エキスパンションジョイントのクリアランス

既存建物にエキスパンションジョイントを設置して増築する建物で、エキスパンションジョイントのクリアランス(有効な隙間)が問題になりました。

隙間(クリアランス)は設計者が変位量の大きさにより決定します。

参考文献としては、ちょっと古いですが日本建築センター発行の「構造計算指針・同解説1991年版」(現在は、「2015年建築物の構造関係技術基準解説書」に統合)に「相互の建築物の一次設計用地震力(建築基準法施行令第88条第1項に規定する地震力)による変形量の和の2倍程度以上を推奨」と記載されています。

また1995年10月「阪神・淡路大震災における建築物の被害状況を踏まえた建築物耐震基準・設計の解説」では、エキスパンションジョイントのクリアランスは、大地震時にも建物相互が衝突しないように、構造計算により算出し設定することが望ましい」と記載されています。

施行令第82条の2【層間変形角】には、「建築物の地上部分については、第88条第1項に規定する地震力によって各階の高さに対する割合が1/200(地震力による構造耐力上主要な部分の変形によって特定建築物の部分に著しい損傷が生ずるおそれのない場合にあっては、1/120)以内であることを確かめなければならない」とあります。

なので上記による略算式としては、クリアランス=エキスパンションジョイントの地上高さ×1/200×2(双方の建物が地震で変形する為)×2倍となります。

10mだと 10000/100×2=200mm

20mだと 20000/100×2=400mm

30mだと 30000/100×2=600mm

という結果になります。略算式だと3階建て程度で200mmのクリアランスが必要ということになります。

問題になった案件は構造計算ルート1-1で、軒高9m以下鉄骨造3階の増築です。

層間変形角の計算は不要なのですが、X・Y方向の層間変形角を算出したところX方向で1/500、Y方向で1/1400でした。パラペット高さを9600mmとしてX方向の変位量は19.2mm、Y方向の変位量は6.9mmとなります。以上により一般的なクリアランスである50mmに設定しました。

既存建物に増築する場合のエキスパンションジョイントのクリアランスは、低層の建物は略算式によらず 実際の変位量、層間変形角から判断して決定した方が良いと思います。

平成28年熊本地震による建築物等被害調査報告

国土交通省国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の平成28年(2016年)熊本地震による継続的な建築物等被害調査報告がとても興味深い。

国総研

第一次調査報告(その1)4月15日(本震前)、第一次調査報告(その2)4月16日(本震後)も読んでいたが、5月2日に発表された第二次調査報告(速報)は、熊本市内20棟、宇土市内3棟、宇城市内1棟の鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物が24棟調査されている。

一次調査(その2)で、益城町役場庁舎(RC3階建て)は、4/15には外観上無被害であったが、4/16には庁舎正面の搭状部分の頂部、中間部分の損傷がみられ、基礎底盤と周辺地盤に隙間が拡大。渡り廊下も損傷している。と報告されていたが、これまでは木造建築物の被害報告が大半だった。

今回の第二次報告書では特殊建築物(RC造・SRC造)のまとまった件数の学術的な視点での調査報告がなされている。

新耐震基準以降に建設された建築物や耐震補強がなされた建築物で、構造被害が甚大であった建築物を注視したい。

構造だけでなく各分野の多角的な詳細調査を行い、被害要因の分析がなされることがまたれる。

RC造のスパン計画

つらつらと昨年度の一級建築士設計製図試験の課題をみていた。スパン割りは、7m×7m=49㎡とか6m×8m=48㎡が標準のようだ。スラブ厚は200mm程度にしている。

設計製図の課題の場合は、建築面積から単位グリッド(スパン割り)の目安をつけ、敷地の形状・敷地ゾーニング計画から決定する。設計製図の場合、均等スパンが基本だろうから、7m×7mあるいは6m×8m等の、どのスパンが適正なのか判断しないとならないだろう。

私が一級建築士を受けた1982年今から34年前は6m×6m=36㎡、スラブ厚120mmだったように記憶している。戦前昭和12年頃のオフィスビルの図面をみていたらスパン割りは5.4m×5.4m=29㎡でスラブ厚120mmだった。

これにはコンクリート強度も関係があって、現在はFc24N/m㎡が標準だが、戦前はFc13.5N/m㎡。80年間の建築技術の進歩を感じる。

最近読んだJSCA(日本建築構造技術者協会)の資料で、「梁せい-スパン-コスト」に関するものを読んだ。これはエクスナレッジ刊「スパッとわかる建築構造」に書かれている。

RC造の大梁のせい、スパンを変化させ、適正断面を検討したもので、RC5階建ての4階の大梁を想定していた。6m×8mの場合で大梁のせいを変化させたとき、梁せいを小さくすると鉄筋量が増えコストアップにつながり、梁せいがL/11~L/10の範囲ではコストはさほど変わらないようだ。

久しぶりに一級建築士の設計製図試験の課題をながめてみたが、要求図面+面積表+計画の要点について記載しないとならなくなっており、より実務的というか、かなり幅広い建築知識が必要なものになつていると感じた。設備計画などは、設備設計一級建築士の試験を思い出した。

「同潤会上野下アパート材料調査報告」(日本建築学会)

2013年に解体された最後の同潤会アパートの解体前の耐久性調査の報告書「同潤会上野下アパート材料調査報告」(2015年3月、日本建築学会・材料施工本委員会)を読んだ。

この同潤会上野下アパートは、竣工が1929年(昭和4年)である。

ここは建替事業でザ・パークハウス上野(三菱地所レジデンス)として生まれ変わるのだが、もう完成して入居開始が始まっただろうか。まあ 新しい建物にはあまり関心が無いので、この報告書についてだけ書いておこう。

今、戦前の鉄筋コンクリート建築物のコンバージョン・プロジェクトに参加しているので、どうしてもその頃の建築物や法令に触れることが多い。

この調査報告書では、コンクリート採取数が1号館で38本、2号館で31本 合計69本と4階建て延べ床面積2,093.99㎡(1号館556.80㎡、2号館1,537.19㎡)と約30㎡/1本となり採取コアが多い。現在の耐震診断の基準である3本/階から見ると約3倍の数となっている。

このコンクリートコアの圧縮強度試験は、柱・梁・壁・床と部位別と全体が示されていて全体で平均圧縮強度21N/m㎡という結果が報告されている。ただし床データを除外した場合には平均が19.5N/m㎡、標準偏差6.1N/m㎡となっている。

戦前の建物の構造部位別の調査報告というのが少ない。「同潤会アパートの施工技術に関する調査研究」(古賀一八他、2004年)で同潤会大塚女子(1930年)、同潤会青山(1927年)、同潤会江戸川(1934年)では、平均圧縮強度の部位別の内訳が不明なため強度や標準偏差の単純比較ができない。

今、関わっているプロジェクトでも数年前に耐震診断調査が終わって構造評定を取得している建物なのだが、コア採取が内部壁だけなので良くわからないことが多い。

ともあれ、学術調査でこれだけ念入りな調査を行い、調査報告書が世にでてくることは大変ありがたいことだ。

「サクッとわかるヤマベの木構造の極意」建築知識8月号

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執筆者の一人から案内があり、Amazonから取り寄せて読んでみた。

とても解りやすく、豊富なイラスト・写真で木構造を巡る問題を説明している。

さすが山辺構造設計事務所

けして初心者向けの本ではない。私が興味深く読んだのは「不整形の建物の場合の構造計画」「スラブ状ベタ基礎の問題点」「壁量計算用の床面積の算定」等。

木造の設計・耐震診断・調査・補強方法まで、木造住宅に携わる人にとっては必需品のような本に仕上がっている。

最近、木造2階建て住宅の許容応力度計算の計算書をペアチェツクする機会があったが、小屋裏物置などはH12年国交省告示第1351号で規定されているにも関わらず、まったく指摘がされてなく壁量算定が過小評価されていた。建築確認許可を取得した時点の指摘事項は、不整合箇所の指摘と是正のみで、最近の審査は、どうやら間違い探しに終始しているような傾向が見られる。

かって四号建築物(三号も)の建築確認申請の審査をしていたことがあるが、木造住宅を設計している人達の技術が低下しているなぁと感じたものだ。

意匠設計者が木造伏図も書けずプレカット屋さんに全面依存し、 筋違計算も構造事務所に依頼すると聞いて 、確認申請に筋違計算書も伏図も不必要となり、「書かないから」「書けない」となってしまったのだろうか。

生産現場と乖離して図面だけ書いていると歳をとっても本当の事は何も知らない資格者(一級・二級建築士)ではどうなんだろうか。

久しぶりに「建築知識」を買ってみたが、イラスト・画像満載でリアルにわかった 気がするだけの本に進んでいるのではと思った。

まぁ こんなことを書いても年寄りの冷や水になりつつあるが・・・

桜×鯰3 構造見学会

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桜設計集団と鯰組の設計施工標準化プロジェクトによる木造住宅の構造見学会に行ってきた。

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奈良県吉野で天然乾燥した杉の柱・梁とパネル床(国産杉直交三層・Jパネル)の現し

この床のJパネルは、準耐火構造の床に現しで使えるということで以前カタログと見本を(協)レングスさんからいただいていた。

吉野杉もJパネルも実際施工された現場を見ると きれいだなぁ 良いなあと思った。

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聞くところによると準防火地域だそうだが、外壁は落とし込み板壁で(杉板30厚+24厚)ガリバリウム鋼板壁で、ガルバリウム下地に石膏ボードを用いない防火構造となっているとのこと。

軒裏は、垂木・面戸板・野地板12厚現しで準耐火構造軒裏になっているそうだ。

所用の途中に しかも路駐して見学をさせてもらったので、ほんのわずかな時間しか滞在できなかった。

後で知ったが鯰組の岸本さんは、私が学生時代から幾度か叱咤激励をいただいていた真木建設の故田中文雄さんの御弟子さんらしい。挨拶してくればよかった。

 

四号建築物における準耐火構造の層間変形角の取扱い

防火地域内に建築基準法第6条第1項第4号建築物(木造住宅)を建築する場合、構造を準耐火構造にすることによって、100m2未満であれば建築可能となる。

木造2階建てで準耐火建築物(イ準耐)とする場合の層間変形角の確認はどうするか。

層間変形角の確認要求は施行令109条の2の2で規定されており、令第10条の確認特例の条文には該当しない。

令109条の2の2

法2条第九号の三イに該当する建築物の地上部分の層間変形角は1/150以内でなければならない。ただし、主要構造部が防火上有害な変形、き裂その他の損傷を生じないことが計算又は実験によって確かめられた場合においては、この限りではない。

確認申請の4号特例は、施行令第46条について免除されてはいない。

この事について特定行政庁や指定確認検査機関では、どのような取扱いがされているだろうか。

  1. 層間変形角の計算書を添付させる。
  2. 必要壁量の1.25倍を満たしている壁量計算書の添付を求める。
  3. 必要壁量の1.25倍を満たしている旨明記させ、構造審査は行わない。

「2」か「3」が適用される場合が多い。

準耐火建築物の「防火設計指針(平成5年6月25日)」p73では、木造軸組工法の場合として「一般的に層間変形角が1/120 と1/150程度の差であれば・・・・・木造軸組工法については、施行令46条に定める必要壁量に1.25を乗じた数値により設計すればよい。」と記載されている。

検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-東京都

先日 都内某区役所に検査済証未取得の既存建築物の一体増築(EXJにより構造的に別建物でない)の相談に行ったときの話し。

建築審査課構造担当係との打合せで「建築構造設計指針2010」監修・東京都建築構造行政連絡会議、(社)東京都建築士事務所協会構造技術専門委員会(所謂オレンジ本)の「第12章第7項 増築等に関する審査要領」に沿って構造関係の調査・検査したものを審査しようということになった。

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【覚書】A級ガス圧接継手

A級継手とは、元々はカプラーなどを用いた機械式継手の性能分類(SA級、A級、B級、C級の4種類) の一つ。

機械式継手の場合は、応力の伝達機構がガス圧接継手や溶接継手と異なり、引張強度は母材破断であるが、すべりが生じる工法、繰返し試験を行うとすべりが増加する工法、降伏点を過ぎると抜け出す工法などがあるため、SA級、A級、B級、C級の4段階に分類されています。

A級継手は、「強度と剛性に関しては母材並であるが、その他に関しては母材よりもやや劣る継手」と定義されています。

一方、ガス圧接継手については、強度、剛性はもちろん、付着生状に関してもほぼ母材と同等で、また、一方向繰返し試験に加えて塑性域正負繰返し試験を行い、継手単体としてはSA級継手の性能を有することを確認しています。
しかし、SA級継手はどの位置でも無条件で使用できる継手と規定されているため、使用規定上、ガス圧接継手はA級継手としました。

なお、A級継手の規定はガス圧接継手、溶接継手、機械式継手などすべての継手に対する共通の規定です。溶接継手や機械式継手も現在開発されている継手の大半がA級継手です。

A級ガス圧接継手の施工範囲について
(社)日本圧接協会では、前述の「ガス圧接継手性能判定基準」に基づき、ガス圧接継手について各種の加力実験(弾塑性域一方向繰返し実験、曲げ試験、断面マクロ試験)を行い、A級継手の性能を有することを確認しました。その結果、実験的に確認を行った範囲についてA級継手の施工が可能と規定しました。


img062圧接方法 :手動ガス圧接、熱間押抜ガス圧接、自動ガス圧接
鋼種及び径 : SD345(D25~D51)、SD390(D29~D41)、SD490(D29~D41)
異鋼種継手  : SD345とSD390の継手及びSD390とSD490の継手
異径継手: 鉄筋径の差4mm以下の継手ただし、高強度細径と低強度太径の継手は除く。
節の形状 :竹節十竹節、竹節十ねじ節、ねじ節十ねじ節
圧接施工会社: (社)日本圧接協会が認定したA級継手圧接施工会社
技量資格者: 手動ガス圧接3種・4種、熱間押抜ガス圧接3種・4種、自動ガス圧接3種・4種
施工要領 :A級継手圧接施工会社が作成したA級継手圧接施工要領書に拠る。

(出典:公益社団法人 日本鉄筋継手協会)

 

平成12年建設省告示第1463号によって鉄筋継手の構造方法が定められた。

本告示のただし書きに従い、(社)日本圧接協会(現:公益社団法人 日本鉄筋継手協会)では鉄筋のガス圧接継手を対象に、溶接継手や機械式継手など特殊継手を対象とした継手性能判定基準に準じた性能評価試験を実施し、継手性能の確認を行った。

これにより、これまで鉄筋のガス圧接継手は応力の最も小さい部分にのみ適用されていたが、以後は、応力の最も小さい部分以外にも使用できる法的な道筋が拓かれた。

 

H12建告1463 建築基準法に基づく告示
鉄筋の継手の構造方法を定める件
(平成12年5月31日建設省告示第1463号)

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第73条第2項ただし書(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定に基づき、鉄筋の継手の構造方法を次のように定める。

1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第73条第2項本文(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定を適用しない鉄筋の継手は、構造部材における引張力の最も小さい部分に設ける圧接継手、溶接継手及び機械式継手で、それぞれ次項から第4項までの規定による構造方法を用いるものとする。ただし、一方向及び繰り返し加力実験によって耐力、靭(じん)性及び付着に関する性能が継手を行う鉄筋と同等以上であることが確認された場合においては、次項から第4項までの規定による構造方法によらないことができる。

2 圧接継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 圧接部の膨らみの直径は主筋等の径の1.4倍以上とし、かつ、その長さを主筋等の径の1.1倍以上とすること。

二 圧接部の膨らみにおける圧接面のずれは主筋等の径の1/4以下とし、かつ、鉄筋中心軸の偏心量は、主筋等の径の1/5以下とすること。

三 圧接部は、強度に影響を及ぼす折れ曲がり、焼き割れ、へこみ、垂れ下がり及び内部欠陥がないものとすること。

3 溶接継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 溶接継手は突合せ溶接とし、裏当て材として鋼材又は鋼管等を用いた溶接とすること。ただし、径が25mm以下の主筋等の場合にあっては、重ねアーク溶接継手とすることができる。

二 溶接継手の溶接部は、割れ、内部欠陥等の構造耐力上支障のある欠陥がないものとすること。

三 主筋等を溶接する場合にあっては、溶接される棒鋼の降伏点及び引張強さの性能以上の性能を有する溶接材料を使用すること。

4 機械式継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 カップラー等の接合部分は、構造耐力上支障のある滑りを生じないように固定したものとし、継手を設ける主筋等の降伏点に基づき求めた耐力以上の耐力を有するものとすること。ただし、引張力の最も小さな位置に設けられない場合にあっては、当該耐力の1.35倍以上の耐力又は主筋等の引張強さに基づき求めた耐力以上の耐力を有するものとしなければならない。

二 モルタル、グラウト材その他これに類するものを用いて接合部分を固定する場合にあっては、当該材料の強度を1mm2につき50N以上とすること。

三 ナットを用いたトルクの導入によって接合部分を固定する場合にあっては、次の式によって計算した数値以上のトルクの数値とすること。この場合において、単位面積当たりの導入軸力は、1mm2につき30Nを下回ってはならない。

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