左から
ヘッドライト(LED)・・ヘルメット等に取付、手が自由に、中々光量が満足できるものがなく、結局手持ちのライトも併用してしまう。
クラックスケール(カード型)・・コンクリート等のひび割れの太さを計測
レジタル温湿度計・・最近は温湿度が気になって常に計測
レーザー距離計・・天井高、室内内法等 一人で計測
打診棒・・モルタルやコンクリートの浮き、剥離箇所推定
非常用照明点検フック・・非常灯の点検
建築法務/ 建築ストック再生・活用 /長寿命化/ 環境建築 / 建築設計監理 / ㈱寺田建築事務所・一級建築士事務所
築32年木造平屋建て住宅の床下
大引き、束は、見てのとおり 白蟻でボロボロ
この家は、床暖房をしているゾーンのみが白蟻被害にあっていた。
床暖房部分の床構成は、室内側からカーペット、電気床暖パネル、合板、根太、床下部分に断熱材としてグラスウールが施工されていた。
床下には、捨コンが施されていて床下温度が19度、湿度54%だった。思っていたよりドライ。
床暖をしていないゾーンの床下の状態
ざっくり見たところ腐朽箇所や白蟻被害は見当たらない。
床下に捨コンは一応しているようなのだが、端部は土が露わになっている。
この床暖をしていない和室の床下温度は21度、湿度60%だった。
床暖をしていない状態で温度も低く、湿度も低い床暖をしているゾーンが白蟻被害にあっている。
また北側の台所の床下は、もっと湿度が高かったのに床下に腐朽は見られなかった。
床暖房をつけた時に床下の温度が上昇しても、湿度はあまり高くならない状態が予想される。それが白蟻達の世界では ハワイのようなものだったのではないかと想像してみる。
今、国土交通省・国土技術政策総合研究所の中古住宅、ストック再生に向けた既存住宅等の性能評価技術開発プロジェクトの一環である既存木造住宅の劣化実態調査に参加している。
解体前の既存住宅の周辺環境や建物周囲の局地環境、建築各部のつくり(材料構法)及び表層に現れている変状等の目視調査(現況調査)を行い、解体中に壁体内等の隠蔽された構造躯体等の劣化状況の調査(劣化調査)を行うもので、断続的に調査の予定が入る。
写真は、築29年の木造2階建ての住宅で、スケルトンリフォーム(構造体以外は解体)を行う住宅の水回り基礎部の写真。
台所流し台の下部にあたる基礎の入隅部に蟻道があったが、土台の米栂防虫防腐処理土台でブロックされていた。右側下部の排水管後施工の隙間から侵入したものとみられるが、黒蟻もいたから彼らが白蟻を食べてしまったのかも知れない。
土台は、日立電線の米栂防虫防蟻処理土台で、床下が土のままで防湿対策はこれといって行っていなかったが腐朽部分はなかった。南側の木材の吸水率は15%程度で北側水回りの土台吸水率は28%程度あった。
劣化状態は概ね良好で、築30年前後でスケルトンリフォームをするのは、建物の長寿命化のために懸命だと思った。
学術調査的手法での調査参加は久しぶりというか学生時代以来。一兵卒としてフィールドワークに参加して汗をかくのは楽しい。
「建築病理学」とは、1993年国際建築協議会で「Building Pathology」として定義され、
を主要な内容としている。
イギリスでは、改修の検査業務を請け負う134年の歴史を持つ公認資格「RICS」がある。
木造の分野では、一般社団法人・住宅医協会や岐阜県立森林文化アカデミー等で体系化して技術者の育成を図っている。
自分は業務としては、木造にほとんど関わっていないのだが、現在、「住宅医スクール2014・東京」を受講している。
月1回24講座+特別講義8講座を受講して実践的な調査を行い報告して認定されないと「住宅医」という称号は授与されないという。今時、粗製濫造ではないかと思われるような資格が氾濫しているなかで気骨あふれるセミナーの内容だと思ったのが受講の動機である。建築病理学を木造分野で体系化しているというので、そのカリキャラムの構成にも関心があった。
自分が業務として関与しているのは、ほとんど特殊建築物だし、鉄筋コンクリートや鉄骨造だから、そちらの総合的な診断には大いに関心があったが、住宅医セミナーのカリキュラムは、木造住宅の「リノベ+エコ」というような内容となっている。
住宅医セミナーでは、建築法規の内容が薄いと思っているが、木造住宅が主要な対象となっている事から仕方ないのかも知れない。
ただ、木造建築でも住宅からグループホームやシェアハウスへの用途変更、検査済証の無い増築等も事案として増加してきているので、もっと建築法規に触れるべきだろうと思った。
私が関わっている特殊建築物(RC・S)の増築・用途変更では、建築法規は必須であり、その分野の業務(調査・許認可)だけでプロジェクトに招聘されることが多い。
ストック活用と言っても、細分化した建築技術を統合する「総合診療医・ドクターG」ような人材を育成する「建築病理学」を学問的に構築をするべきではないかと考えるこの頃である。
「不動産から見る京町屋の活用法」と題した、京都の(株)八清(ハチセ) 代表取締役社長 西村孝平氏の話を聞いてきた。
一般社団法人住宅医協会の住宅医スクール2014の一講座
「築年数30年以上の建物評価のない建物をリノベーションする事で、再びストックとしてよみがえる住宅の総称である」と定義づげした「リ・ストック住宅®」を展開しているが、中でもヒットしたのは「リ・ストック住宅 京町屋」だそうだ。
私の亡父が京都市街の出身なので、おのずと訪れる機会も多いなかで京都市内に空き家が多いのは知っていた。道幅が狭い、駐車場がとれない、接道していないので再建築不可、何よりも夏暑くて冬寒いのが京町屋。アジア太平洋戦争での戦災が少なかったせいで、戦前からの建物。建築基準法(昭和25年)以前の建物がゴロゴロしている。
西村氏の講義によると、(株)八清の京町屋は新しくても築64年とか。(株)八清では、これまでの不動産業界の常識であった築年数で評価するのをやめた「経年美は古くないと評価できない」と語った。
様々な京町屋改修事例、危険家屋再生を見せていただいたが、その一つ一つが老朽家屋の再生、京都市内で増えている賃貸住宅の空き家の活用、それらがまちづくりに結び付いている。
(株)八清のビジネスは、「リ・ストック住宅 京町屋」から、町屋の貸切宿泊施設「京宿屋」と広がっている。
「京宿屋」は観光客の多い京都らしいビジネスモデル。町屋の保存再生、景観維持・保全に貢献しているし、伝統建築である町屋の居住体験を提供している。オーナーとして「京宿屋」を所有して、自分もセカンドハウスして使うこともできるという。賃貸するより収益性の高いビジネスモデル。
私もネットで7月8月の幾つかの「京宿屋」の予約状況を見てみたが、中々稼働率は高そうだった。
それから京町屋のシェアハウス「京だんらん」というのも展開している。大店(おおだな)の京町屋は、面積が大きくてリ・ストックして貸家や売却するには不適格なケースがある。
随分と共用部が多いシェアハウスで、レンタブル比というドグマ(教条)に浸かっている頭では理解しがたいビジネスモデル。「京都だからできるんだよ、東京では無理、無理」と即座に断定されそうだ。
とにかく(株)八清は次から次と 新しいビジネスモデルを展開している。
町屋を改修すると同時に隣接する道を石畳に整備して地域のポテンシャルアップにつなげる「石畳プロジェクト」。「京町屋証券化と京町屋管理信託」「京町屋ファイナンス」・・・
ちょつと目を離せない会社の一つになった。
「株式会社 八清」(ハチセ)
大和ハウス工業が開発した床下等の狭小空間点検ロボット・moogle(モーグル)
住宅の床下点検を主な用途として開発されたロボット。
暗所、閉所の作業は点検員の負担が大きい。空間が狭く作業効率が悪い。埃や粉塵がある場所での作業は、人体へ悪影響がある。
外部からは作業内容を確認できない。様々な障害物で確認できない箇所がある。最近は床下が少なく、もぐって点検できない。デブにはとっても無理。
ということで幾らするのと聞いたら、1年保証付で200万円。5年保証付で230万円とか。
リースもあるらしいが月5万円ぐらいにはなりそうで、高嶺の花
【写真は大和ハウス工業サイトから】
やっぱり 調査は汗をかかないといけないようだ。
http://www.daiwahouse.co.jp/robot/moogle/index.html
H25年度・(社)建築研究所の講演会「制度的・技術的側面からみた建築ストック活用促進のための研究」のテキストを読んだ。
材料研究グループの濱崎主任研究員の研究成果で、これを読んでストック活用の問題点は徐々に整理され、実務的研究が進んできているという感想を持った。
「あと施工アンカーの長期性状」「耐久性を確保するためのかぶり厚さの確保」(ポリマーセメントモルタル)「建築ストック活用手続きのための建物調査・確認」の三項目は、実践的課題だ。
「建物調査・確認」については建築研究所で、マニュアル案を取りまとめ中とあるが、完了検査済証未取得建物の調査・確認にも触れているのが心強い。
ストック活用のためには完了検査済未取得建物の問題は、避けて通れない。
調査方法や確認方法、評価方法は件数が増えていくに連れて徐々に収斂され確立していくだろうが、現在大きな問題としては、基礎・杭の確認方法と評価をどうするかという問題を抱えている。
掘削できれば基礎の根切深さ、配筋探傷、コア抜きができるし、杭頭を明らかにすることぐらいはできるだろう
掘削できないような密集市街地では、基礎の確認と評価をどうするか?
頭が痛くなる・・・
http://www.kenken.go.jp/japanese/research/lecture/h25/index.html
奈良県庁
丹下健三の香川県庁舎を踏襲したような、戦後モダニズムを彷彿させる建物
何となく懐かしいというか・・・。
今回は、建物の見学記録(後で建物の写真は掲載)ではなく、仕事の記事。
「遊んでばかりいるんじゃないの」と言われる事があるので
完了検査済証を取得していない建物について、奈良県庁建築課に御相談に行きました。
奈良県は「既存建築物の法適合性の確認の取扱い」というのを
平成25年6月に制定していたので、今回具体的プロジェクトについて打合せをしてきた次第
これから種々の調査・非破壊検査をすることになるが
法第12条5項報告の提出となりました。
添付する様式は、大阪府のものを参考にしたように思える
それにしても現行法上は12条5項で処理するのが最適と思うが
なかなか やってくれない行政が多いんだよね~
(愚痴)
【神戸市役所】
神戸市には「神戸市建築確認情報セルフ検索システム」という先進的なシステムがあり、建築計画概要書や建築確認台帳証明を短時間で発行してもらえる。
調査対象を地図上からの検索、情報一覧からの検索、適合通知番号からの検索を行い、建築物・昇降機・工作物の情報を得ることができる。
建築計画概要書の閲覧は昭和46年からで、台帳証明は昭和25年から閲覧できるが、データー化しているのは昭和32年以降。
神戸市建築調整課には、この検索システムのモニターが4台並んでいる。
神戸市のサイトには「周辺住民の協力のもとに違反建築物を未然に防止するとともに、併せて違反建築物の売買をも未然に防止しょうとするものとし、善意の買主を保護するために設けられた制度です。」とある。
営業目的や閲覧目的が不明な閲覧は規制すべきだと思うが、情報を公開することで抑止力が働くことは多い。
国土交通省のまとめによると、平成24年度における特殊建築物等の定期報告の状況は、特殊建築物等が71.2%、昇降機等が94.7%、排煙設備等の建築設備が68.3%ということです。
未だに特殊建築物の定期報告対象建築物の3割近くが定期報告の届け出をしていない状況なんですね。
既存建物の調査に行ってみると維持管理がきちんとできていない建物が多く、避難経路の確保、防火戸の開閉、非常用照明の点灯、非常用進入口の確保などに抵触事項が見受けられる。
これら火災時の人命にかかる問題が放置されている建物は多い。
報告のない物件での重大な事故は多く、今後適切な建築物ストック管理が求められる中で資格者の資質向上が必要になっていると国交省は指摘する。
特殊建築物定期報告の必要な建物の範囲の見直しとともに報告率の向上が重要な課題となっている。
東京都(都市整備局)で台帳記載事項証明書を発行できる建築物等の各年度は下記のようになっている。
1 建築物
(1) 昭和25年度~昭和39年度 : 全て(ただし、木造住宅の一部は区で建築確認)
(2) 昭和40年度~昭和49年度 : 昇降機(エレベーター又はエスカレーター)の付属する建物
(3) 昭和50年度~平成11年度 : 延床面積5,000平方メートル超で昇降機の付属する建物
(4) 平成12年度~ : 延床面積10,000平方メートル超の建物
※ 昭和25年~昭和40年までは敷地・建築・延床の各面積の記載はありません。
※ 風致地区は規模に関係なく都確認(平成11年度まで)。
2 昇降機
昭和35年~ : 建築物の条件と同じ
3 総合設計許可
昭和58年度~ : 建築物の条件と同じ
4 一団地認定
昭和62年~ : 建築物の条件と同じ
【以下については台帳がないため証明書の発行ができません。】
建築物
昭和25年度~昭和28年度/ 港区
昭和33年度/ 中央区・渋谷区・杉並区
昭和36年度 /千代田区
昭和37年度 /全区
昭和43年度~昭和44年度/ 台東区
昇降機
昭和40年度~昭和45年度 / 中央区・新宿区・文京区・台東区・墨田区・江東区・豊島区・北区・荒川区・足立区・葛飾区・江戸川区
問題は、「赤字」で示す欠落している年度の建物の場合。所有者が変わって確認申請書副本を紛失している場合で役所に行っても台帳がなく、果たして建築確認申請が提出されていたのか、検査済み証を取得しているのか公的な書類が見つからない場合にぶつかると困ってしまう。
それでも建設年度を確定する方法は幾つかあるのだが、確認申請を取得しているかどうかは誰も証明することができない。
下記は、葛飾区の場合だが、台帳そのものが昭和57年(1982年)以前のものは保存されていない。もともと建築確認受付台帳の保存年限は10年だけど、例外的に需要があるから保存されているだけと説明される。他の区でも似たようなもので欠落している年度がある。
建築確認台帳は昭和58年度以降に受付をしたものが保存されています。それ以前は資料がありません。 台帳証明の発行を希望される方は住宅地図など住居表示で場所の分かるものや、登記関係の資料など物件を特定できるものをお持ちください。 また、台帳証明の発行には300円の手数料と15分程度の時間がかかりますので、遅くとも午後4時45分までには申し込みの手続を済ませてください。 なお、電話による該当物件の有無や内容に関するお問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください
データーが無い、整備されていない状態でプログラムを作ったところで役には立たない。
「建築ストックの活用」という前に、無確認建築物、未検査建築物の実態を正確に掌握することが必要ではないのだろうか。
【名古屋市住宅都市局建築指導部建築審査課・審査統括係の資料】
名古屋市は、建築計画概要書は平成8年4月1日、計画通知は平成19年6月20日から保管しており、それ以前は廃棄されたようだ。
台帳記載事項証明は発行しておらず、「検査済証等処理経過の証明」などという名称の証明は、所有者以外は取得できない。建築主以外が請求する場合は、委任状と登記事項証明が必要。
台帳閲覧も出来ないのだから古い建物の場合、その建物が果たして建築確認申請を取得しているのか、工事完了検査済証を取得しているのか第三者は知る事も出来ない。
建築物は私的所有物でありながらも社会的存在だ。
違反建築物が事実上放置されている今日的状況では、個人情報保護の境界線はいかなるものが最適なのか・・・
前日に大阪市で昭和25年からの台帳を自由に閲覧できる経験をしてきただけに、名古屋市の閉鎖性には驚く。
【名古屋市・西庁舎】
【遵法性調査における調査対象物の選定・・・2 目的・階層】
遵法性調査を 依頼主が本音はどのような目的で使いたいかということにもよるが、
「どのくらいの建物が再建築できるか?」という目的があるとすると、容積率・建蔽率・斜線関係の集団規定チェックが中心になる。
又
「避難関係に不安がある」というと、防火区画・避難経路・東京なら都安全条例第8条区画。非常用照明・代用進入口等が中心になる。
その場合、どんな建物を優先順位に選択するかというと法第35条の特殊建築物、階数が3以上の建築物だろうか。
階数が3以上だと地下1階と地上1,2階で三層。
地上1,2,3階も三層
ということになるが、
地階が物販店・飲食店というのも要注意である。
竣工後に地階を店舗等に改装して営業しているが排煙設備がない店舗は多い。100㎡以上あっても昔の内装業者さんは、へっちゃらで用途変更など出していないものも多いし、建築基準法など念頭にない方も多かったようだ。
階数が3以上の建築物 では、
実に防火区画の考え方というか実態が多様で感心してしまう。
恐らく竣工後に店舗階段を作り、店舗を縦に広げたのではないかと思われるのだが、階段を作ることで増築や大規模修繕に該当するのではないか?という発想もないようで、ほとんど無届。
昔の中高層建築物で東京都安全条例第8条区画が取れているのが珍しいくらいだ。
まぁ やみくもに調査対象建築物にしても「調査の為の調査」になるから、優先順位をつけ調査件数を絞り込んで、より中身の濃い調査した方が良いということです。
天井を開口しただけでは、天井のふところがなく大梁の仕口部の溶接を調査することができなくて、柱周りの壁面にも開口を開けてもらった。
居住者がいるところでの調査だから、調査が終わったら速やかに復旧しないとならない。だから復旧しやすいように、かつ最低限の大きさで開口をあける。
20年前は木下地が一般的な時代だった。
復旧のビニールクロスの色目が合わなくて苦労する。
柱と梁の仕口部分。
20年前に施工したゼネコン独自の工法。
今回20年前に確認申請を取得した時点の構造計算書が紛失(最初から建築主に渡されていない?)していたので、このゼネコンさんに構造計算書を復元してもらった。
検査済証を取得していなかったことに責任を感じたのか・・・
【遵法性調査における調査対象物の選定・・・1 検査済証があるか?】
既存建築物の遵法性調査において調査対象が多数ある場合、どういう優先順位(プライオリティー・priority)で調査対象を決めるべきか。
まずは、その建物(あるいは入居しているビル)が、建築確認申請の確認済証を取得しているか、工事完了検査済証を取得しているかという事を調査し仕分けする必要がある。
このことは、遵法性調査に限らず、増築・用途変更・大規模修繕などの場合は、大前提である。
工事完了検査済証があれば既存不適格建築物であり、なければ違反建築物である。
弊社の全国的調査では、既存建築物の半数以上の建物が工事完了検査済証を取得していない違反建築物である。
H12年法改正以降はかなり改善されてきている。
「ストック活用」と言っても、違反建築物を増築・用途変更・大規模修繕することはできない。
違反建築物に違反的内装工事を積み上げている重度な物件もある。
検査済証のない建物の法適合調査を行い適合していれば既存不適格建築物として扱うという事例も増えてきたが、それらを認めていない。あるいは事実上厳しく制限している特定行政庁もあり、またその調査方法論も弊社でも毎回試行錯誤の最中である。
昨今は、賃貸借契約にあたってテナント側から検査済証の有無確認や用途変更確認申請の必要をオーナーに問うところが増えており、コンプライアンス意識が社会的に向上してきている。
今日では、検査済証の無い建物は不動産としての価値(価格)は著しく低いものになる。
豊島区内の鉄骨造3階建ての建物に増築するにあたり、既存建物が工事完了検査済証を取得してない為、実態的に法適合しているかの調査業務を受注したので調査に立ち会った。
内部スラブを撤去してもらい、X方向とY方向の地中梁のコア抜き・圧縮強度試験。と鉄筋の探傷調査。
コンクリートコア抜き90mmの状況
型枠程度なら支障なく抜いてしまうとの事。
調査担当者曰く、とっても綺麗なピースらしい。
ということで記念に写真に収めた。
ジャンカもなく細骨材と粗骨材のバランスが良いとの事。何万本もコア抜きをしていると抜いたピースの状態で判断できるらしい。
鉄骨のUT検査もしたのだが、溶接状態がとても良いとの事。
TVコマーシャルで有名な大手建設会社の施工だからか、鉄骨の工場での品質管理が良いように思える。
それにしても、違反箇所があるために工事完了検査を受けていない多くの建物があるなかで、建物の品質も良さそうだし違反箇所も見当たらないのに工事完了検査・検査済証を取得していないのは惜しい。
今回は、既存建物の法適合性確認と増築申請を一体で民間指定確認検査機関で受け入れてくれる事になった。
詳細はTAF倶楽部会員にのみ「続きを読む」で閲覧できる。
鎌倉市も公共施設の屋根を太陽光発電の設置場所として貸し出しを決め、事業者を募集している事を東京新聞が報じている。
行政側が建物の耐震性や景観などの設置条件を整理して募集しているの後戻りが無く良いと思う。
小中学校の屋根貸します 鎌倉市 太陽光発電の業者募集
2013年8月17日
再生可能エネルギーの導入促進に加え、災害時の非常用電源の確保や環境教育など多目的に役立てようと、鎌倉市は小中学校の屋根を太陽光発電設備の設置場所として貸し出すことを決め、事業者を募集している。
設置場所は市立小坂小、植木小、手広中、岩瀬中の4校の屋上で、面積は計4600平方メートル。貸出期間は発電事業が20年間だが、設備の撤去期間を含めて最長25年間としている。
使用料は、1平方メートル当たり年額で100円以上。条件として地震などの災害時に停電となった場合、市がこの設備で発電した電気を無償で使用できるほか、蓄電池の併設など効果的な利用や小中学生の環境教育に生かす方策の提案を求めている。
太陽光発電を目的に公共施設の屋根を貸す事業は、県内では県や横須賀市、小田原市が導入している。鎌倉市では、260カ所の公共施設を対象に貸し出しを検討したが、屋上が平らで十分な耐震性、風致地区などの建造物の高さ規制といった設置条件を満たす四校を選んだ。
すでに開催した説明会には9社が参加。9月12日に募集を締め切り、プロポーザル方式で選定し、10月中旬に事業社を決定。学校の冬休みか春休み期間中の設置工事を見込んでいる。
市環境部は「緑の多い古都・鎌倉のイメージと、環境にやさしいエコを重ねたPR効果で、積極的な応募を期待したい」と話している。 (斎藤裕仁)http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20130817/CK2013081702000144.html
既存建物の経年劣化診断は、幾つかの段階に分けて調査を行う。
建物の躯体や仕上材に係わる建築領域と空調・換気、給排水、電気等に関わる設備領域の二つに大別できる。
又、各診断部位には下記のようなものがある。
経済的耐用年数とは、建物がその使用目的に適応して、充分に使用目的を満足できうる年数をいい、物理的耐用年数とは異なる。 経済耐用年数は、法定耐用年数とは、まったく違った年数になる。
木造 軽量鉄骨 鉄骨 RC SRC
法定耐用年数 22年 19年 34年 47年 47年
経済耐用年数 20年 20年 35年 40年 40年
木造住宅で改築工事などして経済的耐用年数が延びていると判断される場合は、次のような考え方をするそうだ。
25年の経済的耐用年数が過ぎて、30年経っているにもかかわらず、改築等により今後も充分使用出来、経済的価値が認められる場合には、今後何年くらいの使用に耐えうるかを判断し、その年数を経過年数に加えて、全経済的耐用年数を求めることになる。
今後8年位の使用に充分耐え、経済的価値もあると判断された場合は、経済的残存耐用年数は8年と言うことになり、全経済的耐用年数は38年(30+8=38)となる。 経年による建物価格修正率は、8÷(30+8)=0.21と言うことになる。
ここで「今後何年ぐらいの使用に耐えれるか」という判断を、遵法性調査+劣化診断+修繕経費の算出などの調査を不動産鑑定士等と協力して行っている。
中古建物等を購入する場合や又融資をする場合は、遵法性調査+劣化診断+修繕経費(緊急及び長期)の算出等を組み合わせた調査を事前に行うのが賢明である。
例えば昨今では、建物の完了検査済証がない物件にはテナントが入居するのを躊躇したり、売買時に非常に不利になる。経年変化により建物の劣化が進んで耐用年数を下回るのではないかと危惧する建物もある。 歴史的・文化的に価値がある建物もあるが、それらの指標はあまり評価されてこなかった。
いずれにしても数字上の耐用年数ではなく、より実態に即した耐用年数の設定が望ましい。
地震PML(Probable Maximum Loss)とは、地震による「予想最大損失額」のことで、アメリカの火災保険で保険情報の一つとして生まれた概念。
日本では1966年(昭和41年)の家計地震保険の創設以来、総支払額限度額の設定根拠としてPMLが用いられており、保険制度運用上重要な指標となっている。
PMLは元来保険業界で使用されてきた概念だが、建設業界や不動産業界にも広がっている。
損害保険業界では、地震保険の引受業務や保有契約のポートフォリオのリスク管理にPMLが用いられている。PMLの値としては、国内の損害保険会社では再現期間500年に相当する予想損失が用いられている。 海外の損害保険会社では再現期間200年または250年に相当する予想損失が用いられる場合もある。
建設業界で用いられるPMLは、「再現期間475年相当の地震動の大きさにおける90%非超過確率に相当する物的損失額の再調達価格に対する割合」が一般的に用いられている。
不動産業界で用いられるPMLは、「対象施設あるいは施設群に対し最大の損失をもたらす再現期間475年相当の地震が発生し、その場合の90%タイル非超過確率に相当する物的損失額の再調達価格に対する割合」か、或いは、「リスクカーブから読取った再現期間475年における予想損失額」の双方が用いられている。
一般には、建物の耐震性が高いほどPML値は小さいと判断されている。10%以下では「軽度な損害で耐震性には問題なし」とみなされる。
15%または20%を超えた場合は、「地震リスクを軽減する措置を講じる必要がある」と判断される。(ただし、耐震性が低い建物でも、地震危険度が低い場合にはPML値も小さくなる。)
不動産の証券化では、PMLが20%を超えると融資にも影響がでてくる。格付けの低下や銀行などの金融機関から融資を受けることが困難になるため、耐震補強工事や地震保険への加入が検討される。
【具体例】
現時点で新築すると100億円かかる建物があったと仮定すると、その建物の存在する地点に対して予想される最大規模の地震が起きたときにその建物の補修に必要な費用が最大10億円かかると予想されるときには、その建物の地震PMLは10%(最大損失額10億円÷100億円)となる。
【計算方法】
建築物の築年、構造、用途を設計図書と実地調査により調べ、また過去起きた地震の震度、震源の深さ、地盤、断層の位置を調査した上で独自の計算方法に基づき算出する。
【地震PMLレポートの形式】
通常はエンジニアリングレポート(建物診断レポート)に包含される形で地震PMLレポートが提出されることが多く、特に統一されたものはないが、下記の構成となっていることが多い。
所在、建物の概要/算出PML値/周辺で起きた過去の地震とその地点で予想される最大震度/周辺の地盤の状況/周辺の断層、活断層の状況/その他(付属資料など)
既存建築物の増築・用途変更確認申請をする際には、既存不適格調書等の添付が必要とされているが、建築主が保有している書類・図面。また確認申請・副本・検査済証の有無等によって必要な調査の組み合わせが変わってくる。
下記の表は、筆者がそれぞれのケース毎に必要調査を整理したものである。個別のケースでは、さらに必要書類・作成図面等が変わってくる。
*7/12 上図の一部を修正し差し替えました。