虎屋菓寮 京都一条店 -1

 京都出張。京都駅への帰り路に送ってくれた車に頼み「虎屋菓寮 京都一條店」に寄ってもらった。

 車を道に停めてもらい、かけあしで写真を撮ってきたので、お茶して内部や庭をゆっくり見る時間がなかった。

 設計は内藤廣建築設計事務所

5月13日夕刻近くに折からの雨も上がった。

「浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟」飯田結太著

 効率度外視の「売らない」経営が、廃業寸前の老舗を人気店に変えた。多くのメディアでも紹介されている浅草合羽橋の料理道具専門店「飯田屋」の本。

 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成している。


 廃業の危機に瀕していた浅草かっぱ橋の老舗は、なぜ行列の絶えない人気店へと変身できたのか 小売店再生への道、ヒントが詰まっている。

 試行錯誤、七転八倒の時を乗り越えて、自分の会社なりの事業システムを確立したことに敬意を表したい。

 本を読み、サイトを見ると何気に楽しそうな店舗だ。定番アイテムからマニアックな逸品まで楽しい料理道具が所狭しと並びんでいる。「プロのシェフから家庭の主婦まで世界中の料理人のためのお店」と謳う。

https://kappa-iida.com

 何だか昔の東急ハンズを思い出した。行くと新しい発見があり、オタクのような商品に詳しい店員さんがいて、買い物に行くことが楽しかった。

 建築的にも浜野安広さんが関わっていていたのでスキップフロアとか、新しい仕掛けが興味深かった。若い人は、浜野安広さんのこと知らないかも知れないが、私の時代では商業建築界における「あこがれの人」だった。

 東急ハンズも在庫管理、効率、人件費削減でつまらない店になり、東急不動産が撤退し、今や社名も「ハンズ」。

 中々、使ってみて気に入ったフライパンがないので今度 合羽橋に買いに行こうと妻と話していた。

ゼンリン3D地図ソリューション

(株)ゼンリンさんに3D地図データのデモンストレーションをしてもらった。

 3D地図データには、「3D都市モデルデータ」「広域3次元モデルデータ」「DXFデータ」がある。詳細は、下記URLのゼンリンのサイトを見てください。

https://www.zenrin.co.jp/product/category/gis/contents/3d/index.html

 自分が設計している建築物の単体とかに、とかく囚われがちだが。ちょっと規模が大きくなり、周りの環境に目配せすると、気になる事、気にしなければならない事が多くなる。完成イメージは、クライアント、関係者のみならず、近隣住民、行政との共有は欠かせない。

 リアルモデルは、主要交差点付近に今のところ限定されている。ライトモデルが弊社が利用しようとしているCGへの挿入には適切だが、周囲の建物をホワイトキューブにも出来るとの事。

 弊社が利用したい地域の実際の3D地図データを見せてもらった。今は高額だし、ある程度の規模で設計報酬等を見込めないと3D地図データの活用は難しいかもしれない。しかし大規模プロジェクト、設計・施工の大手組織に最新技術を独占させておくわけにもいかない。

 3D地図データ活用に踏み切ろう。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-9

【免責・制限事項】
 ここでは、ガイドライン調査者である指定確認検査機関の免責事項について記載している。

 同様に、既存建築物の状況調査には限定、限界があるので、依頼者より委任された代理者(設計者等)も調査にあたっての免責・制限事項を書式にして依頼者に交付しておくのが賢明である。(参考書式:非公開)

 例えば、鉄筋コンクリート造の詳細調査を行う中でコンクリート強度が低く適合性が確認できない。あるいは鉄骨造でダイヤフラム部のUT調査して溶接が不合格である場合等は、事前に想定できない補強若しくは補修工事の必要性が生じることがある。それらの追加調査、補強工事の発生により費用対効果から調査そのものが中断する場合がある。

 そうした場合等も想定して、後日債務不履行等のトラブルに発展しないような文章の作成、依頼者への交付が必要かと思う。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-8

【事前相談】

 建築基準法適合状況調査には、代理者による調査結果に基づき建築基準法の取扱いについて事前に特定行政庁やガイドライン調査機関と充分な協議が必要だが、そもそも指定確認検査機関には、建築基準法に対する裁量権はなく、指定確認検査機関に持ち込んでも特定行政庁との二重打合せが必要になる場合も多くある。その為、打合せ、協議に要する時間は、代理者(設計者等)にとって過重負担となる傾向がある。

 特定行政庁に相談した場合、建築専門職員(とりわけ構造担当者)がいないところもあり、検査済み証の無い建物については相談に応じてくれない。相談しても判断できない。あるいは敬遠される場合もあり、特定行政庁によって対応が異なる。

 実際にガイドライン調査を行ってみると法的な審査能力と工学的な技術審査能力が必要な局面に遭遇する。

 ガイドライン調査機関には、資格者は多くても技術者は少ない現状の為、専任者がいる機関は少なく総合的な判断ができない場合があるので、ガイドライン調査機関の力量を事前に見極めておく必要がある。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-7

【基本的な考え方】

 ガイドライン調査策定の主目的は「検査済証がないという理由をもって、その後の増築等の手続きに進めないようなケースにおいて、効率的かつ実効性ある形で当該建築物の法適合状況を調査するための一つの方法としてとりまとめたものである」又「検査済証としてみなされるものではない」と記載されている。

 ガイドライン調査報告書は完了検査済証に代わるものではない。仮に是正工事の必要があり、それらを行った場合でも是正工事に過ぎず、新規の建築確認申請ではないので検査済証は交付されることはない。


 建築基準法上の遵法性を完全に確保するためには、何らかの確認申請をして工事を行い完了検査後に工事完了検査済証の交付を受ける必要がある。そうすることによって既存部分を含めた全体を法適合化できる。

「僕たちはもう帰りたい」さわぐちけいすけ著

 若い世代にとって「働く」ことは、喜びでも生き甲斐でもないと受け止めている人が多いのかも知れない。この漫画を読んでそう思った。

 「全日本もう帰りたい協会」というツイッターアカウントがある。フォロワー数47万人を超えている。

 ここでは働く人々の「もう帰りたい」という気持ちが日々つぶやかれている。こんなにも多くの人が帰りたいと願っているのに、なぜ帰れないのか?

 例えば

・なぜ無意味な残業に付き合わされる?
・「板挟み」状態をどうすればいい?
・上司の無茶振りにどうやって対処する?
・なぜうちの会社は効率が悪いんだ?
・妻でも母でも社員でもない私の時間が欲しい
・何を最優先にすればいいんだろう?
・自分の居場所は本当にここなのだろうか?

「もう帰りたい」と願う理由も、年齢も、性別も、立場によって全く異なる。これから始まるのはそんな人々のお話の漫画。この本も兵庫県明石市の出版社・ライツ社の本だけど、着眼点が面白いと思った。

 確かに私の知る限りでも日本の会社は、生産効率が悪いと思う。無駄な会議も多いし、それに対する資料作りにも相当な時間が費やされる。その時間を費やした資料の分析をするのならともかく、会議は上司の訓話(何度も聞いた昔話)に終始したり。定時で退社するのは、はばかれる環境。建築設計業界なんかブラック×3ぐらいの環境だったけど「帰りたい」と思ったことはあまりなかった。会社に泊まり込むなんて結構あったし、仕事をすればするほど早く技術を習得できると思っていた。私にとって「働くこと」は生活の糧を得る手段であったが、同時に「喜び」であり「生き甲斐」だった。

 時代は変わってきているのだな・・・

 

「売上を減らそう」佰食屋・中村朱美 著

京都の国産牛ステーキ丼専門店・佰食屋。

「働き方を極限まで絞ることで売上を上げているお店」「働き方の形は自分の人生に照らし合わせて決めることができる」つまり、どれだけ儲かったとしても、「これ以上は売らない」「これ以上は働かない」あらかじめ決めた業務量を、時間内でしっかりこなし、最大限の成果を挙げる。そして残りの時間(人生)を自分の好きなように使う。

2019年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」大賞(最優秀賞)を受賞した中村朱美さんの本。1984年生まれとあるから、まだ30代。男社会にどっぷり浸かり、サラリーマン、零細企業の経営を経験してきた自分にとってコペルニクス的視点。中村さんは、凄い経営者だと思った。

女性目線、子供・家庭を持つお母さん目線での働き方改革、経営システムだと感じた。

「100食という「制約」が生んだ5つのメリット」を挙げている。

メリット1「早く帰れる」退勤時間は夕方17時台

メリット2「フードロスほぼゼロ化」で経費削減

メリット3「経営が究極に簡単になる」カぎは圧倒的な商品力

メリット4「どんな人も即戦力になる」やる気に溢れている人なんていらない

メリット5「売上至上主義からの解放」よりやさしい働き方へ

とても参考になった。自社の商品力を磨き上げる事。8時間働けば暮らせるようにする。固定経費を削減する。プロジェクトの設計チームを編成する時は多様性を基本として考えや感覚が設計に反映できるようにする。self-reflection(内省)する時間を確保して勉強や読書、WEB更新にあてる。 そんなことを自社の経営で考えた。

この本の出版社ライツ社は、兵庫県明石市にある。出版不況が叫ばれる中、快進撃を続け社員は6人と小規模ながら、独創的な企画でヒット本を連発し、重版率は何と7割を記録するという。2016年創業。writes.right.light「書く力で、まっすぐに、照らす」を合言葉に、ジャンルにとらわれないでないで本をつくっている。ヒットを生み出すアイデアはどこにあるのだろうか。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-6

【建築確認記載台帳証明(行政によって名称は多少異なる)】

建築確認や検査が行われた建築物であるかどうかについては、建築確認済証や検査済証により確認することができる。しかし建築物が建てられてから相当の年数が経過する中で建築確認済証や検査済証を紛失する場合もある。又不動産が流動化し図書・図面が承継しない場合もある。既存建物の図書・図面の保管が軽視されている場合も散見する。

 このため特定行政庁では、あらかじめ調べた建築確認済証や検査済証の交付年月日・番号が行政に現存する台帳に記載されていることを、台帳記載事項証明書として証明するサービスを行っている。(建築確認済証や検査済証を再発行するものではない)

a 検査済証交付年月日は、検査の状況によって台帳に記載がない場合がある。
b 台帳が現存していないため証明書が発行できない場合がある。


この建築確認記載台帳証明は確認申請副本等があり、確認年月日、確認番号、敷地の地名地番、建築主の住所・氏名が判る場合は取得がたやすいが、それらが判らない場合は取得が困難になる場合があるので、事前に次の事項について調べて行かないと成果を得られない。
・ 建築当時の地名地番(住居表示ではない。)
・ 建築当時の建築主名(現在の所有者と同一でない場合がある。)
・ 建築確認や検査済などの年月日・番号(区の受付年月日・番号ではない。)
・ 上記のほかに建築年月日、敷地・建築・延べ面積、階数(何階建てか)、工事種別、構造、用途を示せば、物件の特定がしやすくなる。

 台帳そのものの閲覧が可能なところ(大阪市・現在は未確認)、台帳証明の発行には現在所有者の委任状が必要なところ(愛知県内、岐阜県内、名古屋市、藤沢市等)、建築計画概要書の写しには情報公開請求が必要なところ(松山市、市川市等)様々。又記載台帳証明の発行そのものを行っていないところ(埼玉県内の特定行政庁等)もある。

 総じて昭和46年以前の台帳証明を取得するのは困難で、昭和20年代、昭和30年代の台帳証明は、さらに取得が困難であると思った方が良い。古い年代のものは、台帳そのものに記載されている事項が少なく、物件の特定が難しいですし、又行政によっては欠落している年度がある。

 又、昇降機や工作物がある場合には、建築とは別個に請求する事が必要。さらに中間検査が必要だった建物の場合、中間検査を受けているかどうか確認できる場合がある。

【串刺し的に台帳証明を取得するのは困難】

 仮に新築時の建築確認の台帳証明が取得できても、その建物が増築したり、用途変更した時の履歴が判るような台帳証明や建築計画概要書を取得するのには中々難しいのが現状です。

 行政は建築確認台帳を年度別に整理してあることが多いので、増築や用途変更の時期を想定しないと探し出すのは難しい。

 また行政の窓口職員の資質、請求時間帯なども影響して取得に相当な根気が必要となることがある。

 古い建築確認申請台帳を閲覧できる大阪市等(現在は未確認)の場合を除いて申請者は、直接台帳を調べられない。

 その中で、地図上の建物をクリックするだけで、その建物の新築、増築、用途変更などの申請履歴が「串刺し」でわかる神戸市の「建築確認情報セルフ検索システム」に10年程前に出会った時は感動した。最近ではこういうシステムが導入された行政も増えてきたが、予算の関係で中々整備が進まないようだ。

【神戸市建築確認情報検索システム】

【地番や所有者は変わっていても建物の位置は変わらない】

 町名地番の整理によって建築確認申請提出時と現在の地番とが異なっている場合がある。まず現在の地番を確認した後で、登記情報を取得するようにしている。

 又、不動産が流動化する現代では、建物の所有者が新築時からずっと変わらないとは限りない。現在の所有者と建築確認申請時の所有者は一緒なのか、登記情報を取得してみることも必要となる。場合によっては閉鎖謄本も取得するのが必要となる場合もある。

 尚、土地の地番は判明しても家屋番号が不明で登記情報を取得できない場合があるが、土地の登記情報を取得する時に「共同担保目録」も同時請求すると家屋番号が判明する。

【登記情報を取ってみる】

 今は、民事法務協会というところがインターネットで各種登記情報を取得できる有料登記情報提供サービスを行っている。他にゼンリン等の民間会社でブルーマップ(住宅地図に地番を重ね合わせたもの)のインターネット取得サービス(有料)をしているところもある。勿論当該地の法務局に足を延ばして登記情報を取得することもできる。

【民亊法務協会・登記情報提供サービス】

https://www1.touki.or.jp

 登記情報で建物の面積算定図を取得して新築時=登記時面積算定時を比較し新築時には屋上の増築部分が含まれておらず、後から無届で増築したことなど工事履歴がわかったことがある。

 こうしたことからガイドライン調査では、登記情報は任意書類の扱いになっているが、建物の工事履歴を調べる点や、住宅金融公庫の融資住宅であるかないかの確認、竣工時期を推定するうえでも登記情報を事前に取得することは必須だと思う。

 後に触れるが、既存建築物が住宅金融公庫融資住宅であったことが判明した場合、ガイドライン調査では、構造規定の調査は除外することが可能とな場合もある。(建て方時の中間検査に合格していないと融資実行されなかった。昔は特定行政庁で審査・検査代理)

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-5


これまで、検査済証のない建築物は違反建築物なのか、既存不適格建築物なのか判断が難しく、調査に多大な時間と費用を要する場合があることから、結果として増改築や用途変更を実現できないケースが見受けられた。
また、国土交通省に設けられた「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」による報告書(H25年6月)において、「検査済証のない中古住宅に係る法適合確認手続きの検討」として、検査済証のない中古住宅が、建築や増改築当時の建築基準関係規定に適合していたかどうかを民間機関等が証明する仕組みの創設の検討が指摘されていた。



「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-4

【特定行政庁(建築主事)・指定確認検査機関による検査済証交付件数・完了検査率の推移】

上記の図は、国交省が発表している1998年(平成10年)から2012年(平成24年)にかけての完了検査率の推移を示すグラフ。平成10年当時はは、完了検査率が約40%だったが現在は約90%になっている。

 築後20年から30年ぐらいの建築物の増改築したいという希望が比較的多く、それらの半数以上は検査済証が無い建物であり、検査済証の無い建築物を増改築等する事は増加すると思われるので、建築士の方は一部の専門家任せにせず本項の「ガイドライン調査」に習熟しておく必要があると思う。

 特定行政庁に検査済証のない建物の増改築等の建築確認申請を出す場合には、特定行政庁により定められ調査方法や書式により、法12条5項報告書として提出する場合や建築確申請の付帯図書としている場合等があるが、特定行政庁に検査済証のない建物の増築等確認申請を提出する場合については別稿として記載する。 

 筆者が2014年に、全国500数十件の特殊建築物の建築確認記載台帳証明を取得して整理したところ完了検査率=検査済み証がある建物は、大規模な建物は検査済取得率が高く、中小規模の建物になると取得率が低くなり、住宅になると極めて低くなるという傾向が見られる。

 最も確認検査数の多い旧建築基準法6条4号建築物(木造2階建て・一戸建て住宅等)については完了検査の義務はあっても使用制限がないことから事実上の無検査が横行していた。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-3

【「ガイドライン調査」策定に至るまでの経過】

1998年(平成10年)に建築基準法制定当時から続いた建築主事による確認・検査という執行体制が見直され、民間機関による建築確認・検査制度が導入されるまで、既存建築物の増築、用途変更等は、建築主事の裁量権のもとに行われていた。

増築等の際の既存建築物の取扱いは明確ではなかったために、既存建築物の調査等は行われずに増築等の確認申請が約50年間という長い期間行われてきた。

2006年(平成17年)6月1日付「建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るため建築基準法等の一部を改正する法律」の施行に伴い、改正後の建築基準法第86条の7及び第86条の8の規定により既存建築物に関して制限の緩和が図られた。

既存建築物の増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替(以下「増築等」という)を行う場合には「法適合性の確認」が必要になるが、その取扱い要領が明確ではなかつた。

 2007年(平成18年)5月31日に、大阪府内建築行政連絡協議会で「増築等確認取扱い要領」が制定され、検査済み証が無い既存建物の増築等を行う場合の取扱いの基準が示された。

 又2009年(平成21年)9月1日、既存不適格建築物の増築等について、幾つかの技術的助言及び告示の改正がなされた。

 それらを受けて一部指定確認検査機関でもセミナーを開催したり、試行錯誤ながら検査済み証の無い既存建物の増築、用途変更確認申請の受付を始めていた。

 2010年(平成22年)、東京都建築構造行政連絡会監修の「建築構造設計指針2010」(現在は「建築構造設計指針2019」)で増築等に関する構造審査の基本的基準が示されていた。

 そして2014年(平成26年)国土交通省より「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(通称「ガイドライン調査」)が発表された。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-2

【初めに】

 既存建築物を増築、用途変更、大規模の模様替え、大規模の修繕、昇降機を設置する申請を行う場合(以下「増築等」)で、工事完了検査済証が無い場合には、建築基準法適合状況調査を行い、法的事項を整理しなければならない。

 現在では、建築確認申請と同じように「役所」(特定行政庁)か「民間」(ガイドライン調査機関)に建築基準法適合状況調査を提出する事になる。

 ここでは「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(2014年(平成26年)7月国土交通省)(以下「ガイドライン調査」)について、要点を記載する。

建築:「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」について – 国土交通省 (mlit.go.jp)

【概要】

  このガイドラインは、ガイドライン調査機関に向けて作成された文書なので、建築主等の依頼者から完了検査済証が無い既存建築物の増築等を依頼された代理者(設計者等)が、このガイドライン調査で留意すべき事項を中心に記載する。
 又国交省に届出した指定確認検査機関(ガイドイラン調査機関)を始め国交省、特定行庁等にも可能な限りヒアリングを実施して記載している。

 既存建築ストックを有効に活用する観点から、検査済証のない建築物の増改築や用途変更を円滑に進めることができるような方策を講じることが重要であり検査済証のない建築物について、その現況を調査し、法適合状況を調査するための方法を示したガイドラインが2014年(平成26年)策定された。

 それから10年余りが経過しガイドライン調査の実施例も相当数集積されてきており、その中で幾つかの問題点も指摘されている。

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」は、「調査者」として業務を実施する指定確認検査機関に関しては、希望に応じて国土交通省に届出をできるようにしている。届出を行った指定確認検査機関(「ガイドライン調査機関」と称する)【2022年(令和4年)8月22日時点】は、38社です。
 ガイドライン調査機関を調査・ヒアリングし各社の特徴を整理記載した一覧表を資料として作成した。(非公開)

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-1

 「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」2014年(平成26 年7月)国土交通省について、策定後10年が経過した現在、実務上浮き彫りとなっている問題点や活用の手引きについて連載を始める。

・既に指定確認検査機関等の立場からの出版物としては、「既存不適格建築物の増改築・用途変更」(大手前建築基準法事務所株式会社・共編、2022年11月出版、新日本法規)。「既存建築物の法適合調査ガイド」⁻円滑な改修のためのA to Z、(2024年5月出版予定、一般財団法人 日本建築センター)があるが、代理者(設計者)の視点での解説とした。

・そもそも当該ガイドラインは、国交省に届出をする指定確認検査機関・「調査者(審査者)」(ガイドライン調査機関)を対象とした、審査する側の視点なのに対して、代理者(設計者)が調べなければならない基礎的事項や調査項目を、代理者(設計者)の視点で記述するように努めている。

・東京や首都圏で業務を営んでいる設計事務所は、小規模の事務所でも全国に業務範囲を広げている事務所を散見する。それはクライアントが国内全体へと事業展開しているからだと思うが、全国の特定行政庁の取り扱いなどについても出来うるだけ目配せして記述する。

・テキストとWEBとの連携形態も意識して本稿の内容を更に深める手助けになるように資料・参考事例を作成している。資料の一部は、一種のプレミアとして位置付けているためWEB上では非公開とする。

・法令解説書というより設計実務手引き書のようになっている。

・補稿として特定行政庁に検査済証のない既存建築物の増改築等確認申請を提出する場合の留意点等も掲載予定である。

・統一ルールとしては、元号と西暦の併記とした。筆者が段々西暦でないと経過時間がピンと来なくなってきたためでもある。

・本稿に記載する文責は、(株)寺田建築事務所にあり、無断引用、転載は禁止する。

・掲載事項に関する質疑には対応しない。


  

「北辰の門」馳星周著

 天平九年(737年)、藤原不比等の息子である藤原四子が疫病(天然痘)で相次いで死去し、同年橘諸兄政権が成立した。この時藤原氏は、不比等の孫である藤原豊成(武智麻呂の長男)が12月に参議に補充されただけだった。

 開けて天平十年(738年)正月、阿倍内親王が皇太子に立てられた。

 「太上天皇制」は、大宝律令で法制化した措置で、文武天皇が即位した際、若年と経験不足ゆえに、天皇個人にのみに権力を集約させず、天皇に親権を及ぼす太上天皇、天皇生母、天皇生母の近親者(外戚)等から構成され共同統治を行ってきた。持統と文武は祖母と孫であった。太上天皇という制度は、天皇と同格の君主として扱われ、法制化された地位で、日本独自の制度と歴史書では書かれている。この太上天皇制について知らないと、古代歴史小説は、よくわからないだろうと思う。

 藤原仲麻呂(恵美押勝)が聖武天皇の後押しで政権内の地位を高めていく中で、仲麻呂の後見する阿倍皇太子と諸兄の後見する安積親王のいずれを正当な皇位継承者とするか攻防が熾烈になる。ここで天平十六年(744年)、安積親王は17歳で仲麻呂が留守官の恭仁京(くにきょう)で急死する(「続日本記」)。

 日本も又、古代歴史では天皇の皇位継承をめぐって常に策謀が巡らされ、血が流されてきた。この本を読んでいると、まるで韓国や中国の歴史ドラマ、映画を観ているような気持ちになった。

 天平勝宝元年(749年)7月、阿倍皇太子が即位し未婚の女帝・孝謙天皇が誕生した。ここから仲麻呂独裁政権への進撃が始まる。

 孝謙天皇と藤原仲麻呂(恵美押勝)の衝突と分裂は、孝謙天皇と道鏡の関係から始まっている。歴史書では「寵幸」(ちょうこう)(特別にかわいがられること。寵愛をうけること)と書かれるが、この小説の中では、男を知らなかった女と女を知らなかった男(僧)の艶めかしい物語として紡ぎ出されている。

 そして、臣下が王権に組織的な軍事力で対抗した「恵美押勝の乱」に突き進み、藤原仲麻呂(恵美押勝)は古代社会最大の反逆者として歴史に名を残した。

「梅おばあちゃんの贈りもの」乗松祥子著

この本も人に紹介された本。

80歳を超えても、朝から晩まで働いておられる梅おばあちゃん。

梅おばあちゃんの春夏秋冬の梅仕事を追いながら、毎日の食事、梅を使った料理のレシピ、梅の健康効果、幻と言われた杉田梅のことが書かれている。好奇心の持ち方、大切にしていることや白洲正子さん、樹木希林さん(内田家)との交流などについても綴られている。

写真も装丁も綺麗で、とても丁寧に作られた本だ。

「60代~70代は人生の黄金期」と書かれていて、ハッとした。趣味でも仕事でも夢中になれるものがあると幸せだという。80代の人生の先輩が言うのだから間違いがないだろう。

乗松祥子さんは、70歳から杉田梅の専門店「延楽梅花堂」を始めたとある。すごいな。「生きている限りは、ずっと現役でいたいと思っています。」。自分もそうありたいと思った。

梅干しが食べたくなった。

延楽梅花堂 トップページ (engakubaikado.jp)

「アーバン・ワイルド・エコロジー」能勢文徳+常山未央 著

 時々建築について刺激をすると長文のメールが返信されてくる「私の好きな建築ベスト10」を送ってくれた知人が、「若手のいい建築家」として教えてくれた能作文徳+常山未央。

 この知人には、「本来の建築とは何か」と常々刺激をもらっているので、彼のお薦めならと思い、全然名前の知らない若手建築家だったが、この本を買って見た。

 自分の娘、息子より若い40歳代前半の若手建築家は、何を考えているのか興味津々で読み始めた。

「建築を複数種の網目と捉えている。人間と複数種が共存する居住域を築くために、菌(きのこ)のような弱い力で現代都市を分解して再組織化する、それが私たちのヴィジョンである。」とある。

 多分 若い世代は、私の年代よりも気候変動や現代社会が持つ様々な問題に強い危機感を持つているのだろうと感じた。

 地球環境や生態系に配慮した家づくりやまちづくり、太陽エネルギーを生かしたオフグリッドハウス、土壌の健全性を回復する建築やランドスケープ、生産から廃棄までの物質循環に配慮したエコロジカルデザイン等のデザイン思考に取り組んでいる。

  近年は、街並みを構成する建築のさまざまな素材に着目し、築40年の瓦屋根の家屋を解体して修繕、移築した《高岡のゲストハウス》(2013)や、都市のストックである中古住宅にあなを開け、生命がつくるレイアウトにあわせて手を入れ続けていく自邸兼事務所《西大井のあな 都市のワイルド・エコロジー》(2017)などがある。

 土地やその歴史、素材や資源、住宅産業や社会制度、人々の生活のあり方など、より広範囲の設計与件を取り込みながら、新しい生態系としての建築の実現を志向している。

 能作文徳+常山未央。鋭敏な感性と知性でグローバルな活動をする彼らの今後の活動に期待したい。

「四神の旗」馳星周著

 この小説では、長屋王政権と藤原四子を扱っている。藤原不比等の4人の息子とは武智麻呂(南家)、房前(北家)、宇合(式家)、麻呂(京家)である。

 藤原不比等が死去した後に政権首班となった長屋王(ながやおう)。長屋王の権力基盤は、高市(たけち)皇子と御名部(みなべ)親王(元明の同母姉)との間に生まれた子であること。吉備(きび)内親王(草壁皇子と元明との子、元正天皇の同母妹)の夫であるということ。それから藤原不比等二女の長我子(ながこ)の夫であるという、三つの血筋によるもの。

 長屋王は藤原不比等の存命中は、その枠内において能力を発揮していたが、元明天皇が死去して首(おびと)皇子が即位し、聖武(しょうむ)天皇となるにつれ権力が揺らいでくる。

 神亀六年(天平元年、729年)2月10日、長屋王の「謀反」に関する密告が行われ12日窮問の結果、長屋王は自尽(ジジン・自分で自分の命を絶つこと)、その他は自経(縊死)。当時も今もこの長屋王の「謀反」は、誣告(ぶこく)であったと言う可能性が濃厚だ。それは藤原不比等二女の長我子所生の安宿王、黄文王、山背王、教勝などは不問とされていることから、この事件の標的がどこにあったか、この事件を策謀したものが誰であったかを示している。

 長屋王の変は、歴史教科書をさらつと眺めただけではわからない。この小説では長屋王の立場、藤原四子のそれぞれの立場と考え方にまで踏み込んだ創作となつており興味深い。

 それにしても藤原不比等の業績は偉大である。律令国家を完成させ、律令天皇制(および太上天皇制)を確立し、藤原氏の舗政を永続化させる基礎を固めている。

 日本の権力行使の有様、意思決定システムの様相、地位継承に関する構造など「この国のかたち」を作ったのは藤原不比等と持統天皇だったと言える。

「既存建築物の法適合調査ガイド」⁻円滑な改修のためのA to Z

 昨今の建設費高騰や部材の供給不足により既存建物を活用し、増改築や用途変更を検討する相談が、指定確認検査機関・ガイドライン調査機関に多く寄せられているそうです。

 勿論、弊社でも「既存建築物の再生と活用」に関する様々な相談が寄せられています。

 既存建築物は検査済証の取得をしていない建物も多数あり、増改築や用途変更の際に確認申請の提出が容易でないという相談や、既存建築物を建築基準法の性能規定を利用して改修したいというような等、多様な相談が寄せられています。

 一般財団法人 日本建築センターが2024年5月中旬に「既存建築物の法適合調査ガイドー円滑な改修のためのA to Z」を出版し、それに合わせて6月5日にハイブリッドセミナーを開催するようです。

新刊講習「既存建築物の法適合調査ガイド」-円滑な改修のためのA to Z | 講習会 | 日本建築センター (bcj.or.jp)

又、ビューローベリタスは、無料オンラインセミナーとして5月22日に「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)の解説と、成功・失敗事例のご紹介」というセミナーを開催するようです。
「セミナーでは、検査済証のない建築物の増改築や用途変更を円滑に進めるために活用いただける建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)の解説と、成功・失敗事例のご紹介をします。」と書かれています。

開催日時:2024年5月22日(水)16:00~17:00|申込締切:5月17日(金)

https://service.bureauveritas.jp/Seminar-Training/course.php?type=1&cid=850&utm_source=willmail&utm_medium=email&utm_campaign=mail_6295

 相次ぐ指定確認検査機関・ガイドライン調査機関のアクション。既存建築物の技術審査部門のビジネスチャンスと見ているようです。

表面利回り & 実質利回り

 先日、アセットマネジメント会社と既存建築物のリノベーション計画を打合せしていて、どのような改修を選択するのが良いかと判断するのは、商業的不動産投資においては、第一は経済的合理性であること。事業収支計画での表面利回り、実質利回りが最も大事と話したら、「設計事務所の人の口から表面利回り、実質利回りと聞いたのは始めて」と言われた。

 最近のデザイナー、建築設計事務所の人は、事業収支計画とかは関与しないのだろうか。

 とあるプロジェクトの設計チームで「表面利回り、実質利回り」について聞いてみたら、やはり詳しくは知らないようだった。

※『アセットマネジメント (AM) もしくは資産運用(しさんうんよう)とは、広義としては、投資資産の運用を実際の所有者・投資家に代行して行う業務のことである。従って、株式・債券・投資用不動産、その他金融資産の運用を代行する業務一般を意味する。』

【表面利回り(グロス利回り)】

表面利回りは「物件価格に対して、家賃収入をどれだけ効率よく得られるか」を指す。改修工事においても初期投資額に対して年間家賃収入がどのくらいあるか計算する。つまり「年間の支出」が入っていない。

計算式「表面利回り=年間の家賃収入÷不動産投資額(物件価格)×100」

【実質利回り(ネット利回り)】

実質利回りは、「物件価格を含めた購入時の出費に対して、手元に残る現金をどれだけ効率よく得られるか」を指し、修繕費等のランニングコストといった年間支出を考慮して算出した正確な利回りを示し、 物件価格に対して実際に手元に残る年間の家賃収入の割合 を示す。 具体的には、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、各種保険料、修繕費、管理費などの費用を差し引いた収入を考慮します。

計算式「実質利回り=(年間の家賃収入-運営経費)÷(不動産投資額(初年度諸経費込))×100

 経営者である建築主の心を動かすのは「表面利回り、実質利回り」の数値。

 弊社では、リノベーションの事業収支計画計算ブログロムを導入し、様々なシュミレーションができるようにしている。

来年2025年(令和7年)4月1日法改正の内容が国土交通省から発表された。

令和4年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」の施行期日を定める政令及び施行に必要な規定の整備等を行う政令が、4月16閣議決定された。

https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_001001.html

 2025年(令和7年)4月1日から省エネ基準適合の全面義務化や構造関係規定の見直しなどが施行される。

神楽坂マップ

 神楽坂のお店でいただいた「神楽坂2024年まち歩きマップ」神楽坂通り商店街編集発行を眺めていた。伝統と新しさが溶け合う街・神楽坂。路地裏には江戸情緒が残る。飲食店を含め店舗の栄枯盛衰が激しい街でもある。

そして私達 爺婆が好きな街。

3月、孫娘達を夜の神楽坂にデビューさせた。

 あなたのお母さんが学生時代アルバイトしていた街。ここは、あなたのお父さんが学生時代、指導教授達と夜な夜な雀卓を囲んでいた街。

 婆ちゃんの祖父母は、関東大震災当時、隣町の牛込柳町に住んでいて、たまたま米を配達してもらったばかりて、その米で被災者に炊き出しをしたんだって。
 東日本大震災の時、爺ちゃんと婆ちゃんは徒歩で帰宅途中 この街でようやく落ち合う事ができた。あの時は 時々しか携帯電話が繋がらなくて連絡を取るのが大変だった。

そんな家族の神楽坂にまつわる話を孫娘達に伝えた。

艶めかしい雰囲気が醸し出されている夜の神楽坂の路地。

大人の世界の雰囲気を少し味わせることができただろうか。

「白鍵と黒鍵の間に ジャズピアニスト・エレジー銀座編」南博著

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 2023年秋に、池松壮亮主演で映画化された同名映画の原作本で、ジャズ・ピアニスト・南博が綴る修業時代の青春回想記。

 真面目なクラシックピアノ志望の青年は、ある日ふと聴いたジャズに魅せられ、人生が一変していく。

 学校をスピンアウトして小岩のキャバレー、六本木のバー、そして銀座の超高級クラブでの掛け持ちピアニスト生活。

 1980年代バブルの時代。欲望と札束が飛び交う夜の銀座で、青年は人生を学んでゆく。のだが肝心の部分は「モニャモニャ」と書かれている。そして銀座に別れを告げて、あこがれのアメリカへのジャズ留学を決意するまでが回想されている。

 私は、東京では東京駅から浜松町の間の会社に勤めていたので、銀座の街の雰囲気にはなじみがあるが、今の銀座には、あの頃の大人の世界は無くなったようにも感じる。

 仕事に追われていると こんな郷愁を誘う本が読みたくなる。

 尚、私は、南博のジャズピアノはあまり好きではない。

ラカトン&ヴァッサル

 知人と「好きな建築ベスト10」で被った2つ目は、2021年のプリツカー賞を受賞したフランスの建築家ラカトン&ヴァッサル。ラカトン&ヴァッサルは、アン・ラカトンとジャン・フィリップ・バッサルによる設計事務所で1987年にパリで設立された。

 2003年の建築文化で特集を組まれている。わずかに所蔵している「建築文化」の中の一冊。こうしてみるとラカトン&ヴァッサルは随分以前から注目はされていたけど、日本ではあまり人気がなく、作品集も邦訳されたものはないのではないかと思う。

 初期の作品は、一見してチープだからか人気がないのかも知れないけど、私は結構参考にしてきた。

下記は、2021年にプリッカー賞を受賞した時のarchitecturephotoの記事

『1960年代初頭に建設された17階建て96戸の市営住宅「La Tour Bois le Prêtre(2011年、フランス・パリ)」を、ラカトン&ヴァッサルがフレデリック・ドルオと共同で、より大きなスケールで改修しました。建築家は、元々あったコンクリートのファサードを取り除くことで、各ユニットの室内面積を増やし、建物の占有面積を拡張して、生物気候学のバルコニーを形成しました。かつては制限されていたリビングルームは、フレキシブルな空間として新しいテラスに広がり、大きな窓からは街の景色が一望できます。このようにして、ソーシャルハウジングの美的感覚だけでなく、都市の地理的状況の中でのそのようなコミュニティの意図と可能性を再考しました。

このフレームワークは、Druot and Christophe Hutinと共に、Grand Parc(フランス・ボルドー、2017年)にある530戸のアパートメントからなる3つの建物(G、H、I)の変革にも同様に適用されました。この変革により、ソーシャルハウジングを劇的に視覚的に再構築し、エレベーターや配管を近代化し、すべての住戸を寛大に拡張し、一部の住戸は約2倍の広さになりました。それは、住人を追い出すことなく、解体して新たに建設する場合の3分の1のコストで実現しました。

「私たちの仕事は、制約や問題を解決し、用途や感情、感覚を生み出すことができる空間を見つけることです。これまでのすべてが複雑であったときには、このプロセスと努力の最後には、軽さとシンプルさがなければなりません。」とヴァッサルは説明します。』

 ラカトン&ヴァッサルは、これらの操作を「トランスフォーメーション(変換)」と称していたような記憶がある。私は、リノベーションとかリファイン建築(青木茂)とかより「トランスフォーメーション」の方が概念的にしっくりくるように思っている。