準法上の取扱いについて(技術的助言)」(平成27年2月27日国住指第4544号)における「小規模な倉庫」とは、奥行が1m以下かつ高さが2.3m以下で、床面積が2㎡以内の規模の倉庫とし、かつ、当該倉庫の設置場所が次の各号のいずれにも該当しないものとする。
(1)建築基準法第42条に規定する道路
(2)相模原市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例別表第2の規定により壁面の位置の制限が定められている地区又は街区においては、当該倉庫の外壁又は
これに代わる柱の面から道路境界線(地区計画の計画図に表示する壁面の位置の制限
を定める境界線に限るものとし、都市計画道路にあっては計画線をいう。)又は隣地境
界線までの水平距離が同表に定める計画地区の区分に応じ、同表(5)部(ア)項に
掲げる数値未満の位置。ただし、同表(5)部(イ)項の規定により適用除外の建築
物が定められている地区又は街区を除く。
(関連事項)
小規模な倉庫において消防法で規定する危険物を保管する場合は、関連法令を遵守する
こと。(予防課)」とある。
また静岡県では、
「10㎡を上限とする」とある。
また東京都練馬区では、倉庫の外形を奥行有効内寸1.0m以下、幅の有効内寸2.0m以下、高さの会゛圭2.5m以下」として「設置数は、原則として戸建て住宅1 棟に対して1 台とし、その他用途の建築物については規模や計画等に応じて3台を上限とすること。その場合、各倉庫の壁や屋根同士の固定は不可とし、隙間はふさがないこと。」
まあ 結構地域によって異なるので注意が必要だ。
「建築構造設計指針2019」(通称オレンジ本)は、2010年以来9年振りの改定本。
構造専門事務所ではないと普通はあまり購入しない本です。(高価だし・・)
この本の第11章「構造審査要領」や第12章「東京の地域特性を考慮したは建築構造における建築審査の要領」は都内行政庁や指定確認検査機関が構造審査をする上での法解釈及び運用の統一性を確保し、建築審査の業務円滑化の為に、東京都建築構造行政連絡会で執筆を担当しています。私はとりわけ第11章の「構造審査要領」は既存建築物を扱う設計者(構造設計者のみならず意匠系ゼネラリスト)は必読の部分だと思います。
一般社団法人 東京都建築士事務所協会では「既存建築物活用に係る建築基準法令とその解説(案)」の発行に向けて以前より準備を進めていましたが、2021年度法制委員会の下にワーキンググループとして「リノベーション専門委員会(法規集編纂)」を立ち上げ、私は誘われてその委員の末席に加わっており、2023年出版に向けて毎月1回2時間~2時間半の委員会で熱い議論が交わされています。
私は「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(以下「ガイドライン調査」)の章の執筆をしています。
現在、ほぼ全部の章の初稿が出稿されており、ブラッシュアップ中です。私もこの本を参考にしているところがあるので読み直しているところです。
ガイドライン調査は一様ではなく国交省届出機関は、その方法論で幾つかに類型化することができます。又各社色々な制限事項を設定していますので調査機関を選択する時には注意が必要です。まだ詳しい執筆内容は書けませんが、色々と新しい取り組みを交えながら、設計者の視点で解説しています。
ある建物の中を上下に移動する施設を、建築基準法上は「遊戯施設」として取り扱うことになり、自分にとって未知の領域であった「遊戯施設」の技術基準を学習した。上記は2018年版で、もうひとつ十数ページの薄い冊子である「2020年追補版」もある。
指定工作物である遊戯施設は、令第138条第2項第二号で「ウォーターシュート、コースターその他これらに類する高架の遊戯施設」第三号で「メリーゴーランド、観覧車、オクトパス、飛行塔その他これらに類する回転運動をする遊戯施設で原動機を使用するもの」が指定されている。
何しろ遊戯施設には、知らなかったカタカナ名称がいっぱい出てくるので面食らった。
例えば「オクトパス」。円周運動が「ローターのものほど大きくないが、客席部分が回転運動とともに昇降運動を伴う遊戯施設。客席の傾斜角度は30度以下。
「マッドマウス」。比較的高速で軌条を走行する乗り物で、水平及び垂直方向に旋回及び昇降に変化を持たせた軌条を走行するもの。
文章を読んだだけでは何だか良くわからないが、この解説書は写真がついているので何となくわかる。
随分と前だが、ディズニーランドのジェットコースターに乗り、気持ちが悪くなったことがあるので、遊園地などに行っても施設には乗らないようにしていたので、今一つ商品知識が乏しい。
詳細な技術については、勿論遊戯メーカーさんにお出ましいただくようになるのだが、今回は新しいタイプの「遊戯施設」。法律上は「これらに類する」ものなので、安全性等色々と知識を得ておく必要がある。
まだまだ未知の領域は多いなぁ~。
たまたま全国各地の建築法規の取り扱い基準について別な項目で調べていたら、先に記載した崖地のオープンテラスに類似したケースとして「架台等の取扱い」というのを見つけた。
■横浜市建築基準法取扱基準集(令和2年4月版)
1-3 架台等について(参考)
架台その他これに類するもの(柱又は壁及び床版により構成される工作物でその床版の上部を駐車や建築物へのアプローチ等の利用に供するもの)又は機械式駐車装置の地下ピット部分については、確認申請等が必要ではない工作物ですが、日常的に人の通行、駐車等に供し構造上の安全性に配慮する必要があることから、法第 19 条、法第 20 条
など建築物に対する規制に準じた設計を行ってください。
(まち建企第 2287 号 平成 20 年3月4日)
(建建企第 811 号 平成 22 年8月9日改正)
斜面地の多い横浜市ならではの取扱い基準だと思う。この架台等の取扱い基準は、現行はシンプルな表現だが、以前は法12条5項に基づく築造計画書の提出を求めていた。以下 昔の横浜市の架台指導基準。
■架台等の指導について(指導基準)
架台等の築造における指導については、次により行うものとします。
1、架台等の意義
架台その他これらに類するもの(以下「架台等」といいます。)とは、柱又は壁及び床板により構成される工作物で、その床版の上部を駐車その他の利用に供するものをいいます。
2、適用範囲
この取扱いは、高さが2m超える架台等に適用します。
3、築造計画書の提出
築造主は、架台を築造しようとする場合において、工事着手前に法12条5項に基づく架台等築造計画書(以下「築造計画書」といいます。提出するものとします。
4、築造計画書の審査
築造計画書が提出された場合においては、構造の安全その他の事項について審査を行うものとします。
5、技術基準
技術基準については、法19条、法20条及び法44条を準用するほか、建築物に準じた指導を行うものとします。
6、施工状況報告
築造主は、架台等の工事が完了した場合においては、施工状況について報告するものとします。
7、8略
(横浜市建企指第1007号 建築局長 平成5年4月1日)
以前書いた土砂災害危険区域のオープンテラスの構築について、区の建築主事はテラス下部が屋内的用途ではないので、建築基準法第二条の「建築物」には該当しないという判断をしめした。
今一度、建築基準法の「建築物」の定義をおさらいしてみよう。
「一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。」(平成5年6月25日 – 現在有効)
上記が現在の規定。
「一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの、これに附属する門若しくはへい、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設をいい、鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びにこ線橋、プラツトホームの上家、貯蔵そうその他これらに類する施設を除くものとする。」(昭和25年11月23日 – 昭和34年12月22日)
上は建築基準法制定時から昭和34年改訂までの規定。
庭の平坦部分につくるオープンデッキなら その安全性は自己責任の範囲でどうぞということで良いと思うが、土砂災害危険区域に指定されている崖地の上に自己所有地とはいえ、敷地いっぱいにオープンテラスを作れば、地域住民がその安全性を心配するのは当然だと思う。
塀が地震等で倒壊し歩行者の安全をおびやかしたり、事故が発生しブロック塀などの建築基準が出来たように、本件の崖地のようなところに敷地一杯にオープンテラスを作る場合、崖地の崩壊やデッキの崩壊が起きた場合は、敷地外にも影響を及ばす可能性が明らかな場合には「類する構造のもの」で「建築物」とするべきで、所有者は、それ相応の安全性を担保する責務があると言うのが私の考えです。
現役の建築主事と法律論を闘わしても平行線に終わると思いますが、振り返れば建築基準法も「環境を整える」視点から「私権の拡大」へと大きく変わってきました。
この20年程の背景は、なんといっても「新自由主義」「市場万能」「規制緩和」だと思います。今は「新自由主義」と決別する分岐点に立たされている時代を迎えています。
この崖地は、大谷石の擁壁の上が斜面で、以前は高木が植わっていた。
昨年になつて崖の上の住宅・3階建ての所有者が変わり内部の改修工事と崖地にデッキテラスの設置工事が始まった。高木類は全て撤去され地肌が露出した。
2021年2月の工事写真
大谷石の擁壁・2021年2月
都内の土砂災害区域内・つまり崖の下に住む住民の方から相談を受けていた。
以前は樹木に覆われていた斜面の下に大谷石の擁壁がある。その崖の上の敷地の建物の新しい所有者が崖の上・敷地全域にテラスを築造する工事を開始した。当然樹木は伐採、地表面は裸になり木の板で土留めのような工事をしている。またテラスを支えている支柱の基礎は根切が浅く、中には置いてあるように見えるところもある。このテラスは大規模で斜面部分に築造し約100㎡はあるのではないだろうかと思われた。
東京都内の土砂災害危険区域の指定は、東京都の管轄で建設局河川部が担当している。
建設局河川部に相談したところ、危険性があることは確かだが都が要請、指導する権限はないとのこと。建築物であれば建築申請等が必要になるが、区が申請不要と判断すればそれ以上の対応は難しい。
しかし都から区の建築課に電話をすることくらいなら可能とのことだった。
相談をした際の都の主な見解。
・木の土留めは評価できない。仮設とすら言い難い。
・大谷石は機能するとは見ていない。大谷石の考え方については区でも説明あり、
現在の建築基準を満たしていないものの、長い年月その状態にあることから、構造
上の計算はできないが、長年の安定性への信頼度からそのまま残しているケースは多いとのことだった。→ 実際本職が現地を見た限りでは、かなり風化が進んでいる大谷石擁壁だった。
・水害だけでなく地震による危険もある。
・自分たちであればこのような工事は行わない。
・切り株を残してもツツジを植えてもあまり意味はないと考えられる。
樹木を取り除いてしまった今の状態をより安全にするには、排水処理をしたうえで法面をコンクリで固めるか、しかるべき擁壁を建てることが望ましい。
一方 区の建築指導課監察係は、屋根のない構造物であり、テラスの下が屋内的用途でない事から建築基準法第2条に規定する「建築物」には該当しないので、指導や是正命令はできない。ただし設置者は、安全性を考慮したうえで設置すべきだと考えられるから、テラス及び崖地法面の安全性については住民に丁寧に説明するよう要請すると回答。
区から回答があってから三週間。未だ設置者から地域住民への説明はない。
国の機関の建築物については、官公法第11条に基づき、その所管する建築物等を適正に保全することが求められていて、同法第12条には、政令で定める敷地、構造及び昇降機以外の建築設備について劣化の状況を点検させる必要がある。
又、建築物の所有者、管理者または占有者は、建築基準法第8条によりその建築物の敷地、構造及び建築設備について常時適法な状態に維持することが努力義務となっている。そして建築基準法第12条第2項及び第4項による定期報告が必要となる。
官公法の「点検」と建築基準法の「点検」という二つの「点検」に加えて、官公法第13条第1項に基づく「保全の基準」(安全性・耐久性・機能性)に基づく「確認」がある。
つまり建築物の定期報告よりももう少し広い範囲の調査による点検・確認が必要となる。その為の「ガイドライン」だが、地方公共団体の施設もこの国のガイドラインに従った調査が必要となる。
この調査は「劣化調査」+「法的調査」というようなものだが、法的確認も、建築基準法はもとより、消防法、バリアフリー法、省エネ法、労働安全衛生法、電気事業法、水道法、その他と幅広い分野の調査が必要となる。
例えば省エネ法の現行法への適合状態となると、厳密に考えると既存建築物の省エネ計算をして現行基準との比較をしないとならないことになる。まあ計算までしなくていい場合もあるだろうが。
こうした国のガイドラインを見ていると既存建築物はシングルイシューで解決できるものは少なく問題解決には総合的なアプローチが必要となってきている。
1階が鉄筋コンクリート造、2階・3階が木造の建築物は、平成19年5月18日に国交省告示第593号第4号(最終改正・令和元年6月25日告示第203号)により、RC部分も木造部分も許容応力度計算が必要となった。
【H19国交省告示第593号第4号の概要】
・地階を除く階数が2又は3であり、かつ、1階部分を鉄筋コンクリート造とし、2階以上の部分を木造としたもの
・高さが13メートル以下で、かつ、軒の高さが9メートル以下であるもの
・延べ面積が500平方メートル以内であるもの
【構造計算の概要】
・RC部分は壁量の確認が必要となり木造部分、RC(WRC)造部分ともにルート2-1相当の構造計算が必要となる
・木造部分の軸組計算
・木造部分の許容応力度計算(2階以上の剛性率6/10以上、2・3階の偏心率15/100以下の確認)
・RC部分の許容応力度計算(1階の偏心率15/100以下の確認)
以上をすべて満たさない場合は、構造適判対象となる。
まあ、新築ならばこの基準で構わない。これから建築するのだから。
H19年の告示以前は、このような混構造の建物はどう扱ってきたかというと、RC部分は許容応力度計算だが、2階・3階は、法6条第4号建物とし軸組計算による筋違を配置して来た。
こうした都心ではどこにもあるような建物が、増築をしたいと思った時、混構造は法第6条第3項建物となり、一体増築の場合は、上記のように全体を許容応力度計算を行い安全性を確認しなければならい。
RC部分が地階だからと安心する事なかれ、建築基準法施行令第1条ニ号の「地階」と構造上の地階は異なるのだ。構造上の地階・地上階の判定は、地盤面かの外周囲が地階全周囲の75%以上かどうかを計算し確認しなければならず、結構地上階扱いとなることが多い。
こうした混構造の建物を増築する場合、大概は内部スケルトンリフォームとなる場合が多い。耐力壁が不足していることが多いので筋違や構造用面材で耐力壁を増やす。2階床の剛性を高めるために床を張りかえる必要がある ということは壁も天井も壊さざるをえなくなり、結果として内部スケルトンリフォーム。場合によっては外壁もということになり既存部分に改修工事が波及するので 改修工事費が嵩んでくる。
もともと長い事 混構造の取扱いはRCと木造は別物としてきたのだし、構造性状は異なるのだから、せめて既存建築物は告示第593号の適用は再検討して欲しい。既存ストックの活用というのなら、こうした細部の規定も見直し緩和をして欲しいと思う。
2020年12月23日に公布された「押印を求める手続の見直しのための国土交通省関係省令の一部を改正する省令」により建築基準法施行規則が改正されたことを受け、2021年1月1日以降申請・届出が行われる確認・検査申請等に関する書類については、押印不要で手続きができることになった。
【日本ERIのサイトから】
押印が必要なのは、構造計算安全証明書の構造設計者印ぐらいなもので、随分と思い切って押印廃止にしたものだ。2021年になつて確認申請を何度か出してみて思った。
「押印廃止ってヤバクねぇ」
容易に私文書偽造同行使が可能なのだ。有資格者は、知らないうちに名前・登録番号・免許番号を使われる可能性がある。知らないうちに責任を負わされないか・・・
建築関係者の中には、「押印廃止」について手放しで「楽になった」と評価する向きもある。、申請関係書類の押印そのものもシャチハタ以外はOKで、多分に形骸化していた面もあるが、書類の押印について厳格な人や法人も存在する。
私の自身の経験から言うと。図面や図書への押印は特別な「職責印」を使っていた。
以前、指定確認検査機関に勤め始めた頃、先輩に言われた。「職責印は認印でない事、フルネームの職責印を作り、会社の机の中に入れておかず、必ず持ち歩く事」「それが自分の身を守る」 担当者ならともかく、決裁者は常に責任を負わなければならない。押印は責任の所在を明確にする。
令和3年度版の基本建築関係法令集・法令編、告示編・井上書院が届いた。手にしたとたん何だか厚くなったなと感じた。
法令編で前年度1700頁から1743頁に、43頁の増加。
告示編で前年度1462頁から1540頁に、78頁の増加。
毎年なんだか増えていきますね。法律さえ作れば安心なんでしようかね。段々法令が、わかりずらくなってきたようにも感じます。バッサリ削ってしまったら良いのではと時々思います。
今年一年御世話になる法令集です。節分の日に届いた「福」だと感謝して つべこべ言うのは止めましょう。
一般社団法人・住宅医協会の住宅医リレーコラムに私の書いた「接道について」の原稿が掲載されました。
https://sapj.or.jp/column201210/
しばらく声を聞いていなかった住宅医協会の理事の方に、安否確認のショートメールを出したら電話がかかってきて、今原稿の締め切りが迫っていて、まとまらなくて困っている。接道に関する最近の法改正の事を少し書いて欲しいと言われました。
「いいよ」と気やすく請け負ったのですが、色々と話していると接道の事から、再建築不可、改修や改築、最近ちまたで流行っているスケルトンリフォームの事等に話が広がり、それらの会話をまとめていたら長文の原稿になってしまいました。
元々、その理事の書く原稿の一部のつもりでだったのですが、全文私の名前で掲載することになったと言う経過です。
今、ちまたで広がっている「スケルトンリフォーム」に対する対応は、建築基準法遵守の立場で考えると、色々と議論が噴出し意見が分かれるところかもしれません。
御一読いただければ幸いです。
*2022年3月31日改正されました
令和4年国交省告示第413号「特殊な許容応力度及び材料強度を定める件の一部を改正する件が2022年3月31日付で公布・施行された。あわせて、あと施工アンカーに係る運用について国住指発第1597号技術的助言が通知された。
これにより「増改築や新築において補強以外の用途にあと施工アンカーを使用することが可能となった」
あと施工アンカーは、平成18年2月28日の「告示改正」までは建築基準法上で許容応力度が設定されていませんでした。このH13国交告第1024号の改正後も、条文が「既存の鉄筋コンクリート造等の部材とこれを補強するための部材との接合に用いるもの」となっているため、改正後も耐震改修に用いる時しか許容応力度が設定されていません。(国住指発3021号「あと施工アンカー、炭素繊維、アラミド繊維等に関する許容応力度及び材料強度の指定について(技術的助言))
したがって、今でも新築・増築工事の構造設計にあたって構造要素として使うことができません。
しかし、現在土木・建築分野では広く「あと施工アンカー」は使用され、臨床的には充分強度があると実証されていますし、様様な研究論文も発表されていますが、残念ながら現在のところ建築基準法上は不可となっています。
現在「あと施工アンカー」の問題は、法律が現実に追いついていっていない典型的な事例となっています。
指定確認検査機関や構造計算判定機関でも、増築部分の既存との取り合いについては、あと施工アンカー云々と記載させず、建築主や施工者判断に任せているところも増えています。
既存の基礎と増築部分の取り合いについて、同じ案件で構造計算適合判定機関と指定確認検査機関の構造審査者の間で対応が異なり苦慮することもありました。又既存のRCの建物にエレベーターを敷設する工事で、鉄骨小梁のRC部分に取り合い部分についてもめたこともあります。